園芸学会雑誌
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40 巻, 3 号
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  • ホウ素欠乏と土壌中の水溶性ホウ素および葉中ホウ素含量の関係
    山崎 利彦, 新妻 胤次, 田口 辰雄
    1971 年 40 巻 3 号 p. 201-206
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. B欠乏と葉中B, 土壌中Bとの関係を明らかにするため, 1968年には153園, 1969年には149園のゴールデン•デリシャス園について調査した。B欠乏は1968年には調査園の24.2%に, 1969年には18.2%に認められた。
    2. 土壌中の水溶性Bは1968年には0.16ppmから2.48ppmの変異がみられ, 平均は0.62ppmであつた。1969年には0.36ppmから4.09ppmの変異がみられ, 平均は1.03ppmであつた。
    3. B欠乏の程度と葉中Bとの間には, 1968年には0.537, 1969年には0.420の負の相関係数が得られた。欠乏園の葉中Bの平均値は, 1968, 1969年にそれぞれ8.1, 8.6ppmであり, 正常園のそれは12.1, 12.4ppmであつた。
    4. 土壌中のBと葉中Bとの間には1968年には0.433, 1969年には0.358の正の相関係数が得られた。結果を総合して, 土壌中の水溶性Bが1.0ppm以下, 葉中Bが15ppm以下の範囲に含まれる園ではB欠乏発生の危険があり, それらの園のうち少なくとも30%の園には明確な分乏がみられた。
  • 葉の呼吸におよぼす品種選択性代謝毒物質 (K-III) の影響
    大川 勝徳, 鳥潟 博高
    1971 年 40 巻 3 号 p. 207-211
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 日本ナシ黒斑病菌の品種選択性代謝毒物であるK-IIIは罹病性品種の幼葉および果実に壊死を起すことが知られている。このK-IIIのナシに対する生理作用を調べる目的で, 本実験はまづ葉の呼吸におよぼす影響について行なつた。
    2. 廿世紀の場合, K-IIIの幼葉処理区では酸素吸収量および炭酸ガス放出量とも対照区と比較して著しい差を認めた。一方成葉処理区ではあまり差を認めなかつた。
    3. 廿世紀幼葉の場合, K-III処理区での単位時間当りの酸素吸収量および炭酸ガス放出量を調べた結果, 前者は処理後7時間, 後者は6時間で最高を示した。又K-IIIの濃度と単位時間当りの酸素吸収量の増加率との関係を調べた結果, K-III濃度1,000ppm区では酸素吸収量の増加率が高く, 100, 10および1ppmと濃度が低くなるにつれて, 酸素吸収量も低下した。
    4. 長十郎の場合, 幼葉および成葉のK-III処理区は対照区と比較して, 酸素吸収量および炭酸ガス放出量ともほとんど差を認めなかつた。
    5. 以上の結果から, 日本ナシ黒斑病菌の品種選択性代謝毒物質 (K-III) はナシの罹病性品種の葉の呼吸調節機構に関与するものと思われた。
  • 岡本 五郎, 小林 章
    1971 年 40 巻 3 号 p. 212-224
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 前報したように, ブドウの新梢に対する開花前の摘心やホウ素の葉面散布は花粉の発芽や果粒の止まりを良好にする。本実験は, これらの処理の影響を栄養的にみるために, 開花前に新梢の基部を5葉または10葉で摘心したりあるいはホウ素 (ホウ酸0.2%) の葉面散布をした Muscat of Alexandria について, 枝梢および花器の化学分析を行なつた。
    2. いずれの処理によつても, 満開期の花粉中にはglucose および数種のアミノ酸含量が増加し, 子房ではglucose および fructose 含量が減少するとともに子房の発育が著しく促進された。花房付近の葉内の全糖含量は無処理区では開花期に増加したが, 処理区では開花前から増加した。また, 花房内の全糖含量はいずれの場合も満開期に減少し, その傾向はとくに処理区で著しかつた。
