園芸学会雑誌
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32 巻, 2 号
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  • 小林 章, 榑谷 勝, 大東 宏
    1963 年 32 巻 2 号 p. 77-84
    発行日: 1963年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. 鉢植えのブドウ(品種デラウェア)について, 土壌湿度の高低と樹体の生長ならびに養分吸収との関係を調査した。その結果, 最大容水量の83~35%の範囲内では, 土壌湿度の低い区ほど, 葉の同化量, 新梢の伸長, 樹体全重, 開花速度, 結実歩合, および果粒の肥大は劣つた。
    2. 梅雨明け後に気温が高くなると, 新梢の基部葉が変色し早期に落葉した。被害の最も少ないのは, 土壌湿度の最低区であつた。しかし, この区を除けば, 一般に土壌湿度の低い区ほど落葉が多く, とくに生長前期に高湿度で7月上旬以後に最低湿度に変えた区(高-最低区)では被害がひどかつた。
    3. 5要素 (N, P, K, Ca, Mg) についての葉分析成績では, 土壌湿度の低下により最も影響を受けたのはMg の吸収であり, 土壌湿度の低い区ほど葉内のMg含量は少なかつた。殊に, 着果樹における土壌湿度の最低区および高-最低区では, いずれもMgの飢餓状態を呈した。しかるに, 落葉が土壌湿度の最低区で最も少なく, 高-最低区で最も多かつたのは, 落葉が単に土壌湿度の低下によるMg欠乏によるだけでなく, 体内水分の急変により, 一層助長されたものと思われる。
    4. 果粒肥大の日変化をみると, 果粒は昼間に収縮し夜間に膨大し, その較差は土壌湿度の低い区ほど大であつた。
  • リン酸および石灰の移動および分布について
    広保 正, 寺見 広雄
    1963 年 32 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 1963年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    ブドウの生育の各過程に吸収したリン酸および石灰の分布, 吸収されたリン酸および石灰の生育にともなう移行について, 32Pおよび45Ca を用い水耕栽培したブドウで研究した。
    1. 32P, 45Ca ともに供給時期がおそくなると, 種子への分布が著しく低くなつて根, 茎および葉の割合が多くなつた。
    2. リン酸は供給期間後に展開伸長した葉, 果実によく移行したが, 石灰は供給期間中に展開伸長した葉に集積し, 果実, 新葉への移行がきわめて少なかつた。
    3. ラジオ•オートグラフの結果ではリン酸は新葉に濃度が高く, すべての葉の葉脈に多く集積し, 石灰は供給期間中に展開伸長した葉の葉肉部に集積していた。
  • 岩野 貞雄, 矢富 良宗, 沢登 晴雄
    1963 年 32 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 1963年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    In order to find out profitable varieties for Japanese condition, the authors have introduced several Europian grape varieties from abroad since 1956: from Germany, Switzerland, Spain, France, Italy, Rumania, and the United States of America.
    The cultural experiments were carried out outdoors, and vines were grafted on Teleki 5BB.
    The experimental field conditions were: 1600mm rainfall in a year, 13°C in mean temperature, loamy soil of volcanic ash, and pH 5.6-4.0. The field is located in the suburbs of Tokyo.
    Among many introduced varieties five early maturing varieties are recommended by the authors as wine or table grapes:
    1) Malvasia nera di Piemonte (for wine and table grapes)
    2) Regina (for table grapes)
    3) Perla di Csava (for table grapes)
    4) Primus (for table grapes)
    5) Termidro (for table grapes)
    Under the experimental conditions, care must be taken in managements for cultivation such as cane pruning, and much amounts of calcium, phosphorous, potassium, and less of nitrogen should be applied.
    Chemical analyses of berries were made on the sugar total acid, amino nitrogen, and total nitrogen contents.
    Sugar contents were: 18.2% in Perla di Csava, 17.7% in Primus, 17.1% in Regina, 16.4% in Malvasia nera di Piemonte, and 15.2% in Termidro, whereas the control variety“Delaware”has shown 19.7% under the same cultural conditions.“Malvasia nera di Piemonte”variety seemed to be promising for mechanical cultivation in Japan.
