前報により, 白肉桃大久保果実に及ぼす酸素濃度の影響ならびに貯蔵中の低温障害の発生には材料の熟度が影響を与えると思われた。そこで, 前報と同様に, 20°C下で酸素濃度0, 1, 3, 5, 10, 21%の混合ガスを常時通気し, 高温下での効果を追試するとともに, 冷蔵混合ガス処理前に3日間, 4°C下空気中で追熟抑制をした未熟果区と20°C下空気中で3日間追熟させた追熟果区とを設けて, 材料の熟度を変えた後, 4°C下で酸素濃度1, 3, 21%の混合ガスを通気し, 1週おきに貯蔵中の変化を調査した。さらに, 未熟果区では, 出庫後, 一部果実を2日間20°C下空気中で追熟させて調査した。
材料は20°C下空気中で追熟させると, 生食用適熟まで2~3日を要した。
1. 20°C下では軟化抑制効果は0%区でのみ見られ, はく皮指数変化に対する抑制効果は5%以下で見られ, 低酸素下ほど大きく抑制された。炭酸ガス呼出量は5%以下で抑制されたが, 0%区ではやや高い値を示した。また, 10%以上では食味が淡白な果実の発生が早かつたが, 滴定酸度, 可溶性固形物含量には酸素濃度による一定の傾向は見られなかつた。
また, 1%以下の区で醗酵臭が生じ, 3%, 5%区の一部の果実にも生じ, これらの区ではエタノール含量も多かつた。また, 0%区では核が褐変した。
熟度変化抑制効果は5%以下で見られるが, 同時に5%以下では低酸素障害も生じ, 4日目で見ると, 3%, 5%区で醗酵臭が生じない果実が最良の品質を示した。
2. 4°C下では, 未熟果区, 追熟果区とも, 低酸素濃度による軟化抑制, はく皮指数変化抑制効果とも見られなかつた。炭酸ガス呼出量は一般に追熟果区の方が多く, 両区とも1%区で抑制された。未熟果区では混合ガス処理後15日目に, 追熟果区では20日目に低温障害を生じ低酸素下でも抑制されなかつた。
4°C下では1%区の一部の果実に醗酵臭が生じ, その中では追熟果区における発生が早かつた。
3. 4°C下より出庫後に追熟させると, 未熟果区では軟化し, はく皮指数変化を生じるが, 貯蔵中の低酸素条件による残存抑制効果は見られなかつた。
4. 4°C下では3%と21%の間に, 貯蔵品質で明確な差は見られず, 1%以下では醗酵臭が生じる。以上よりCA貯蔵における低酸素下の利点は少ないと思われる。
また, 熟度が進んだ材料では, 冷蔵前追熟処理により低温障害発生を遅らせることはむずかしい。今後, より低温下での実験が必要と思われた。
抄録全体を表示