園芸学会雑誌
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50 巻, 4 号
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  • 加藤 忠司, 久保田 収治
    1982 年 50 巻 4 号 p. 413-420
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    厳寒期における温州ミカンの硝酸還元, 同化およびたん白質合成能力を夏季におけるそれらとの比較において調べた.
    細根の硝酸還元力 (in vivo) は33°Cにおいて最高であった. 5°Cでは最高活性の1/4, 2°Cでは1/9の値を示し, 0.5°Cにおいても1/10の能力を保持した. 葉では5°Cで最高活性の1/4, 2°Cで1/7, 0.5°Cにおいて1/8の値を示した.
    厳寒期 (最低温度-4°C, 最高温度9°C, 平均温度2.5°C) に吸収された硝酸は集積することなく, 細根においてアミノ酸に同化された. 最も多く生成されたアミノ化合物はアスパラギンであって, ガンマーアミノ酪酸, アラニン, アスパラギン酸, グルタミン酸などがこれに次いだ. プロリンの生成は少なかった. このようなアミノ酸の生成パターンはプロリンを除くと夏季のそれに類似した. 一方, 葉においては, 厳寒期10日間に15Nを取込んで生成されたアミノ酸はきわめて少なく, アミノ酸合成の活発な夏期とは対象的であった.
    15Nの細根タンパク質への取込みは厳寒期においても確実に進行した. その程度は夏季の約1/10であった. またタンパク質に取込まれた15N-アミノ酸組成は夏季のそれと比較して明らかな差があり, 合成されるタンパク質のアミノ酸組成が厳寒期と夏季で異なることが示された.
  • 加藤 忠司, 久保田 収治, Surno BAMBANG
    1982 年 50 巻 4 号 p. 421-426
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    冬季に吸収された窒素の温州ミカンにおける分布と春季における再配分を明らかにするため, 15N-硝酸を使って1976年に実験を行なった.
    厳寒期における窒素の吸収量は初夏 (6月上旬) の約1/10であった. また吸収された窒素の90%以上が根部に留まり, 地上部へ移動した量は10%に満たなかった. 根部にあってはとくに細根に多く分布した. 春季にはこれら窒素のかなりの部分が地上部へ移動し, 吸収15Nの分布は根部24%, 地上部旧器官36%, 地上部新生器官40%となった. 地上部新生器官のなかにあって花器が最も高い重窒素濃度を示した. 新生器官の旺盛な伸長期にあっても1年生葉は15Nのシンクとして働いた.
    冬季吸収窒素が地上部へ移動する際の主要窒素化合物は硝酸およびアスパラギンであると推測された.
  • 田辺 賢二, 林 真二
    1982 年 50 巻 4 号 p. 427-431
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    障害発生樹および健全樹の果実について, アルコールおよび水に不溶な果肉成分をさらに0.2%蓚酸アンモニウム, 続いて0.05N HCl で抽出し, それらの分画中のK, Ca, Mg 含量を比較し, 障害発生との関連を調べた.
    1) 0.2%蓚酸アンモニウム可溶性分画におけるK含量の動きをみると, 7月中旬に肉眼的に障害の発生が認められる早期発生型の障害発生樹では, 5月中旬以後健全樹に比べて含量が著しく高かった.
    また8月下旬から9月上旬に障害の発生が肉眼的に認められる晩期発生型の障害発生樹においては, 7月上旬以後健全樹に比べてきわめて高かった.
    一方この分画中の Mg 含量についてみると, 早期発生型の障害発生樹では5月上旬以後健全樹よりやや高い傾向を示した. また晩期発生型の障害発生樹では, 7月下旬以後にやや高くなる傾向を示した.
    2) 0.05N HCl 可溶性分画においては, 8月上旬ごろより障害発生樹の Ca 含量が健全樹のそれよりもやや高い傾向を示した.
    3) 以上より障害の発現が肉眼的に観察可能となる時期の30~40日前に0.2%蓚酸アンモニウム可溶性のK含量が果肉中に増加することが, 障害発生に結びつくものと考えられた.
  • 田辺 賢二, 林 真二, 村山 信美
    1982 年 50 巻 4 号 p. 432-435
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    障害が毎年発生する12年生‘二十世紀’樹を中間台として, ‘新水’‘幸水’‘豊水’‘長十郎’‘新興’および‘二十世紀’を亜主枝ごとに高接ぎした.
