園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
33 巻, 4 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 小林 章, 岩崎 一男, 寺沼 公士
    1964 年 33 巻 4 号 p. 265-272
    発行日: 1964年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    ワグナーポットに植えた4年生のデラウエア•ブドウ樹について, 土壌O2濃度の低下が花粉の発芽と果粒の止まり, 生長, 品質に及ぼす影響を, 5大肥料要素の吸収との関係においてみた。
    1. 開花前20日(5月1日)から収穫期(8月3日)までの処理においては, 土壌O2濃度の低下とともに, 葉中のN, P, K, CaおよびMgの含量(乾物%)が減少し, 花粉の発芽および結実はいずれもいちじるしく不良となつた。とくに, 土壌O2濃度が5%以下になると,全く実止まらなかつた。その場合に花粉の発芽には, 葉中のPおよびK含量がもつとも密接に関係した。
    2. 開花結実後の15日目(6月5日)から収穫期(8月3日) までの処理においては, 土壌O2濃度の低下とともに, 収穫時の葉や果実の中のP, KおよびMgの含量 (乾物%) が減少し, 果実の肥大, 収量ならびに品質ははなはだしく劣つた。
    3. O2濃度を種々の程度に調節したワールブルグ検圧計のマノメーター容器中に入れたブドウの実生根は, O2濃度の低下に伴なつて, その呼吸がいちじるしく低下した。とくに, O2濃度が5%以下の場合には, 吸入O2<呼出CO2となつた。
  • 3要素の施用濃度が樹体の生育ならびに果実の収量と品質に及ぼす影響
    平井 重三, 中川 昌一, 南条 嘉泰, 平田 尚美
    1964 年 33 巻 4 号 p. 273-279
    発行日: 1964年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. イチジク (マスイ•ドーフィン) を用いて, 1956~1957年に砂耕栽培を行ない, 未結果樹および結果樹に対する3要素施用濃度ならびに施用比が, 樹体の生育, 果実の収量と品質におよぼす影響を調査した。
    2. 樹体の生育は, 未結果樹ではN-80ppm, P2O5-40ppm, K2O-40ppmが最も良く, 結果樹では樹体の生育ならびに果実収量ともにN-80ppm, P2O5-80ppm, K2O-160ppmがよかつた。
    3. 新梢の伸長と着果習性に関連して, イチジク果実の生育に窒素はかなり重要な要素であると考えられた。
    4. 果実の品質にはリン酸施用の効果が大きく, 着色をよくし, また早期成熟果の割合を増加する傾向がみられた。
    5. 結果樹の生育に対しては, リン酸および加里の好適施用濃度は高く, 未結果樹に比較してリン酸は2倍, 加里は4倍のときに最も良好な生育がみられた。
  • ポット試験による温州ミカン幼木の生育
    坂本 辰馬, 奥地 進, 薬師寺 清司
    1964 年 33 巻 4 号 p. 280-286
    発行日: 1964年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    土壌の母材と温州ミカンの生育との関係を明らかにするために, 6種の土壌を供試して宮川早生温州ミカンを4年間ポット栽培し, その生育調査ならびに土壌要因の解析を行なつた。供試土壌は伊台土壌(花崗閃緑岩), 砥部土壌(結晶片岩-石墨質), 関前土壌(秩父古生層硬砂岩, 石灰岩々砕を多量に含む), 吉田土壌(中生層白堊紀砂岩), 小野土壌(洪積層), 小野火山灰土壌(腐植質の黒音地)で, いずれも未耕地の土壌を用いた。
    1. 試験2年目から3年間の新梢の生長量, 3, 4年目の果実収量, ならびに試験終了時の幹周肥大量などからみると, 供試土壌の中では関前土壌がもつともすぐれた。他の土壌では, 2年目の新梢生長にはほとんど差がなかつたが, 3年目になると, 吉田, 小野および小野火山灰の各土壌で生長が旺盛になり, 収量が低下した。反対に, 伊台および砥部土壌では, 生長が劣り収量が多くなつた。4年目になると, 吉田および小野土壌の生長は伊台および砥部土壌よりまさり, 収量も多かつた。小野火山灰土壌では, これらの土壌の中間的な生育の様相を示した。幹周肥大量は, 吉田, 小野および小野火山灰の各土壌が砥部および伊台土壌より大きかつた。
