園芸学会雑誌
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29 巻, 4 号
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  • 沢田 英吉, 田村 勉, 吉田 竜夫, 高橋 正治
    1960 年 29 巻 4 号 p. 253-263
    発行日: 1960/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    各種の果樹を用い,果実の着色,熟度の促進ならびに発育に及ぼす2, 4, 5-TPの影響について実験を行なつた。本試験は1955~1958の4か年に札幌および余市の2地区で実施したものである。
    その大要は次の如くである。
    リンゴ
    1.散布することによつて果実の着色,熟度促進に対する影響は極めて著しかつた。特に早生品種において効果がより顕著に現われ,これらにあつては収穫期が10日~2週間促進された。
    2.一般に果実の糖度は増加する傾向があつた。
    3.果実の肥大には特に影響がなかつた。
    4.処理果と無処理果との貯蔵性についてはその間に差が見られなかつた。
    5.散布の適期は収穫の約1か月前である。散布濃度は処理では40ppm,他の品種では20ppmが適当である。
    核果類
    1.果実と核の肥大が著しく促進された。2, 4, 5-TP処理によつて核の増大することは,まだ他の研究者によつて認められていないところである。
    2.各種類とも明らかに熟期が促進され,特にスモモ,オウトウでは著しく着色が促された。
    3.処理果は糖度の増加を示した。
    4.散布濃度はモモを除く他の核果類に対しては40ppmが適当である。モモに対しては40ppmでは畸形果を生ずるので20ppmが望ましい。
  • 中川 昌一, 南条 嘉泰, 平田 尚美
    1960 年 29 巻 4 号 p. 264-272
    発行日: 1960/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1.ブドウ果実に発生する生理的障害の中で,日射病と呼ばれている障害は,果実の硬核期に発生し,特にガラス室ブドウではその被害が甚だしい。したがつて,この障害の発生の原因,および機構を調査するためにMuscat of Alexandriaを用い,1957年および1959年にわたり,2, 3の実験を行なつた。
    2.本障害は,直射日光を受けた果粒が,最初,果皮を透して果肉に火傷類似の斑点を生じ,漸次拡大し,褐変陥入するが時には急激に全果粒が熱湯をあびたように軟化褐変し,萎縮,脱落することも少なくない。かような障害果を解剖学的に観察すると,最初は,原形質に変性壊死が認められ,やがてこれらの壊死細胞は褐変,凝集する。
    3. 6月下旬に白ビニール,黒ビニール,新聞紙,黒新聞紙および各種の色硫酸紙で樹上の果房を袋掛すると,晴天日中において最も高温を示す白ビニール区,および黒ビニール区では,標準無袋区より著しく障害の発生が多かつた。また種々の色彩の硫酸紙による袋掛の結果では,光線の種類よりも温度が障害発生との間に深い関連があるようである。
    4.一方,定温器内において正常果を温度処理すると樹上に生ずる障害と極めて類似の障害の発生がみられた。そして定温器内の温度が40°C(果実温35°C)では3.5時間,42°C(36.6~37.5°C)では2時間,45°C(38.8°C)では1.5時間,48°C(39.6~40°C)では1時間後に障害が発生した。
    5.更に,温度の差異や,障害の発生程度と呼吸量の変化をそれぞれ,in vitroで測定した処,果実温度がある程度まで上昇するに従い,また障害の程度がある程度進むほど,呼吸量は増加したが,いずれも極端な場合には,呼吸量が急激に減少し,呼吸率も異常を示した。
    6.障害果には,アルコールおよびアセトアルデヒドが検出され,また,アセトアルデヒドの添加によつて呼吸抑制が行なわれるとともに,果実は褐変軟化した。
    7.障害果の糖および酸含量は,正常果に比して極めて少なく,本障害の発生による異常呼吸により,これらの呼吸基質が急激に消耗したようである。
    8.以上の結果から,本障害はブドウ果実が硬核期中に日射に伴なう高温によつて果実の異常呼吸を促進し,その結果,呼吸の代謝生成物として細胞内にアセトアルデヒドの蓄積を来たし,それが直接または間接に細胞の褐変・壊死を招くものであると考えられる。
