園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
46 巻, 3 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 富田 栄一, 夏見 兼生
    1977 年 46 巻 3 号 p. 289-296
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    20年生川野ナツダイダイ樹を用いて, 7月に摘果処理を行い, 摘果区(83葉ないし92葉に1果の割合)と無摘果区(62葉ないし69葉に1果の割合)を設け, 果実の肥大および果汁の酸含量の樹内変動に及ぼす影響をみた.
    1. 摘果を行うと, 果実の肥大がよくなってL, M級の果実が多くなり, 階級が上昇した. ちなみに, S級以下の小果の割合をみると, 摘果区で2.1%ないし23.3%なのにたいし, 無摘果区では47.2%ないし49.1%であり, 明らかに無摘果区で多かった. 結果部位別にみた2月調査の平均果実重は, 摘果区で328~376g, 無摘果区で257~381gの範囲にあり, 摘果区では結果部位による差が小さいのにたいし, 無摘果区では著しく大きかった.
    2. 1樹内の果汁の酸含量の分布(2月調査)は, 摘果区で1.4~2.3%, 無摘果区で1.5~2.9%の範囲にあり, 酸含量のバラツキは明らかに摘果区で小さかった.平均酸含量はそれぞれ1.78%, 2.19%であり, その変動係数は9.6%, 13.7%であった. 結果部位別に酸含量をみると, 摘果区で1.74~2.01%, 無摘果区で1.81~2.48%の範囲にあり, 摘果区では結果部位による差が小さいのにたいし, 無摘果区では差が大きかった.
    2月に採収して常温貯蔵し, 4月に調査したところ, 1樹内の酸含量の分布は, 摘果区で0.9~2.0%, 無摘果区で1.1~2.5%の範囲にあり, その平均酸含量はそれぞれ1.45%, 1.68%であった. 貯蔵によって, 酸含量は減少したが, そのバラツキを小さくする効果は認められなかった.
    3. 果実重, 結果枝の葉数と果汁の酸含量との相関関係をみると, 果実重と酸含量および結果枝の葉数と酸含量の間には, 2月および4月調査とも摘果区, 無摘果区の両方で有意な負の相関が認められた.
    果実重と酸含量の単相関係数は, 摘果区でr=-0.19ないし-0.33なのにたいし, 無摘果区ではr=-0.71ないし-0.72と高かった. また, 結果枝の葉数と酸含量では, それぞれr=-0.49ないし-0.28, r=-0.37ないし-0.17 であった.
  • 新美 善行, 大川 勝徳, 鳥潟 博高
    1977 年 46 巻 3 号 p. 297-302
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ブドウ「デラウエア」の有核果粒の内生サイトカイニンの分離, 精製を行いサイトカイニン含量の季節的変動を有核果粒の発育との関連において調査した.
    1. 開花前の果穂および開花期の果肉中のサイトカイニン活性は高く, その後徐々に低下し, 開花後50日を過るとサイトカイニン活性は認められなくなった.
    2. 種子中のサイトカイニン活性は種子の発育と密接に関係しており, 種子の発育速度が著しい時期に高い活性が認められた.
    3. 果粒中の遊離サイトカイニンはアンモニア溶出分画中に少くとも2つ存在し, それらはゼアチンおよびぜアチンリボサイドであると推定された.
    4. 種子中には遊離サイトカイニンの他に未知のサイトカイニン様物質が少くとも2つ存在していた.
  • (第2報)エタノール処理による樹上脱渋 (その2)
    杉浦 明, 原田 久, 苫名 孝
    1977 年 46 巻 3 号 p. 303-309
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    前報に引きつづき, 平核無について花蕾期より7月下旬までの間, 樹上でのエタノール処理が脱渋とその後の渋味の再現, および果実の形質等に及ぼす影響を調べた.用いたエタノール濃度は5%で, 5mlあるいは10mlずつポリエチレン袋に入れて, 花蕾あるいは果実を樹上で被袋処理し, 脱渋を確かめたうえで除袋した.