    3. 花房内のアミノ態およびたん白態窒素含量は無処理区では満開期に減少したが, 処理区では反対に増加したま。た, 満開期の枝梢内のアミノ態窒素含量をみると, 摘心区では葉および枝の含量が, ホウ素散布区では葉の含量が無処理区よりも多かつた。
    4. 開花期における花房内のP, K含量および花房付近の葉内のK含量は処理区, とくにホウ素散布区で著しく増加した。
    5. 開花開始期に新梢の基部に14C-sucrose を与えて, 4日後にその分布を調査したところ, いずれの処理区においても無処理区にくらべて花房内への14Cの移行が多かつた。ホウ素を葉面散布するかわりにホウ酸30ppmを14C-sucrose 溶液に添加して与えても同じ傾向がみられた。花房内の14Cは摘心区では ethanol 可溶性のものが不溶性のものより多かつたが, ホウ素の散布区および添加区ではその逆であつた。無処理区では可溶性と不溶性の割合がほぼ等しかつた。
  • 富田 栄一
    1971 年 40 巻 3 号 p. 225-229
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. コンクリートポットに植えた3年生林系温州ミカンについて, 7月11日から9月10日までの2カ月間, 土壌水分をpF2.3, 3.0, 4.0に調整し, この各々に窒素の無施用区と施用区を設け, 果実の生長, 品質および翌年の開花におよぼす影響をみた。
    2. その結果, 夏期 (7~8月) に土壌水分を水分当量(pF3.0) 付近に保つことは, 果実の生長, 品質の点よりみて, もつとも好適であつた。土壌水分がこれよりも少なく, pF4.0になると, 果重が著しく劣るとともに果皮歩合が大となり, かつ着色がはなはだしく悪くなつた。反対に土壌水分がこれより多くpF2.3になると, 果汁中の可溶性固形物および全糖含量が低下した。
    3. 夏期に窒素を施すと, 果重はやや増大するが, 果皮歩合が高くなるとともに, 果汁中の可溶性固形物および全糖含量が低下し, 果皮の着色が著しく劣つた。
    4. 夏期に土壌水分が少ないほど, 翌年の開花数は増加し, 反対に新梢伸長量は衰えた。この場合, 夏期に窒素を施すと, 開花数, 新梢伸長量はともに増大した。
  • 組織培養法による若茎柔組織からのカルス形成
    八鍬 利郎, 原田 隆, 嵯峨 紘一, 志賀 義彦
    1971 年 40 巻 3 号 p. 230-236
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    アスパラガスの若茎柔組織からとつた切片を auxin (2,4-DまたはNAA) と6-benzyladenine (BA) を含む WHITE および MURASHIGE and SKOOG の培地で培養し, 主としてカルスの形成におよぼす培地組成の影響を調べた。培養は25°Cの暗処で行なつた。観察結果を要約するとつぎのとおりである。
    1. 生長調節物質を含む培地を用い, sucrose 濃度を0~80g/lの範囲で比較したところ, 10~20g/lの濃度でカルスの生長量が最も大きかつた。したがつて, 以下の実験では sucrose 濃度は20g/lとした。
    2. 基本培地にBA 0.1~1.0mg/lと2,4-D 0.1~1.0mg/lまたはNAA 1.0~10.0mg/lが共存した場合, カルスの生長がとくに良好であつた。
    3. BA無添加の培地で auxin (NAA) 単用でもカルスの形成が認められた。この場合はNAA 0.1mg/lにおいてカルスの生長が最も良かつた。
    4. MS培地では区により茎および根の分化がかなり認められた。
  • 建部 民雄
    1971 年 40 巻 3 号 p. 237-239
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    九条ネギの畑に葉柄に美しい赤紫色を帯びた個体が見出された。この赤ネギと普通の白ネギとの交雑F1は赤で, F2, F3において赤3 : 白1比の分離が得られた。しかし雑種の後代にあらわれた赤の色調は, 概して親よりもずつと淡かつた。赤色に関与する遺伝子Rを仮定しよう。なおその他に色の発現に関する基本遺伝子Cと, 少なくとも2,3の色調に関する強調遺伝子が存在するものと考えられる。現在普通に栽培されている白ネギの中に, 時として赤ネギが見出されるのは, 赤色に対してヘテロの個体 (Rr) が, 極淡い赤色のため白と見誤られて, 白ネギの個体群中に潜在しており, それから導かれたのではあるまいか。
