園芸学会雑誌
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40 巻, 4 号
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  • 温州ミカン葉における 1-naphthylacetic acid (carboxyl 14C labelled) の浸透ならびに幼果, 結果枝への転流
    野間 豊
    1971 年 40 巻 4 号 p. 337-342
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. NAAの温州ミカン葉, 枝および幼果への浸透, 転流の様相を明らかにするため, 1-naphthylacetic acid (carboxyl 14C labelled) (以下NAA-1′-14Cと略称) を含むNAA-Na 300ppm水溶液を結果枝の第1葉に附着させ, 各部位の14Cを定量することによつてNAAが葉に吸収され, 枝および幼果へ移行することを明らかにした。
    2. NAA-1′-14C水溶液附着葉表面の全14C残存割合は, 処理4時間後で71%, 8時間後では64%となり, 24時間後には54%となり, 葉中の残存14Cの割合とほぼ同じとなつた。
    3. NAA-1′-14C水溶液附着葉内の14Cの含有割合は, 処理2時間後では7.6%であつたが, 4時間後では14.6%, 8時間後には53.5%と急激に増加し, 24時間後には54.5%とほぼ一定であつたが, 48時間後には43.6%と若干減少の傾向を示した。
    4. 第1葉に処理したNAA-1′-14Cの第2葉への移行率は, 処理2~4時間後では0.4%, 8時間後では0.7%となりピークを示し, 24時間後, 48時間後ではそれぞれ0.5%, 0.3%となつた。
    5. 同じく幼果への移行率は, 処理2時間後で3%, 4時間後で15.1%となり, 8時間後, 24時間後, 48時間後では, それぞれ7.2%, 5.2%, 2.7%と減少の傾向を示した。
    6. NAA-1′-14Cを含むNAA-Na 300ppm水溶液のスポットによる温州ミカン葉のラジオオートグラムの結果, 葉脈にそつて影像がみとめられ, 葉全体を浸漬し, 2時間および3時間後に移行をとめたものについては, 処理葉をはじめ, 枝, 幼果にも影像がみとめられ, その吸収経路を明らかにすることができた。
  • 症状および気象条件と葉やけ発生との関係
    熊代 克已, 佐藤 幸雄, 建石 繁明
    1971 年 40 巻 4 号 p. 343-346
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ナシ, とくにセイヨウナシのバートレットでは, 夏に葉が急激にかつ変枯死する, いわゆる葉やけが多発する。発生しやすい部位は, 短果枝葉および新梢の基部葉で新梢の先端部葉にはほとんど発生しない。葉やけ症状には葉身のごく一部分のみのかつ変, 中ろくを境にして片側のみのかつ変, 葉縁のかつ変, 葉身全体のかつ変などの型がある。全体がかつ変した葉は, やがて落葉する。
    症状の進展経過は, まず葉の緑色が急にあせて光沢および透明度を失ない, 間もなくかつ変し始め, しだいに乾燥して, 中ろくを中心にして上面へわん曲してくる。これにともなう内部組織の変化は, まず葉肉細胞の原形質が収縮して細胞壁から離れ, しだいにかつ変し, 細胞の収縮の進行につれて細胞壁にしわが寄り, そして最終的には葉肉細胞はミイラ状にい縮変形する。これらの症状は数時間のうちに進行する。
    一般に, 最高気温が高く, 最低相対湿度が低く, そして蒸発量の多い日ほど, 葉やけ発生率は高いが, 曇雨天が続いた後に急に晴天になつた場合には, とくに著しく発生する。1日のうちで葉やけの発生する時刻は, 気温が最高にそして相対湿度が最低になる時刻の前後である。
  • カルス形成および器官分化におよぼす auxin および 6-benzyladenine の影響
    八鍬 利郎, 原田 隆, 嵯峨 紘一, 志賀 義彦
    1971 年 40 巻 4 号 p. 347-353