    2. 土壌要因については, 置換性塩基に富んだ関前土壌での生育がもつとも旺盛であつたが, これは, これらの化学的性質とともに, 窒素の肥効が高かつたためと考えられる。他の土壌では, 供試樹の生育と土壌の化学的性質(有機態炭素, 全窒素, 塩基置換容量, 置換性塩基, 土壌リン酸などの乾土100g当たりの分析値ならびにpHなど)との間に直接の関係は認められなかつた。酸性の強い吉田土壌および小野土壌, さらに石灰および塩基の飽和度の低い小野火山灰土壌で生育が劣らなかつたのは, 本試験のポットの条件では, 土壌の化学的要因よりも窒素の肥効の影響が強かつたためと推察された。細~小礫の多い伊台土壌ならびに巨礫に富んだ砥部土壌で, 試験4年目に供試樹の生育がやや劣つたのは, 窒素の溶脱流失が激しいためと考えられた。
    3. 以上の結果から, 温州ミカンの生育に対する土壌の母材の影響としては, 物理的な要因り強い場合と化学的な要因の強い場合のあることが明らかになつた。
  • 平野 暁
    1964 年 33 巻 4 号 p. 287-290
    発行日: 1964年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. 湿重で45.0, 15.0および4.3kgの土壌を詰めたポットに, 9種の果樹の1年生苗をおのおの植え, 2年間生育を比較した。その結果, ほとんどゐ果樹において, 1樹当たりの土壌量が少ないほど生育が劣つたが, この傾向は, モモ, イチジク, およびブドウでとくに著しく, クルミ, ナシ, リンゴおよびビワでは中程度で, カンキツおよびカキでは軽かつた。
    2. 単位土壌量あたりの根量をみると, 各種類とも1樹当たりの土壌量の少ない区ほど根量が多く, 土壌中の根の分布密度と樹体の生長量との間には逆の関係がみられた。しかし, この関係は, 種類の異なつた果樹の個体の間では認められなかつた。1樹当たりの土壌量がいちじるしく減少しても樹体生長量にあまり影響をうけなかつたのは, カンキッとカキである。これらは比較的生長の緩慢な種類であり, かつ前報で述べた根分泌物の生長抑制作用のあまりいちじるしくない種類である。
  • 脇坂 聿雄
    1964 年 33 巻 4 号 p. 291-294
    発行日: 1964年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    本実験は, 超低温によるカキ花粉貯蔵の可能性について試みた。
    1. -196°Cおよび-80°Cに, アンプルに密封した花粉を貯蔵したが, 1年後でもそれぞれ41.8%および42.7%の発芽率を示し, 花粉管の伸長も正常であつた。
    2. 超低温から取り出した花粉は, 外気温の高い夏季においては, 発芽率が急激に低下したが, 気温の低い冬季(10°C以下)においては, 1~2週間発芽率の低下をみなかつた。
    3. 1年間超低温貯蔵した花粉を, 富有および次郎に人工受粉した結果, 新鮮花粉と変らない結実率を示し, 果実の発育, 種子数にも差が認められなかつた。
  • 岸本 修
    1964 年 33 巻 4 号 p. 295-301
    発行日: 1964年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. 本調査は1960~1963年に, カキの3品種次郎, 紋平および平核無について, 1樹当たりの果実1個平均重の年変異の主な原因を調べるために行なつたものである。果実の摘果は1963年の一部の樹を除いて, 毎年7月上旬に1結果枝当て1個の割合でなされた。
    2. 新梢の長さと葉面積の間, および葉数と葉面積の間の相関をそれぞれ求めたのに, 前者においては, 後者におけるよりも高い係数を示した。したがつて1樹当たりの結果量の多少をあらわす指標として, 結果枝および不結果枝を含めて全枝長で総果実数を除した値, すなわち新梢1m当たりの着果数を用いた。
    3. 1樹当たりの結果量(枝1m当たりの収穫果数)と果実1個の平均重との間には常に有意の負の相関がみとめられた。しかしながら, 結果枝の長さや含種子数と個々の果実重量との間には, 有意の正の相関が常にあるとは限らず, ときに存在する程度であつた。
    したがつて, 1樹当たりの結果量は, 結果枝の長さや含種子数よりも, 果実1個の平均重に対し, 常に有力に作用した。
    4. 果実1個の平均重は, 同一樹においても年により, また同じ年であつても樹が異なれば, 150~250gの間で変異した。果重の分散を示す変異係数は結果量の多少にかかわらず7~15%であつた。1樹当たりの収量は, 常に結果量(結果数)との間で有意の正の相関を示した。
  • 熊代 克巳
    1964 年 33 巻 4 号 p. 302-310
