園芸学会雑誌
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37 巻, 4 号
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  • 福田 照, 黒田 喜佐雄, 福島 忠昭, 山村 宏
    1968 年 37 巻 4 号 p. 297-304
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. ジベレリンが呼吸代謝に及ぼす影響を, ブドウ Muscat of Alexandria の葉を用いて調べた。
    2. 切り取つた葉をジベレリン100ppm水溶液につけた場合は, 酸素吸収量に差はなかつたが, 炭酸ガス排出量はただちに増加し, 呼吸商は1.3~1.6の値を示した。
    3. 葉にジベレリン100ppm水溶液を塗布した場合は, 処理1日後に酸素吸収量は減少し, 逆に炭酸ガス排出量は増加し, 呼吸商は1.84となつた。しかしこの異常呼吸も処理後3日めには回復した。
    4. ジベレリン100ppm水溶液処理1日後の葉の有機酸含量を調べると, 処理葉は無処理葉に比べてピルビン酸, グリオキジル酸, リンゴ酸, 酒石酸, フマル酸, 蓚酸および酢酸が多く, オキザロ酢酸, α-ケトグルタル酸, クエン酸およびイソクエン酸が少なかつた。またコハク酸は両者に差が認められなかつた。
    5. 以上の実験結果から, ジベレリンがリンゴ酸〓オキザロ酢酸間の反応を阻害するのではないかと考えられたので, まず最初に同反応を触媒する酵素であるリンゴ酸脱水素酵素の活性に及ぼすジベレリンの影響を調べた。
    その結果, 試験管の中で, ジベレリンは1ppmの濃度でこの酵素の活性をほぼ完全に阻害した。
  • モモ生育土壌および樹体中に存在する毒物質の性質
    平野 暁
    1968 年 37 巻 4 号 p. 305-311
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 1954年および1955年に, モモの葉および根を新鮮なまま, あるいは1日~1年間乾燥状態で保つたものを土壌に加えて, モモ実生の生育を比較した。1954年には加用量が少なかつたので, 生長量は無加用区に比べて, 生根区, 15日乾燥根区だけが劣つた。1955年には加用量を増したので, 無加用 (標準) 区に比べて, 加用区はいずれも生育が劣り, その傾向は生葉区, 生根区で最も著しく, ついで1日乾燥区, 1年乾燥区の順であつた。
    2. 乾燥, 加熱あるいは破砕したモモの葉を土壌中に加え, モモ実生の生育を無加用区と比較すると, 初期の生育は加熱葉区において最も劣り, ついで乾燥葉区および生葉区の順に劣つた。生育の後期においては, その傾向は逆転し, 生葉区が最も劣り, ついで乾燥葉区および加熱葉区の順に劣つた。しかし, 破砕葉を加えた場合には, 全期を通じて標準区とほぼ等しかつた。
    3. モモの生葉および破砕葉の水浸出液を用いてダイコン種子の発芽を調べると, 著しく発芽が不良であるが, 液を100°Cで10分間煮沸すると多少, 30~60分間煮沸すると相当に発芽が良くなつた。
    4. 野生モモの生葉を乳鉢ですりつぶし, 6~30分間空中に放置した後, 蒸留水で浸出, ロ過した液を用いてダイコン種子の発芽を検した。その結果, 破砕後30分間空中に放置すると, 発芽抑制力は完全に消失した。
    5. モモ葉の水浸出液はモモの生育またはダイコン種子の発芽を非常に抑制したが, この作用は活性炭処理によつて相当に減少した。酸性白土または埴土処理の効果ははつきりしなかつた。
  • 摘果, 施肥, 剪定の組合せによる隔年結果防止効果
    大垣 智昭, 藤田 克治, 伊東 秀夫
    1968 年 37 巻 4 号 p. 312-318
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 既報の基礎ならびに応用研究においてえた結果に基づき, 隔年結果を続けてきた温州ミカン盛樹に対して, 摘果, 施肥, 剪定を組み合わせて8処理をし, その矯正効果の現われ方を調査した。