  • 表皮系の形態的変化と発生との関係
    苫名 孝
    1960 年 29 巻 4 号 p. 273-280
    発行日: 1960/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1.ジョナサン・スポット発生の著しい紅玉果実の表皮系の形態的特徴を明らかにするため,ほとんどジョナサン スポットの発生を見ない旭,国光,インドの3品種果実とともに,その生長に伴なう果皮の形態変化を観察した。
    2.いずれの品種の果実においてもジョナサン・スポットの発生部は水透過性の強い果点組織に限られており,かかる組織では気孔を中心として新らしく深い表皮裂開が存在し,コルク形成が不完全である。
    3.この透過性の強い果点組織は,4品種の中では特別に紅玉に多く存在し,その数は採収時期,果面よりの蒸散量,湿度,温度感応においてジョナサン・スポットの発生数とまつたく一致した傾向を示した。
    4.紅玉果皮ではcuticuleおよび果点の形成発達が最も劣り,表皮系細胞の配列は8月中旬まで生長初期の状態を保ち,8月下旬にいたるまで気孔が残存した。
    5.以上の結果から,ジョナサン・スポット発生の1次的な原因は,紅玉表皮系の形態的な特徴である,水透過性の強い果点組織の形成にあると思われる。
  • 毬果の発育に伴なう2, 3の成分の推移
    一井 隆夫
    1960 年 29 巻 4 号 p. 281-286
    発行日: 1960/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    クリの毬果の発育を追つて毬および果実について,それぞれ乾物重,水分含有率,糖および澱粉,可溶態および蛋白態N, PおよびKの時期的推移を調査した。
    毬果の発育は2つの周期からなるものと思われ,その生長曲線を重量であらわすとdouble-sigmoid曲線となるものと思われた。
    毬果の発育の第1期は毬の乾物形成が主体で,約70%が形成され,蛋白態Nの100%がつくられる。果実では水分含有率およびN, P, Kなどの成分の含有率が高く,糖としては還元糖が主体である。
    第2期には,乾物形成の主体は果実特に種子に移行するが,毬も水分吸収を盛んに行なつて果実の発育に対応して肥大する。毬の蛋白態Nは成熟期にかけて減少がみられる。果実では還元糖から非還元糖および澱粉の合成が行なわれ,旺盛な炭水化物の蓄積がみられる。
    毬の第2期における水分吸収の増大に基づく肥大は,その相対的に高いK含有率および糖含有率の増加によるものと想像される。
  • 裂果の機構について
    二井内 清之, 本多 藤雄, 太田 成美
    1960 年 29 巻 4 号 p. 287-293
    発行日: 1960/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    トマトの裂果のおこる要因を研究して栽培ならびに裂果抵抗性品種育成への指針とするため1957~1958年の両年にわたつて試験を行ない,裂果の機構を明らかにしようとした。
    1.果実を水中に24時間保つた時の吸水量は,0.6~2.4gの範囲で,緑熱果までの未熟果は裂果せず,着色期以上に成熟した果実で,はじめて裂果が見られた。またコルク層,コルク点より吸水することも確めた。
    2.同心円裂果と側面裂果は摘葉で増加したが,放射裂果は摘葉によつて減少した。また遮光区の裂果はどの種類のものも著しく減少し,果実を被覆することの効果が著しいことが分つた。摘葉した上に更に遮光するとどの種類の裂果も著しく少なかつた。
    3.土壌水分と放射裂果との関係をみると,乾燥区は最も発現が少なく,ついで少湿区で多湿区は最も激しかつた。乾燥→多湿と少湿→多湿の両区を比較すると後者が裂果は少なかつた。
    4.裂果に関係する要素のうちで果皮の強度,果実の糖度,根圧が大ぎな比重を占めていて,これらが条俳によつて色々と異なつて組み合わさるので裂果が複雑になる。
    5.放射裂果は果実内の吸水量増加による膨圧に影響されるが,同心円裂果と側面裂果はこれらと異なり,コルク点から吸水されて,コルク点から裂開されるもので,果案の滲透圧は2次的に関係する。
  • 果菜類について
    大沢 孝也
    1960 年 29 巻 4 号 p. 294-304