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    アスパラガス実生の第1次茎からとつた長さ約1cmの組織片をMS培地で培養し, 培地に添加した 6-benzyladenine (BA) および auxin (NAAまたは2,4-D) がカルスの形成と器官分化におよぼす影響について調査した。培養は25°C, 暗所および明所で行なつた。
    1. カルスの良好な生長はNAAとBAの両方が添加されたとき, またはNAA単用のときにみとめられた。この場合, カルス生長のためのNAAの最適濃度は, 培地にBAが添加されているか否かによつて異なり, BA無添加の場合は0.1mg/l, BAを0.1~10.0mg/lの範囲で添加した場合は1.0mg/lでカルスの生長は最もよかつた。
    2. 根はBA低濃度 (0, 0.1mg/l), NAA 0.1および1.0mg/lでよく分化した。根の分化率はBA無添加の場合はNAA 0.1mg/l で最も高く, BA 0.1mg/l の場合はNAA 1.0mg/lで最高であつた。
    3. 茎は暗所ではBAとNAAがともに0.1および1.0mg/lの区でよく分化したが, 明所では0.1~10.0mg/l BAと0.1および1.0mg/l NAAの範囲でよく分化した。NAAの最適濃度はBAの濃度にかかわらず1.0mg/lであつた。
    4. 本試験においては auxin としてNAAを用いた方が, 2,4-Dの場合より根および茎の分化率が高かつた。
    5. 一つのカルスから根および茎の両方を分化し, 幼植物の再分化率の最も高かつたのはBA 0.1mg/l, NAA1.0mg/lの区であつた。
    6. 明所と暗所で培養した結果の比較では3. にのべたように明所でのみBA 10mg/lの区にも茎の分化がみられたほかは, カルスの生長, 器官の分化に大きな差は認められなかつた。
  • 花の発育ならびに形態に及ぼす苗の栄養と低温の相互作用の影響
    斎藤 隆, 伊東 秀夫
    1971 年 40 巻 4 号 p. 354-358
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    トマトの花芽は幼苗期の低温によつて発育を増大し, 心室数の増加をもたらすが, 苗の栄養状態を変えて低温処理を行なつた場合に花の形態がどのように変化するかについて調査した。
    1. 苗の同化量を変えるため光度の異なる条件下で育成した苗に低温処理を行なつた場合, 弱光下で育成され, 可溶性糖類•多糖類など炭水化物含量の少ない苗では, 低温処理を受けても心室数の増加は少なく, 特に強遮光下で育成された苗では, 低温処理の影響は著しく弱められている。
    3. 窒素•燐酸•加里, 特に窒素の施用量を変えるため, 肥沃度の異なる床土で育成した苗に低温処理を行なつた場合, 施肥量の少ない床土で育成され, 窒素成分含量の少ない苗でも, 低温による心室数の増加は著しく少なく, 低温処理の影響は著しく弱められている。
    3. 低温処理期間中に遮光処理を行なつた場合にも心室数の増加は少なく, 低温処理を受けないものとほとんど変らず, 弱光の下で光合成による同化生成物の少ない状態では低温の影響は現われ難い。
    4. 低温によつて, 栄養生長が停滞し, 花芽に対する養分の配分が潤沢になるために, 花芽の各器官は旺盛な分化•発育を起こすのである。養分の供給が潤沢にならなければ低温の効果は現われない。苗の栄養状態が不良であれば, 低温に遭つても花芽に対する養分の配分は潤沢になり得ないから, 低温の影響は花芽の発育•子房の発育•心室数の増大を起こさないのである。
    5. 花芽の分化直前から分化直後の比較的初期の段階において, 養分の潤沢な供給に恵まれた場合に, 花芽の各器官の増大度は最も大きい。
  • 着果習性について
    加藤 徹, 田中 守敏
    1971 年 40 巻 4 号 p. 359-366
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    “三重改良”, “さきがけみどり”を供試し, 砂耕法によつて培養し, 着果習性について調査した。なお, 日照不良および多チッソ施与の着果習性におよぼす影響についても検討を加えた。