    2. 成り年における十分な程度の摘果1回によつて, 最も直接的にかつ顕著に隔年結果を防止し, 連年結果型とする。しかし, 処理前年までの隔年結果の程度が激しい場合には, 合理的な分施肥 (成り年の春にチッソを, 秋にリン酸, カリを多く施す) や, 合目的な剪定 (成り年のあとに結果枝を多く, 不成り年のあとに結果母枝を多く間引き, 全体的に弱剪定とする) が伴なわないと, 摘果だけでは矯正効果が不十分である。
    3, 上記のような合理的な分施の影響は, 数年の継続処理によつて, まず栄養器官の質と量とに反応し, 2次的に着花の増加に役立ち, 隔年結果矯正効果をもたらすものと考えられる。
    4. 上記のような剪定方法で, 隔年結果樹の1年生枝の種類別着生割合の不均衝を是正する効果は, 長年続けることによつて効果をあげうるが, 3処理中その反応が最も間接的である。
  • ランダワ S.S., 岩田 正利
    1968 年 37 巻 4 号 p. 319-327
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ナツダイダイ実生苗を水耕し, 培養液の pH (4, 5.5,7), カルシウム濃度 (低-20ppm, 中-50ppm, 高-100ppm), ならびに窒素形態 (NaNO3, NH4NO3, Nとしてともに 12ppm) を変え, これらの組み合わせが生育, 無機成分に及ぼす影響を調べた。
    葉の外観は両窒素形態とも pH 5.5 では正常だが, pH4ではやや鈍緑色となり, pH 7になると黄緑色がかり, 上葉にクロロシスを生じた。クロロシスは NaNO3 区のほうが著しかつた。NaNO3 区の根は pH 5.5 では白色だが, pH 4, 7では淡褐変し, pH 4 では根長も短く, 側根の先端がふくらんだ。NH4NO3 区の根は一般に褐変し, 伸長も NaNO3 区より劣つた。pH 4では根長はとくに短く, 側根の先端がふくらみ, さらに進むと皮層がほう壊脱落した。この症状は Ca 低濃度区で著しかつた。
    地上部, 根の生育とも一般に NaNO3 区のほうが NH4NO3 区よりまさつた。両窒素形態とも pH 5.5 区で最も生育がよく, pH 7 区になるとやや劣り, pH 4 区で最も劣つた。ただし NH4NO3 区では pH 5.5 と pH 7 との差は Ca 低濃度区を除き NaNO3 区ほどはつきりしなかつた。カルシウム濃度についてはNaNO3 区では各 pHとも Ca 中濃度区が最も生育がよかつたが, NH4NO3 区では各 pH を通じての一貫した傾向はみられなかつた。
    無機成分濃度について, 葉では一般に NaNO3 区のほうが NH4NO3 区よりも K, Ca 濃度が高く, N, P, Mg濃度が低かつた。一方, 根では NaNO3 区のほうが NH4NO3 区よりも P, Ca, Mg 濃度が高く, K濃度は低く, N濃度には一貫した傾向がみられなかつた。pH を上げると葉では両窒素形態区とも N, Ca, Mg 濃度が増加し, K濃度は減少したが, P濃度には pH による差はみられなかつた。根では pH を上げると両窒素形態とも P, Ca, Mg 濃度が増加し, K濃度は減少したが, N濃度はNaNO3 区でのみやや増加した。Ca 施用濃度を上げても両窒素形態とも Ca 濃度が増加するのみで他成分にははつきりした差はみられなかつた。
  • 2, 3の光質と暗黒の組合せによる日長条件下におけるキュウリの生長と性分化
    松尾 英輔, 蓑原 善和, 高梨 成行
    1968 年 37 巻 4 号 p. 328-332
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 長日性キュウリ品種「彼岸節成」を供試し, 28±1.5°C, 0.04gcal/cm2.min. の各種光 (赤および青色カラードランプ, 植物育成用蛍光灯) および暗黒の組合せによる8, 16, 24時間日長で育成して, 展葉, 茎の伸長および性分化を調査した。
    2. 光質のいかんをとわず, 日長が長いほど展葉数が多かつた。8および16時間日長区では白色光 (植物育成用蛍光灯による光を便宜上白色光と呼ぶ) 下で最も展葉数が多く, 青色光下で最も少なかつた。単色光による連続照明区では, 展葉数は光質によつて差が認められなかつた。光の組合せによる連続照明区では, 単色光による連続照明区より展葉数が多かつた。この傾向は連続照明の一部に8または16時間青色光を与えたとき最も顕著であつた。
