園芸学会雑誌
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46 巻, 2 号
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  • 新美 善行, 大川 勝徳, 鳥潟 博高
    1977 年 46 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ブドウ「デラウエア」の有核果粒の発育と内生のオーキシンおよびアブシジン酸様活性との関係を, 成熟期まで調査した.
    1. 有核果粒の発育は典型的な double sigmoid 曲線を示し, 無核果粒の発育よりすぐれていた.
    2. 果粒中の内生のオーキシン活性と初期の急激な生長速度 (Stage I) との間には密接な関係があった.
    3. 果粒中の内生のアブシジン酸様の抑制物質の濃度は果粒の生長速度が大である (Stage I) 時期には低レベルであるが, その後 Veraison の時期にかけて急激に増加した. しかし, それ以後は増加が停止した.
    4. ナフタレン酢酸の処理は有核果粒の成熟過程を顕著に抑制した. しかし, アブシジン酸, ジベレリンおよびベンジルアデニン処理は有核果粒の成熟過程には影響を与えなかった.
  • (第7報)夏季の葉の水ポテンシャルが温州ミカンの収穫時の果実形質に及ぼす影響について
    間苧谷 徹, 町田 裕
    1977 年 46 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ポット栽植および園地の杉山温州を用い, 夏季の葉の水ポテンシャル (ψ) が果実形質に及ぼす影響について検討した.
    1. 収穫時の果径および1果平均重はS-9bar (短期処理), L-9bar (長期処理) で小さく, その他の区と対照区の間には大きな差はなかった. 着色はS-9bar, L-9 bar が悪く, 他の処理間には一定した傾向は認められなかった.
    果実肥大が停止するか非常に緩慢になる water stressと思われた SL-7bar の晴天日1:00~3:00p.m. のψおよびRL (日なた葉) はそれぞれ, -19~-20bar と19.4sec/cmであった.
    2. 成木 (16年生杉山温州) では, 果実肥大が非常に緩慢になった日の1:00~2:00P.m.のψ (日陰葉) およびRL (日なた葉) はそれぞれ, -16.4bar と 16.7sec/cm であった. 日なた葉のψは日陰葉より 3bar 前後低いと思われるので, これらの値は上記のポット試験の値と近似するものであろう.
    3. 乾燥処理 (ψmax-12.2bar まで乾燥) 終了後のかん水によって, 果実は急速に肥大し, 日中でも全く収縮することはなく, その日の肥大量は1.46mmにも達した. この急速な肥大には, 乾燥処理時の負の肥大量からの単なる回復以外の要因が関与していると思われる.
  • (第2報)二酸化炭素が葉の厚さの季節的変動現象に及ぼす影響
    門屋 一臣
    1977 年 46 巻 2 号 p. 153-157
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ナツダイダイ実生葉の厚さの周期的変動現象が明らかに認められるようになるのは, 5月中旬以降であった.その後, 10月下旬まで周期変動が観察された, 特に6月から9月にかけては, 葉の厚さの変動幅も大きくなり,周期的に変動した. ところが, 12月上旬になると, 変動は不規則となり, 12月下旬には, 周期的変動がほとんど認められなくなった.
    空気中の二酸化炭素の濃度を調節して, 上記の変動現象を観察したところ, 夏季においては, 二酸化炭素処理後数分以内に反応が出はじめ, 葉の厚さが増し, 1,000ppm以内の二酸化炭素の濃度範囲では, 二酸化炭素の濃度が高いほど周期変動における振幅が大きくなった.二酸化炭素の濃度を低下させると, 振幅も小さくなった. 一方冬季においては, 二酸化炭素処理の影響は全く認められなかった.
    以上の結果から気孔の開閉には根の活性が大きく関与していることが推察されるが, さらに検討の要がある.