    発行日: 1960/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1957~1960年にわたり,主要蔬菜につき各1品種を供試してガラス室内で砂耕栽培し,HOAGLAND液を基本培養液(標準区)として,これにNaClをそれぞれ1000, 2000, 4000, 8000,16000ppmの各濃度に加えたNaCl処理区を設け,相対的耐塩性,塩害の症状,養分の吸収などについて調べた。本報はそのうち果菜6種類,即ちトマト,トウガラシ,キュウリ(1000ppm区を欠く),ソラマメ,インゲン(1000, 16000ppm区を欠く),イチゴに関して得た結果をまとめたものである。
    1.一般に処理濃度の増大につれて植物体は後化し,側枝の発生は抑制された。キュウリ,ソラマメ,インゲンは8000ppm区以上またイチゴは4000ppm区以上で下葉の枯れ上がりが激しく全株枯死した。砂耕打ち切り時の茎葉都新鮮重は,トマトが1000ppm区で最高値を示した他は,高濃度区ほど減少した。しかし果実収量はすべて処理濃度が高くなるほど減少し,その半減をぎたす大約の処理濃度は,トマト3500,トウガラシ3000,キュウリ3000,ソラマメ2500,インゲン2000,イチゴ1000ppmで,トマト,トウガラシでは果実収量の減少は茎葉部重量の減少より著しかつた。また一般に茎葉乾物率は高濃度区で低下した。
    2.開花数は栄養生長とほぼ平行的に減少したが,特にトウガラシの16000ppm区における開花皆無は落蕾によるものであつた。結果歩合は一般にNaCl処理によつて低下したが,特にトマト,トウガラシでは,それぞれ,8000, 4000ppm区以上で著しく低下した。開花開始期はいずれの蔬菜でも区間で大差なく,収穫開始期も高濃度区で初期の落果が激しかつたトウガラシ以外ではやはり区間に大差がなかつた。花粉の稔性率,発芽率は処理により明らかな影響はうけず,また種子の稔実程度も殆んど差がなかつた。
    3. NaCl区における特殊症状は次の如くであつた。トマトは1000~8000ppm区は葉が濃緑色となつたが,16000ppm区は全体的に黄化し,トウガラシも16000ppm区が同様に黄化し葉縁が表側に彎曲した。キュウリは8000ppm区以上で葉縁が表側に彎曲し,下方の葉から葉脈間が黄化して枯死した。インゲンは2000, 4000ppm区は濃緑色となり,8000ppm区は下葉の葉脈間に激しい葉焼けを生1二て枯れた。イチゴは2000, 4000ppm区で外葉から葉縁焼けを生じ,また花弁が淡緑色となつた。なおトマトは1000ppm区および8000ppm区以上で尻腐れ果の発生が多く,トウガラシも特に3000ppm区で同様の症状がかなり発生した。ソラマメは特殊な症状を現わさなかつた。
    4.処理濃度の増大に伴なう葉中の各要素含量の変化は,Naはトウガラシ,インゲンでは集積が著しく少なかつたが,他では直線的に増加した。しかしClはいずれの蔬菜でも直線的に増え,且つソラマメ以外ではNaより集積が大であつた。NaとK, Ca, Mg含量間の拮抗関係は,イオンや蔬菜の種類によつてまちまちあり,これら4種のcation総量は処理濃度増大に伴なう変化が概して小さいが,トウガラシ,インゲンでは減少,他では増加した。N, Pの含量変化の傾向も蔬菜によつて異なるが,cationにおけるほど変化は著しくない。炭水化物含量にも一定の傾向が見られなかつた。
  • 佐藤 和郎, 常盤 秀夫, 古井 憲良, 川勝 隆男
    1960 年 29 巻 4 号 p. 305-309
    発行日: 1960/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1953年に亀岡布附近において,結球ハクサイに硼素欠乏症が発生し,1955年には,亀岡市,綾部市,福知山市,園部町,八木町,久御山町附近に激しい症状が発生した。その対策を樹立するため,京都農試において,1955~1958年に症状の調査,対策試験を行なった。その結果を要約すると次の如くである。
    1.症状は中肋に褐色の亀裂を生ずるのが特徴で,31~35枚目(葉位置)の葉が被害大であり,その被害の時期は結球期である。
    2.松島群の品種は被害大で,加賀群がそれに次ぎ,野崎群の品種が最も被害は少ない。硼素含量も松島群の品種は11.6ppmであり,野崎群の品種は13.2ppmであつた。
    3. N, K, Caの多用は,硼素欠乏を増加した。しかしそれらに硼素を加用すれば正常株を得た。対策としては10a当り,硼砂1kgの元肥施用で充分有効であつた。
    4.硼素欠乏は,結球前1か月間の降水量が少ないと激しく発生し,降水量が多いと発生は少ない。