    1) 7月下旬の処理果実を除いて, 除袋後1~2週間ぐらいの間に可溶性タンニンが再現し, とくに処理時期,が早いほど再現の程度が大きかった. また, 6月中下旬までの処理果実ではほぼ果肉全面が渋味を呈したが, それ以後の処理果実では果てい側半部あるいは果てい部のみに渋味の再現があった.
    2) 収穫果 (9月18日) について褐斑の発生状態をみると, 渋味が果肉全面にあらわれた処理果実では褐斑は殆どみられないか, あっても果頂部付近にわずかに局在している程度であったが, 6月末以降の処理果実では渋味の再現した果てい部を除いて果肉全面に強い褐斑がみられた.
    3) 脱渋処理の時期によって果形や果実の肥大にかなりの影響がみられた. すなわち, 概して早い時期 (5月中旬から6月中旬まで) の処理では果形が扁平になる傾向を示し, また, 強い褐斑を呈するようになった果実(6月末処理) を境にして横径生長の著しい抑制がみられ, 果形にも大きなヒズミを生じた. しかし, 処理時期がさらに遅くなるにつれて横径生長の抑制は徐々に弱まり, 7月末の処理果実では果実の大きさ, 果形ともに無処理果実と変わりないくらいに復した.
    4) 渋味の再現との関連で, 果肉細胞の分裂を調べたところ, 開花後の分裂の最盛期は5月末から6月上旬にかけてであり, 6月下旬には殆ど停止していた. また,分裂細胞はもっぱら果実中部から果てい部にかけて分布していた. 脱渋処理は一時的に分裂を抑制したが, すぐに回復した.
    5) 脱渋処理時期によってみられた渋味再現の様相について若干の考察を行なった.
  • (第3報)花芽形成における低温感応に対する球の性状の影響
    宍戸 良洋, 斎藤 隆
    1977 年 46 巻 3 号 p. 310-316
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    タマネギの花芽形成における低温感応性と球の性状との関係について調査した.
    (1) 大球ほど花芽形成に要する低温処理日数は短縮し, しかし, 一定の大きさ (限界) 以上では必要低温日数のそれ以上の短縮はみられなかった. 限界の大きさと必要最少日数は最適温度とみられる9°C処理の場合, 泉州黄では100~150g; 40日, 札幌黄では30~50g, 30日であった.
    (2) りん片葉はく取およびほう芽葉摘除ともに, かつその程度が強いほど, 低温感応性を低下させた. しかしながら, りん片葉をはく取しない同じ重量の球と比べた場合には必要低温日数は少なかった.
    (3) りん片葉はく取とほう芽葉摘除処理により, 炭水化物の含有率は著しく低下し, 体内栄養と低温感応性とが関連しているものと考えられた.
    (4) 上記の結果は花芽形成に必要な前駆物質の存在を想定することによって説明できるとした. その前駆物質は球の肥大とともに増加し. 低温により花成物質に転化するものであり, 炭水化物とその消長を共にし, 内部りん片葉に多く分布するものと考えられた.
    (5) 吸水•発根させた休眠覚せい球では花芽形成に要する低温処理期間は短く, 休眠中または休眠から充分にさめきらない球では低温感応性は著しく低かった.
  • 浅平 端, 加納 恭卓
    1977 年 46 巻 3 号 p. 317-324
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    イチゴの果実 (果床) 組織の培養による栄養繁殖の可能性を調べる目的で, 母果実の齢および外植組織における種子の有無と外植組織から形成されてくるカルスの性状, 生長量との関連性について調べた.
    1. 2および7日齢の果実組織を種子を除去せずに,0あるいは0.1mg/lのBAと1あるいは5mg/lの2,4-Dを含む培地で培養した場合に, 生長の旺盛な白色水浸状のカルスが形成された. このカルスを10mg/lのBAと0.1mg/lの 2,4-Dを含む培地で培養すれば葉条を分化させることが可能であった.