  • 上田 純一, 中川 昌一
    1977 年 46 巻 2 号 p. 158-168
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    我が国のブドウ園では, 梅雨期ごろから着果枝基部葉の黄変落葉が多く認められる。これは基部葉の受光率の低下することが一因であると思われた。
    1. 棚仕立デラウェア園における調査では, 新梢基部よりも先端部の照度が高く, 基部葉の受光率は6月中旬から8月下旬の間, 晴天日の戸外光度の10%以下であつた。このような影響のために早期落葉は基部ほど多かつた。
    2. 鉢植デラウェア幼樹による人為的しゃ光処理において, 樹体全体を暗黒状態, あるいはしゃ光条件下に置いた場合には基部の落葉は抑制され, 逆に先端部のかっ変落葉が生じた。一方, 樹体の基部のみにしゃ光を行うと, 実際栽培園で認められるような基部の黄変落葉が生じた。また, 基部および先端部の落葉は着果樹, 無着果樹ともほぼ同様であった。
    3. 鉢植デラウェア幼樹の基部しゃ光処理において,しゃ光された基部葉にGA3 50ppm, およびNAA 100ppm を処理すると落葉が促進され, BA50ppmを処理すると落葉は抑制された。更に, キャンベル•アーリー成木においては摘心や副梢切除によつて基部の落葉が抑制された。
    4. 鉢植デラウェア幼樹の基部しゃ光処理において,基部葉の光合成速度が著しく低下し, 逆に先端葉の呼吸速度が増加した。葉内炭水化物含量はしゃ光部位で減少した。更に, 基部葉に取り込ませた14Cの転流はしゃ光された樹体基部よりも受光率の高い先端部の方が多かった。このような結果から, 低照度によるブドウの早期落葉は新梢基部と先端部との炭水化物競合によって生じるように思われた。
  • 酒井 昭, 西山 保直
    1977 年 46 巻 2 号 p. 169-172
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    果樹の有用生殖質の長期保存を可能にするために, まずリンゴの一年枝を液体窒素温度まで冷却後生存させる方法について検討した.
    1. リンゴの枝は約-40°C以低まで冷却すると, 木部が凍害をうけるが, 芽やじん皮組織は-90°Cまで冷却しても害をうけない. そのため, リンゴの芽を約-70°C以低の低温で凍結保存することが可能である.
    2. リンゴの枝を液体窒素中で生存させるための冷却および加温方法と予備凍結温度を検討した. その結果, -40°Cまで予備凍結してから液体窒素中に入れ,0°Cの空中で融解した場合に, もっともよい結果がえられた.
    3. -400°Cまで予備凍結後, 液体窒素温度まで冷却した枝の芽を芽接したところ, 活着率は約80%で, 活着した多くの芽の新梢の生長は正常であった.
    4. 今後, 液体窒素中でのリンゴの芽の生存期間について調べることが必要である.
  • (第1報)花型の変異と無核果形成との関係について
    高木 敏彦, 古川 良茂, 副島 淳一, 苫名 孝
    1977 年 46 巻 2 号 p. 173-180
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    マスカット•ベーリーAにおける花型の変異を調べ,この花型の変異がジベレリンによる無核化の不安定性にどのように関与しているかを検討した. 更に, ブドウ属雄個体の雌性形質誘発に有効であるBAを併用して, 花型の変異ならびにジベレリン処理効果に及ぼす影響を調査した.
    1. 本品種は完全両性花, 不完全両性花, 雄花の3つの型の花をつける. それぞれの発生ひん度は年度, 剪定方法によつて変動した. そして, 不完全両性花にくらべて完全両性花の結実率, 果粒重は大であつたが含種子数は少ない傾向がみられた.
    2. ジベレリン処理を行うと, 不完全両性花にくらべて完全両性花のほうが無核果率, 結実率ならびに果粒重が大になった.
    3. 開花2,3週間前にBA処理を行うと, 完全両性花の割合が増加したが4週間前高濃度処理では不完全両性花の割合が増加した.
    4. BA処理花穂にジベレリン処理を行うと, 2週間前 BA 125, 250ppm 処理で95%以上の無核果率を得た. 一方, 4週間前高濃度処理では対照区より低い無核果率を示した.
    5. 以上のことより, 本品種のジベレリンによる無核化の不安定性に花型の変異が関与していることが示唆された. そして完全両性花の割合を増すことによって, より安定した無核化が得られると考えられる.