    5.硼素欠乏症発生地の土壌は,砂質壌土~壌土で,pHは5~6,可給態硼素含量は0.09ppmであつた。
  • 山口 雅俊, 杉山 直儀
    1960 年 29 巻 4 号 p. 310-312
    発行日: 1960/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    金時ニンジンのような根の赤紫色の種類のカロチノイドについての報告は見当らないので,橙黄色の国分ニン・ジンと対比しながら,そのカロチノイドを調べた。
    その分析結果は第1表に示す通りで,国分には外国の橙赤色品種と同様β-カロチンが多く,またその約6分の1のα-カロチンが含まれており,その他少量ながらζ-カロチンとリコピンが含まれていた。金時ではこれに反しリコピン含量が非常に高く,国分のβカロチンに近い量が含まれていた。β-カロチンは少なく,またα-カロチンも極めてわずかで,ζ-カロチンよりも少なかつた。
    リコピンとζ-カロチンとはビタミンA源とはならないから,金時は国分に比べてビタミンA給源としての価値は低いとみなされる(100g当り,24,100IU(国際単位)に対し5,300IU)。
  • 床土の土壌水分がトマト苗の生育に及ぼす影響
    高橋 和彦
    1960 年 29 巻 4 号 p. 313-322
    発行日: 1960/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    床土の組成に関係の深い灌水についての資料を得るため,また従来果菜類の育苗でしばしばみられる灌水を控え目にすることの是非を確かめるため,トマトを用い,1959~60年に実験を行なつた。
    1.実験はガラス室内でブリキ箱を使用して行なつた。火山灰土・配合土(火山灰土1:腐葉土1)・川砂の3種類の土壌を用い,おのおの容水量WCおよび永久萎凋率PWPを測足しその間の水分量を有効水分量AWとした。毎日灌水区およびAWの25, 50, 75, 100%の水分消失量があつた時に,灌水してWCにまで戻す区を設け,毎日重量を測定して水分消失量を知り必要量だけ土壌に灌水した。
    2.処理開始5~6日で処理間に生育の差が現われ,火山灰土・配合土ではAWの約50%,川砂では約75%の水分消失量があつた時に苗の萎凋が始まつた。苗はまず子葉が黄化して下垂し,やがて褐変して枯死に至り,本葉の葉色が濃緑色となり,葉身は内側に捲き,萎凋が進むと生育は殆んど停止した。しかしかなり萎凋していても灌水すれば速やかに回復し,生育は再び旺盛となつた。
    3.いずれの土壌においても,灌水量が少ない区ほど生育が劣つた。水分消失量と生育量との相関は高く,花芽の分化状態はほぼ生育と平行していた。
    4.乾燥した時,灌水を控え目にしてAWの75, 50%にまで戻す実験を行なつたが,その結果も同様で,やはり灌水量が少ない区ほど生育が劣つた。
    5. AWの25, 75%の水分消失量があつた時に,灌水してWCにまで戻す区を設け,灌水温を0°, 20°, 40°Cの3段階にした。その結果は灌水量による生育の差は顕著であつたが,灌水温による差は全然認められなかつた。
    本研究は杉山教授の御懇篤な御指導の下に行なわれた。ここに厚く御礼申し上げる。また実験実施上種々協力された岩堀修一氏に感謝する次第である。なお本研究費の一部は文部省科学研究費によるものである。
  • 伊東 秀夫, 加藤 徹, 豊田 篤治
    1960 年 29 巻 4 号 p. 323-330
    発行日: 1960/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    富山県産のチューリップ(William Pitt)について,サーモペリオディシティと,成分の消長の関係を調査した。
    1. 20°Cを適温とする分化期に,8°-9°Cを適温とする伸長準備期が続き,最後に葉・茎さらに花茎の伸長する13°-17°-23°Cを適温とする伸長期が続くというのが,チューリップのサーモペリオディシティイである。
    本実験においては,普通掘り上げ時期よりも前から試料を採収し,掘り上げ適期における球根の特徴を把えることから着手した。
    2.球根の新鮮重は地上部の生育に伴なつて増加し、砂丘地のものは6月15日,水田のものは6月25日に最高に達し,以後は少しずつ減る。
    Fig. 9. Effect of chilling treatment on auxin level in the scales (II-III) of tulip bulbs.