    3. 茎の伸長は光質のいかんにかかわらず日長が長いほど大きかつた。単色光による連続照明区では青色光が茎の伸長に最も効果的であつた。16時間日長区では茎の伸長は白色光区で最も大きく, 赤色光区で最も小さかつた。8時間日長区では茎の伸長は白色光区で最も大きく, 青色光区で最も小さかつた。各種光の組合せによる連続照明区では茎の伸長は青色光を8または16時間受けるとき最も大きかつた。
    4. 花芽の分化はどの日長および光の組合せ区においても観察された。その花芽の発育は一般に高節位でおこり, 10節以上の節位で花性の判別ができたが, 赤色光区では花芽の発育がみられず, 花性の判別はできなかつた。白色光あるいは青色光による16時間日長および連続照明区では10節以上の節位に雄花がみとめられたが, 雌花はほとんどみとめられなかつた。また, 青色光による8時間日長区ではきわめて低い節位から雄花が着生したが, 雌花は着生しなかつた。
  • 山川 邦夫
    1968 年 37 巻 4 号 p. 333-339
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ガンマー線照射によるトマトの雄性不ねん突然変異の誘起ならびに選抜について実験を行なつたが, その結果得られた方法は次の通り要約される。
    1) ms株を得たい母系統を選び, ポットで育苗し, 第1花房に着らいした時期に10kR程度のガンマー線を1日1~2kRの線量率で照射する。
    2) 照射処理を行なうと生長点は生育を停止し, すでにできているえき芽も枯死するが, 照射終了後約一か月して葉えきから再生枝が伸長を始める。
    3) 1株から2~3本のおう盛な再生枝をのばし, それぞれ1果房を着生させ, 各果房から1果ずつとつて採種する。
    4) 果別系統として翌代を育成する。1系統10~15株とする。
    5) 第1~2果房の着果時に不着果株をみつけ, 正常花粉の有無を検鏡する。正常花粉のない株には同一系統内の正常花粉をもつ株を花粉親として授粉する。着果しない株は雌性器官に異常があるので棄却する。
    6) 受粉果を成熟後採種し, 花粉親の株別系統として栽培し, ms株の分離状態を調べる。花粉親によつてmsを分離しない系統と, F1:S1の割合に分離する系統ができる。1:1の系統はその後S株にF株を交配することにより維持できる。
    7) ms株の特性調査, F1組合わせ能力の検定を行なう。
  • 岩田 正利, 小崎 格, 鳴沢 武雄
    1968 年 37 巻 4 号 p. 340-344
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ナス (群交2号) を戸外で砂耕し, 定植時の6月上旬から収穫終りの10月上旬までの期間を四つに分け, 各時期で約1か月間ずつ窒素を与えないで, 生育, 開花, 果実収量に及ぼす影響を調べた。
    いずれの時期に窒素が欠除しても, まず短花柱花の割合が多くなり, 2週間後になるとさらに開花数が減少した。一方ふたたび窒素を与えるとまず長花柱花の割合が多くなり, 2週間後に開花数が増加し, さらに2週間後に果実収量の回復がみられた。
    窒素欠除区の中で開花結実のもつとも盛んな8月上旬から9月上旬まで窒素を欠除させると果実収量はもつとも低下した。窒素欠除期間がそれより前になるほど, 果実収量の低下は軽減された。生育末期の9月上旬以後は窒素を与えなくても果実収量は対照区と差がなかつた。
  • 建部 民雄
    1968 年 37 巻 4 号 p. 345-348
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    タマネギ畑を精査して, 葉に黄色のしまのある1個体を見いだしたが, これらは雄性不稔個体であつたので, 分球による栄養繁殖をつづけていたところ, たまたま雄性可稔の黄しま個体があらわれた。これを材料に供して黄しま×緑色およびその逆交雑を行なつた結果, 黄しまは非メンデル式の母親遺伝をすることがわかつた。したがつて黄しまの遺伝は核遺伝子によるものでなく, 核外のプラストジーンによるものと考えられる。
  • 樋口 春三
    1968 年 37 巻 4 号 p. 349-356