    3年後同一条件下における障害発生の品種間差を調査するとともに, 幼果および収穫時の果実における果肉中の無機成分組成と障害との関係について検討した.
    1.‘新興’‘長十郎’‘二十世紀’では障害発生率が高くまたその症状も著しく重かった. ‘新水’および‘豊水’ では果肉の硬化を伴わない凹凸を主とする症状の軽い障害が発生した. しかし‘幸水’には障害は全く発生しなかった.
    2. 6月上旬に果肉中の無機成分を比較したところ, 障害の著しく発生した‘新興’‘二十世紀’‘長十郎’ではいずれも可溶性K含量が高く, Ca 含量が低かった.
    これに対して, 障害程度の軽い‘新水’‘豊水’および障害の発生しなかった‘幸水’では, 前述の3品種に比べて可溶性K含量が著しく低く, また Ca 含量がK含量に対して相対的に高かった.
    また不溶性分画の一つ, 0.2%蓚酸アンモニウム可溶性分画では, 障害の発生程度の強かった‘新興’‘長十郎’ ‘二十世紀’にK含量が高く, 程度の弱かった‘新水’‘豊水’および発生をみなかった‘幸水’ではきわめて低かった.
  • 岡本 五郎, 今井 俊治
    1982 年 50 巻 4 号 p. 436-444
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ブドウの花穂では, 開花1~2週後に小花の多くが小花梗の基部からいっせいに落果する. 開花, 受粉した小花が結実または落果するに至るまでの過程を知るために, ‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’について組織形態学的観察を行った. また, 結実率を高めるために一般的に行われている開花期前の摘心, 整房, ホウ素の散布の各処理は, 子房の発育にどのような影響を与えているかについても検討した.
    1. 花粉管の伸長を蛍光顕微鏡で追跡した結果, 受粉1日後にはほとんどの小花で花粉管が子房内の4胚珠のうちの3または4胚珠内に, 珠孔を通って到達しており, 2, 4日後にみてもその到達率は変わらなかった. 結実率は摘心•整房区で28.6%, ホウ素散布区で15.8%, 無処理の放任区では9.5%と著しい差があったが, 花粉管の伸長数や, 胚珠到達率には区による有意な差はなかった.
    2. 受精が完了したことを示す胚乳核の分裂は, 開花2, 3日後から始まり, 4日後には各区とも約80%の胚珠で2個以上の遊離核が認められた. したがって, 花粉管が胚珠に到達すればほぼ確実に受精が行われること, 及び放任区の結実不良は不受精が原因しているものでないことが推論される.
    3. しかし, その後の遊離核の分裂活性には区による差が大きく, 開花4日後に5核以上に分裂している胚珠の比率は, 放任区では41.5%であったが, ホウ素散布区では52.6%, 摘心•整房区では69.4%であった. したがって, これらの処理は受精後の胚乳の発達を促進する効果があると考えられる.
    4. 開花2~4日後から, 多くの胚珠で珠心の萎縮が起り, それらの胚珠はその後発育を停止し, 退化した. 開花6日後における退化した胚珠の比率は, 摘心•整房?区では約45%, ホウ素散布区で54%, 放任区では67%に達し, この頃から落果が始まった. どの区でも, 1子房内で3または4胚珠が退化すると, その子房は落果し, 1胚珠のみまたは退化しなければ, ほぼ確実に結実した. ただし, 2個の胚珠が退化した子房は, 放任区ではほとんどが落果したが, 摘心•整房区では約半数が結実した.
    5. 以上のことから, ‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’の落果は不受精によるものではなく, 珠心の萎縮に始まる受精後の胚珠の退化が原因と考えられる. 一つの小花が結実するかどうかは, 子房内で発育を続ける胚珠の数によって決まるところが大で, 開花期前の摘心及び整房, あるいはホウ素散布は, おもに胚珠の退化を防ぐことによって, 結実率を高めるものと考えられる.
  • 高木 伸友, 井上 襄吉
    1982 年 50 巻 4 号 p. 445-453
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ガラス室に栽培したブドウ‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’を供試して, 室温が諸器官の生育に及ぼす影響を調べ, 省燃料化の可能性を検討した.