    2. 2および7日齢の果実組織を種子を除去し, 1あるいは、5mg/lのBAと0.1あるいは1mg/lの 2,4-D を含む培地で培養した場合に, 葉条を分化しうる緑色のかたいカルスが外植組織表面全体に形成された.
    3. 種子を除去しない7日齢の果実組織, あるいは種子の有無にかかわらず12日齢の果実組織を0.1あるいは5mg/lのBAと1あるいは5mg/lの2,4-Dを含む培地で培養した場合に, 極めて小さな細胞からなる白緑色のかたいカルスが外植組織の周辺部に形成されたが,このカルスは葉条を分化しなかった.
    4. 17日齢の果実組織を培養した場合, いずれの区においても細胞肥大のみが起り, カルスの形成は認められなかった.
    5. 果実組織から直接形成される緑色のカルスから分化する葉条も, 白色水浸状のカルスを継代培養して得られる緑色のカルスから分化する葉条も, 分離して生長調節物質を含まない培地で継代培養を行うことで容易に発根し, 幼植物体が得られた.
  • (第2報)カトレヤのかっ変現象について
    市橋 正一, 加古 舜治
    1977 年 46 巻 3 号 p. 325-330
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    カトレヤ類の茎頂培養時に起きるかっ変現象の防止を目的として, 生葉酵素を用いかっ変が防止されるような条件を調べ, そのような条件で茎頂培養を行なった.
    1. かっ変物質の最大吸収波長は285nmに存在する.
    2. 酵素的かっ変の最適水素イオン濃度はpH6.5にあり, それより低いpHで酵素活性は著しく阻害され,pH4では完全阻害される. またシアン化カリ, アスコルビン酸, システィン, チオウレア, 静置条件によってもかっ変は阻害される.
    3. 培養時の茎頂のかっ変は液体培地の静置条件で最もよく防止され, 固体培地に添加したかっ変阻害剤はあまり効果はない.
    4. かっ変の基質は生葉の熱エタノール抽出液に存在し水溶液から酸性酢酸エチル分画に移行する.
  • (第2報)ウォールフラワーにあらわれた半八重咲およびモス=バーベナにあらわれた白色花系統について
    斎藤 清
    1977 年 46 巻 3 号 p. 331-337
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    (1) 花きにおける新変異形質作出のための育種的手法として放射線照射が効果的に採用されており, 従来よく知られた種類としては栄養繁殖を常とする宿根草や球根のいくつかを挙げることができる. 一方, 種子繁殖を常とする1年草では, 照射処理によって偶発した変異の遺伝性や後代における発現状況を確認する必要があるので, 前者ほどに適切な例は稀となっている. 本実験はこの後者の場合として, ガンマー圃場内に栽植された緩照射株に生産された種子の実生を通してえられたウォールフラワーの半八重咲およびモス=バーベナにあらわれた白色花系統における変異性を明らかにしその利用度を考慮したものである.
    (2) ウォールフラワーにあらわれた微八重ないし半八重咲花は本来の4枚花弁に1~数枚のさじ型奇形の過〓が不規則に加わるもので, その程度の強まるにつれて雄•雌ずいの退化もおこり, しだいに不ねんになってくる. 自然結実種子によるγ3世代では大多数の株が微八重ないし半八重咲花をつけ, この形質が単純な劣性であることを思わせた. しかし, 従前から存在している自然発生の半八重咲市販品種に比べると, この新系統は花序が小さく小花が密集し葉幅もやや狭いので実用的価値は低いようである.
    (3) モス=バーベナにあらわれた白色花系統はγ23世代の実生ですべて白色花となり, この形質は有色に対して単純な劣性であると思われる. 原品種に比べて小花がわずかに小さく葉縁にいくらか円味をもつ程度の差はあるが, 草勢はほとんど変わることなく, 花壇用の白色材料として利用されえよう. 文献によれば変種 albaの存在が知られており, その成立もおそらく以前にあらわれた花色喪失の偶発的な自然突然変異によったものであろう.