    本論文の概要は昭和49, 50年度園芸学会春季大会において発表した.
  • (第6報)水耕培養液中のカリ, カルシウム濃度がそ菜のマンガン過剰障害に及ぼす影響
    大沢 孝也, 池田 英男
    1977 年 46 巻 2 号 p. 181-188
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    培養液中のK, Ca濃度がそ菜のMn過剰障害に及ぼす影響について検討するため, 8種類のぞ菜を供試して水耕試験を行なった.処理はMn 0.5, 30, 100ppmと,KあるいはCa 2, 6, 18me/lの組み合わせとした. 培養液のpHは5に調節し, 処理期間は約3週間とした.
    1. 過剰のMn処理によって, インゲンマメ, ナス,トウガラシ, ホウレンソウでは上位葉に葉脈間クロロシスが, またキャベツ, レタス, セルリーでは下位葉に葉縁クロロシスが発生した.ネギでは下位葉にクロロシスが発生した.K, Caの増施によってこれらのMn誘導クロロシスの発症程度は軽減されたが, 同効果は一般にCaのほうが顕著であった.
    2. K, Caの増施はMn過剰による各種そ菜の生育阻害を改善する効果があった. 同効果もまたCaのほうが顕著であった.
    3. 培養液中のMn濃度の増大に伴って各種そ菜葉中のMn含有率は高まったが, K, Caの増施は葉中Mnの過剰集積を抑制する効果があった. Caの効果はKのそれよりも顕著であった.なお各供試そ菜とも, K, Ca処理とは無関係に, 葉中Mn含有率とMn過剰障害との間に密接な関係が認められ, 葉中Mn集積が増大するほどMn誘導クロロシスの発症および生育阻害の程度が著しかった.
  • 原 徹夫, 田中 耕, 園田 洋次, 岩井 巖
    1977 年 46 巻 2 号 p. 189-192
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    キャベツ (長岡交配早秋) を4段階のMg濃度 (0, 5, 25, 125ppm) とCa濃度 (4, 20, 100, 500ppm)の組 合わせによる16種類の水耕液で栽培し, これら要素供給量がキャベツの生育におよぼす影響を調査した.
    全乾物重および球葉の乾物重は水耕液中のMg濃度の増加により, 水耕液中のCa濃度が高い場合は直線的に上昇し, 低い場合には上昇した後高濃度で低下した. 植物体のMgあるいはCa含有率は水耕液中のそれぞれの要素濃度の増加により上昇し, 他方の要素濃度の増加により低下した. Mg, Ca含有率が高い植物はそれぞれCa, Mg欠乏障害に陥りやすく, また全乾物重が低下するときの限界Mg, Ca含有率は外葉でそれぞれ0.1, 1.3% (乾物当り) であった.
    これらのことより, キャベツの良好な生育のためには, MgおよびCa含有率が適当であるばかりでなく,Ca/Mg含有率比も適当な範囲にあることが望ましいと考えられる.
  • 岩崎 文雄, 武田 善行
    1977 年 46 巻 2 号 p. 193-200
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. カブの肥大現象を形態的, 組織解剖学的および組織化学的に検討を加えるために実験を行なった.
    2. 形態的にははい軸の伸長と肥大の過程を, 組織解剖学的にははい軸部の組織学的変化を, 組織化学的には糖, 核酸およびリグニンについて検討を加えた.
    3. その結果, はい軸の伸長生長は供試した各品種とも6葉ころまでに停止したが, 肥大開始は品種によって差がみられ, 肥大の早い"寄居カブ","金町コカブ"は4葉ころから肥大が開始し, 6葉時には肉眼でも確認できたが,"小岩井カブ"では10葉時でも肥大が開始しなかった.
    4. カブの肥大ははい軸の中央部分から姶まり, これにはい軸の下部と上部が加わって起こるのに対して, 形の長くなるダイコンの肥大は主根が肥大し, これにはい軸部分が付加して起こる. ただ, ハツカダイコンではカブと同様な肥大の仕方が観察された.