    1. 結果枝の初期伸長は, 昼温とか夜温とかいった特定の時間帯の温度の影響よりも, 日平均室温との関係が密接で, “日平均室温-2.9°C”の累積値と伸長量との間には一定の関係が保たれていた.
    2. ほう芽から満開までの所要日数についても日平均室温との関係が密接で, 日平均室温-2.7°Cの累積値が661°C日に達した日にほぼ満開になった.
    3. 果実生長第1期においては, 夜温または日平均室温が高いと肥大が促進されたが, 第2期に入るとその促進効果は認められなくなった.
    4. 満開から果粒軟化期までの所要日数については, 室温が高くても, 必ずしも短縮されるとはいえなかった.
    5. 結実率は, 時間帯では0~6時の室温, または, 開花期間中の室温が低いと高まる傾向が認められた. 1粒中に含まれる種子数については, 室温との関係が認められなかった.
    6. 夜間における室温を低めに管理すると, 生育は若干遅延するが, 加温用燃料の消費量は大幅に節減されるものと考えられた.
  • 山川 祥秀, 清水 均, 櫛田 忠衛
    1982 年 50 巻 4 号 p. 454-460
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ‘甲州’ブドウの昭和55年の味なし果と健全果について, 果実の粒径及び粒重と, 主要成分である糖と酸の経時的変化を調べて, 次の結果を得た.
    1. 味なし果の粒径と粒重の増加曲線は成熟過程中, 健全果とほとんど同じ形を示した. ただし, 味なし果の方が粒径, 粒重ともに終始わずかに大きい値を示した.
    2. 味なし果の糖度は9月初めの着色の時期までは健全果と全く同じ上昇を示したが, その後は上昇が止った. 健全果はその後も順調な上昇を示し, 収穫期には18~19%まで上昇し, 味なし果との差は6~7%に達した.
    3. pH の変化については, 味なし果はゆっくりとした直線的な上昇傾向を示したが, 健全果は典型的なS字曲線を示した.
    4. 還元糖は幼緑果期を除けば上記糖度の場合と同様であった.
    5. 滴定酸度は8月上旬に味なし果で5.00g/100ml, 健全果で5.15g/100mlの最高に達し, 以後急減して, 収穫期には逆転し, 味なし果0.95g/100ml, 健全果0.86g/100mlとなった.
    6. ブドウ糖と果糖の総量の変化は還元糖の場合と同様であったが, 収穫期に味なし果ではブドウ糖5.2%, 果糖5.7%, 健全果ではブドウ糖8.4%, 果糖9.4%となった. また, G/F値は成熟初期は1で, 9月初めになって1を割り, 収穫期に味なし果で0.92, 健全果で0.89となった.
    7. 酒石酸とリンゴ酸の総量の変化は滴定酸度の変化と同様であったが, 成熟初期では酒石酸よりもリンゴ酸が多く, 両酸とも味なし果の方が健全果よりも少なかった. しかし, 収穫期にはリンゴ酸よりも酒石酸が多く, 味なし果では健全果よりわずかにリンゴ酸が多く, 酒石酸は少なかった. また, 結合型の酸の割合を計算し, 味なし果で17.4%, 健全果で24.6%の値を得た.
    ‘甲州’の味なし果樹の外見的生育経過と収穫量は健全果樹とほとんど違いはなく, 強いて言えば, 味なし果実の方がわずかに着色が劣る程度であった. しかし, 成分的には味なし果の言葉が示すとおり, 糖分が極端に低く, 酸が高く, ‘水っぽい’ものであって, この変化は着色の始まる9月になって突然に起こるものである.
  • 中村 俊一郎, 寺西 武夫, 青木 美珠代
    1982 年 50 巻 4 号 p. 461-467
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    セルリー種子の発芽促進に対するベンジルアデニン(BA), ジベレリン(GA3又はGA4)及びポリエチレングリコール(PEG)6000溶液処理の効果を調査した. またホウレンソウ種子ではPEG処理の発芽促進効果とともに, 処理後の乾燥貯蔵の可能性を調査した.
    1. セルリー種子は20°Cを越えると発芽率が低下した. 発芽促進剤としてはBAが有効で, GA4も効果があるが, GA3は無効であった.BAとGA4とを併用すると最も有効であった.
    2. セルリー種子はPEG処理によって発芽速度が早まり, 又25及び30°Cでの発芽率が上昇した.
    3. 処理期間は7日間でも大きな効果が見られたが, 14日間処理すれば効果は更に増大した.