  • VI. 仔球の出葉に及ぼす scaling 期間および chilling 期間の影響
    松尾 英輔, 有隅 健一
    1977 年 46 巻 3 号 p. 338-342
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    沖永良部島産テッポウユリ「ひのもと」(球周22cm以上) を1975年7月28日入手し, 8月21日実験を開始するまで室内暗所 (約25°C) に貯蔵した. 温湯処理を施さない親りん茎から中部りん片を採取し, ピートに深さ10~15mmに植えこんで, 1.5, 3, 4.5, 6か月間25°Cで scaling した. ひきつづいて, 3°Cで0 (無低温),1, 2, 3, 4, 5週間 chilling したのち20°Cで生育させて出葉を調査した.
    Scaling 期間が長くなるにつれて, chilling 後の出葉は早く, 出葉期間は短かい傾向がみられた. 週あたりの最高出葉率については, scaling 期間が長いほど高く,かつ, その出現時期は早くなった.
    一般に scaling 期間が長いほど全出葉率は高かった.scaling 期間と組み合わされた chilling の効果はscaling の長さによってかなり異なった. すなわち,scaling 6カ月の場合には chilling 期間のいかんにかかわらず出葉率は高かった. これに対して scaling 4.5か月以下の場合には chilling が比較的短かいとき出葉率は高くなった. いいかえると, chilling が長くなると,出葉はむしろ抑制された.
    以上の結果から, scaling 期間であらわされる age がすすむほど仔球は出葉しやすくなることがわかる. また, 低温の刺激によって仔球から出葉するためには, 高温の蓄積が必要であると考えられる.
  • (第3報)花の発達に伴う anthocyanidin-3-glucoside および 3-rutinoside の消長
    土岐 健次郎, 上本 俊平
    1977 年 46 巻 3 号 p. 343-348
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 赤色系および桃色系キンギョソウ花弁のアントシアニン分析により, 前者からは cyanidin-3-rutinosideとともに cyanidin-3-glucoside が, また後者からはpelargonidin-3-rutinoside とともに pelargonidin-3-glucoside がそれぞれ検出された.
    2. 市販の15品種中13品種には, pelargonidin (桃色系) または cyanidin (赤色系) の 3-glucoside はこん跡以下に検出され, 2品種 (いずれも赤色系) には3-glucoside が比較的多量に検出された.
    3. 3-rutinoside は開花後も増加を続けるが, 3-glucosideは開花直前をピークとして後減少し, 老化花弁ではこん跡程度にしか検出されなかった.
  • II. トマト果実の追熟に対する振動の影響
    中村 怜之輔, 伊東 卓爾, 稲葉 昭次
    1977 年 46 巻 3 号 p. 349-360
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1973年から1975年にかけて, トマト果実を1Gおよび3Gでそれぞれ1時間および5時間振動し, その後追熟中の呼吸強度, 着色状態, 果肉硬度, 可溶性固形物含量, 滴定酸度, 糖および遊離有機酸組成などの変化および完熟後の食味について調査した. さらに, 振動時の果実熟度が振動後の呼吸強度に及ぼす影響についても調査した.
    振動によって明らかな呼吸上昇が認められたが, 増加の程度は1G処理区で大きく, 3G処理区ではむしろ小さくなった. いずれも, 振動直後の呼吸増加は約60時間後まで継続した. その後 turning stage で処理した果実では明確なクライマクテリック•ライズがみられたが, マキシマムは3G処理区でやや早くあらわれてきた.一方, 3G処理区では果実表面の着色は一時的に遅れ,また内部ゼラチン部の着色がある程度異常になる傾向が示された.
    追熟中のグルコースおよびフラクトースの変化と振動処理との間には一定の傾向を認めることはできなかったが, クエン酸およびリンゴ酸についてはいずれも turningstage の3G処理区で振動処理中に一時的な増加が認められた. しかし, その後熟度の進展に伴って急速に減少し, 完熟時には1G処理区や無処理区よりむしろ含量は低くなった. また可溶性固形物含量も3G処理区でやや低くなる傾向であった.