    発行日: 1964年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    二十世紀ナシの枝を直立に誘引して旺盛に伸長させ,切返し剪定をしないと, 1~2年後に原因不明の異常葉が発生する。
    1. 異常葉の代表的な症状は葉身が細く肉厚で, 葉質がかたく, 不鮮明なモザイクが認められる。異常葉が発生し始める時期は, 毎年5月下旬ごろ(長野)で, 新梢基部から数えて8~10節目からである。異常の発生した部分に成つた果実は, 果形が小さく腰高で, 部分的に果点をいていたり, さび状の条斑を有するものがあるが, 食味は正常果と比べてほとんど差がない。
    2. 枝の伸長量が大であるほど翌年の異常枝の発生率が高い傾向にある。枝の伸長停止期の早晩と翌年の異常枝の発生率との関係は, 伸長量の場合ほど密接でない。異常葉の発生した枝は生長が不良で, 以後それから生長する枝には継続して異常葉が発生するようになる。
    3. 初めて異常が認められた年における異常枝の発生部位は, 前年生枝の先端部に限られている。したがつて, 枝の先端部を前もつて切返し剪定しておくと, 異常枝の発生率が著しく低い。しかし, すでに異常を呈している枝について切返し剪定をしても, 翌年の異常葉の発生を防止する効果はない。
    4. 二十世紀以外の品種には, 同様な取り扱いを行なつても, 今までのところ異常葉はまつたく発生していない。
  • 枝梢内炭水化物ならびに窒素の組成と果肉細胞の分裂増殖との関係
    細井 寅三, 石田 雅士, 寺沼 公士
    1964 年 33 巻 4 号 p. 311-315
    発行日: 1964年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. 二十世紀ナシを約1か年間砂耕し, 施す窒素, りん酸および加里濃度を変えることによつて, 冬季の枝梢内炭水化物(還元糖, 非還元糖, 全糖, でん粉全炭水化物)ならびに窒素(可溶性窒素, 不溶性窒素, 全窒素)の組成を人為的に変化させ, それらの組成と春季の果肉細胞の分裂増殖との関係を明らかにしようとした。
    2. 冬季(2月8日)における枝梢内炭水化物組成については, でん粉が圧倒的に高い含量割合を示したが, その含量と各要素濃度との関係は, 窒素では80ppmにおいてもつとも含量が高く, ついで0ppm, 160ppmの順であつた。しかし, りん酸および加里濃度の間では, 0~160ppmの範囲において濃度の高いものほど含量が, 高い傾向がみられた。窒素組成については, 各成分とも窒素の施用濃度の上昇に伴なつて明らかに増加したが, りん酸および加里濃度の間では, 総じて濃度の高いものほど減少する傾向がみられた。
    3. 冬季の枝梢内炭水化物ならびに窒素の組成と果肉細胞数(4月20日, 満開後10日)との間の相関関係を調べた結果, 果肉細胞数はでん粉および全炭水化物含量ときわめて高い正の相関関係(r=+0.958, +0.947, いずれも1%水準で有意)にあり, また還元糖および全糖含量とかなり高い正の相関関係(r=+0.602, +0.700, いずれも5%水準で有意)にあることが明らかとなつた。なお有意相関は得られなかつたが, 果肉細胞数は総じて窒素成分とは負の関係にあることがうかがわれた。
    4. 細胞分裂停止期ごろ(5月8日, 満開後28日)における新梢内炭水化物ならびに窒素の各組成と果肉細胞数との関係を調査した結果, いずれの成分についても有意相関は得られなかつたが, 傾向としては果肉細胞数は炭水化物成分とは負, 窒素成分とは正の関係にあることがうかがわれた。
  • 花蕾の分化発育に関する生態学的研究
    加藤 徹
    1964 年 33 巻 4 号 p. 316-326
    発行日: 1964年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    ハナヤサイの花蕾の分化発達に関する基礎的研究が少ないので, 花蕾の分化発達に及ぼす環境要因について1959年から圃場および phytotron を使用して実験を行ない, 次の結果が得られた。
    1. 夏まきおよび春まき試験の結果から最高の収量をあげるためには, は種期から花蕾形成までの日数はサカタ極早生で35日, Early Snowball Aで95日, 野崎早生, Italian broccoli で100日, 増田中生で110日, 増田晩生で130日ぐらい, 花蕾の分化から収穫までEarly Snowball Aで55日, 野崎早生, Italian broccoli で25日ぐらいかかることが理想的で, これがために前者には平均気温で20°C以上で夜間あまり温度が下がらない環境がよく, 後者には15~18°Cの温度が続くことが望ましい。