    4. 処理温度は, 種子ロットによって, 15°Cが好適な場合と, 20°Cが好適な場合とがあった.
    5. PEG処理中に光線を与えることによって, 処理効果が増大した.
    6. PEG溶液中にBAを加えることによって処理効果が増大した. しかしGA4を加えても効果の増大は見られなかった.
    7. ホウレンソウ種子もPEG処理によって発芽速度が早まり, 30°Cでは発芽率も増大した.
    8. ホウレンソウ種子をPEG処理後, 7日ないし14日間貯蔵した時, 発芽率の低下は見られず, 発芽速度の減少も僅少にとどまった.
  • 浅平 端, 細木 高志, 新谷 清
    1982 年 50 巻 4 号 p. 468-474
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    低温により誘起されるトマトの乱形果に関して, 植物生長調節物質の影響を検討した. オーキシン移動阻害剤であるTIBAおよびNPAは心室数を増し, 果頂部が融合しない果実 (catfaced fruit), 果皮に裂け目が入り胎座部が見える果実 (strawberry fruit), 偏平果および重合果の発生を促進した. TIBAおよびNPAと同様な作用をもつと考えられる bendroquinone も同じ効果を示した. オーキシン類のPCPA, 2,4-Dおよび2,4,5-Tは心室数を減少させ, 偏平果および三角果の発生を抑制した. ジベレリン(GA3)は頂裂果の発生を促進したが, ジベレリンの合成を阻害すると考えられるSADHやCCCは低温下での乱形果発生を防止できなかった.
  • 増井 正夫, 糠谷 明, 石田 明
    1982 年 50 巻 4 号 p. 475-480
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    窒素 (NO3とNH4の合計) 濃度90ppmで, NO3: NH4の比率10:0, 8:2, 6:4, 5:5, 4:6, 2:8, 0:10の7処理を設け, メロンを砂耕栽培した. 全生育期間中の1株当たりの処理溶液は78lであった. NH4の比率が高くなると生育は低下し, 果重は減少したが, 果実の糖度はやや増加した. NH4の比が増加するにつれ, 葉のN含量は増加した. 植物体各部及び培地(砂)のNO3-NとSH4-N含量は, 施用した窒素の形態をよく反映した. 1株当たりの窒素吸収量は, NH4のみを施用した区が5,137mgで最も多かった. NH4の比が増加するにつれ, 土壌溶液中のNH4-N含量は増加したが, NO3-N, Na含量, pH, ECは減少する傾向がみられた.
  • 原 徹夫, 中川 敦子, 園田 洋次
    1982 年 50 巻 4 号 p. 481-486
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    早秋カンランを3段階のNO3-N濃度 (5, 50, 500ppmN) の培養液で育て, 結球初期に各Nレベルの外葉15枚のうち上•中•下位各5葉のいずれかを残して切除し, N供給量と外葉切除処理が結球肥大に及ぼす影響を調査した.
    結球重はN濃度5ppmではきわめて小さく, 50ppmで増加し, 500ppmでやや低下した. N濃度が50あるいは500ppmの場合には, 上•中位葉切除 (すなわち下位葉のみ残した) により結球重は大きく低下したが, 中•下位葉切除では結球重の大きな低下は見られなかった. 5ppmの場合には, 結球重がきわめて小さく, 外葉切除処理の結球重に対する明瞭な影響は認められなかった. 植物体中の全N, 80%エタノール可溶性NおよびNO3-N含有率はN濃度の増加で上昇し, また上•中位葉切除によりさらに上昇した. 全糖含有率は5と500ppmNよりも50ppmNの場合に高く, 上•中位葉切除により低下した. 50ppmNで最高結球重の得られた外葉無切除植物 (対照区) の場合, 外葉の全炭水化物/全N含有率比は約10であった.