    完熟後の食味は3G処理区でかなり低下した. 味が淡白になり, 肉質が粉質化する傾向が認められたが, その劣化の程度は pink stage の果実より turning stageの果実で大きかった. その他, 呼吸増加, 着色異常, 有機酸の一時的な増加とその後の減少などについても, 全体的に turning stage の果実を振動した場合に影響が明確にあらわれてきた.
    以上のような結果からトマト果実に対する振動の影響について論議し, トマト果実は振動刺激に対して生理的に一定の許容域を持ち, その範囲であれば振動刺激が大きいほど呼吸増加は大きくなるが, 刺激がさらに大きくなって許容域を越えると生理的に変調をきたし, 追熟がやや異常になって食味の低下がひき起されるものと推察した. さらに, turning stage の果実がもっとも敏感に反応し, 振動による悪影響を受けやすいことから, トマトの出荷熟度は生理的にはせめて pink stage 程度にすることが好ましいものと考えられる.
  • (第4報)エチレンによるバナナ果実の呼吸促進に対する解糖系の役割について
    寺井 弘文, 緒方 邦安
    1977 年 46 巻 3 号 p. 361-368
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    果実追熟に対するエチレン効果の機作に関する研究の一環として, バナナ果実を用い, エチレンによる呼吸促進に対する解糖系の役割を検討した.
    バナナ果皮切片にモノヨード酢酸を添加し, 呼吸への影響をみたところ, この阻害剤によりエチレン処理区,対照区とも呼吸は阻害された. その阻害剤の濃度間の効果は対照区に比ベエチレン処理区では拡大された. また果皮切片における glucose-1-14C, glucose-6-14Cの炭酸ガスへの代謝実験より, age が進行するに伴い代謝経路の比重はHMP経路からEMP経路に移ることが示された. しかし呼吸量の変化は代謝経路の変遷の時期とは一致せず, むしる glucose-14Cの炭酸ガスへの取り込み量の変化と一致した.
    エチレン処理による呼吸促進中の基質含量を調べたところ, 還元糖含量は果肉, 果皮とも呼吸変化とは無関係に増加した. しかし果肉における各解糖系中間物質の含量は呼吸変化と一致し, 一時増加し以後減少した. 中間物質のなかでもとくに fructose-1, 6-diP の含量変化が著しかった. 果皮では途中エチレン処理を停止することにより, 呼吸は減少する. この場合エチレン処理中のものと比べ, glucose-6-P, fructose-6-Pは高い含量となるのに対し, fructose-1,6-diP, dihydroxyacetone P,pyruvate はむしろ低い値となった.
    果実温度を15°→30°→15°Cに変温した時の果肉の解糖系中間物質の含量を測定したところ, 昇温による呼吸促進時は glucose-6-P, fructose-6-Pは減少の傾向にあったが, fructose-1,6-diP, dihydroxyacetone P,Phosphoenolpyruvate, pyruvate は顕著な変化はなく,エチレンによる呼吸促進時の含量変化と傾向を異にした.
    以上のことからエチレンによる呼吸促進はHMP経路とEMP経路の代謝経路変換によるものではなく, 解糖系の代謝が活性化されることにより行なわれるものと推察した. また解糖系の活性化はエチレンが主にfructose-6-Pから fructose-1,6-diP の段階に影響を与えることによって起こるものと推論した.
  • (第1報)褐変物質とその消長
    内山 善雄, 吉松 敬祐, 井口 卓平
    1977 年 46 巻 3 号 p. 369-374
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    れんこん根茎の表皮に生成する褐変物質の生育中における消長と褐変物質の構成無機元素を明らかにした.
    1. 褐変物質は根茎の肥大とともに増加し, 地上部茎葉の枯死後減少した. 褐変現象の消長は酸化, 還元の条件によって左右されるものと思われる.
    2. 褐変物質は根茎の第1節, 2節に比較的少なく,第3節, 4節に多かった. また褐変物質の付着状態は,根茎の節位別付着量の順位方向と, 各節内における付着部位の方向が相反する方向性をもって分布していた.
    3. 褐変物質の主要構成無機元素は鉄で, ほかに少量のマンガンもつねに共存することが判明した.