    5. カブの肥大を組織学的に観察してみると, 4葉ころまでに完成された形成層環内部の木部柔組織のまわりに新しい師部が形成し活性化するため, 形成層が分断されるようになって組織の増大が起こり, 肥大の起こらぬ.品種とは著しく異なった形態的変化が認められた.
    6. 組織化学的には肥大の起こらぬ品種に比較して,カブのはい軸は4葉時以降でも糖, 核酸の強い反応が認められた. また, 特にリグニン反応では顕著な差異が認められ, 肥大したカブではリグニン反応が極端に弱かった.
    7. カブ, ダイコンとも, 肥大が開始すると幼苗時に形成された初生皮層がはく(剥)脱する現象が認められた. これは初生皮層が内部組織の形態的変化(肥大)に対応できなくなったためと考えられ, 組織学的, 組織化学的にもそれが確認された.
  • とくにその葉の生育に及ぼす遮光および施肥量の影響
    長島 時子
    1977 年 46 巻 2 号 p. 201-210
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    種れんこんから新たに生長した主茎の第1節に形成される葉(第1葉)は, 水面より抽出する"立葉"になるか, あるいは水面に浮ぶ"浮葉"となる. その要因を遮光および施肥条件に着目して研究し, 次のようなことを明らかにした.
    1. 種れんこんの大(生体重150~270g)および小(生体重40~100g)のいずれにおいても, 主茎の第1葉は, 対照区および屋根型遮光区の無施肥区, 標準施肥区および倍量施肥区で立葉になった. しかし, 相対湿度の著しく高かったトンネル型遮光区の標準施肥区および倍量施肥区では浮葉であった.
    2. 主茎の第1葉の葉柄の下皮組織を構成する細胞壁の肥厚程度は, 浮葉の場合に比して, 立葉の場合が大であった. また, フロログルシン塩酸反応は, 細胞壁の肥厚程度と同様な傾向を示し, 立葉の葉柄のように肥厚の著しい場合にはフロログルシン塩酸反応も著しく, 浮葉の葉柄のように肥厚のわずかな場合には, その反応も著しくなかった.
    3. 主茎の第1葉の葉柄の繊維細胞の肥厚程度は, 立葉の場合は, 浮葉の場合に比して大であった. 立葉および浮葉の葉柄の繊維細胞の形態は, いずれにおいてもほとんど同じであった. しかし, 立葉の場合は, 繊維細胞の肥厚が著しく, 浮葉の場合は, ほとんど肥厚がみられなかった. 立葉•浮葉の組織的相違は, 繊維細胞の肥厚程度によることがわかった.
  • 今西 茂, 樋浦 巌
    1977 年 46 巻 2 号 p. 211-218
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    トマトの果実の肥大に関して種子の果す役割を前報(13)にひきつづいて検討した. 供試品種として清州二号など10品種を用い, 5栽培条件を設定して品種比較試験を行ない, 果重と種子数およびこの2形質に関係する子室数, 一粒種子重など数形質について相互関係を調査した.
    遺伝子型相関は果重, 種子数 (種子重) および子室数の間に正の高い相関が認められ, 開花日と果重や種子数(種子重) との間にも正の相関が存在すると推定された.果重を従属変数とし種子数, 子室数, 一粒種子重および開花日を独立変数として重回帰分析を行なった. その結果, 種子数 (種子重) が果重ともっとも密接な遺伝的関係をもち, 子室数が二番目に密接な関係をもっていた.しかし, 子室数が他形質に依存せずに果重と密接な遺伝的関係をもつのに対して, 種子数 (種子重) のそれには種子数が子室数や開花日などの影響を受けて果重に影響する部分と他形質に依存せずに果重に影響する部分のあることが分った.
    一粒種子重と発芽率, 種子当り果重と子室数との間にも正の遺伝子型相関が存在すると推定された. 他方, 負の遺伝子型相関が子室数と一粒種子重, 子室数と発芽率との間に認められるようであった.
    環境相関は遺伝子型相関よりも小さく, 相関の認められる組合せも少なかった. 果重と種子数 (種子重) の間には正の相関が存在したが, 果重と子室数, 種子数 (種子重) と子室数との間には相関は認められなかった. 種子の充実度が果重におよぼす影響についても考察した.
