頭頸部外科
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6 巻, 1 号
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  • ―外側輪状披裂筋牽引固定法―
    岩村 忍, 栗田 宣彦
    1996 年 6 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     片側麻痺声帯の固定位置が正中線から外側にむかって離れれば離れるほど,音声障害や嚥下障害の程度は増強する。したがって,中間位固定症例の方が正中あるいは副正中位固定例よりも障害は強い。治療法として内視鏡的または経皮的に,麻痺声帯外側にむけてシリコン,テフロン,コラーゲン,脂肪などの注入術がおこなわれ普及をみた。しかし,麻痺声帯の正中移動の程度に限界があり,加えて,麻痺声帯の厚み矯正,張力獲得,前額面における両声帯間のレベル差矯正などが期待できかねた。これらの短所を補う治療法は,恐らく披裂軟骨内転術であろう。この方法の歴史は決して新しくない。披裂軟骨に直接ふれ,これを内転固定させるという思想のもとに,喉頭截開して前方から接近する方法や,甲状軟骨後端から接近する術式が試みられた。術式が複雑である。 われわれは披裂軟骨に附着せし外側輪状披裂筋に着眼した接近法を開発した。生理学的に同筋収縮は声帯の全長にわたる正中移動を招来することが知られているゆえ,同筋をその走行方向に牽引固定すれば,同筋収縮と同じ結果をえられると推定し,38例の片側声帯麻痺に手術した。局所麻酔のもと,甲状軟骨板に在る斜線を一里塚とし,この直前に,小さな窓を開け,甲状軟骨内膜を切除して同窓内に外側輪状披裂筋を直接露出した。同筋に糸をかけ,窓の前下方に牽引固定することにより,好成績をえた。術式と結果を詳述する。
  • 井上 俊哉, 辻 裕之, 南 豊彦, 山下 敏夫, 佐藤 正人, 浜田 吉則, 日置 紘士郎
    1996 年 6 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     線維腫症は,組織学的には良性腫瘍に分類されているが,臨床上はその発育形態や再発の多さから悪性腫瘍に準じて取り扱われている。 今回著者らは,2歳男児の頸部食道に原発した線維腫症の一例を経験した。生後4カ月頃より喘鳴を認め,生後10カ月頃には嚥下障害が増強してきたため,近医を受診。精査目的にて,本院小児科紹介となる。画像上,頸部食道から梨状窩,甲状腺にかけて腫瘍陰影を認め,直視下食道生検にて,線維腫症と診断された。 1995年7月18日,全身麻酔下に咽喉食摘,甲状腺全摘術施行,遊離結腸にて再建した。 術後6カ月の現在,成長も順調で局所再発も認めていない。
  • 坂井 真, 新川 敦, 佐藤 むつみ, 田村 嘉之, 小林 良弘, 石田 克紀
    1996 年 6 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     癒着性中耳炎の定義,病態分類ならびに手術的治療法に関して検討を加えた。また,癒着性中耳炎57耳を緊張部全面癒着型,後上部癒着型,鼓室線維性癒着型に分類し,それぞれの病態の成因につき検討した。 手術には外耳道保存型鼓室形成術と外耳道削除型鼓室形成術・乳突腔充填術併用術を行ない,乾燥硬膜とアパセラム耳小骨を用いて新鼓膜の再癒着を防止する術式を行なった。 後上部癒着型14耳には主として外耳道保存型鼓室形成術を適用し,術後聴力改善率は81.5%であり,術後の鼓膜状態が正常化したもの72.7%であった。また,緊張部全面癒着型40耳には外耳道削除型鼓室形成術・乳突腔充填術併用術を適用し,術後聴力成功率は65.1%であった。
  • ―非穿孔鼓膜耳における検討―
    原 晃, 和田 哲郎, 阿瀬 雄治, 草刈 潤
    1996 年 6 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     手術にて耳小骨連鎖異常を確認し得た非鼓膜穿孔30耳の術前検査の正当性について検討した。純音聴力検査では耳小骨連鎖離断症例で水平型を示したのは50%であり,固着症例で山型を示したのは77.3%であった。ティンパノグラムAD型を示した離断症例は37.5%,固着症例でAs型を示したのは40.9%であった。CTにて耳小骨連鎖の異常を指摘し得たのは7耳のみであった。液体負荷骨導検査では,離断パターンを示した離断症例は75.0%,固着パターンを示した固着症例は86.4%であった。音響1生耳小骨筋反射では全例にreversed patternを認め,離断では500Hzに,固着では2kHzに著明となるパターンを例外なく認めた。
  • 朝蔭 孝宏, 海老原 敏, 吉積 隆, 浅井 昌大, 林 隆一, 静 隆雄, 海老原 充