  • 吉田 義雄, 土屋 七郎, 定盛 昌助
    1963 年 32 巻 2 号 p. 96-102
    発行日: 1963年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1959~61年の3か年にわたつて, リンゴ20品種および31 F1実生を交配親として, 167組み合わせの交配を行なつたところ, 結実不良の組み合わせが認められた。また交配組み合わせにより3枚子葉を有する実生の発現が異なるのがみられた。
    1. Golden Delicious とYellow Newtown のF1であるG. Y-53, G. Y-44 の戻し交配では偏父性不親和を示し, さらに相互不結実であつた。
    2. M. W-107×M. W-30, J. W-50×J. W-32, J. G-84×J. G-51, R. D-329×R. D-125の如く両親の同じF1実生同志の交配において不結実を示す組み合わせがあつた。
    3. Red Gold (G. D)×J. G-51, 恵 (R. J)×J. G-51の如く, 片親の同じF1実生同志の交配においても, 不結実を示す組み合わせが認められた。
    4. 両親の異なるF1実生あるいは品種の交配では, いずれも結実が良好で交配不親和性は認められなかつたが, R. J-259×Red Gold (G. D) は2年連続結実不良であつた。
    5. Early Red Bird は♀の場合いずれの組み合わせでも結実が悪く, 〓の場合はいずれも結実が良好であり, 交配不親和とはおもむきが異なつた。
    6. 実生幼植物時代に3枚の子葉をもつ個体の発生割合は, 組み合わせによつて異なり, とくに王鈴が♀の場合に高かつた。
  • 成熟に伴う果皮ならびにパルプのペクチンの性状変化について
    三浦 洋, 萩沼 之孝, 水田 昂
    1963 年 32 巻 2 号 p. 103-113
    発行日: 1963年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    温州ミカンおよびナツミカンの果皮ならびにパルプについて, 成熟に伴うペクチン含量(%)とペクチン抽出液の inherent viscosity の変化ならびにこの両者を総合したペクチンユニットを検討した。
    1. ペクチン含量(%)
    温州ミカンのWSP, PSPはパルプのPSP以外熟期によつて余り変化なく, HSPは果皮では成熟に伴つて漸減し, パルプでは余り変化なく, 完熟期では果皮とパルプがWSP, PSP, HSPとも同程度の含量を示す。TPは果皮, パルプとも成熟に伴つて漸減し, その減少率はパルプより果皮, T85PよりT100Pの方がいちじるしい。
    ナツミカンのWSPは果皮では12~3月は変らず, パルプは成熟に伴つて減少し, 温州ミカン同様, 果皮の方がパルプよりも多い。PSPは果皮, パルプとも成熟に伴つて漸減し, とくにパルプではWSPと対照的な増減を示しながら減少する。
    2. 全ペクチン中の各可溶性ペクチン含量の比率
    WSPは温州ミカン, ナツミカンとも果皮の方がパルプよりその比率は高く, 温州ミカンよりナツミカンの方が高い。PSPは成熟期に入つた温州ミカン以外果皮とパルプとの比率は各熟期においてほぼ同率を示す。また, HSPは温州ミカン, ナツミカンとも果皮よりもパルプの方がその比率が高いが, 大部分は50%を占め,ただナツミカン果皮のみ3可溶性が同率を示す。
    3. 成熟に伴う果実1個当たりの果皮およびパルプ中のペクチン量の消長
    温州ミカンの果皮では, WSPがもつとも果皮重の増加率に近い増量を示す。パルプではWSP, HSPがほぼパルプ重とともに変化するが, PSPは消費分解される一方である。とくにパルプのH100SPがH85SPよりもパルプ重の増加率に近いことからパルプにおけるプロトペクチンは85°Cの塩酸では分解されがたいものが果皮よりも多く合成されるものと考えられる。
    ナツミカンの果皮では, 成熟に伴つてWSP, PSPとも果皮重の増加率よりも高く, 完熟期以前では果実の肥大率以上に多く合成されることが認められる。HSPは成熟に伴つて消費分解される。パルプではWSPはむしろ分解消費される点が特長で, PSP, HSPは減量を示し, とくにHSPではWSPと逆相関の傾向を示すのが特長である。
    4. Inherent viscosity