    1. 開花結実後担果数が増加しはじめると, まず結実歩合が低下しはじめ, 担果数が最大に達するころよりまた結実歩合が上昇する。そして担果数が最小になるころ結実歩合は最高になるようである。一方担果数は開花数が増加するにつれて増加し, 担果数が最大になる少し前に開花数が最大となり, 後減少し始め, 担果数の最小になる少し前に最小の開花数となり, やがてまた増加しはじめている。
    以上のように担果数, 結実歩合, 開花数に周期をみとめ, 山と谷との間は約1か月で, 交互に現われている。
    2. 結実歩合はほとんど気象条件や温度に影響されないが, 開花数は曇雨天によつてやや減少する。しかし曇雨天が継続するときは花が成熟して開花するようになる。
    3. 主枝の結実歩合はほぼ安定していて, 80%以上であるが, 側枝の花のそれは担果数の多いときは10%以下で, 担果数の少ないときは100%に近く, 平均約30%である。
    4. 果実の肥大は高夜温によつて促進されるが, 22°Cまでで, 23°C以上が続くと肥大が抑制されるようである。一方20°C以下になると肥大が阻害されるけれど, 16°C以下になるとその阻害が一層はげしくなる。
    5. 多チッソおよびしや光によつて担果数の周期は日照普通•標準チッソ区と変りはないけれど担果数の山が低く平坦になつて谷との差が次第に明らかでなくなる傾向がみられる。とくにしや光区において著しい。同様に多チッソおよびしや光によつて結実歩合は急激に低下し, しかも低結実歩合の期間が標準区より長く続いてのち結実が高まつている。この傾向はしや光区の方が多チッソ区より著しい。
    また開花数は日照普通•標準チッソ区, 多チッソ区, しや光区の順に減少している。
  • 実態調査について
    増井 正夫, 鈴木 英治郎
    1971 年 40 巻 4 号 p. 367-374
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    静岡県西部の温室メロン栽培地帯に, 葉にクロロシスやネクロシスが, また, 茎, 葉柄, 葉脈にかつ色のはん点がみられる生育障害が現われ, 問題となつた。この生育障害は, ミネライトを施用したあとや, 温室土壌を蒸気消毒したあとにしばしばみられた。そこで, この障害の原因を明らかにするため, 障害がみられた温室とみられなかつた温室から植物体および土壌を採り, それらの化学分析を行なつた。葉の多量元素および主要微量元素は, マンガンを除いて, 障害のみられた植物と健全な植物の間に差がみられなかつた。しかしながら, 生育障害のみられた植物体各部のマンガン含量は, 健全な植物体各部のそれよりも著しく高かつた。また, 生育障害のみられた土壌の可吸態マンガン含量は, 健全な植物が生育した土壌のそれよりも著しく高かつた。
    蒸気消毒の温度が土壌中の可吸態マンガン含量にどのような影響を及ぼすかを明らかにするため, マンガン含量の高い土壌を用いて実験を行なつた。その結果, 可吸態のマンガン含量は, 高い温度の蒸気消毒により著しく増加することがわかつた。
    これらの結果ならびに栽培農家に対するアンケートから, この生育障害は, マンガンを含む肥料の施用によるマンガン過剰のために起こることがわかつた。
  • 低炭酸ガス濃度下でのトマト苗の生理機能
    伊東 正
    1971 年 40 巻 4 号 p. 375-382
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    低CO2濃度下でのトマト苗の光合成, 炭水化物代謝, 転流, 無機養分の吸収などを知るため, 放射性同位元素の14CO2, H332PO4, 86RbClをトレーサーとして用い, また光合成速度をガス交換法で同化箱と赤外線ガス分析計を用いて測定した。
