園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
51 巻, 4 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 加藤 忠司
    1983 年 51 巻 4 号 p. 379-386
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    6月から8月にかけてのウンシュウミカンの幼果は多量のアスパラギンを含有する. そこで果実の窒素栄養におけるアスパラギンの役割を明らかにするために15Nおび14C化合物を用いて二, 三の実験を行った.
    1. 幼果期における果皮のアスパラギン含量は果皮の全窒素含量に対し指数関係があり, 果実の窒素レベルを示す指標物質として利用できると考えられた.
    2. 幼果実は硝酸を還元する能力がある. また無機窒素をグルタミンやアスパラギンに合成する能力が強く, アスパラギンがグルタミンアミド窒素とアスパラギン酸から合成されると推測された.
    3. 14C-アスパラギンの14Cの行方を調べた結果,アスパラギン酸, 中性及び酸性化合物, アルコール不溶化合物およびCO2などに移行し, 他のアミノ酸へのCの供給源としての役割を担うと同時に, 蛋白質合成にも利用された. また, アスパラギンの変化の様子はアスパラギン酸のそれと若干異なっており, アスパラギンの分解がアスパラギナーゼ以外の酵素によっても触媒されることが示唆された.
  • 李 彰厚, 本杉 日野, 杉浦 明, 苫名 孝
    1983 年 51 巻 4 号 p. 387-394
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    リンゴの各種台木に各種穂木品種を組み合わせて接ぎ木した場合の耐水性の程度を比較調査した.
    1. 1981年にポット植えの6種類の1年生台木にリンゴ品種‘ふじ’を接ぎ木して21日間湛水処理を行った. その結果, M9, MM106及びM7台では耐水性が弱く, マルバカイドウ(下垂型), M11及びM27台では耐水性が強かった.
    2. 1982年に9種類の台木がリンゴ品種‘ふじ’の耐水性に及ぼす影響を調べたところ, M9, M4台に次いでM26, MM106台の耐水性が弱く, マルバカイドウ(下垂型), M16台に次いでM11, M7, M27台が強い耐水性を示した. M7台は両年においてやや異なる結果を示した.
    湛水処理終了後, マルバカイドウとM16台ではすべての個体が完全に回復し, M11, M7, M27台も少しずつ回復した. しかし, M9, M26, M4, MM106台では続いて障害が進行し, 特にM9とM26台では1~2週間で全個体が枯死した.
    3. 5種類の1年生台木 (M27, M9, M26, MM106, マルバカイドウ; 下垂型) に5種類の栽培品種(‘ふじ’, ‘つがる’, ‘ゴールデンデリシャス’, ‘スターキングデリシャス’, ‘紅玉’)を組み合わせて接ぎ木して耐水性の程度を比較したところ, 穂木品種の耐水性は5種類の台木を平均してみると, ‘紅玉’が最も強く, ‘スターキングデリシャス’が最も弱かった. 次に, 5種の穂木品種を平均した台木間の耐水性は, M9とM26が最も弱く, マルバカイドウは最も強かった.
    湛水処理終了後, マルバカイドウ台での全穂木品種はほとんど回復したが, M9とM26台での穂木品種は続いて障害が進行した.
  • 山本 隆儀, 渡部 俊三
    1983 年 51 巻 4 号 p. 395-404
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    セイヨウナシ‘バートレット’の Hard end 発生開始時期の水ポテンシャル及び果実への水移動率などを調査し, 本障害発生の水分生理学的側面を明らかにしようとした.
    1. 枝の水ポテンシャルは季節を通じて大ぎく変動せず, また, 葉のそれは7月下旬以降全体的に低下したが, 7月中旬以前では変化が大きかった. 果実の水ポテンシャルは7月下旬以降低下し, 本障害発生開始時期に大きく低下することは認められなかった. また, Hard end 多発樹と健全樹との間で, 各器官の水ポテンシャルの差異はほとんど認められなかった.
    2. 果重あるいは果重日増加量に対する1日当たり果実への水移動率は, Hard end 発生開始時期 (6月中旬~7月上旬) に顕著に低かった. しかし, この移動率について Hard end 多発樹と健全樹との間にほとんど差異は認められなかった. また, 当日の水ストレスの程度が強くなるほどこの水移動率は低下した.
    3. 以上の結果, 6月中旬から7月上旬にかけて果実への水移動率が低いことが, 果実Caの不足の誘因と考えられ, 地上部へのCa供給量の少ない樹では, この時期に Hard end が発生し始めるものと推察された.