  • 糠谷 明, 増井 正夫, 石田 明
    1982 年 50 巻 4 号 p. 487-496
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    エダマメの耐塩性と塩の種類との関係を明らかにするため, 砂耕により本実験を行った. 海水, NaCl, Na2SO4, MgCl2, MgSO4の塩類源をそれぞれ-1.20, -1.70, -2.70barとし, 生育を基本培養液 (-0.70bar) の対照区と比較した. 全植物体の乾物重, 莢と種子の新鮮重, 着莢数は, 対照区で最大となり, 浸透ポテンシャルが低下するにつれ, それぞれの塩類源で減少した. 生育は, MgSO4ですぐれ, 海水とNa2SO4でやや劣り, NaClとMgCl2では最も劣った. NaClとMgCl2の-2.70bar区の生育は, 著しく抑制された. Cl塩処理の塩害症状は, SO4塩処理による症状とはかなり異なっていた. Cl塩処理では, クロロシスとネクロシスが葉縁にみられ, 生育の中•後期には上位葉にも進行した. その程度は浸透ポテンシャルが低くなるにつれて著しくなった.SO4塩処理では, -1.70bar区のみに葉脈間クロロシスがみられた. 葉中及び砂溶液のNa, Mg, Cl, SO4含量は, それぞれの処理区で, 処理培養液の浸透ポテンシャルが低下するにつれて増加する傾向がみられた. また, 処理培養液の浸透ポテンシャルが低下するにつれ, 砂溶液のECは増加し, 浸透ポテンシャルは減少した. それらの値は, 等浸透ポテンシャルの場合, 各塩類区でほぼ同じ値を示した.
  • 大垣 晃一
    1982 年 50 巻 4 号 p. 497-502
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    本研究では L. maculatum var. bukosanense のカルスの再分化と増殖に対するIAAとBAの単独及び組み合わせの効果をみた.
    1) IAA 1ppmの単独添加の培養において, 苗条, 不定根の再分化およびカルスの増殖が共に最高であった.
    2) 再分化がみられるまでの時間には遅速があり, 同調的には起こらなかった. さらに発育の度合にも差が見られた.
    3) IAA 1ppmの添加培地におけるカルスの再分化能は, 60日ごとの継代培養で4代目まで良く維持された.
    4) 組織の観察では苗条の発育形態に, 子球型と子球欠如型の2型が見られた.
    5) 不定根原基の前形成層は, 不定根の原基が観察された時, すでに形成されている.
  • 今西 英雄
    1982 年 50 巻 4 号 p. 503-510
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 収穫調製後の種々の期間室温下で乾燥貯蔵したグラジオラス木子を寒天培地に置床し, 10~30°Cの種々の温度下において, 木子の休眠程度と発芽温度との関係を調べた.
    2. 発芽可能な温度域は収穫後最も早い12月の置床では全くないか, 極めて狭かったが, 置床時期が遅くなるにつれて10~15°Cから10~25°Cへと広がる傾向がみられ, その広がりを示す時期は剥皮球の方が早かった. なお30°Cではいずれの置床時, 品種においてもほとんど発芽がみられず, 発芽の限界温度に近いと考えられた.
    3. 木子の好適発芽温度はその休眠段階に応じて異なり, 休眠がまだ完全に破れていない休眠後期の段階では15°C前後, 休眠の破れた段階では20°C前後にあることがわかった.
    4. 室温乾燥貯蔵を収穫の翌々年の春まで続けると, 発芽可能な温度域が広がり, 発芽率が高くなることから, 発芽促進に有効であることを明らかにした.
    5. 休眠の深い段階で置床した木子は10~30°C, とくに20~30°C恒温下で湿潤に保てば, 1年以上不発芽の状態に保持できるが, 次第に休眠が浅くなっていくことがわかった.
  • 大石 惇, 塩原 佳子, 町田 英夫, 細井 寅三
    1982 年 50 巻 4 号 p. 511-515
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    マサキの緑枝挿しの発根における光の役割を明らかにするために, 以下の実験を行い, 次のような結果を得た.
    1. 9~10月に行った挿し木において, 異なった枚数の寒冷しゃで遮光したところ, 発根率ではほとんど変化がみられなかったが, 根数及び根重では遮光の弱い区で優れる傾向を示した.
    2. 挿し木中の異なった時期に暗黒並びに摘葉•摘芽処理を施し, それらが発根に及ぼす影響を比較調査したところ, 挿し木14日後以前に暗黒処理を開始した挿し穂の発根率が葉•芽の着生の有無によって著しく相違し, この時期における葉及び芽のもつ光合成以外の要因の働きが発根率に大きく関与することが推察された.