    果重と種子数の品種内環境相関には本研究においても品種間差異が認められた.そして, 複数の環境条件下で比較的安定した相関を示す品種と不安定な相関を示す品種が存在すると推定された.
  • 新美 芳二, 野本 知男, 瀬古 龍雄
    1977 年 46 巻 2 号 p. 219-224
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    露地栽培のイチゴ“ダナー”の株に10月下旬から4月上旬まで白寒冷しゃを直接被覆して株の生長および果実収量へ及ぼす影響を調べた.
    1. 被覆処理は葉の生長に最も大きな影響を与え, 被覆1カ月後に被覆区と無被覆区 (対照区) の間の葉面積の差は約220cm2となった. この期間の葉の生長の差は翌春の3月から4月の両区の葉形成数および葉の生長にも大きな影響を及ぼした.
    2. 全期間を通じて被覆区の葉, クラウンおよび根の生体重と乾物重が対照区のものよりすぐれていた. とくに葉と根で大きな差が生じ, 全般的には10月下旬から11月下旬の1月間に生じた差が4月中旬までそのまま続いた.
    3. 乾物1g中に含まれる全糖は葉, クラウンおよび根のうち葉で最大であった, 両区の各器官の乾物1g中に含まれる全糖は被覆区で12月, 対照区で1月に最大となり, 花芽の発育が盛んとなる4月には対照区のクラウンの場合を除いて大幅に低下した.
    4. でん粉はクラウンと根に多く含有されていた. 被覆区の株のクラウンや根の1g乾物中に含まれるでん粉はそれぞれ12月および1月に最大となったが, 対照区では11月であった. そして3月には両区の各器官の乾物19中のでん粉含量は再び増加したが, 4月には全糖と同様に急激に減少した.
    5. 株あたりの総果実数は被覆区で36.1個, 対照区で28.1個であったが, 果実1個あたりの重量は前者で10.5g, 後者で11.4gであった. また6g以上の商品価値のある果実についても株あたり被覆区で31個, 対照区で24.9個, また果実1個あたりの重量は前者で11.5g, 後者で12.8gであった.
  • 浅平 端, 桝田 正治
    1977 年 46 巻 2 号 p. 225-232
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ヤナギタデ芽生えのアントシアニン生成に及ぼす光および植物生長調節物質の影響を調べた.
    1. 芽生えを蛍光灯 (500luxあるいは5,000Lux) で15分間照射したのち48時間暗黒で色素生成を行なわせたところ, かなりの量の色素が生成された. 光照射時間をそれ以上長くすると照射時間に比例してほぼ直線的にアントシアニン量は増加したが, 色素生成に及ぼす光照射の効果は最初の15分間が最も高かった.
    2. アントシアニン生成に及ぼす光の最大有効波長は660nmであった.
    3. 光照射後に与えたIAA, GA3はアントシアニン生成を著しく抑制したが, NAA, 2,4-Dは, ほとんど影響を及ぼさなかった.
    4. 光照射後に与えたB-9, CCCは, アントシアニン生成を著しく促進したが, MHは全く影響を及ぼさなかった.
    5. 光照射前に与えたB-9は, アントシアニン生成を全く促進しなかった.
    6. BAは, 光照射前に与えても光照射後に与えても, アントシアニン生成を著しく促進した.
    7. 実際栽培に準じて行った実験においても, 種子をBAで処理することによって, 芽生えのアントシアニン量は著しく高まった. この効果は, アントシアニン生成に不利な高温あるいは低照度の栽培条件においても認められた.
  • (第2報)ネギ類, キュウリとメロン, ニンジン, エンドウおよびインゲンマメ
    中村 俊一郎, 田原 望武
    1977 年 46 巻 2 号 p. 233-244
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    Allium 類, キュウリとメロン, ニンジン, エンドウ, およびインゲンマメの種子のタンパク質あるいは酵素をアクリルアミドゲルのディスクで電気泳動して, その泳動パターンによつて種子の種, 品種または品種群を鑑別することについて研究を行なった.
    結果を一括すると第1表のごとくである.
