温州ミカンおよびナツミカンの果皮ならびにパルプについて, 成熟に伴うペクチン含量(%)とペクチン抽出液の inherent viscosity の変化ならびにこの両者を総合したペクチンユニットを検討した。
1. ペクチン含量(%)
温州ミカンのWSP, PSPはパルプのPSP以外熟期によつて余り変化なく, HSPは果皮では成熟に伴つて漸減し, パルプでは余り変化なく, 完熟期では果皮とパルプがWSP, PSP, HSPとも同程度の含量を示す。TPは果皮, パルプとも成熟に伴つて漸減し, その減少率はパルプより果皮, T
85PよりT
100Pの方がいちじるしい。
ナツミカンのWSPは果皮では12~3月は変らず, パルプは成熟に伴つて減少し, 温州ミカン同様, 果皮の方がパルプよりも多い。PSPは果皮, パルプとも成熟に伴つて漸減し, とくにパルプではWSPと対照的な増減を示しながら減少する。
2. 全ペクチン中の各可溶性ペクチン含量の比率
WSPは温州ミカン, ナツミカンとも果皮の方がパルプよりその比率は高く, 温州ミカンよりナツミカンの方が高い。PSPは成熟期に入つた温州ミカン以外果皮とパルプとの比率は各熟期においてほぼ同率を示す。また, HSPは温州ミカン, ナツミカンとも果皮よりもパルプの方がその比率が高いが, 大部分は50%を占め,ただナツミカン果皮のみ3可溶性が同率を示す。
3. 成熟に伴う果実1個当たりの果皮およびパルプ中のペクチン量の消長
温州ミカンの果皮では, WSPがもつとも果皮重の増加率に近い増量を示す。パルプではWSP, HSPがほぼパルプ重とともに変化するが, PSPは消費分解される一方である。とくにパルプのH
100SPがH
85SPよりもパルプ重の増加率に近いことからパルプにおけるプロトペクチンは85°Cの塩酸では分解されがたいものが果皮よりも多く合成されるものと考えられる。
ナツミカンの果皮では, 成熟に伴つてWSP, PSPとも果皮重の増加率よりも高く, 完熟期以前では果実の肥大率以上に多く合成されることが認められる。HSPは成熟に伴つて消費分解される。パルプではWSPはむしろ分解消費される点が特長で, PSP, HSPは減量を示し, とくにHSPではWSPと逆相関の傾向を示すのが特長である。
4. Inherent viscosity
温州ミカンの果皮では, WSP, PSPは成熟に伴う変化は少なく, HSPは増減する。パルプは果皮にくらべて粘度高く, WSPは成熟に伴つて漸増し, PSPは余り変化なく, H
85SPは増減する。
ナツミカンの果皮ではWSP, PSP, HSPとも増減するが, 全般的に温州ミカンよりやや低い。パルプでは果皮にくらべて粘度の高いこと, WSP以外は熟度によつて余り差のないことは温州ミカンの場合と同様である。WSPは採収時期でかなり差があり, 2月上旬で最高を, 12月中旬で最低を示す。
5. ペクチンユニット
ペクチンユニットの値の多いものほどペクチン源としてはすぐれたものと考えられるが, その点10月以前の温州ミカンの果皮がもつともよく, パルプがこれにつぎ, 10月以後の温州ミカンおよび各熟期ナシミカンとも劣る。また外国産カンキツに比して, 温州ミカン, ナツミカンともペクチン製造源としてそれほど劣つているとも思われない。
しかし, 以上の結果は1961年度の愛媛県産のものについてのデータによるものであつて, これをもつて全般的な温州ミカン, ナツミカンのペクチンの性状として結論づけるには, さらには産地別, 年度別に多くの実験をつかみかさねる必要があろう。
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