頭頸部外科
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6 巻, 3 号
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  • 吉野 邦俊, 佐藤 武男, 藤井 隆, 稲上 憲一, 橋本 典子, 西谷 茂樹, 上村 裕和, 長原 昌萬
    1996 年 6 巻 3 号 p. 141-147
    発行日: 1996/12/30
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     頭頸部扁平上皮癌の臨床的N0例に対する深頸部の予防的頸部郭清の適応,郭清範囲,術式について,当科での経験をもとに検討した。また代表的術式であるlateral NDの手術手技について述べた。予防的頸部郭清の適応の基準を,潜在性転移率が20%以上として,各発癌部位についてT病期別の適応を明らかにした。転移部位はどの発癌部位でも大部分はlevel II,III,IVであり,level Vにはほとんど認められず,level Vの郭清は不要と思われた。郭清術式は副神経,胸鎖乳突筋,内頸静脈,頸神経などを温存し,喉頭,中・下咽頭癌にはlateral ND(level II,III,IV),舌・口腔底癌にはsupraomohyoid ND(level I,II,III)が妥当であると考えられた。
  • ―咽後リンパ節―
    毛利 光宏, 木西 實, 天津 睦郎
    1996 年 6 巻 3 号 p. 149-153
    発行日: 1996/12/30
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     1988年から1995年までの8年間に56名の下咽頭癌患者に対して咽後リンパ節郭清を施行した。咽後リンパ節郭清は頸部郭清術の後下咽頭収縮筋の筋膜を舌骨のレベルから上方に向かって剥離し,椎前筋より前方で内頸動脈より内方の組織を切除した。 術後の病理検索で56例中12例に咽後リンパ節転移を認めた。このうち術前にCT,MRI等で転移を診断し得たのは2例のみであった。12例のN分類はN0 2例,N1 2例,N2a 1例,N2b 3例,N2c 4例であった。術前診断がたとえN(-)であっても,もし郭清しないで顕現化した場合salvage手術が困難であることを考慮して,初回手術時に両側を郭清するべきである。
  • ―顎下部・オトガイ下部領域について―
    河田 了, 村上 泰
    1996 年 6 巻 3 号 p. 155-160
    発行日: 1996/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     N0症例でも,顎下部・オトガイ下部リンパ節領域を予防的に郭清することは,特に口腔癌の場合少なくない。この領域の郭清では顔面神経下顎縁枝の温存が最も問題となる。顎下部にリンパ節転移があれば,下顎縁枝の切除もやむをえないが,NO症例では極力温存したい。また顎下部・オトガイ下部リンパ節転移は他領域に比べて,診断が難しく,また炎症性リンパ節腫脹も多くみられるという問題点もある。我々はNO症例で顎下部・オトガイ下部を郭清するとき,下顎縁枝を明視下におくのではなく,顎下腺下縁で直接顎下腺被膜にはいり,上方へ下顎骨まで剥離しその時点であらためてリンパ節腫脹の有無を確認することによって下顎縁枝の保護に努めている。このような手技により,神経保護がより正確になり,また肩甲舌骨筋上頸部郭清術の場合手術侵襲も少ないため,口腔癌T2 N0症例でも積極的に予防的頸部郭清術を施行している。
  • ―傍気管部リンパ節郭清―
    川端 一嘉, 鎌田 信悦, 苦瓜 知彦, 保喜 克文, 三谷 浩樹
    1996 年 6 巻 3 号 p. 161-166
    発行日: 1996/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     傍気管部リンパ節にたいする予防的郭清の必要性については,一般的なコンセンサスを得ていると考えられるが,その細部については曖昧である。我々の施設では,過去の症例における傍気管部リンパ節転移の状況より,声門上癌と初期声門癌を除く喉頭癌,下咽頭癌,頸部食道癌,気管癌など転移頻度の高いものを予防的郭清の適応としている。郭清範囲は原発巣の下方進展状態により少し異なり,下咽頭・頸部食道癌や声門下癌などでは上縦隔に向かってできるだけ深く郭清をおこなっている。ここでは,我々の施設での手術手技を中心に紹介する。
  • 日野 剛, 遊座 潤, 野本 実, 沼田 勉, 今野 昭義, 長尾 孝一
    1996 年 6 巻 3 号 p. 167-172
    発行日: 1996/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     当科で治療した耳下腺腺癌症例のうち6例がsalivary duct carcinomaであり,その臨床経過,病期,治療法,予後などについて検討した。年齢は38歳から62歳までで全て男性症例であった。腫瘍の最大径は3cmから8cmまでで,初診時4例に顔面神経麻痺が認められたが,頸部リンパ節転移,遠隔転移を認めた症例はなかった。耳下腺拡大全摘または全摘後に照射療法を行った症例が4例,耳下腺全摘後化学療法を行った症例が1例,生検後化学・照射療法を行った症例が1例であった。予後は極めて不良で5例は3.5年以内に死亡しており,1例のみ6.2年経過し非担癌生存していた。
  • ―新しい腫瘍マーカーCYFRAの臨床応用性について―
    樋口 栄作, 飯塚 桂司, 武市 紀人
    1996 年 6 巻 3 号 p. 173-179
    発行日: 1996/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     頭頸部扁平上皮癌新鮮例38例を対象にして,CYFRAとSCC抗原,TPAを比較,検討した。コントロールには非癌症例21例を用いた。CYFRAについては臨床経過を観察できた頭頸部扁平上皮癌20例についても検討した。各腫瘍マーカーの感度と特異度はCYFRAが63.2%と95.2%(cut off値1.1ng/ml),SCC抗原は52.6%と95.2%(cut off値1.1ng/m1),TPAは68.4%と100%(cutoff値50U/L)であった。CYFRAはSCC抗原と同等以上の有用性を有するが,TPAより若干劣っていると思われる。CYFRAは頭頸部扁平上皮癌の臨床経過をある程度反映すると思われる。