    つぎに始め正常の緑色葉をもつていた個体で, 厳寒期をへて早春発生して来る葉が黄色となり, 春暖と共に再び正常緑色葉を発生する個体が見出された。この突然変異体は低温によつて葉緑体の形成が妨げられる興味ある1例と考えられる。
  • タネ球の低温処理ならびに植付け後の日長条件の影響
    青葉 高, 高樹 英明
    1971 年 40 巻 3 号 p. 240-245
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    タネ球の低温処理と植付け後の日長がニンニクの球形成におよぼす影響について実験を行ない, つぎの結果を得た。
    1. 低温条件を経過しないタネ球を植えた場合, 8~16時間日長下では球を形成しなかつた。しかしタネ球を5°~15°Cに20~30日間以上おいた場合はいずれも球を形成した。
    2. タネ球の5°~15°C低温処理により球形成の生理条件が誘起され, ある範囲内では温度が低いほど, 処理期間の長いほど球形成は促進されることが認められた。
    3. 球形成は長日条件で進み, そして長い日長の場合ほど球形成は促進された。なお生育中の日長が20時間以上の場合はタネ球が低温条件を経過しなくとも球を形成した。
    4. 本実験の結果, タネ球の低温処理と生育期の長日条件とは共に球形成を促進し, そして両要因は球形成に対して相加的に働くことが知られた。
    5. 前記の諸点から, 促成栽培の生産性を高めるためのタネ球の低温処理の方法について考察を行なつた。
  • ユスラヤシ, シュロチクヤシおよびトラキカルプス属について
    仙頭 照康
    1971 年 40 巻 3 号 p. 246-254
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ユスラヤシ, シュロチクヤシ, シュロおよびトウジュロについて発芽機構, 最適発芽条件を知るために, 1966~1970年実験を行なつた。
    1. ユスラヤシ種子の内果皮は薄く, 繊維がある。胚乳は種皮に似た組織が入り込んでいるため均質でない。発芽型は隣接•小舌状である。シュロチクヤシ種子は周囲に深い折目のある5条の縦みぞがあり, 胚乳は均質である。発芽型は隣接•小舌状である。シュロおよびトウジュロ種子にはコルク組織があつて, 胚乳に接している。発芽型は遠距離•管状である。
    2. 発芽率の最高はユスラヤシ40%, シュロチクヤシ60%前後, シュロおよびトウジュロはいずれも90%前後であつた。
    3. 適温での発芽日数はもつとも早いものが, ユスラヤシで18日, シュロチクヤシで14日, シュロは30日で, トウジュロはシュロより2~3日長かつた。
    4. は種用土別の発芽はユスラヤシでは高温でバーミキュライト区, 川砂区がよく, シュロチクヤシでは粘質壌土区がややよかつた。シュロではいずれのは種用土でも大差なかつたが, トウジュロでは粘質壌土区の発芽率が高かつた。
    5. シュロ種子の生存能力は室温貯蔵で17か月, 冷蔵 (3~5°C) で42か月であつた。
  • ビンロウジ, コモチクジャクヤシおよびキューバダイオウヤシについて
    仙頭 照康
    1971 年 40 巻 3 号 p. 255-261
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ビンロウジ, コモチクジャクヤシおよびキューバダイオウヤシについて発芽機構および最適発芽条件を知るために1967年実験を行なつた。
    1. ビンロウジ種子は繊維質の果皮におおわれ, 胚はへん平状の下底部に位置し, 胚乳は均質でない。コモチクジャクヤシ種子およびキューバダイオウヤシ種子の胚は種子の横軸に対して斜め上方に位置し, 胚乳はキューバダイオウヤシは均質であるが, コモチクジャクヤシは均質でない。
    2. 発芽型はビンロウジ種子およびキューバダイオウヤシ種子は隣接•小舌状発芽で, コモチクジャクヤシ種子は遠距離•管状発芽を示した。
    3. 発芽率はビンロウジ種子は38%, コモチクジャクヤシ種子は約70%そしてキューバダイオウヤシ種子は約50%であつた。
    4. 適温での発芽日数はもつとも短いもので, ビンロウジ種子34日, コモチクジャクヤシ種子30日そしてキューバダイオウヤシ種子8日であつた。