    4. 根茎表皮の明度は褐変の程度をよく表現し, 鉄,マンガン含量と負の相関関係を示した.
    5. 堆きゅう肥は褐変現象を抑え, 褐変の消長に重要な役割を演ずるものと推考された.
  • (第8報)温州ミカン果実の酸および糖の代謝
    邨田 卓夫
    1977 年 46 巻 3 号 p. 375-379
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    収穫後の温州ミカンの酸と糖の代謝について調べるために citrate-1,5-14C (pH 3.49), glucose-1-14C (pH7.0, G-1-14C) および glucose-6-14C (pH 7.0, G-6-14C) を0.1μCiずつ, ミカン果実の袋 (segment) に果皮を通して, 注射器で注入しトレーサー法で, これらの物質の代謝の模様を調べた.
    1. 注入された citrate-1,5-14Cは速やかに脱炭酸され, 注入後10日間で注入量の約1/3が14CO2として果実外に排出された. これに対しG-1-14CとG-6-14Cの代謝速度は比較的おそく, 排出された14CO2は50日間で全量の, それぞれ6.5%および6.3%であった.
    2. G-6-14Cからの14CO2とG-1-14Cからの14CO2の量比は, 注入後2, 3, 5, 10, 50日で, それぞれ0.34,0.37, 0.63, 0.68, 1.02で注入直後にはG-6-14CよりもG-1-14Cの脱炭酸速度が速く, 注入した glucose-14Cが, 当初 Hexose monophosphate pathway を経て分解され, 次第にこれた Embden-Meyerhof-Parnas 経路に移行して分解されることが示唆された.
    3. 注入した citrate-14C は果肉では速い速度で糖,アミノ酸, たんぱく, ペクチンに代謝され, 注入10日後には酸として存在するのは50%以下になる. これに対し glucose-14Cの代謝速度はゆるやかで, 注入50日後でもなお80%に近い量が中性区分に残存している.果実の可溶性区分のうち, glucose から酸, アミノ酸に移行するのは50日後に約20%である.
    アイソトープの注入の方法やpHなどなお実験技術上に問題が残されるが, 以上のように収穫後の温州ミカン果実に酸の速い分解系や糖の直接酸化系が存在することが明らかで, 品質向上のためこれらの代謝系の利用の可能性が示唆される.
  • (第1報)成熟期の呼吸量, エチレン排出量および内部エチレン濃度の変化
    加藤 公道, 阿部 薫, 佐藤 良二
    1977 年 46 巻 3 号 p. 380-388
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    リンゴ (“ゴールデン•デリシャス”, “スターキング•デリシャス”および“ふじ”) における熟度判定の基礎資料を得るため, 成熟期に7~14日間隔で4~6回収穫し, 収穫1日後から7~20日後までの呼吸量, エチレン排出量および内部エチレン濃度を測定した.
    1. 呼吸量の増加は, 収穫時期が遅くなるほど収穫後早く始まるようになった. 収穫時期が遅い“ゴールデン•デリシャス”および“スターキング•デリシャス”は,収穫1日後の呼吸量が多くなるとともに, その後の呼吸量も増加が続き, もっとも遅い収穫果は収穫時に climactericpeak 付近の段階に達した. 一方, 収穫時期が遅い“ふじ”では, 収穫1日後の呼吸量は多くなったが, その後は呼吸量が一時減少してから増加した. ただし, 収穫後の増加は次第に小さくなり, もっとも遅い収穫果は呼吸量の増加がみられなかった.
    2. エチレン排出量の増加は climacteric rise 時に認められた. ただし, “ふじ”は収穫時期が遅くなると,エチレン排出量が増加してから呼吸量の増加が始まるようになり, もっとも遅い収穫果はエチレン排出量が増加しても呼吸量の増加はみられなかった.