    CO2濃度が70ppmから300ppmまでの範囲で, 光度を0.07, 0.16, 0.53cal•cm-2•min-1と3段階に変えて, トマト単葉における光合成速度を測定したところ, いずれの光度でも, CO2濃度の低下にともない, 光合成速度は直線的に低下した。また80ppmのCO2濃度下では, 固定された14C量が標準区の35%に低下したが, これと同時に根への14C-化合物の転流が著しく抑制された。
    正常な光合成を行なつているトマト苗では, 夕刻固定され翌朝まで葉にとどまつていた14C-化合物のうちの相当量が, 根に転流されていた。これに対し, 低CO2濃度下では, 前日とりこまれていた14C-化合物の下降までかなり抑制され, 葉での呼吸損量が著しく増加した。
    60ppmのCO2濃度下に2時間おいたトマト苗では,葉および根における炭水化物含量が低下した。
    また32Pを吸収させる前に6時間光照射をしたトマト苗では, 低CO2濃度下で著しく32Pの吸収が増加した。逆に光前処理をしなかつた苗では, 低CO2濃度が32Pの吸収に抑制的に働らく傾向が認められた。
    86Rbの吸収は, 光前歴の有無にかかわらず, 低CO2濃度下でかなり抑制された。ルビジウムの吸収と蓄積の様相は, トマト苗の光合成活動と密接な関係をもつていた。
    これらの結果から, 同化生産物の転流と無機養分の吸収との関係について論議した。
  • 低炭酸ガス前歴がトマト, キュウリの生理機能におよぼす影響
    伊東 正
    1971 年 40 巻 4 号 p. 383-388
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    低CO2前歴がトマト, キュウリの生育, 生理におよぼす影響を明らかにするため実験を行なつた。
    80ppmのCO2濃度下に2時間おかれたトマト苗では標準CO2濃度にもどしてからも14CO2固定力が低下した。このような低CO2前歴はトマトが低CO2濃度とある程度以上の光のもとにおかれたときにだけ生じた。
    一方, キュウリではトマトに見られた低CO2前歴の後作用はなかつた。しかしトマトと同じように低CO2濃度下での14CO2の固定は明らかに低下した。また, キュウリでは低CO2濃度下での根への14C-同化生産物の転流がトマトの場合より顕著に抑制された。さらにキュウリでは300ppm CO2濃度, 光条件下で正常な光合成を営んでいるものでも, 根への同化生産物の転流は抑制された。
    20kluxでのCO2補償点はトマトでは38±2ppm, キュウリでは65±4ppmとなり, キュウリで高い値を示した。光条件下でCO2 free 空気へ呼吸によつて放出されるCO2量もキュウリではトマトより高かつた。
    トマトを80ppm CO2濃度下に2時間おくと, 根の呼吸能が低下した。また低CO2前歴は, 根からのリン酸吸収を抑制した。これは根の炭水化物の減少が根の呼吸を制限し, リン酸の代謝的吸収を抑制したためと考えた。
    トマト苗を毎朝1時間80ppm CO2濃度下で2週間つづけて生育させると, 根の乾物重, 純同化率が低下した。
  • 水耕培養液中の亜鉛濃度がそ菜の生育に及ぼす影響
    大沢 孝也
    1971 年 40 巻 4 号 p. 389-394
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    そ菜の亜鉛過剰障害について検討するため, 14種類のぞ菜を供試して水耕試験を行なつた。基本培養液には, HOAGLAND第1液を用い, Zn処理濃度は0.05 (標準区), 0.3, 1, 3, 10, 30ppmとした。培養液のpHは約6に調節し, 処理期間は4週間とした。
    1. 一般にZn処理濃度が高まるにつれて生育が阻害された。Zn 30ppm区では著しい生育不良とともに種々の特殊症状が観察されたが, 最も多くみられたのは上位葉におけるFe欠乏類似のクロロシスであつた。
    2. 地上部乾物重が標準区に比べて半減するZn処理濃度によつて各種そ菜のZn抵抗性を比較すると, ネギはZn 30ppm区でも半減に達せず, ついでミツバ, ニンジン, セルリーはZn 10および30ppm両区間で半減し, キュウリをはじめとする果菜類, アブラナ科の葉根菜ならびにレタスはZn 3および10ppm両区間で半減した。ホウレンソウはZn 1および3ppm両区間で半減し最も弱かつた。
