トマトの追熟に対する酸素および炭酸ガス濃度の影響につき, 1967~1969年にわたり, 開花後37~39日の緑熟トマトを使用し, 20°C定温下で呼吸量 (炭酸ガスの発生量で表わした), エチレンの発生量および果色の変化より検討した。
1. 酸素濃度の影響. 酸素14%区では, 炭酸ガスおよびエチレンの発生も, 空気状態と変らず, 果色の赤色化も正常であつた。
酸素濃度が低下して9~7%, とくに7%前後になると, 炭酸ガスおよびエチレンの発生ピーク時がおくれ, その量も低下するが, climacteric pattern は認められ, 着色も20日目頃には完了していた。
さらに濃度が低下し5%以下になると, 呼吸の上昇はおこらず, エチレンの発生も検出されなかつたし, 着色も阻害されていた。
トマトの追熟に対し, 酸素濃度の限界は7%程度であり, 7~9%では果実の追熟は遅延する。
2. 炭酸ガス濃度の影響. 酸素が21%の場合, 炭酸ガスが9%程度であれば, エチレンの発生量低下, 発生ピーク時の遅延はあつても, なおエチレンの climacteric rise がみられ, 果色の赤色化も20日目には完了していた。
同様の現象は, 酸素14%の場合の炭酸ガスについても認められた。
酸素濃度が低下し7%前後になると炭酸ガスが9%でも, エチレンの発生はなく, 着色も阻害されていた。炭酸ガスが3%程度だと, エチレンの発生に climacteric rise らしきものがあらわれ, 20日目には果色の赤色化もほぼ完了していたが, エチレン発生めピーク量は極端に少なく, エチレンの発生, ひいては追熟に炭酸ガスの影響が大きく現われていた。
トマトの追熟に対し, 酸素が十分存在する環境では,
炭酸ガスの限界は9%程度であるが, 酸素が不足がちになる7%前後の酸素環境では, 炭酸ガスの限界も3%程度まで低下する。
以上より, 酸素濃度が7%で炭酸ガス濃度が3%の環境ガスが, 20°Cでの追熟の限界であると思われる。
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