  • 熊井 惠美, 中根 束, 荒井 卓哉, 安達 正明, 片山 昭公, 内田 祥子, 柳内 統
    1996 年 6 巻 3 号 p. 181-184
    発行日: 1996/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     当科では平成5年1月より平成8年3月までに382例の甲状腺手術を施行した。その内,甲状腺機能亢進症に対する手術は24例で,副作用(アレルギー反応や無顆粒球症)などで抗甲状腺剤の継続不能例や,術後再発または甲状腺クリーゼ再発予防などの理由で手術適用となった。術後の再機能亢進を回避しなければならない例が多く,全摘出術を11例に施行し,亜全摘出術13例でも極力残存量は少なくするようにした(2-5g)。反回神経は,同定保存し,上皮小体は,血流を保存しつつ複数個を残すようにした。術後,19例が甲状腺ホルモンを服用し,2例が活性型ビタミンD製剤を服用している。また,亜全摘出例の5例は投薬を必要とせず経過良好である。
  • 苦瓜 知彦, 鎌田 信悦, 川端 一嘉, 保喜 克文, 三谷 浩樹, 横島 一彦, 吉本 世一
    1996 年 6 巻 3 号 p. 185-188
    発行日: 1996/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     1971年から1990年の間に,癌研究会附属病院頭頸科で治療した中咽頭悪性腫瘍174例中,扁平上皮癌以外の腫瘍は13例(7.5%)であった。13例の内訳は,腺癌4例,腺様嚢胞癌3例,粘表皮腫瘍3例,腺傍細胞腫瘍2例,横紋筋肉腫1例であった。平均年齢は53歳,性別は男性8例,女性5例と扁平上皮癌に比べてやや若く,男女差が少ない傾向が見られた。部位別にみると,舌根に生じたものが7例と最も多く,扁桃窩に3例,軟口蓋に3例みられ,扁平上皮癌に比べて舌根原発が多い傾向がみられた。13例中10例に手術を中心とした根治的治療を行い良好な結果を得た。
  • 岸本 誠司, 齋藤 春雄
    1996 年 6 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 1996/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     中頭蓋底下面は顔面の深部に位置し,解剖学的にも複雑な形態をしているため,外科的アプローチの困難な領域である。我々は前方からアプローチし,顔面の皮切の後,顔面骨を鼻骨,上顎口蓋骨および頬骨に3分割し,いずれも軟部組織を付け有茎のままとし血流を温存しながら展開する術式を行ってきた。これにより顔面に瘢痕は形成するものの,術野の十分な確保と,術後の形態,機能の温存が可能であった。 この術式を紹介し症例を呈示すると共に,他のアプローチ法すなわち前方からの経口腔的,経下顎的アプローチおよび側方からのアプローチとの比較検討を行った。
  • 遠藤 壮平, 木田 亮紀, 田中 正美, 濱田 敬永, 酒井 文隆, 鈴木 伸, 野口 雄五
    1996 年 6 巻 3 号 p. 197-201
    発行日: 1996/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     進行下咽頭癌(PS;T4 N2 M0;Stage IV)に対してシスプラチンと5FU併用の照射療法の後に咽喉食摘,両頸部郭清術,遊離空腸による咽頭食道再建術を施行した。手術に際して甲状腺全摘も施行し,切除検体より上皮小体を探しだして前腕筋膜下に自家移植した。移植に先立ち,剥離した上皮小体は迅速病理検査にて,上皮小体であること,癌転移を認めないことを確認した。術後,暫くカルシウム製剤を投与したが,両肘窩からの静脈血サンプルよりM-PTHを測定し,移植片が生着したことを確認した。患者は現在,甲状腺剤のみの処方にて血清カルシウム値は正常であり,無病生存中である。現在までに同様の移植を6例に施行し,良好な結果を得ている。
  • 林 隆一, 海老原 敏, 吉積 隆, 浅井 昌大, 斎川 雅久, 朝蔭 孝宏, 海老原 充
    1996 年 6 巻 3 号 p. 203-207
    発行日: 1996/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     1992年7月から1995月12月までに当院頭頸科で行った垂直喉頭部分切除36例について検討した。初回治療例は22例,既治療例は14例であり,術式別には前側方切除34例,前方切除2例であった。初回治療例22例中8例に術創部の合併症を認め,うち1例に肉芽の鉗除を要した。既治療例では,創部の合併症が重篤化する傾向にあり,甲状軟骨壊死をきたした5例中2例に喉頭全摘を要した。経口摂取は平均13.3日で術前の状態に回復していた。初回治療例の回復が既治療例に比べて早く,創治癒の経過が影響していると考えられた。
  • 白石 修悟, 細田 泰男, 南豊 彦, 友田 幸一, 山下 敏夫
    1996 年 6 巻 3 号 p. 209-214
    発行日: 1996/12/30
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
     耳小骨の転位や排出などの問題点を解決するために,アパセラム人工耳小骨の頭部に軟骨を接合しうる軟骨接合型人工耳小骨を開発した。6カ月以上経過観察された皿型変法99耳,IV型変法25耳の計124耳について検討した。術後観察期間は平均16.6カ月で,耳小骨の排出をみたものは4/124耳(3.2%)であった。臨床耳科学会の聴力成績の判定と基準による成功率は皿型変法78.8%,IV型変法80.0%であり,特にIV型変法において従来の報告に比較し,優れた結果となった。
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