  • 植松 徳雄, 桂 直樹
    1983 年 51 巻 4 号 p. 405-411
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    長日によって促進されるイチゴの葉の生長反応にジベレリンが関与しているか知るため, 白熱灯により暗期内の種々の時間帯に3時間の光中断を行ったときの内生ジベレリンの活性の変化を調査した.
    葉の生長に光中断の影響が現われ始めたのは処理開始後9日目頃であった. その後, 処理間に差が認められるようになり, 葉の生長は暗期の中央の光中断区で最も促進された.
    薄層クロマトグラフィとイネ苗テストを用いた結果, イチゴ茎葉から抽出した酸性酢酸エチル分画に含まれるジベレリン様物質のうち主要なものは, GA19, もしくはこれに極めて類似した物質と考えられた.
    光中断処理区におけるGA19様物質の活性は, 処理開始後9日目に調査したとき自然短日区より増加していたが処理区間差は明らかでなかった. したがって, イチゴの葉の生長反応をGA19様物質の量的変化のみに基づくものと説明することは困難と考えられる. 同じ処理開始後9日目には, 一般的には活性が低いと考えられているGA19様物質の一部が他の活性型のジベレリンに転換した可能性を, わずかではあるがうかがわせる結果が得られたことから, イチゴの葉の生長における活性型のジベレリンの同定, 定量が必要と考えられた.
  • 三浦 周行, 岩田 正利
    1983 年 51 巻 4 号 p. 412-420
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ベニタデ芽生えのアントシアニン生成に対する最適昼•夜温を明らかにするため, 子葉展開日から10~14日間異なる温度に制御された4台の自然光小型チャンバー内で栽培し, その間のアントシアニン含量の推移を比較した.
    1. 昼夜温共5, 10, 15, 20°C, 及び20, 25, 30, 35°Cに設定された二つの実験の結果, 個体当たりアントシアニン含量は15~20°C区が高い傾向がみられたが, 新鮮重当たりアントシアニン濃度は10°C区で高かった.
    2. 夜温を5, 10, 15°Cあるいは20°C一定とし, 昼温をそれぞれの夜温と等しい温度から5°C幅で3段階上げ, 最高がそれぞれ20, 25, 30°Cあるいは35°Cになるような処理区を設けた. その結果, 夜温を10~20°C一定とした実験ではアントシアニン含量は, 昼温が夜温と等しいか, それより5°C高い区で最も高い傾向を示した. しかし, 夜温を5°Cとした実験では昼温5°C区が最も低く, 10~20°C区で高かった. また, アントシアニン濃度も夜温を10~20°C一定とした実験では昼温が夜温と等しい区で最も高かったが, 夜温を5°Cとした実験では昼温10°C区が最も高く, 昼温5°C区は20°C区と共に最も低かった.
    3. 昼温を10, 20°Cあるいは30°C一定とし, 夜温をそれぞれの昼温と等しい温度から5~10°C幅で1~3段階下げ, 最低夜温がいずれも5°Cになるような処理区を設けた. その結果, 昼温をいずれに保った実験においても, アントシアニン含量, 濃度共に夜温の低い区ほど高く, 5°C区が最も高い傾向にあった.
    以上の結果から, ベニタデ芽生えのアントシアニン生成に及ぼす温度の影響を昼•夜温に分けて考えた場合, アントシアニン生成には昼温10°C, 夜温5°Cのような低温が最も適していると推定された.
  • 早田 保義, 篠原 温, 鈴木 芳夫
    1983 年 51 巻 4 号 p. 421-426
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    低照度下におけるハツカダイコンの肥大抑制作用を体内成分との関係から明らかにするため, 低照度下のハツカダイコンの糖, オーキシン及びサイトカイニンの消長を調査した. 同時に, 低照度下において, カイネチンまたはNAAを直接胚軸部に処理し, それらの肥大促進効果を検討した.
    1. 低照度区 (10klx) では, 根部の生長が著しく抑制され, 播種後33日目のT/R率は, 高照度区 (25klx) の1.3に比べ, 8.4となった. また, 胚軸部の徒長がみられ, 胚軸長は高照度区の約3倍となった.
    2. 葉部の糖含有率は高照度区, 低照度区とも, 播種後33日目に若干増加したものの, 調査期間を通じほとんど変化しなかった. しかし, 胚軸部の含有率は, 低照度区でほとんど変化がみられなかったのに比べ, 高照度区では, 発芽後, いったん減少し, 急速な肥大生長がみられた播種後21日目以降急激に増加した.
    3. 胚軸部のオーキシン含有率は, 高照度区では播種21日後目から明らかに増加し, 低照度区では播種後21日目に若干増加したものの, 全調査期間を通じほぼ一定に保たれた.