    3. 暗黒処理の開始が遅くなるにつれて, 根数と根重がしだいに増大し, かつ, いずれの開始期のものも, 葉芽の着生の有無によってかなりの相違がみられたことから, 挿し木期間を通じて光が発根に密接に関係し, 発根に対する葉及び芽のもつ光合成以外の要因の働きが大きいことが推察された.
    4. 自然日長に合わせた人工照明下の挿し穂について, 挿し木期間の前半期と後半期にCO2を含まない空気を与え, それらの発根量の相違から発根と光合成との関係を調査したところ, 発根率に対しては光合成はほとんど関与せず, 後半期における光合成が発根に対して重要な役割を果たすことが認められた.
  • 邨田 卓夫
    1982 年 50 巻 4 号 p. 516-520
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    緑熟カボスの脱緑防止を目的とした低温貯蔵の可能性を検討する目的で, 1~30°Cの温度範囲でのカボスの生理的変化, 1~10°Cの温度範囲での低温障害の発生について調べ, カボスの低温耐性について考察した.
    1. 果皮色の緑色から黄色への変化は, 5~20°Cの温度範囲では, 温度が高いほど速かった. 30°Cでは15°C,20°Cよりもむしろ果皮色の変化が抑制された. 1°Cでは果皮の脱緑が強く抑制され, 5か月後も50%以上のクロロフィルが残存した.
    2. 果実の呼吸量は, 貯蔵期間を通じて1~30°Cの温度範囲で, 温度が高いほど多かった. 1, 5, 10°Cでは貯蔵中に呼吸量が微増し続け, 15, 20, 30°Cでは逆に減少し続けた.
    3. 果実のエチレン生成は1°Cでかなり活溌で, 5~20°Cに比べて, 発生量は貯蔵期間を通じて多かった.
    4. 1~28°Cの温度範囲での果実の呼吸の Arrheniusplot には4°Cと16°Cに break point がみられた.
    5. 果実は1°Cで貯蔵4か月ごろから, 果皮に低温障害の pitting が発生した. 障害発生防止に定期的昇温処理 (20°C-24hr/月) が有効であった. 5°C, 10°Cでのpitting の発生は非常に少なかった.
    以上の結果から, 緑熟カボスは低温感受性で, 0~1°Cでの貯蔵は約4か月が限度であり, これ以上長期の低温貯蔵には, 4°C以上の安全な温度に段階的に変温するか, 定期的昇温処理を行うなどによって, 低温障害を防止する方法を併用することが望ましいと推論した.
  • 伊藤 憲弘, 寺田 俊郎
    1982 年 50 巻 4 号 p. 521-531
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    加工用トマトにおける収穫後の果実取扱い法について検討するため, 果実の静圧荷重抵抗性と堆積厚さの許容限界について試験を行った.
    1. 一定の静圧荷重下における加工用トマトの挙動は粘弾性体のうち, 4要素模型のクリープ現象に酷似した.
    2. クリープ試験結果から, ‘AT70/24’ ‘TE-30’ ‘ES-58’ の果実は硬く, しかも弾性的挙動を示す品種と考えられた.
    果実のクリープ特性と色調 (a/b値) との間には, 0.1%水準で高い相関関係があり, 果実の硬さ及び弾性的挙動は成熟に伴い漸次低下することが確認された.
    3. 荷重の大きさ, 負荷時間と果実変形量の関係から, 果実の裂開損傷の発生 ‘ES-58’ ‘TE-30’ ‘AT70/24’ で少なく, ‘H-1409’ ‘KG-127’ ‘くりこま’ に多い傾向が認められた.
    裂開損傷に達する限界の変形率 ‘AT70/24’ が最も大きく, ‘H-1409’ が最も小さい値を示した.
    4. 堆積厚さと果実の損傷程度との関係は堆積厚さが厚くなるほど, 損傷が大きかった.
    供試品種における果実損傷の発生程度 ‘H-1409’ が最も大きく, ‘TE-30’ が小さい結果を示した.
    堆積許容限界厚さ ‘AT70/24’ ‘ES-58’ ‘TE-30’ が大きい値を示し, ‘H-1409’ ‘KG-127’ が小さかった.
    以上の結果から, 果実が硬く, さらに弾性的挙動に富む品種ほど, 静圧荷重に対する抵抗性は高いものと考えられた. 一なお, 供試品種中では ‘AT70/24/’ ‘TE-30’‘ES-58’ などが, 抵抗性品種育成のための育種素材を具備しているように思われた.
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