    1. Allium 類4種の区別は, タンパク質, LDH, エステラーゼ, 酸性ホスブァターゼ, ADH, GDHおよびSDHの泳動像によって可能であった. α-GPDはネギ,タマネギおよびニラを区別し得たが, リーキはニラとネギの中間像を示して, リーキとニラあるいはネギとの区別が困難であった. CAはネギとタマネギの区別が困難である他は, それぞれの種が異なった泳動像を示した.
    ニラにおいて花ニラは他の葉ニラ品種に比べて, 酸性ボスファターゼ, ADHおよびα-GPDで特異な泳動像を示し, 花ユラが A. tuberosum 中では特異なものであることが示唆された.
    2. キュウリとメロンとの区別には, タンパク質, エステラーゼ, 酸性ボスファターゼ, SDHおよびCAの泳動像が用い得た.
    3. ニンジン, エンドウおよびインゲンマメでは品種間差あるいは品種群間差を泳動像によって検出することはできなかった.
    4. 泳動像による種子鑑別に関する全研究を通じて,属別では Allium 属が最も鑑別が容易で, Brassica 属および Cucumis 属がこれにつぎ, Cucurbita 属は比較的困難であった. タンパク質法と酵素法とを比較すると, 手順の簡便性から酵素法がまさる. 酵素中ではエステラーゼの利用範囲が最も広かった.
  • 小川 幸持, 青木 勝平
    1977 年 46 巻 2 号 p. 245-249
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    キュウリの促成栽培や抑制栽培は, 低い気温や弱い日光など, 果実の発育に不適当な環境条件のもとで行なわれている. この時期は, 果実の生長が低下し,"ながれ果"とよばれる発育不良果を生じることが多い. このような時期のキュウリ果実の発育に及ぼす植物生長物質の作用を調べた.
    11月から翌年の2月まで, 大型ガラス室内で栽培されているキュウリ, 長日落合2号を用い, その主茎上で,当日開花した花の, 1個体の植物当り1個体づつの花の子房ヘジベレリンA3, ジベレリンA4+7, ベンヂルアデニンならびにインドール酢酸の水溶液を散布した. 1つの試験液ごとに, 10個体の花の子房を用いた. 2週間後, その子房の着果率, 果実の長さ, 直径ならびに重さを調査した.
    ジベレリンA3, ジベレリン A4+7 ならびにベンヂルアデニンは着果及び果実の発育を促進したが, インドール酢酸は促進を示さなかった. 特に, ジベレリンA4+7とベンヂルアデニンの促進作用は著しく, それぞれ100ppm濃度区の果長は, 対照区の2.5倍と2倍となり,重さは, 対照区の10倍と5倍になった. これらの促進作用は, 開花中はもちろん, 開花2~3日前ならびに開花2~3日後の花の子房に処理してもみられた.
    上の実験結果から, ジベレリンA4, A7あるいは或る種のサイトカイニンが, キュウリ果実の発育により強く関係していると考えられる. 更に, この実験結果は, 不適当な環境条件下で生じる果実の発育を抑制するなんらかの内的生理機構が, 外から与えた植物ホルモンによって除かれることを示唆している.
  • 梁川 正, 坂西 義洋
    1977 年 46 巻 2 号 p. 250-260
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. Hippeastrum のりん葉基部の組織片を母球上のしゅじゅの位置から採取し, 無菌培養を行なって, これらの子球形成能力を比較するとともに, りん葉上の各部位および底盤部の組織片からの子球形成の可能性を見た. 各培養片は直径6mmのコルクボーラーで打抜かれたもので, 0.8%の寒天と2%のショ糖を加え, 生長調節物質無添加物 White の培地に置床した.
    2. りん葉最下端の培養片の子球形成率は, 25°Cと30°Cで最大であった. 光の存在は子球の発育を促すが,子球形成そのものには明暗の差がなかった, また培養片の採取季節による差も認められなかった.