    4. 胚軸部のサイトカイニン含有率は, 高照度区では発芽後いったん減少傾向をたどったが, 胚軸部の肥大が始まる播種後16日目より急激に増加した. しかし, 低照度区では, 発育とともに減少傾向を示し, 全調査期間を通じてその傾向は変わらなかった.
    5. 低照度下において胚軸部に直接カイネチンまたはNAAを処理した場合, カイネチンは胚軸部の肥大を促進する効果を示した.
    6. 以上の結果から, 低日照下におけるハツカダイコンの肥大生長の抑制に, サイトカイニン活性の変化が強く関与していることは明らかであり, 同時に, 肥大が抑制されている胚軸部において糖含量及びオーキシン含有率が低い値を示したことから, これらの体内物質も肥大抑制と密接に関係していることがうかがわれた.
  • 糠谷 明, 増井 正夫, 石田 明
    1983 年 51 巻 4 号 p. 427-434
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    メロンの耐塩性と塩の種類との関係を明らかにするため, 砂耕により本実験を行った. 実験Iでは, 海水, NaCl, Na2SO4, MgCl2の塩類源を, 実験IIでは, MgSO4を用いて, 浸透ポテンシャルをそれぞれ-0.95 (MgSO4のみ), -1.20, -1.70, -2.70bar とし, 基本培養液で育てた対照区 (-0.70bar) と生育を比較した. 果実新鮮重と全植物体乾物重は対照区で最大となり, 処理培養液の浸透ポテンシャルが低下するにつれて, それぞれの塩類源で減少した. 対照区を100%とした場合, -2.70bar区の果実新鮮重は海水で37.3%, NaClで31.4%, Na2SO4で11.8%, MgCl2で24.8%, MgSO4で17.0%となった. 海水とNaClでは枯死した株はなかったが, MgCl2では収穫時までに枯死する株もみられた. Na2SO4の-2.70bar区とMgSO4の-1.70, -2.70bar区では, 定植後60日までに全株が枯死した. 本実験における生育は対照区で最大となり, 以下海水_??_NaCl>MgCl2>Na2SO4_??_MgSO4の順となった. 基本培養液への各塩類源の添加は, それぞれ添加したイオンの葉中及び土壌溶液含量, 土壌溶液のEC値を増加させ, また土壌溶液の浸透ポテンシャルを低下させた. 葉中Ca含量は, 処理培養液の浸透ポテンシャルが低下するにつれてNa2SO4, MgCl2,MgSO4で減少した. 本実験の結果は, MgとSO4イオンのメロンに対する特異作用を示唆した.
  • 菊地 秀喜, 尾形 亮輔, 堀 裕
    1983 年 51 巻 4 号 p. 435-442
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    一般に発恨が容易とされるヤナギ属にも, 発根の困難な種があることを確認し, 発根の容易なコリヤナギと発根の困難なヤマネコヤナギの比較において, 発根率の季節的変化を検討した. また, 発根率の季節的変化を起こす原困として, 内生オーキシン様物質の活性の変化, 総フェノール量の変化, 水抽出物の活性の変化について検討した.
    1. 6種のヤナギを供試し, それぞれの発根能力を検討した結果, 隆起線のないコリヤナギ, シダレヤナギなどは極めて発根が容易であったが, 隆起線をもつヤナギの中には, ヤマネコヤナギ, キツネヤナギのように発根の困難な種が認められた.
    2. 発根の容易なコリヤナギでは, 周年高い発根率を示した. 発根の困難なヤマネコヤナギにおいて, 水20時間浸漬処理区の発根率は常に低かったが, NAA 20ppm20時間浸漬処理区の発根率は, 6~10, 2, 4月が高く, 季節的な変化が認められた.
    3. 発根の難易について, 内生オーキシン様物質の活性との関係を調べたが, 発根の容易なコリヤナギが困難なヤマネコヤナギに比べて活性が常に高いという傾向はみられなかった. 一方, 水抽出物の発根促進活性は発根の容易なコリヤナギが常に高かった.
    4. ヤマネコヤナギでは, NAA 20ppm処理区の発根率と内生オーキシン様物質の活性との間に, それらの季節的変化の中で, 高い相関が認められたことから, 内生オーキシン様物質の活性の変化が発恨率の季節的変化の一因と考えられた. しかし, コリヤナギの水処理区では上記の相関は認められなかった. 一方, コリヤナギとヤマネコヤナギの発根率と総フェノール量及び水抽出物の発根促進活性との間には, ヤマネコヤナギのNAA20ppm処理区の総フェノールを除いて有意の相関はなかった.