    3. 葉中Zn含有率は標準区ではおおむね乾物中100ppm以下であり, Zn処理濃度が高まるにつれて増大したが, そ菜のZn抵抗性とZn集積能力の間には関連が認められなかつた。根中のZn集積は一般に葉中のそれよりも大であつた。地上部乾物重が半減する場合の葉中Zn含有率は, 若干の例外はあるが, Zn抵抗性の強いそ菜のほうが弱いものよりも高い傾向がみられた。
    4. 葉中Fe含有率はZn処理によつてあまり大きくは変化しなかつた。葉中Mn含有率はZn処理濃度が高まるにつれて増大し, Zn 3あるいは10ppm区で最高値に達し, それ以上の濃度区ではかなり著しく低下した。
    5. 葉中N, P, K, Ca, Mgなどの含有率とZn過剰による生育障害の間には明らかな関係が認められなかつた。
  • 培養液の亜硝酸濃度とpHがそ菜の生育に及ぼす影響
    大沢 孝也
    1971 年 40 巻 4 号 p. 395-400
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    そ菜の亜硝酸害について検討するため, 12種類のそ菜を供試して水耕試験を行なつた。Nを含まない基本培養液に加用するNaNO3とNaNO2濃度組み合わせを変えることにより, 施用全N濃度を12me/l一定として, NO2濃度を0, 4, 8, 12me/lとする各区を設け, さらにpH5, 6, 7の3段階をこれに組み合わせた。処理期間は4週間とした。
    1. 亜硝酸害は培養液のpHが低いほど著しかつた。すなわちpH5ではNO2処理濃度が高くなるほど著しく根がかつ色をおびて伸長も悪く, 地上部はしおれ気味となり, また葉が濃緑色を呈するものがあつた。さらにそ菜によつては葉焼け, 黄化, 葉の斑点などの特殊症状を現わした。pHが6, 7と高くなるにつれて上記の各種症状は軽減し, あるいは認められなかつたが, キュウリ, ミツバ, トマト, トウガラシはFe欠乏症状と思われる葉脈間クロロシスを現わした。NO2処理による枯死植物は培養液のpHが低い場合ほど多く認められた。
    2. NO2処理による生育阻害は培養液のpHが低いほど著しかつた。pH5~7の場合を綜合的にみて, NO2処理により地上部乾物収量がうける影響の程度によつて, 各種そ菜のNO2抵抗性順位を検討した結果は, 強いほうからキャベツ>キュウリ>ミツバ>ナス>セルリー>ネギ>ニンジン>レタス>トマト>ホウレンソウ>トウガラシ>インゲンの順で, そ菜のNO2抵抗性には種類によりかなり著しい差異が認められた。
    3. 葉中全N含有率のNO2処理濃度に伴なう変化傾向はそ菜の種類によつてまちまちであつた。またNO3-Nの含有率は培養液中のNO3濃度と同じ増減傾向を示した。P, K, Ca, Mgなどの葉中含有率はNO2処理によつておおむね低下した。Fe, Mn, Znなど重金属元素の葉中含有率に及ぼすNO2処理の影響はそ菜の種類によりまちまちであつた。
  • 日長, 温度, 照度および調節物質の相互作用
    塚本 洋太郎, 今西 英雄, 矢原 弘子
    1971 年 40 巻 4 号 p. 401-406
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    フレンチ•マリーゴールド (品種:バター•ボール) を主にして, 開花に及ぼす日長, 温度, 照度および調節物質の影響を調べ, これらの要因間の相互作用を研究した。30°Cにおいた場合, 長日 (終夜照明) 下では開花しなかったが, 短日 (9時間日長) 下では高い開花率を示した。しかし, 20°Cにおくと, 短, 長日間で著しい開花率の差はなく, 長日区の方がむしろ高い開花率になった。これに対し, アフリカン•マリーゴールドでは温度•日長による開花率の差異はごくわずかであった。クレモナの黒色寒冷紗によって照度を減少させた場合長日(16時間日長) では開花にいたらなかった。しかし, 光度の減少した条件でも短日ではよく開花した。光の強さが減少するほど, 1株当りの花数は減少した。ジベレリン散布は開花を促進し, 花数を多くしたが, TIBA散布では影響は現われなかった。