    3. りん葉最下端の培養片ことに底盤部組織がこれに付着している場合の子球形成率は大であったが, 底盤部から2mm離れた部位のりん葉培養片の子球形成率はわずか3%であり, 3mm以上離れた部位のものでは子球形成がみられなかった. りん葉と底盤の両組織にまたがる培養片では, りん葉の最下端から子球, 底盤部から根を形成した. 底盤部のみの培養片ではなんらの形成も認められなかった.
    4. 筒状りん葉において, 葉身側は肉が厚く, 反対側は薄くなっている. りん葉最下端の組織片をりん葉の全周にわたって採取し, それぞれの子球形成能力を比較したが, 厚い部分と薄い部分, その中間の部分の差は認められなかった. しかし底盤部に厚薄2枚の隣接りん葉片をつけた培養片を採取し置床した結果, 子球は培養片の両側のりん葉表皮露出面からよりも, 2りん葉片にはさまれた部分に形成されることが多かった. 露出面からの形成について見ると, 薄いりん葉片の方が厚いりん葉片よりも高い形成率を示した. このことは葉身と反対側のりん葉葉えきの再生能力が他の位置より高いことを示唆している.
    5. 母球上でより外部の位置にあり, 成熟の進んだりん葉の培養片ほど子球形成率は全般的により大であった.
    6. 子球形成は基本的には, りん葉基部の背軸面で行なわれるが, 向軸面を上にして置床した場合または液体培地で振とう培養した場合には, 一部の培養片で向軸面からの子球形成が認められた. りん葉基部の組織片を縦に2分して背軸, 向軸の両面に分けて培養すると, 向軸面に子球形成を行なうものが生じた. 向軸面も形成能力を有するが, 背腹両面を有する培養片では, より形成能力の高い背軸面の存在によってそれが抑制されているものと思われる.
  • (第3報)素焼きばち中の可溶性無機成分
    田中 宏, 鹿島 知美, 高塚 和彦
    1977 年 46 巻 2 号 p. 261-266
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    素焼きばちの壁面から浸出される無機成分の種類と量について検討するため, 第1報と同じ7個所の市販の素焼きばちを収集し, はち片を粉末にして, その熱塩酸可溶性, 水溶性および酢酸アンモニウム可溶性無機成分について分析を行った.
    1. 熱塩酸可溶性成分量は東京産の両区(A, B)が各成分とも著しく多く, 一方北茨城産(D)は最も少なかった. 一般的な傾向としては, 焼成温度が高いものほど,可溶性成分量が少なくなるようであった. 成分としては一般にAl2O3とFe2O3が多く, 原土に最も多く含まれているSiO2の浸出量は極めて少なかった.
    2. 水溶性成分については, 30°Cに保った定温器内ではち片細粉末に脱塩水を加えてポリエチレン瓶に入れ抽出させた. なお, はち片に対する抽出水量比が2: 1~20: 1の間では水量を多くするほど各成分の抽出量が増加し, 特に10:1と20:1の間で増加程度が著しかった. 各区ともK2O, Na2O, CaO, MgOなどの成分が比較的多量に抽出され, SiO2, Al2O3, Fe2O3, P2O5などは極めて微量であった. 東京産(A, B)からはいずれの成分も最も多く浸出されたが, 北茨城産(D)と愛知県各区(E, F, G)ではCaOとMgOの抽出量が極めて少なかった.
    10: 1の抽出水量比で1か月間抽出させたはち粉末を, 脱塩水で洗源乾燥後, 再び同比率で1カ月間抽出させた場合の抽出量は全般的に少なくなり, K2OとNa2Oはほぼ初めの20~60%程度に, またCaOとMgOはさらに著しく減少した. 一方P2O5の抽出量は微量であるが, 二次抽出量の方がわずかに多くなる傾向がみられた.
    3. 酢酸アンモニウム可溶性成分(置換性塩基)はどの区でもかなり多量に抽出された. 熱塩酸可溶性および水溶性成分と同様, 東京産(A, B)が各成分ともに最も多く, それ以下の順位も水溶性のそれに類似していた.なお, 水溶性CaOは愛知県産の各区(E, F, G)ではほとんど抽出されなかったのに, 置換性CaOは少量ではあるが認められた. 塩基4成分の中, Na2Oのみは他と異なり, 各区ともに置換性含量の方が水溶性より少なかった.