    温州ミカンの果皮では, WSP, PSPは成熟に伴う変化は少なく, HSPは増減する。パルプは果皮にくらべて粘度高く, WSPは成熟に伴つて漸増し, PSPは余り変化なく, H85SPは増減する。
    ナツミカンの果皮ではWSP, PSP, HSPとも増減するが, 全般的に温州ミカンよりやや低い。パルプでは果皮にくらべて粘度の高いこと, WSP以外は熟度によつて余り差のないことは温州ミカンの場合と同様である。WSPは採収時期でかなり差があり, 2月上旬で最高を, 12月中旬で最低を示す。
    5. ペクチンユニット
    ペクチンユニットの値の多いものほどペクチン源としてはすぐれたものと考えられるが, その点10月以前の温州ミカンの果皮がもつともよく, パルプがこれにつぎ, 10月以後の温州ミカンおよび各熟期ナシミカンとも劣る。また外国産カンキツに比して, 温州ミカン, ナツミカンともペクチン製造源としてそれほど劣つているとも思われない。
    しかし, 以上の結果は1961年度の愛媛県産のものについてのデータによるものであつて, これをもつて全般的な温州ミカン, ナツミカンのペクチンの性状として結論づけるには, さらには産地別, 年度別に多くの実験をつかみかさねる必要があろう。
  • ダイコンのすいり程度と有機成分との関係
    高野 泰吉
    1963 年 32 巻 2 号 p. 114-120
    発行日: 1963年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    ハツカダイコンのすいり程度と有機成分含量との関係をしらべた。
    根における可溶性物質の濃度はすいりが進行するにつれて減少するが, 含水量の影響をうけやすく, すいり程度の測度として用いることはできない。
    組織粉末比重はすの入つていない根や耐す性品種の根で大きく, 充実の程度とすいりの程度との関係が明らかにみとめられる。
    脂肪, でんぷん, 蛋白はすいり根で少なく, 細胞膜はすいり根で多かつた。細胞膜の構成分であるペクチン質はすいり程度の進んだ根で著しく少なくなるが, ヘミセルローズは著しい変化を認めなかつた。
    結論として, 柔細胞の離生間隙発生によるすいりは細胞膜中葉のペクチン質の消失によつておこる。その結果細胞が孤立して通道組織から柔組織への同化物供給が困難となり, 細胞含有物の不足となるものと考えられる。
  • 窒素施肥量と着果
    松崎 昭夫, 早瀬 広司
    1963 年 32 巻 2 号 p. 121-130
    発行日: 1963年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    キュウリ「加賀節成」の雌系統を用い. 窒素供給量を変えることによつて着生した雌花がどの程度まで結果肥大し得るかを検討した。
    窒素は1/2000アール当たり要素量で0.5, 1.0, 2.0, および4.0gを全量基肥とした。高窒素区で初期生育の遅れがみられたので第2実験では分施した。使用土壌は圃場心土の無肥料土で開花時には窒素欠乏を呈する程度の窒素を含有していた。子葉展開時にポットに1株植えとし1区に6株 (第2実験では5株) を供試, 自然日長ガラス室で栽培した。側枝は発生と同時に摘除し, 雌花下のは開花時に人工授粉を行ない, 10日後に収穫した。
    低窒素区は初期生育は良好であつたが後期には窒素欠乏症を呈した。他方高窒素区は初期生長は遅い (草丈低く葉面積も小さい) が時間の経過と共に生育が旺盛になつた。分施をした場合, 初期生長の遅れは認められなかつた。
    雌花着生数と開花数は窒素量に関係なく一定であつたが, 開花時の子房の大きさと着果率は高節位では窒素量の増加と共に大きくなつた。
    収穫された果実の大きさは, 低節位では低窒素区が大きいが, 高節位では逆に高窒素区ほど大きかつた。分施をした場合は高窒素区, 低節位の果実も低窒素のそれとほぼ同じ大きさに達した。
    収穫果数は高節位では高窒素区ほど多く, 総収量も窒素量の増加と共に大きくなつた。
    収穫打ち切り時の茎葉重と総収量の間にはかなりの相関 (第1実験0.5964**, 第2実験0.4652*) が認められた。
    20節附近に開花できない, また開花しても大きくなれない雌花が存在することについては, 下位節で既に肥大中の果実の存在することと植物体からの栄養供給量との関連において論議された。