    5. 発芽適温はビンロウジ種子は25~30°C, コモチクジャクヤシ種子およびキューバダイオウヤシ種子はそれぞれ30°C付近であつた。
    6. は種用土はビンロウジ種子およびコモチクジャクヤシ種子はバーミキュライトおよび川砂が, キューバダイオウヤシ種子は粘質壌土がよかつた。
  • 塚本 洋太郎, 藤目 幸拡
    1971 年 40 巻 3 号 p. 262-267
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    キクの品種“清水”の母株に0~15日の短日を与え, その茎頂部の小切片を,オーキシン, サイトカイニン, ジベレリンなどを含む HELLER の培地その他で培養した。(1) オーキシンの0.2, 2, 10ppmは explant の発根を促進した。IAAがもつとも効果があり, NAA, 2•4-Dの順序になつた。0~1%の範囲で寒天濃度が高いほど根の生長はよかつたが, 苗条の生長はわるかつた。(2) 0~10日の短日を与えた母株からとつた茎頂は, たとえオーキシンを加えた培地においても花芽分化をしなかつたが, 11~15日の短日を与えた母株からとつた茎頂を培養する場合は, オーキシンは花芽発達を促進した。これらの花芽は総苞形成期に達したままで30日間変化はなかつた。(3) 以上の状態になつた explant を, IAA, カイネチン, ジベレリンのどれか, あるいは組合せたものを加えた培地に移すとあるものは完全な花の状態に達する。とくに培地にジベレリンを加えると, 雌ずいは完成し, 花弁が伸長する状態にまでなる。もし, これらの調節物質を加えない培地に移植した場合には花弁形成初期に達するだけで終る。
  • 山崎 利彦, 新妻 胤次, 田口 辰雄
    1971 年 40 巻 3 号 p. 268-271
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. この研究はリンゴの果汁中の有機酸とKの関係を明らかにするために行なつたものである。
    2. ゴールデン•デリシャス, 国光の果汁中の有機酸の約88%はリンゴ酸であり, 他にごく微量の酢酸, ギ酸, クエン酸などがみられた。リンゴの果汁中のカチオンの約92%はKであり, Mg, Caはそれぞれ5.8,2.2%であつた。
    3. ゴールデン•デリシャスの果汁の滴定曲線はリンゴ酸のそれとよく一致した。
    4. Kと遊離酸の間に密接な関係が認められない果汁でも, 結合酸とpHの間には高い相関々係が認められ, リンゴ酸を滴定して得られた結果とよく一致した。
    5. 190個所のゴールデン•デリシャス園から集めた果汁の遊離酸とK濃度との間には0.51の相関係数が認められたが, 相関係数を低くした要因はおもにpHの変異であつた。
  • リンゴ紅玉果実に及ぼす酸素濃度の影響
    梶浦 一郎, 岩田 正利
    1971 年 40 巻 3 号 p. 272-279
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    各種果実におよぼすガス濃度の影響を調べ, 最適貯蔵ガス条件を探るため, 混合ガス作成装置を作り, まずリンゴ紅玉果実におよぼす酸素濃度の影響を調べた。炭酸ガス除去条件下で酸素濃度0, 1, 3, 5, 10, 21%の混合ガスを常時通気した。温度条件は4°C, 20°Cとし, 20°C下ではガス処理後9, 16, 23, 30日後に, 4°C下では17, 32, 45, 63日後に10個体ずつ取り出し, 種々調査した。また4°C下では63日後に一部の果実を20°C下空気中に7日間放置して調査した。
    1. 果皮地色の黄色化は20°C下において速いが, 低酸素下ほど抑制され, さらに3%以下では果皮の赤色部が紫色から褐色となつた。
    2. 果実硬度は4°C下では酸素濃度による差はないが, 63日間貯蔵後空気中に移すと, 0%, 1%区が硬く, 20°C下では5%以下が硬かつた。
    3. 果肉部の滴定酸度も4°C下では酸素濃度による差はないが, 63日処理後20°C下に移行させると, 21%区の減少が大きかつた。20°C下では5%以下で減少が少なかつた。果肉部の可溶性固形物含量は20°C下では1%, 3%区の減少が少なかつた。
    4. 果肉部のエタノール含量は両温度下とも0%区のみ多く, 30日後に20°C下の0%区では4°C下の約2倍の含量を示した。