    春まきをすれば, 花蕾の分化までの日数, 花蕾の発達期間はいずれも前述の理想型より短縮されるのに対し,夏まきは花蕾分化までの日数は短縮されるが, 花蕾の発達には長時間を要する。
    2. 花蕾の分化には温度, 苗の大きさ, 品種が関係し, phytotron を使用して得た結果は苗の小さいときは花蕾分化に長期間の低温を必要とするが, 苗が大きくなるにつれて花蕾形成に必要な低温期間は短縮される。
    Early Snowball Aは低温に敏感に感応する。次いで野崎早生, Italian broccoli, 増田中生, 増田晩生の順に低温感応しにくく, 花蕾形成に多くの日数を要している。
    最高限界温度は Early Snowball Aで25°C, 野崎早生も同じく25°Cで, いずれも Blind の様相を示す。Italian broccoli では20°C付近にあるものと考えられる。一方最低限界温度は5°C付近にあるものと考えられ, 0°Cになると凍害にかかつて枯死する。また最適温度は Early Snowball Aで13°C付近にあり, 中晩生種になるにつれて低下する。
    3. サカタ極早生, 野崎早生, Italian broccoli の種子の低温処理は補足的に Green plant vernalization を助けている。
    4. 以上の結果からハナヤサイの花蕾分化には低温が必要で, どの発育ステージから与えられても低温感応して花蕾形成の方向へ進むものと考えられる。早期より低温にあつた場合小花蕾を形成して Buttoning となるが, 低温の度合が不足の場合 Blind となる。さらに花蕾分化後に低温が引きつづき与えられないと, Leafy headとなり商品価値がなくなるものと思われる。
  • 生育, 種子の品質, 収量に及ぼす土壌の影響
    小川 勉, 二井 内清之
    1964 年 33 巻 4 号 p. 327-334
    発行日: 1964年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    (1) 茎葉の発育は, 埴壌土と干拓埴土がすぐれ, 砂土と玄武岩埴土はやや劣つていた。シラス砂壌土や火山灰土は悪く, ことに冬季間の葉枯れがはなはだしかつた。
    (2) 収穫期の花茎の変色は, シラス砂壌土, 砂土, 火山灰土などの軽い土壌が早く, 粘質土はおそくまで変色せず, 濃緑色のまま収穫された花茎が多かつた。
    (3) 花茎の病害中, ボトリチス病は火山灰土, シラス, 砂土, 干拓埴土に多く, 黒斑病は火山灰土, シラス砂壌土, 砂土に多発した。
    (4) 3月の葉長と開花数の間に高い相関があり, 花茎の高さと開花数との問には, シラス, 砂土, 埴壌土では非常に高い相関があり, 干拓埴土には全く相関はみられなかつた。
    (5) 採種量は壌土が最も多収し, 玄武岩, 干拓埴土砂土はやや劣り, シラス, 火山灰土は非常に減収した。
    (6) 種子の品質は肥効が永続した粘質土がすぐれ, 花茎の変色の早かつた軽しよう土や, 病害に侵された株の種子は, 充実が不じゆうぶんで発芽率が劣つていた。
  • 石灰窒素加用の床土たい積中の成分の変化, ならびに同熟成床土におけるトマト苗の生育
    高橋 和彦
    1964 年 33 巻 4 号 p. 335-344
    発行日: 1964年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    床土をたい積する場合の有機物材料としてイネワラおよび腐葉土を用い, これに石灰窒素の施用量をかえてたい積を行ない, 床土のたい積中の成分の変化, ならびにこの床土でのトマト苗の生育を調べた。
    1. たい積中に床土の容積が減少した。土の温度はたい積により上昇し, 約1週後に最高となり, その後はしだいに下降した。初期はイネワラ区の方が腐葉土区より温度が灼高かつた。
    2. たい積により熱損量には変化がなかつた。全-Nはやや減少した。
    3. NH4-Nは第1回切返し時には多く, 第2回切返し時には急減し, それから冬期の間にはほとんど変化がなかつた。NO3-Nはこれと逆に第1回切返し時には少ないが, その後NH4-Nの減少にともなつて増加した。しかしイネワラ区では一般に硝酸化成が抑制されたのか, NO3-Nは増加しなかつた。
    4. pHは一般にNH4-Nの消長に似ていて, NH4-Nが減少すると低くなる傾向にあつた。
    5. 置換性K2O含量は第1回切返し時には含量多く, 第2回切返し時には急減し, その後はそれほど減少しなかつた。ク溶性P2O5含量はN, K2Oに比べると変動が少なかつた。