    Fig. 10. Optimal temperatures for the development of tulip bulbs from the time of lifting to flowering.
    (HARTSEMA, LUYTEN and BLAAUW)
    乾物重も新鮮重に伴なつて増えるが,新鮮重の場合よりそれぞれ10日早く最高値に達し,以後はやはり減る。
    冷蔵すると,新鮮重は減らなくなるが,乾物重の減り方は室温貯蔵のものより大きくなつた。
    砂丘地のものと水田のものとは同じ動向を現わすが,砂丘地のものの動きは水田のものの動きより大体10日早い。
    3.窒素化合物の消長 新鮮重の増加に伴なつて,球根当り総含量も,また新鮮重当りパーセントにしても,窒素含量は増え,新鮮重が最高に達した後で総含量は最高に達し,パーセントとしてはその後も増えることになる。
    不溶性窒素と可溶性窒素とは大体動向は似ているが,不溶性窒素の方が早く第1の極大値に達し可溶性窒素の方が遅れている。
    冷蔵すると,不溶性窒素は室温貯蔵のものと反対に新鮮重に対するパーセントが下がり,可溶性窒素の方では上がる。冷蔵すると,不溶性のものが一部可溶牲に変わる。砂丘地産の球根と水田産のものとを較べると,窒素総含量も,新鮮重に対するパーセントも,砂丘地産のものの方が水田産のものより多い。
    4.炭水化物の消長 炭水化物の総含量も新鮮重当りパーセントも,新鮮重の増加に伴なつて最高値に達し,以後減つている。球根当り総量の減り方はゆるやかであるが,新鮮重のパーセントとしての全炭水化物の減り方は砂丘地の場合はかなり著しく,水田の場合にはゆるやかである。
    全糖は新鮮重が最高に達する前に最高パーセントを示し,砂丘地のものは5月25日,水田のものは6月15日へかけてやや急に下がり,以後はしばらく大して変らず,10月中旬以後ゆるやかに上がつている。
    多糖類は,最高値に達した後は下がる一方で,砂丘地産の下がり方は水田産の下がり方より急ピッチである。冷蔵すると,多糖類のパーセントは室温貯蔵のものと較べて急激に下がり,全糖のパーセントは急激に上がつており,多糖類から全糖へ変る量が相当多い。多糖類の動向はその澱粉の動向と一致しており,全糖の動向は非還元糖の動向と一致している。
    鱗葉別に澱粉含量の変化を見ると,最外部のものに始まつて順次内部のものに澱粉が集積し,最高値に達し,以後ゆるやかに下がつている。冷蔵中は急激にそのパーセントが下がる。外側のものよりも内側のものほど下がり方が著しい。
    5. Auxinとinhibitorの消長
    (1)生長点 生長点のauxinは,砂丘のものでは6月20日,水田のものでは6月30日へかけてやや急に下がつて最低値を示した後,やや急に上がつて前者では8月12日,後者では8月5日に最高値を示し,後9月末までやや急に下がり,10月以降ではゆるやかに下がつている。全般的に砂丘地のものの方が水田のものより高い。
    冷蔵すると室温貯蔵と較べて下がつており,10月以降においてかえつてゆるやかに上がり同じレベルに近づく。
    形態的調査による花芽分化は,砂丘地のもので7月1日,水田の場合で7月10日である。auxin levelの最低値が砂丘地のもので6月20日,水田の場合に6月30日に現われていることに追随している。
    (2)鱗葉(外側より第II-III番目)鱗葉は,7月中旬まで多量のinhibitorを含み,auxinを殆んど含まない。砂丘地のものでは7月15日,水田のものでは7月25日からauxinが増え,inhibitorの方は減り始め,auxinは砂丘地のもので9月10日,水田のもので9月30日に最高に達し,11月5日の定植期にはやや減つている。
  • A ナライン
    1960 年 29 巻 4 号 p. 331-332_1
    発行日: 1960/12/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    ヒマは油料作物として知られているが,元来変異に富んでいて観賞価値の高いものもある。著者はヒマの分類および遺伝の研究中各種のタイプのものを集めたが,その中,茎葉や果実に赤く美しい色素を有するもの,果実に刺のあるもの,ないものなど12型を選んで,その記載を行ない,また図で示した。これらの中いくつかは交配選抜によつて得られたものである。
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