    5. 炭酸ガス呼出量は両温度下とも, 1%, 3%区が最低値を示し, 0%区は4°C下では5%, 20°C下では10%区とほぼ同量を示した。
    6. 両温度下とも0%区の果実では醗酵臭を生じ, 20°C下では1%区でも一部の果実に醗酵臭を生じた。実験終了時に, 4°C下では1%区, 20°C下では3%, 5%区の食味が最良であつた。
    7. 紅玉の貯蔵最適酸素濃度を4°C下, 2か月間の本実験から考えると, 熟度進行が抑制され, かつ低酸素障害を起さない5%が最適と思われるが, 炭酸ガス存在下, 長期貯蔵において, さらに検討する必要があると思われる。
  • 予措乾燥および貯蔵湿度が温州ミカン果実の生理および品質に及ぼす影響
    邨田 卓夫
    1971 年 40 巻 3 号 p. 280-286
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    収穫後直ちに湿度99.5~100%, 温度3.5~10°Cに貯蔵した温州ミカン (Citrus unshiu MARCOVITCH, cv. KATAYAMA) (高湿区) と重量当り4.7~6.5%予措乾燥した後湿度70~85%, 温度3.5~10°Cに貯蔵した温州ミカン (予措乾燥•低湿区) について貯蔵中の生理, 化学的変化を調べ果実の生理および品質におよぼす湿度の影響について考察した。
    1. 貯蔵90日間の目減りは高湿区で0.5~1.2%, 予措乾燥•低湿区で20.5~23.3%であつた。果肉率は高湿区では収穫時の69.4~70.8%から貯蔵中ほとんど変化しなかつた。予措乾燥•低湿区では予措乾燥によつて直後に75.1~77.7%に増加したが, その後貯蔵中の増減はほとんどみられなかつた。高湿区の果実は貯蔵30日目頃から全て浮皮果になつた。
    2. 予措乾燥によつてミカン果実の呼吸が抑制される現象はみられなかつた。ただ果皮組織の呼吸を乾燥重当りに換算すると予措乾燥•低湿区の方が高湿区より小さく, 砂じようの呼吸量も貯蔵1か月目頃から予措乾燥•低湿区の方が高湿区より小さくなつた。
    3. 果皮の含水率は高湿区では貯蔵90日間に, 収穫直後の74.9~76.2%から82.1~85.1%に増大した。予措乾燥•低湿区は予措乾燥直後に68.8~70.2%に減少し, その後貯蔵中にも約2%の減少を示した。
    4. 炭水化物含量は果肉では高湿区, 予措乾燥•低湿区とも貯蔵90日間さほど変化しなかつた。果皮では全糖含量が貯蔵中に減少した。ことに高湿区は減少傾向が大で貯蔵90日間に当初の1/2~1/3の含量になつた。酸含量は果肉, 果皮とも貯蔵中に減少したが果皮の方が減少率が大きかつた。
    5. 両区の貯蔵末期における果実の組織切片を顕微鏡で調べたところ, 高湿区の浮皮果の果皮は油胞が予措乾燥•低湿区のものに比べて膨張し, 油胞間隙の組織は極端に小さくなつていることが観察された。
    以上のような結果から貯蔵中の温州ミカンは果実が乾燥によつて重量を減じたり, 呼吸によつて基質を消耗し重量を減じたりすると, 高湿下では外部から果皮に水分が侵入し油胞に集まり膨張し, これが原因して果皮が軟弱になつていくものと推論した。
  • トマト果実の成熟および追熟中のグルタミン酸脱炭酸酵素とグルタミン酸脱水素酵素活性度の変化
    山中 博之, 茶珍 和雄, 緒方 邦安
    1971 年 40 巻 3 号 p. 287-291
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    本研究は露地栽培トマト品種福寿2号を用い, 成熟や追熟と関連してグルタミン酸脱炭酸酵素およびグルタミン酸脱水素酵素の活性度の変化について調べたものである。
    1. トマト果実中のグルタミン酸脱炭酸酵素は, 燐酸緩衝液で容易に抽出されることが認められた。またこの酵素の至適pHは5.5~5.6にあつた。
    2. トマト果実のこの脱炭酸酵素の活性度は, 緑色果など未熟な stages で高いが, 成熟が進むにつれてしだいに低下する。追熟, 貯蔵 (20°C) 中も活性は低下するが, 6°Cの低温下で追熟を抑制した場合では27日後でも活性が高かつた。また, γ線照射により追熟を抑制した場合のグルタミン酸脱炭酸酵素の活性は, 照射直後無処理区と比べ著しく低下するが, その後250 Krad では2日後に, 1,000 Krad では5日後に一時的な活性の回復がみられた。