  • 育苗期の窒素•燐酸•加里の施用量が生育ならびに花芽形成に及ぼす影響
    斎藤 隆, 畑山 富男, 伊東 秀夫
    1963 年 32 巻 2 号 p. 131-142
    発行日: 1963年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    本報告は砂耕栽培によつて育苗期の窒素•燐酸•加里の施用量がトマトの生育ならびに花芽の形成にどのように作用するかを実験したものである。
    1. 窒素施用量の影響: 窒素の濃度を5, 20および120ppmとした。窒素濃度の高いほど苗の発育は旺盛で, 花芽の分化が早く, 花芽着生節位は低く着花数が多い。
    2. 窒素施用量と光の強さの組み合わせの影響: 窒素濃度は20, 80および160ppmの3区とし, 光の強さは100%と50%日照区の2区とした。遮光下ではいずれの窒素濃度区においても軟弱な徒長した生育を示し, 花芽の分化が遅れ, 着花節位が上昇し, 着花数が少ない。日照下では窒素の濃度の高いほど苗の発育が速やかで強剛な生育を示し, 花芽の分化が早く, 着花数が多い。光が充分照射する下では窒素のための徒長ということは起こらず, 光が不足の下で起こる。
    3. 燐酸施用量の影響 燐酸の濃度を0.1, 0.5, 2, 10, 60および180ppmの6段階にして育苗した。燐酸濃度の高いほど苗の発育が速やかで, 花芽の分化が早く, 着花節位は低く, 着花数が多く, 花芽の発育が早い。0.1, 0.5ppm区では生育ならびに花芽の分化は著しく遅れ着花節位が著しく上昇している。
    4. 加里施用量の影響 加里の濃度を0.5, 10, 60および180ppmの4区とした。0.5ppm区では苗の発育が悪く, 花芽分化が遅れ, 着花数も僅かながら少ない。加里濃度が高過ぎても極く僅かであるが着花数は減少している。
    5. 花芽形成と体内成分との関連 窒素•燐酸•加里の濃度を変えた条件下で育苗した場合の花芽の形成と苗の体内成分 (窒素•炭水化物含量) との関係をみると, 花芽の分化が早く起こり, 分化数が多かつた処理区, すなわち日照下の窒素濃度の高い区および燐酸濃度の高い区においていずれも窒素特に蛋白態窒素と炭水化物特に全糖とが共に多くなつている。すなわち, 苗の発育が充実して生体重/草丈の値が大で強剛な発育を示すような場合は, 全糖と蛋白態窒素とが共に多く, そのような場合に花芽の分化が早く起こり, 分化数が多く, 発育も充分に行なわれることが認められた。
  • 森田 敏雄
    1963 年 32 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 1963年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    砂土から埴壌土までの粘土含量の異なる4種の土壌を調整し, 窒素の全量を適期に1回に追肥した場合と, 半量を元肥, 半量を適期に追肥するといつた分施法を採つた場合とで, 地上部の生育相の上にどのような差異が見られ, ひいては塊根の着生ならびに肥大発育の上にどのように影響するかについて, 多肥分施の場合をも含めて調査を行なつた。
    1. いずれの土壌でも窒素肥料の全量を1回に施用すると, 塊根の着生に密接な関係をもつ7月中旬から8月中旬にかけて, 地上部生育が急激に行なわれるため, 塊根の着生を不利にすることになるが, 分施法を適用することによつて, この期間におけるつるの伸長が緩和され, 塊根の着生に役立つことになる。
    2. 窒素の全量を適期に1回に施用すると, 肥大期に入るころからすでに地上部生育が衰え始めるに至るが, 分施法を適用すると, 肥大期に入つても地上部生育が徐々に続けられるため, いもの肥大発育の上でも有利な態勢に置かれることになる。
    3. 分施法を適用すると, その全量を1回に施用した場合に比し, いもの着生ならびに肥大発育の上でも恵まれるため, それだけ増収が得られることになる。しかし分施によつていもの多くなる代わりにいもの小形化を招くことになり, かえつて大いもの収量を減ずることになる。
    4. 砂質地では窒素を多用する場合, 加里の施用量を考慮しなくても, 分施方式を適用すると安定して増収がもたらされるようであるが, 粘質地では仮に分施法を採る場合でも, 窒素だけを増量したのでは減収を招く傾向が見られる。
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