1. 深耕畑における作付体系確立の資料を得る目的をもつて, 深耕処理によつて変化した土壌条件が, 蔬菜の生育•収量に及ぼす影響と深耕の際, 問題となる下層土に対する蔬菜類の適応性を, 普通作物と対比して検討した。
2. 1960年は, 火山灰土畑に, 表土標準区, 表土深耕区, 表土改良区, 下層土標準区, 下層土標準区, 下層土改良区を設け, トマト, キュウリ, カボチャ, ダイコン, サトイモ, ハクサイ, ネギおよび普通作物, 飼料作物などを供試し, 1961年には, ポットに火山灰土畑の表土と下層土をつめ, 各作物とも共通の施肥条件として, 下層土適応性を前年と同様な作物について比較した。
3. 蔬菜類の多くは, 普通作物より深耕効果が高く, 表土深耕区でダイコン, キュウリ, トマト, ハクサイなどは特に多収を示し, 肥沃化効果も高く, 表土改良区で良好な成績を示した。下層土の影響で多くの作物の生育•収量は低下したが, 蔬菜類の減収度は一般に小さく, ネギ, ダイコン, ハクサイは下層土標準区で全く減収せず, 下層土改良区で蔬菜類の多くは旺盛に生育し多収となり, ダイコン, ハクサイは, この区で最高収量を示した。
4. 深耕処理によつて, 土壌の孔隙量が増加し, 通気, 透水性が良好になり, 深層の気相の増加が注目された。この点一般に通気に敏感だといわれる蔬菜類, とりわけトマト, キュウリ, ダイコン. ハクサイなどが有利であることが考えられた。
5. しかし, 深耕によつて混入される瘠薄な下層土の悪影響が認められ, 下層土区で減収程度の少ない蔬菜が深耕区で成績が良い傾向が認められ, 作物の下層土適応性から, 深耕効果の作物間差異が, 或る程度説明できることが明らかされた。
6. 下層土適応性に関して, ポット試験を行なつた結果, ダイコンのように少肥条件下でも, 下層土の悪影響をうけないものもあつたが, 蔬菜類の多くは施肥に敏感で, 肥培されない下層土では生育が阻害されやすいが, 多肥にするとその悪影響が軽減され, 土壌通気の面からは, キュウリ, カボチャ, ハクサイなどのように, 下層土が, むしろ植生に好影響を及ぼす場合のあることが明らかにされた。
7. 以上から, 蔬菜類の多くは, 肥培管理が行きとどいていたので, 下層土の悪影響を回避し, 深耕区で成績が良かつたと考えられた。
8. その外, 下層土適応性には, 作物の吸肥特性の差異, 活性Alの吸収程度なども関係することを考察した。
9. その他, 深耕によつて土壌水分が減少する場合もあり, キュウリの初期生育, サトイモなどは乾燥害をうけることを認めた。
10. 結局, 蔬菜類は多肥適応性が高く, その特性上, 肥培管理が集約されていたので, 瘠薄な下層土の悪影響を回避し, 一方, 深耕によつて改善された通気条件に敏感に反応し, 根の伸長, 養水分吸収が活発化して, その多肥条件が有効に働いて深耕効果が著しかつたものと考えられ, 深耕畑の利用上, 蔬菜類の多くは有利であることが明らかになつた。
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