    3. トマト果実中にグルタミン酸脱水素酵素が存在するものと思われ, この酵素の活性度は成熟するにつれて低下する傾向が認められた。
    4. グルタミン酸脱炭酸酵素の活性度およびグルタミン酸とγ-アミノ酪酸含量の変化からトマト果実の熟度や鮮度を生化学的面より判定しうる可能性をみいだした。
    5. トマト果実の追熟中, mature green でγ-アミノ酪酸が多く, 追熟するにしたがいγ-アミノ酪酸は減少し, グルタミン酸が蓄積するが, この生理的意義についても若干の考察を試みた。
  • 水野 進
    1971 年 40 巻 3 号 p. 292-299
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    トマトの追熟に対する酸素および炭酸ガス濃度の影響につき, 1967~1969年にわたり, 開花後37~39日の緑熟トマトを使用し, 20°C定温下で呼吸量 (炭酸ガスの発生量で表わした), エチレンの発生量および果色の変化より検討した。
    1. 酸素濃度の影響. 酸素14%区では, 炭酸ガスおよびエチレンの発生も, 空気状態と変らず, 果色の赤色化も正常であつた。
    酸素濃度が低下して9~7%, とくに7%前後になると, 炭酸ガスおよびエチレンの発生ピーク時がおくれ, その量も低下するが, climacteric pattern は認められ, 着色も20日目頃には完了していた。
    さらに濃度が低下し5%以下になると, 呼吸の上昇はおこらず, エチレンの発生も検出されなかつたし, 着色も阻害されていた。
    トマトの追熟に対し, 酸素濃度の限界は7%程度であり, 7~9%では果実の追熟は遅延する。
    2. 炭酸ガス濃度の影響. 酸素が21%の場合, 炭酸ガスが9%程度であれば, エチレンの発生量低下, 発生ピーク時の遅延はあつても, なおエチレンの climacteric rise がみられ, 果色の赤色化も20日目には完了していた。
    同様の現象は, 酸素14%の場合の炭酸ガスについても認められた。
    酸素濃度が低下し7%前後になると炭酸ガスが9%でも, エチレンの発生はなく, 着色も阻害されていた。炭酸ガスが3%程度だと, エチレンの発生に climacteric rise らしきものがあらわれ, 20日目には果色の赤色化もほぼ完了していたが, エチレン発生めピーク量は極端に少なく, エチレンの発生, ひいては追熟に炭酸ガスの影響が大きく現われていた。
    トマトの追熟に対し, 酸素が十分存在する環境では,
    炭酸ガスの限界は9%程度であるが, 酸素が不足がちになる7%前後の酸素環境では, 炭酸ガスの限界も3%程度まで低下する。
    以上より, 酸素濃度が7%で炭酸ガス濃度が3%の環境ガスが, 20°Cでの追熟の限界であると思われる。
  • 低温障害に伴う種子かつ変基質ならびに中間代謝物質の変化
    小机 信行, 緒方 邦安
    1971 年 40 巻 3 号 p. 300-304
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    本研究はピーマン果実を低温処理することによつて生ずる種子かつ変に注目し, 種子かつ変基質物質の同定と貯蔵中の変動およびその生成に関与する中間代謝物質について調べたものである。
    1. 1°C区のクロロゲン酸含量は貯蔵1日後で収穫時の約3倍に増加した。かつ変が目にみえ始めた4日後には, 収穫時のレベルにまで減少し, 以後はあまり変わらなかつた。20°C区では全貯蔵期間を通じて, ほとんど変化は認められなかつた。
    2. 総フェノール物質含量については, 1°C貯蔵1日~4日後に急増し, 収穫時の約3倍に達したが, その後漸減の傾向を示した。20°C区では, 貯蔵4日後に当日よりもやや増加したが, 全体的に低温区よりも含量は少なく, 貯蔵期間を通じて, ほぼ一定した値を示した。
    3. シキミ酸についても1°C区では, 直ちに増加し, 4日後ピークに達し, その後急減した。20°C区についても1°C区の場合と同様の傾向を示すが, その含量は少なく, 貯蔵4日後では低温区の約半分であつた。
    4. チロシン含量の変化は, 1°C区で貯蔵1日後に急増し, 7日後には急減した。これに対し20°C区でもある程度の増大があつたが, 低温区よりは少なく14日後も種子のかつ変は起こらなかつた。
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