    1996 年 6 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     原発不明頸部転移癌は様々な診断技術が進歩したにもかかわらず,全頭頸部癌の数パーセントを占める。今回われわれは国立がんセンター東病院頭頸科における原発不明頸部転移癌の臨床的検討を行った。原発巣の検索には頸部腫瘤の部位および病理組織診断より原発巣を予測し,効率よく検索を行うことが重要と考えた。また,切除可能な頸部腫瘤に対しては頸部郭清術を施行し,切除不能例および未分化癌に対しては化学療法併用放射線治療が適応と考えた。このような治療方針でもN3症例および鎖骨下に原発巣を認めた症例は予後不良であった。
  • ―ドライアイに対する手術的治療法―
    五島 史行, 志津木 健, 小林 宏成, 加納 滋
    1996 年 6 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     両側角結膜瘢痕,及び著明な流涙低下(シルマーテスト右3mm左Omm)を認めドライアイと診断された症例に対して手術的治療(左耳下腺管結膜移動術)を試みた。耳下腺管開口部に頬粘膜を一部付け,筒上に縫合することにより耳下腺管を延長し左眼球結膜に縫合した。術後2日目より左眼流涙過多を認めた。術後11日目シルマーテストにて右6mm左24mmと著明に改善した。しかしながら,その後眼科にて左角膜移植術施行するも成功せず,食事摂取時の流涙過多のため,耳下腺管を口腔内に戻した。ドライアイに対する手術的治療方法について検討した。
  • 山口 展正, 森山 寛
    1996 年 6 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     眼痛,眼精疲労の症状を伴う陳旧性blowout fracture (BOF)3症例に対して内視鏡下整復術を行った。BOFの手術所見は眼症状と一致していた。術後眼症状は著明に改善した。症例1:眼窩内側壁骨折を伴った23歳,女性は外側注視時眼痛,眼精疲労を訴えた。外傷3年後手術的療法を行い,眼窩内側壁のBOFは上鼻甲介と癒着していた。症例2:46歳,男性は外側注視時眼痛,眼精疲労が外傷9カ月持続していた。眼窩内側壁のBOFが中鼻甲介へ癒着していた。症例3:32歳,男性は篩骨洞下方部第III基板付着部近くに眼窩内容物が絞扼していた。この症例においてモノポーラーの電気凝固を用いることがblackoutを生じうる可能性を示唆している。
  • 小笠原 寛, 深沢 啓二郎, 瀬尾 達, 阪上 雅史
    1996 年 6 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     1985年より下鼻甲介粘膜を一時的に剥離し自然孔を開大した後,篩骨洞と蝶形洞を開放する鼻内手術を行った。上顎洞内の充分な操作が必要な良性腫瘍や上顎洞性後鼻孔ポリープ,重度の副鼻腔炎,術後性上顎洞嚢胞では開大した自然孔を鼻腔底まで拡大し,解剖学的限界まで上顎洞内側壁を開放した。この方法では鼻涙管損傷の危険性もなく容易に施行できた。この自然孔開大を12歳から69歳までの14症例に手術合併症がなく施行した。すべての対孔はよく開大し機能し12例に症状と所見の改善をみた。
  • 松崎 全成, 岡本 美孝, 横溝 道範, 本田 耕平, 戸川 清
    1996 年 6 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     咽喉食摘後の咽頭・頸部食道再建法について,これまで当科で再建し嚥下機能を評価し得た54例をもとに検討を行った。有茎皮弁再建に比べ,遊離空腸再建では摂食状況は良好であったが,咽頭高位切除例では摂食不良例がみられた。空腸のρ形再建では必ずしも大きな改善は見られなかった。遊離結腸再建では食道側吻合において縦隔からの余裕がない場合に狭窄を生じる例が見られた。これらの評価から再建法の選択について検討した。切除上端が扁桃下極以下では空腸による端々または端側吻合再建で十分と思われるが,扁桃以上の高位切除例では,切除下端が上縦隔と余裕がある場合は結腸再建が,余裕がない場合はρ形吻合による空腸再建が望ましいと思われた。
  • 市村 恵一, 中村 直也, 近藤 健二
    1996 年 6 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     鼻弁の狭窄による鼻閉は少ないものの,わが国でもようやく認識され始めた。鼻弁狭窄による鼻閉は手術により改善しうる。手術の基本は鼻中隔上部の矯正,外側鼻軟骨の前下方の部分切除による鼻弁角度の修正であるが,後者を行う際のアプローチ法は大別して2つになる。鼻限の外側鼻軟骨一鼻翼軟骨間に入れた皮切から外側鼻軟骨下部のみを露出して行う経鼻孔法と,コルメラ前方の皮膚切開を置き,皮弁を剥離挙上し,外鼻錐体を露出して明視下に行うopen rhinoplastyとである。手術や外傷に起因するものは後者を選ぶが,それ以外では何れの方法でも良い結果が得られる。
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