    以上のように, 素焼きばちから作物に供給される可能性のある無機成分は, K2O, Na2O, CaO, MgOなどであるが, 原料や焼成温度などで量的にかなり異なることがわかった.
  • (第2報)交雑幼胚の培養
    浅野 義人, 明道 博
    1977 年 46 巻 2 号 p. 267-273
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1) ユリの遠縁種間交雑 (花柱切断授粉) によって得られた未熟幼胚の生長を継続させるために胚培養を行ない, L. longiflorum×L.′Sugehime′及び L.′Shikayama′×L. henryi の2組合せの幼胚を用いてその培養条件を検討した.
    2) Murashige & Skoog 培地を基本培地とし, pH5.0, 庶糖濃度20~40g/l程度が適するようであった.一般に庶糖が高濃度になるに従って地下部が強壮に生長する反面, 地上部の生長が抑制される傾向があった.
    3) 生長調節物質 NAA 10-4~10-2mg/l程度の添加が発芽的生長に効果的で, BAはややカルス状の生育を促がした. NAAの高濃度区では地下部の生長が促進され, 地上部の正常な生長が抑制される傾向にあり,BAの高濃度ではその逆の反応を示す場合があった.
  • (第1報)数種の植物の見かけの光合成速度の変化について
    町田 英夫, 小松 春喜, 大石 惇, 細井 寅三, 鴨田 福也
    1977 年 46 巻 2 号 p. 274-282
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. さし木期間中におけるさし穂の光合成作用の働きを明らかにするために, ツバキ, サザンカ, サンゴジュ, レンギョウ, キクの緑枝ざしを供試し, 通気法により赤外線ガス分析計を用いて, さし木後のさし穂の見かけの光合成速度の変化を調査した.
    2. さし木期間中の見かけの光合成速度の変化は, いずれの種類においても, さし木後一時低下し, その後回復する傾向を示したがその低下と回復の早さは, 発根容易なキクとレンギョウにおいて著しく大であった.
    3. ツバキ, レンギョウ, キクについて, 光強度を変えた場合におけるさし木期間中の見かけの光合成速度の変化を調査した結果は, いずれの種類においても10kluxまでは, 光強度が増すにつれて急激に増大し, 20kluxでほぼ最高の値に達し, それより光強度が大となると,かえって低下する傾向がみられた.
    4. サザンカとサンゴジュを供試して, 葉量の異なるさし穂について見かけの光合成速度を比較したところ,さし木当日では葉量の違いによる影響は殆んどみられなかったが, その後の光合成速度の低下が, 葉量のもっとも多いさし穂で, とくに著しかった. また, さし穂1本当りの見かけの光合成速度についてみると, 葉量の多いものほど常に高い値を示したが, 両種ともに葉量のもっとも多いさし穂で, さし木後, その値が一時急激に低下する現象がみられた. しかし, その後の回復もまた早かった.
    5. さし木期間中のさし穂の葉内水分含量の変化を5種の植物について調査した結果, いずれもさし木後減少し, その後再び増加する傾向を示した. それらの変化の様相は, 見かけの光合成速度の変化と大略似た傾向を示した. また, ツバキを供試して, さし木期間中の葉内クロロフィル含量の変化を調べた結果, さし木期間中を通じて徐々に減少する傾向がみられた.
  • (第7報)温州ミカン果実の収穫後の有機酸代謝
    邨田 卓夫
    1977 年 46 巻 2 号 p. 283-287
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    温州ミカン果実に citrate-1.5-14C(0.1μCi, pH3.5) を注入し, 貯蔵90日間の代謝について調べた. 注入した citrate-14Cの代謝速度は非常に速く, 果肉, 果皮でアミノ酸, 糖, たんばく質に変化し, 10日間で約1/2が14CO2として呼出されるのに対し, 果実内に本来含有される citrate (クエン酸) 含量の減少速度は極めておそい. したがって比放射能は注入後10日間で約1/10に低下する. これらのことから, 温州ミカン果実は収穫後貯蔵中もかなり早い turnover で有機酸を生合成しているものと推察した.
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