    6. 熟成した床土を用いてトマトを育苗し, その生育を調べた。腐葉土中N, 少N, ワラ少N, 速成床土区の生育はよかつたが, 2年たい積区はやや生育が劣つた。またワラ多N, 腐葉土多N区では発芽が抑制され, 子葉の葉色が濃緑となり, 先端が茶褐色にやけ, しだいに基部に及び, とくにワラ多N区は被害大で枯死した。ワラ中N区は発芽は普通であり生育は不良であつた。
    7. 多N区での生育不良の原因を追究するため, まず熟成した床土を27°C で inccuate しにところ, ワラ多N区ではNH4-Nが急増し, NO3-Nは4週後まで低含量で, 硝酸化成がほとんど行なわれなかつた。
    8. 硝酸化成を妨げる有害物質を検索したところ, シアナミドはなかつたが, その誘導体が存在し, ワラ中N多N, 腐葉土多N区の熟成床土中にその存在が認められた。なかでもワラ多N区中の含量はかなり高かつた。
    9. 砂耕試験を行ないトマト苗の生育の阻害症状を調べた結果, 多N区の症状は多NH4-Nによるよりもシアナミド誘導体の存在に影響されていることがわかつた。
    10. 以上の結果からワラ多N区における発芽, 生育阻害の原因は, pHが高いため, 石灰窒素の分解過程でシアナミド誘導体を生じたことによると考えられる。またワラ中N, 腐葉土多N区における生育不良も, 程度こそ低いが, 同様な機構にょつているものと思われる。
  • 岡田 正順, 安岡 順子
    1964 年 33 巻 4 号 p. 345-356
    発行日: 1964年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. 微細な好光性種子を, 覆土下においても容易に発芽させることを目的として, 開花期および種子の登熟期にジベレリン溶液の葉面散布を行なうことや, 採種直後の〓をジベレリン溶液に浸漬することによつて, 乾燥貯蔵前にジベレリンを種子に導入する方法の可否を検討した。
    2. 開花期および種子の登熟期に母本に葉面散布することによつて, サクラソソ (Pyimula malacoides) の種子は, 暗所において, 置床10日後に40%前後の発芽をみた。またジベレリン処理によつて植物体はなんら悪影響をうけなかつた。
    3. 採種直後の〓をジベレリン溶液に浸漬した後, 乾燥貯蔵しておいた種子でも, 明所においては発芽が促進され, 暗所においても相当高い発芽率を示した。
    4. 〓の浸漬処理におけるジベレリンの濃度は, 高濃度の方が好光性打破効果が高く, また処理の時間の長短による差は, 高濃度ではあまりみられなかつたが, 低濃度の場合には長時間浸漬するほど効果が著しかつた。いずれの処理においても, 未熟種子の方が完熟種子よりも効果が高かつた。
    5. 上記のようにジベレリンを処理した種子を, 実際に土壌に播種して発芽試験を行なつたところ, 覆土下では無処理区はほとんど発芽しなかつたのに反して, 高率の発芽をみた。
    6. 処理後約1年3か月間貯蔵した後に発芽試験を行なつたところ, 暗所においては無処理区は全く発芽しなかつたのに反して, ジベレリン処理をした種子は処理当年の試験の結果と全く変らない高い発芽率を示し, 好光性打破の効果が完全に持続していることがわかつた。
    7. グロキシニア (Sinningia speciosa) の種子の発芽に関しては, 開花期前後におけるジベレリンの葉面散布の効果はほとんど認められなかつた。しかし採取直後の〓をジベレリン溶液に浸漬処理した場合, 明所での種子の発芽が促進され, また15日後の暗所発芽率は30%以上に達し, 好光性打破効果が認められた。
    8. 〓に花梗を5cmつけて採取し, 切り口を25時間ジベレリン溶液に浸漬した後, 種子を調整し, 乾燥貯蔵したものでも発芽促進効果および好光性打破効果がみられた。
    9. カルセオラリア (Calceolaria herbeohybrida) に対しても採種直後の〓のジベレリン浸漬処理を行なつた。その結果採種50日後の発芽試験では全般的に発芽率がきわめて低かつた。しかし採種6か月を経て行なつた発芽試験では, 処理種子は無処理種子にくらべて明所であきらかに発芽が促進され, 暗所においても相当数発芽しており, 採取直後の〓のジベレリン浸漬処理がカルセオラリア種子の発芽促進および好光性打破に有効であつた。
    10. タバコ (Nicotiana tabacum) のブライトエロー種に対しては, ジベレリンの葉面散布処理では種子の発芽に対する効果はほとんど認められなかつた。しかし採取直後の〓の浸漬処理は, 種子の発芽促進および好光性打破にきわめて有効であつた。またこの効果は完熟種子よりも未熟種子の方に対してより高く, ジベレリンの濃度も高濃度の方がすぐれていた。
feedback
Top