  • 鶴島 久男, 伊達 昇
    1971 年 40 巻 4 号 p. 407-415
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    この研究はサルビア, フレンチ•マリーゴールド, セロシア, アスター, コリウス, ジニア, ペチュニア, パンジーの花壇用品種の8種について, その生育および開花に対する窒素, りん酸, カリの影響を知ろうとして行なつた。
    実験区は3成分を一定の成分比で与えた対照施用区を中心に単一成分または3成分の施用を欠いた区, 各成分を対照区の倍量施用した区, また全成分を対照区の倍量施用した区を設けたほか一部には, その半量または4倍量施用区も加えて行なつた。実験は未耕の沖積土を用いた素焼鉢栽培で行なつた。
    供試8種類の生育および開花に対するN, P, K施用の影響について次のような結果が得られた。
    1. サルビアはPの施用を増すほど茎葉部や花蕾部新鮮重が増加し, 生育開花ともによくなるが, N, Kの影響は少なかつた。
    2. フレンチ•マリーゴールドはNおよびPの施用量の増加に反応して全新鮮重は増加し, 生育開花ともによくなるが, Kの影響はあまりあきらかではなかつた。
    3. セロシアでは生育や開花にNおよびPよりもKが強い影響を与え, とくに鶏冠状の花冠はKの施用を欠いた区がもつとも貧弱で, その反対にK多施用のものは見事な花冠になつた。
    4. アスターはNおよびPの施用量の増加につれ茎葉部や花蕾部の新鮮重が増し生育開花がややよくなる傾向を示したが, Kの影響は少なかつた。
    5. ジニアとコリウスはNおよびPの施用が生育開花にかなり影響し, コリウスの葉色 (緑色およびそれ以外の着色部) はNの多施用で鮮明になつたが, Kの多施用では色彩が不鮮明となつた。
    6. ペチュニアでは生育と開花に対するPおよびKの影響はごく少なかつたが, Nは無施用より施用, また施用量の増加によつて茎葉部の生育は旺盛となり, 開花数もやや増加した。
    7. パンジーは生育開花に対してNとPの施用がかなり影響するが, Kの影響は少なかつた。
    以上の結果からN, P, Kによつて影響される生育および開花の反応パターンから供試花壇用花き8種を分けると次の4タイプになる。Nタイプは生育開花がNの施用量により強く影響されるグループでここではペチュニアが入る。またPタイプはPの施用によつて生育開花が敏感に反応するグループでこれにはサルビアとアスターがふくまれる。KタイプはNやPよりもKの施用が生育開花に強く影響されるもので, これにはセロシアが入り, またN-PタイプのようにNとPの2成分が生育開花に影響するグループにはフレンチ•マリーゴールド, コリウス, ジニア, パンジーがふくまれる。
  • 種子かつ変に伴う phenylalanine ammonia-lyase および tyrosine ammonia-lyase 活性の変化
    小机 信行, 緒方 邦安
    1971 年 40 巻 4 号 p. 416-420
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ピーマン果実を0~6°Cに貯蔵すると短時日で種子のかつ変が生ずる。著者らはこの種子かつ変基質物質を同定したところ, phenylpropanoid を骨格とするクロロゲン酸であることを確認した。本研究は phenylpropanoid の生合成の Key enzyme として知られる phenylalanine ammonia-lyase (PAL) および tyrosine ammonialyase (TAL) の存在ならびに貯蔵中の活性変化を調べ, 種子かつ変機作の一端を考察した。
    1. ピーマン種子中にはPAL, TALともに存在することが認められた。
    2. 種子中のPAL活性は, 6°C貯蔵2日で当初の約2倍に増加しその後減少したが, 20°C貯蔵では漸減の傾向を示し, その活性度は6°Cに比べてはるかに低かつた。
    3. TAL活性はPAL活性と比べはるかに低く, また6°C, 20°C区の差異はほとんど認められなかつた。