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    自家不和合性の生理学的機構を明らかにし, あわせて自家不和合性の人為的消去法を見い出そうとして実験をおこなつた。
    材料は配偶体反応型に属する Petunia hybrida の W166K(S1S2), W 166H(S2S3), K 146BH(S6S6) 系統を用いた。
    (1) 供試した3系統はいずれも開花時における自殖稔性は全くなく, 系統間交配では 100% の稔性を示した。すなわち完全な自家不和合性が確認された。
    (2) 和合授粉 (系統間交配) における花粉管は授粉後約36時間で子房部に到達し, 不和合授粉 (自家授粉)ではいずれも花柱部において生長を停止した。生長停止した花粉管先端の位置は花柱の全長に対し, W 166K 67%, W 166H 56%, K 146BH 17%であつた。
    (3) 3系統とも蕾授粉による偽稔性が認められた。すなわち, 開花6日前に自家受精力が生じ, 5日前に最高に達し, 3日前には完全に消失した。偽稔性の程度はW 166K が最も高く, W 166H がこれに次ぎ, K 146BHが最も低かつた。
    (4) 蕾授粉による偽稔性が完全に消失した開花3日前から24時間間隔でくりかえし自家授粉をおこなつた。その結果, W 166K および W 166H の2系統は偽稔性が誘起された。その稔実率および種子形成数は授粉回数が多くなるにつれて増加した。このように不和合授粉のくりかえしによつて偽稔性を誘起する方法を反復授粉法 (repeated pollination) と名づけた。
    (5) 不和合と和合授粉の組み合わせ試験の結果めから1回めの授粉によつて一旦生長停止した花粉管が2回以後の授粉の刺激によつて生長を再開したのではなく, 2回め以後の授粉によつて花粉誘導組織へ侵入した花粉管がより長く生長し, 受精あるいは種子形成に寄与したものと推定した。
  • 坂西 義洋, 福住 久代
    1968 年 37 巻 4 号 p. 357-367
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 早生, 中生および晩生に属するストックの諸品種をそれぞれ 12°C, 17°C および 22°C の恒温で育て, 生育, 開花の状態を観察した。青苑, 光輝やホワイト•ジャイアントなどのように 12°C でのみ花芽分化したものから, スノー•ホワイト, 紅桜, 紅潮などのように 22°Cでも花芽を分化させる品種にいたるまで, 品種によつて花成誘起のための低温要求度にかなりの差が認められた。また花芽を生じうる苗令も品種によつて異なうていた。全般的にみて早生品種は低温要求度が低く, しかも若い苗令時に花芽分化を起こし, 晩生品種ほど花成のためにより強い低温と, より進んだ苗令を必要とする。各温度下で花芽分化した品種についてみると, 高温下のものほど花芽分化時の葉令は進んでいた。茎の伸長度は生育の初期には低温区で低かつたが, 中期以降は高温区ほど低下していた。ただし先勝の雪は 22°C でも順調な伸長を示した。
    2. 恒温での栽培において異なる低温要求性を示した品種を選び, これらを温度, 日長条件の異なる時期に生育させて, その生育, 開花状態を比較するために, 春, 夏, 秋, 冬の4期に分けては種し, 栽培した。春まき株は幼苗期に 15°C 以下であつたが, 次第に高温に向かう季節に生育したため, 各品種とも急速な伸長を示した。しかし低温要求性の低いスノー•ホワイト, 先勝の雪などは夏までに全株が開花したが, 要求性の強い品種では一部または全部が花芽未分化に終つた。幼苗期に低温をうけなかつた夏まき株では先勝の雪のみがロゼットになることなく開花し, 他の品種は栄養生長のまま秋を迎え, 秋まきの幼苗と同時に低温をうけた。この両者の発蕾期を比較すると, 夏まき株のほうが早く発蕾した品種, 秋まき株のほうが早かつた品種, および両者にほとんど差がみられない品種とに分かれ, 苗令と低温感応性との関係は品種によつて異なることがわかつた。
    3. 春まき, 夏まきおよび秋まきの株にそれぞれ GAを定植から発蕾まで散布した結果, 草丈の伸長においては春まき株では顕著な効果を示さなかつたのに対し, 秋まき株および冬まき株では明らかに伸長を促進した。また夏まき株では高温による節間伸長抑制作用が防止された結果, 高温下でも順調に草丈を伸ばした。開花に対する効果としては, 各期のものとも発蕾および開花を早めたことのほか, 春まき株で一部花芽未分化株のあつた品種の開花率を高め, 低温をうけなかつた夏まきのスノー•ホワイトを秋の低温到来までに開花させるなどの結果が得られた。このように GA の効果も品種や処理の時期によつてその程度がかなり異なつていた。