    3. 内部エチレン濃度の急上昇は, 収穫時期が遅くなるほど収穫後早く始まるようになり, 収穫時期が遅い“ゴールデン•デリシャス”および“スターキング•デリシャス”は, 収穫1日後の内部エチレン濃度が高くなった. 一方, “ふじ”は収穫時期が遅くなっても, 収穫1日後の内部エチレン濃度は上昇が徐々で, 内部エチレン濃度の急上昇は大部分の果実でその後に起きた.
    4. 以上の結果から, 内部エチレン濃度は, 成熟期に果実のエチレン生成が著しく増大するとともに急上昇し,熟度判定の指標とすることができると考えられる.
  • 河野 澄夫, 岩元 睦夫, 早川 昭, 真子 正史
    1977 年 46 巻 3 号 p. 389-394
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    温州ミカンの果実の呼吸を, 果皮を通してのO2, CO2などのガス移動現象と考え, 定常法, 非定常法の2方法で果皮のガス透過性の難易を示すガス透過係数の測定を試みた. 結果の概要は次の通りであった.
    1. 温州ミカン果皮自体の排出するCO2を利用して, 果皮中におけるCO2のガス透過係数の定常的測定を行なった.
    (1) 果皮全体の呼吸量の92%がアルベド側へ排出されることから, アルベド側へ排出されるCO2量は,1975年11月14日, 12月15日の試料につき, 単位時間, 単位面積当り, それぞれ1.43×10-2, 2.41×10-2[cm3/cm2/hr] であった (第3図, 第4図).
    (2) 果皮とプレートに挾まれた空間のCO2濃度は,時間の経過と共に上昇し, 実験開始後10時間以上経過すると平衡状態に達した. 18~20時間経過時のCO2濃度をもって平衡濃度とし, 11月14日, 12月15日の試料につきそれぞれ4.7, 8.0[%] の値を得た (第5図).
    (3) (1), (2) の結果と (1) 式を用いて, 温州ミカン果皮のCO2のガス透過係数を算出し, 11月14日,12月15日の試料につきそれぞれ11.3×10-4, 11.5×10-4[cm3/cm/hr/cmHg] の値を得た (第1表).
    2. 非定常法によって果皮中におけるCO2, O2, N2のガス透過係数を求めた結果, それぞれ8.9×10-4, 5.2×10-4, 4.7×10-4[cm3/cm/hr/cmHg] となり, ガス透過係数は大きい順にCO2>O2>N2であった? (第1表).3. プレート上に伏せた半球状果皮のアルベド側に封入したガスと異種のガスをフラベド側に流気させたとき,果皮両側間に生じる圧力差を述めた結果, CO2, O2, N2のガス透過係数は, 大きい順にCO2>O2>N2であることが確認された (第8図).
  • 黒田 佐俊, 秋元 浩一, 杉本 俊一, 酒井 正稔
    1977 年 46 巻 3 号 p. 395-401
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    青果物の目減推定の方法を提示するため, ホウレンソウの場合について実験を行なったところ次のような結果を得た.
    〔1〕平衡含水率測定: 試料を温度一定の密封容器に入れ, 平衡する空気湿度を測定する方法が, 比較的短時間に測定が終り, 方法も簡単である.
    〔2〕ホウレンソウの平衡含水率は次式で与えられる.
    吸湿過程 1-rh=exp(-1.14×10-4T•Me1.169)
    〔2〕-1
    脱湿過程 1-rh=exp(-8.7×10-5T•Me1.170)〔2〕-2
    rh: 空気相対湿度 (小数表示)
    T: 絶対温度 (°K)
    Me: 平衡含水率
    〔3〕ホウレンソウの目減推定: 次の4式と〔2〕-2 式を用いることによって可能となる.
    V=(1-M+100/M1+100)×100
    M-Me/M1-Me=exp[-(Kt)n]
    K=8.245×108exp(-7.383×103/T)
    n=6.24×10-3v+0.537
    V: 任意時間後の目減
    M1: 初期含水率
    K: 乾燥速度係数
    n: 乾燥定数
    t: 時間
    M: 任意時間後の含水率
    T: 絶対温度°K
    v: セ氏温度°C
    Me: 平衡含水率
feedback
Top