    4. PAL/TALは, 当初10.7を示すが, 6°C貯蔵2日で35.0となり,その後急減するのに対し,20°C貯蔵では6°Cに比べると約1/5ではるかに低く, 貯蔵中漸減することを認めた。
    5. 以上の結果から種子中のPAL活性は低温処理により急速に高まり, 同時に phenylpropanoid が生成され, それらから誘導された物質が種子かつ変基質物質の基質となるものと推測した。
  • 白肉桃大久保果実に及ぼす酸素濃度の影響
    梶浦 一郎, 岩田 正利
    1971 年 40 巻 4 号 p. 421-429
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    各種果実に及ぼすガス濃度の影響を調べ, 最適貯蔵ガス条件を検討するため, 今回はモモ白肉種大久保果実に及ぼす酸素濃度の影響を調べた。前報と同様に酸素濃度0, 1, 3, 5, 10, 21%の炭酸ガスを除去した混合ガスを4°C下と20°C下で, それぞれ約3週間と10日間常時通気した。両温度下とも2回実験を行ない, 4°C下では, 一部の果実を20°C下空気中に移し, 追熟させて調査した。材料は生食適熟まで, 20°C下空気中で追熟させると, 1回目は3~4日, 20°C区2回目は5~6日, 4°C区2回目は4~5日を要した。
    1. 20°C下では, 軟化抑制, 灰星病発生抑制効果は1%以下, 地色黄色化抑制, はく皮指数変化抑制は3%以下の区で見られたが, 熟度が進んだ材料を用いた場合は不明確となつた。炭酸ガス呼出量は低酸素下ほど抑制されたが, 0%区は高い値を示した。滴定酸度, 可溶性固形物含量ともに酸素濃度により差は見られなかつた。
    2. 20°C下でははく皮指数と硬度との間に高い相関が見られた。
    3. 4°C下では, 軟化抑制効果は1%以下, はく皮指数変化抑制効果は0%区で, 地色黄色化抑制は3%以下の区で見られたが, 未熟果でははく皮指数は変化しなかつた。滴定酸度は3週目で低下したが, 0%区では低下が抑制された。炭酸ガス呼出量は低酸素区で抑制されたが, 0%区ではかえつて多い傾向が見られた。その傾向は熟度が進んだ材料ほど不明確であつた。約3週目より果肉の粉状質, 灰褐色化, はく皮障害, 果皮のヒビ割れなどの低温障害が生じ, 0%区のみ発生が抑制された。
    4. 4°C下より出庫後, 追熟させると, 軟化抑制, 地色黄色化抑制, 減酸抑制効果は0%区のみ見られ, 低酸素下ほど, はく皮指数変化が抑制された。14日追熟では, 0%以外の区ではく皮障害や味の淡白化が生じた。
    5. 酸素0%区では醗酵臭が生じ, 20°C下では核が褐変し, 核の周囲の果肉が水浸状になり, 透明軟化して, 核離れが悪くなつた。また, 20°C下では1%区にも醗酵臭が生じた。果肉エタノール含量は醗酵臭の生じた区で蓄積が顕著であつた。
    6. 4°C下では酸素濃度3%まで空気中と差がなく,1%以下では低酸素障害を生じ, 貯蔵への低酸素の利用は, 4°C下では利点が少ないと思われた。貯蔵限界は低温障害のため約10日前後と思われた。
  • 熟度が異なるモモ「大久保」果実に及ぼす酸素濃度の影響
    梶浦 一郎, 岩田 正利
    1971 年 40 巻 4 号 p. 430-436
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    前報により, 白肉桃大久保果実に及ぼす酸素濃度の影響ならびに貯蔵中の低温障害の発生には材料の熟度が影響を与えると思われた。そこで, 前報と同様に, 20°C下で酸素濃度0, 1, 3, 5, 10, 21%の混合ガスを常時通気し, 高温下での効果を追試するとともに, 冷蔵混合ガス処理前に3日間, 4°C下空気中で追熟抑制をした未熟果区と20°C下空気中で3日間追熟させた追熟果区とを設けて, 材料の熟度を変えた後, 4°C下で酸素濃度1, 3, 21%の混合ガスを通気し, 1週おきに貯蔵中の変化を調査した。さらに, 未熟果区では, 出庫後, 一部果実を2日間20°C下空気中で追熟させて調査した。
    材料は20°C下空気中で追熟させると, 生食用適熟まで2~3日を要した。