  • カロチノイドについて
    番場 宏治
    1968 年 37 巻 4 号 p. 368-378
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    花ユリで見られる色素構成を解明するために, 21種類の花ユリについて花被に含まれるカロチノイドを呈色反応, T.L.C., カラムクロマトグラフィー, 吸収スペクトルおよび分配の諸方法を用いて定性的に調査し, 以下の結果を得た。
    1. 21種類の花ユリのうち, 18種類にカロチノイドが存在し, それらはβ-カロチン, クリプトクサンチン, エキニノン様カロチノイド, ゼアクサンチン, カプサンチンおよびカプソルビンの6種であつた。
    2. 黄花ユリはβ-カロチン, クリプトクサンチンおよびゼアクサンチンにより黄色に色彩発現していた。
    原種の橙花ユリは, その色素構成により二つのグループにわけられた。一つはエキニノン様カロチノイドにより橙色に色彩発現しているグループで, これに属する花ユリは2種類あつた。他はカプサンチン•カプソルビンにより橙色に色彩発現している種で, この色素をもつ花ユリは5種あつた。
    3. 二つの交配種ではエキニノン様カロチノイドもカプサンチンカプソルビンも共存して, 赤色系に色彩発現していたが, これは種の成立過程で両グループの原種が交雑されていることを示唆している。
    4. オニユリを除く赤色系花ユリの原種では橙色カロチノイドとアントシアニンは共存せず, いずれか一方の色素により色彩発現をしているが, 交配種ではこの規則性は失われ両色素が共存していた。
    5. 花ユリの交雑親和性-特にアントシアニン系グループとカロチノイド系グループとの親和性-と花色を構成する色素の種類との間には絶対的な関連性があるとは思われなかつた。
  • 温湯脱渋中に生ずるアセトアルデヒドと渋味消失との関係
    北川 博敏
    1968 年 37 巻 4 号 p. 379-382
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 42°Cの温湯中に渋ガキを浸漬して脱渋すると, 果実内にエチルアルコール, メチルアルコールおよびアセトアルデヒドの量の増大することが, ガスクロマトグラフィーによる測定の結果みとめられた。
    2. 煮沸することによつて得た非酵素状態の果実を真空デシケーターに入れ, 真空ポンプで減圧しそれぞれ少量のエチルアルコール, メチルアルコール, アセトアルデヒドおよび蒸留水を加え, 窒素を入れ常圧にもどし, 約12時間放置した区をつくると, アセトアルデヒドにより脱渋したが, エチルアルコール, メチルアルコール, 蒸留水では全然脱渋しなかつた。
    3. 42°Cの温湯中に浸漬した果実のアセトアルデヒド含量およびタンニン物質含量を測定すると, アセトアルデヒドの生成にともなつて, 渋味が消失した。
    4. 温湯脱渋した果実のタンニン細胞は凝固しており, いわゆる凝固型となつていた。これにアセトアルデヒドの染色をすると, タンニン細胞のみが染まつた。
    5. 成熟果をアセトアルデヒドにより脱渋すると非常に早く脱渋し, 20%液では12時間以内, 15%液では24時間以内に脱渋した。
    6. 以上の結果, 温湯処理による脱渋は, 無気呼吸によつて生ずるアセトアルデヒドが, 直接タンニン細胞内の物質に反応して, 細胞内容を凝固させるため脱渋するものと思われる。
  • 岩田 隆, 中川 勝也, 緒方 邦安
    1968 年 37 巻 4 号 p. 383-390
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ナツミカン果実については冷蔵適温や低温障害の有無など不明であつた。本実験はこれらに関する資料を得る目的で始めたが, 低温障害の発生することが認められたので, ひき続き障害の様相や発生機構を究明しようとしたものである。