    1. 20°C下では軟化抑制効果は0%区でのみ見られ, はく皮指数変化に対する抑制効果は5%以下で見られ, 低酸素下ほど大きく抑制された。炭酸ガス呼出量は5%以下で抑制されたが, 0%区ではやや高い値を示した。また, 10%以上では食味が淡白な果実の発生が早かつたが, 滴定酸度, 可溶性固形物含量には酸素濃度による一定の傾向は見られなかつた。
    また, 1%以下の区で醗酵臭が生じ, 3%, 5%区の一部の果実にも生じ, これらの区ではエタノール含量も多かつた。また, 0%区では核が褐変した。
    熟度変化抑制効果は5%以下で見られるが, 同時に5%以下では低酸素障害も生じ, 4日目で見ると, 3%, 5%区で醗酵臭が生じない果実が最良の品質を示した。
    2. 4°C下では, 未熟果区, 追熟果区とも, 低酸素濃度による軟化抑制, はく皮指数変化抑制効果とも見られなかつた。炭酸ガス呼出量は一般に追熟果区の方が多く, 両区とも1%区で抑制された。未熟果区では混合ガス処理後15日目に, 追熟果区では20日目に低温障害を生じ低酸素下でも抑制されなかつた。
    4°C下では1%区の一部の果実に醗酵臭が生じ, その中では追熟果区における発生が早かつた。
    3. 4°C下より出庫後に追熟させると, 未熟果区では軟化し, はく皮指数変化を生じるが, 貯蔵中の低酸素条件による残存抑制効果は見られなかつた。
    4. 4°C下では3%と21%の間に, 貯蔵品質で明確な差は見られず, 1%以下では醗酵臭が生じる。以上よりCA貯蔵における低酸素下の利点は少ないと思われる。
    また, 熟度が進んだ材料では, 冷蔵前追熟処理により低温障害発生を遅らせることはむずかしい。今後, より低温下での実験が必要と思われた。
  • イチゴ, エンドウ, ソラマメ, アスパラガスおよび甘果オウトウにおける温度許容度の相違
    岩田 隆, 緒方 邦安
    1971 年 40 巻 4 号 p. 437-443
    発行日: 1971年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    生鮮果実, そ菜の品質を保つには, 収穫直後より消費に至るまで一貫して一定した最適温度におくのが理想であるが, 実際には経済的, 技術的にかなりの困難を伴う。本実験では数種果実, そ菜について, そのような場合に, どの程度まで低温が要求されるのか, 低温貯蔵中にどれほどの温度変動が許されるものかを検討した。処理温度は1°C, 6°Cおよび20°Cを基本とし, 有孔または非密封の無孔ポリエチレン袋に詰めて貯蔵した。
    1. イチゴの鮮度を保つには収穫当日より一貫してより低い安定した低温が要求され, 1°Cと6°Cの差は大きい。予冷あるいは輸送を想定した1日だけ6°Cとし他は1°Cに保つた場合も, 全期間1°Cにしたものに比べると明らかに劣つた。
    2. ソラマメの食味や糖含量を保持するには収穫当日よりなるべく低温に保つことが必要で, 6°Cでは不十分である。
    3. むきエンドウの食味, 糖含量, さや外観の保持にもより低い低温が要求され, 短期間6°Cにおいても明らかに悪影響がみられた。
    4. アスパラガスの鮮度および食味の保持には1°Cと6°Cの間にあまり差はみられず, 冷蔵遅延や一時的昇温の影響も少ない。
    5. オウトウの果梗の鮮度保持には1°Cと6°Cの間にあまり差がなく, 冷蔵遅延の影響も少ない。果実では1°Cおよび6°Cにおいて低温障害が発生したので商品性保持期間は6°C, 1°C, 20°Cの順となつたが, その差は比較的小さい。
    6. イチゴ, むきエンドウ, オウトウについて, 1°C貯蔵を基本とし, 1日のうち2~8時間だけ6°Cに移す変温処理を毎日行なつて, その品質に及ぼす影響をみた。イチゴ, むきエンドウでは変温区はいずれも1°C貯蔵よりも品質の低下は早くなつたが, 6°C貯蔵のものより勝れていた。しかしオウトウ (果実部) では変温区は1°Cおよび6°C貯蔵よりも劣つた。
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