    (1) ナツミカン果実を1~1.5°Cに貯蔵すると, 2か月を過ぎるころから明らかな低温障害がみられた。症状は果皮に不定形のかつ変部が現われて漸次拡大するものであり, その部は菌におかされやすくなつた。かつ変部以外の果皮も全体に汚黄色となつた。6°Cでは障害は全くみられなかつた。
    (2) 1~1.5°Cにある程度貯蔵された果実は20°Cに移すと非常に腐敗しやすくなつた。このような微生物に対する抵抗性が失なわれるのは, 上記のかつ変障害が現われる時期よりもかなり先行する。
    (3) 6°Cに貯蔵された果実の呼吸量は漸次減少するのに対して, 1°Cでは逆に増大する傾向を示し, 貯蔵期間が長くなると外観健全な果実でも6°Cのものより大きな値を示すようになつた。また1°Cより20°Cに移すと急激の CO2 排出量が増加し, その程度は低温貯蔵期間の長いほど顕著であつた。これらのことは, 1°Cにおいては目にみえる障害の現われる以前に果実の代謝生理に異常がおこつていることを示唆する。
    (4) フラベド切片の呼吸を Warburg 検圧計により30°Cで測定したところ, 1°C貯蔵果のものは, 貯蔵全期間を通じて呼吸量が高く, RQ も大であつた。
    (5) アスコルビン酸含量は低温区のほうがよく保存され, 低温障害発生とは, とくに関係がなかつた。
    (6) 果皮切片を溶液中においてKイオン流出状態を測定したが, 温度処理区間でとくに相違はなく, 膜透過性の異常は認められなかつた。
    (7) 貯蔵にさきだつて, N6-ベンジルアデニン•ジベレリン•インドール酢酸•フルーツワックス処理を行なつたが, 低温障害防止の効果はみられなかつた。
  • トマト果実の熟度とCA-貯蔵効果
    邨田 卓夫, 建石 耕一, 緒方 邦安
    1968 年 37 巻 4 号 p. 391-396
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 本研究はトマト果実 (大型福寿) のCA-貯蔵に対する適性を検討する目的で行なつたもので, mature green, breaker の両熟度段階のトマトをCA-貯蔵し, 貯蔵中の品質および成分変化, 代謝系の変化について調べた。
    2. Mature green stage のトマトはCA-貯蔵 (5%CO2-10% O2, 10% CO2-10% O2, 25% CO2-10% O2short term treatment. 6.5±0.5°C) によつてかなり顕著な追熟抑制効果がみられ, 貯蔵期間が延長できたが, 貯蔵期間が長くなると出庫後の追熟が困難になり, Alternaria などの菌の侵害によつて品質が急速に劣化した。この点 mature green のトマトはCA-貯蔵の適用に問題が残つた。
    3. Breaker stage のトマトでもCA-貯蔵による追熟抑制の効果がみられ, 対照区は7.5±0.5°C下で2~3週後には全果面が着色し soft ripe の状態になつたが, CA-貯蔵区 (5% CO2-10% O2, 10% CO2-10% O2) は貯蔵4週後で dark pink の状態を保ち, 貯蔵5週めまで可食状態を保持した。この熟度では出庫後追熟処理を必要としないので, ガス組成, 貯蔵温度, 湿度についてさらに検討すればCA-貯蔵適用の可能性は大きい。
    4. L-アスコルビン酸含量は貯蔵中 breaker stage では全区とも漸減したが, CA-貯蔵区では貯蔵後半減少傾向が著しかつた。酸含量も全区とも減少し, CA-貯蔵による減酸抑制の効果は明らかでなかつたが, リンゴ酸の減少はCA-貯蔵によつて押えられた。
    5. 組織切片の呼吸については O2 吸収量, CO2 排出量は全区とも貯蔵中いくらか減少する。10% CO2 区は他の区に比べて O2 吸収量が小さい。組織のCO2 排出量に対すて pyruvate の添加の影響から判断してトマトでは高濃度の CO2 によつて pyruvate carboxylase の活性が高められることが推測される。
    6. Succinic acid-1,4-14C をトマト組織に添加して代謝を調べたところ, CA-条件下では succinic acid から fumaric acid への移行が抑制されることがみいだされた。
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