  • 金 奎元, 加古 舜治
    1983 年 51 巻 4 号 p. 443-448
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    Cymbidium×Sazanami‘Haru-no-umi’を材料とし, シュートの発育過程の経時的変化及び栄養茎頂外植体の採取時期による器官形成能の変化を調べると同時に, 茎頂外植体からプロトコーム状球体 (PLB) が誘導される初期形成過程を形態学的に観察した. シュートの伸長生長の最も盛んな時期は4月から8月までで, この時期には腋芽の葉の分化も最も活発であった. 茎頂外植体のPLB形成能はこの期間中に最も高かった. その後, 9月から翌年2月までは主茎の伸長生長もなく, 腋芽の発達も停止した. この期間中のPLB形成能は前者より低い. なお葉の分化が停止する8月にはPLB形成能が急速に低下し9月以降は完全に失われた. PLBは腋芽から定芽的に形成されるものと, 節間部から不定芽的に形成されるものとがあった. 前者は後者よりその形成時期が早かったが, その数は後者よりも少なかった. なお, 前者を定芽的PLB, 後者を不定芽的PLBと呼ぶことにした.
  • 居城 幸夫, 堀 裕
    1983 年 51 巻 4 号 p. 449-458
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. グラジオラスは第3葉が展開するころ, 葉鞘基部と母球との間の短縮茎より約10本のけん引根が発生し, オキザリスは母球植え付け後底盤部より吸収根とともに1本のけん引根を発生した. けん引根重は葉数が最大になった時点で最大値に達したのち, 収縮に伴い減少したが, その減少は収縮初期に特に大きかった. グラジオラスの子球 (球茎) は葉鞘基部が肥大して形成され, オキザリスのそれ (鱗茎) は母球の腋芽の肥大により形成され, さらに地中茎の各節にも形成された. 2種類とも, 子球乾物重の増加初期はけん引根の収縮による重量の減少の大きい時期に相当した. そこでけん引根の収縮に伴う重量の減少分が100%子球の重量増加に寄与するものと仮定して, 寄与率を計算すると, グラジオラスでは22.4%, オキザリスでは64.7%の値が得られた.
    2. 各部位における炭水化物, 窒素化合物の消長は乾物重のそれとほぼ同様であった. グラジオラス, オキザリスともに, 葉, 母球, 子球の炭水化物はその多くあるいはほとんどが多糖類であり, 特にオキザリスの母球, 子球ではほとんどがデンプンであった. 一方, けん引根では, 肥大初期から最高期にかけて, 全炭水化物の70~90%が可溶性糖類であったが, その後収縮に伴って全炭水化物ならびに全糖量が急減した. 窒素化合物は各部位とも不溶性窒素の割合が高かった.
    3. けん引根の乾物重減少の大きい収縮初期, その減少分がそのまま子球の乾物重の増加に寄与すると仮定して, けん引根の子球肥大に対する寄与率を計算した. その結果, オキザリスでは64.7%と著しく高い値が得られたが, グラジオラスでは22.4%と低かった. このことから本来のけん引作用以外に, 養分の一時貯蔵器官としてのけん引根の役割を推定した.
  • 居城 幸夫, 堀 裕
    1983 年 51 巻 4 号 p. 459-465
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. グラジオラス, オキザリスともに, 地上部の生育は30/24°C(昼/夜温) で促進され, 特にオキザリスでは子球の形成がなく, 開花, 展葉が続いた. 17/12°Cの低温では, 明らかに地上部の生育が抑えられ, 特にオキザリスでは葉数, 葉面積の増加はほとんどなく, 開花もみられなかった. 24/17°Cの中温では地上部と地下部の均衡のとれた生育がみられた. 地, 気温を分離設定したグラジオラスの場合, 低地温区ほど地上部の生育がよく, このような地温の影響は高気温より中気温下で著しかった.
    2. けん引根数には, 気•地温の別なく, 温度の影響はほとんど認められなかった. しかしけん引根の伸長•肥大は低温区ほど早く進み, 肥大最高時の根重ならびに収縮に伴う根重の減少は, 低_??_中>高温の順となり, 特にオキザリスでは高温で肥大が全くみられなかった. グラジオラスでは高温区で肥大後腐敗するものが多くみられた. 高温下で子球の形成•肥大は劣り, 特にオキギリスでは子球は全く形成されなかった. グラジオラスでは, 地•気温を分離設定することにより, 上記温度の影響は専ら地温の影響によるものと判断された.
    3. けん引根収縮初期の乾物重の急減と, 子球の肥大初期の乾物重増加とは, 時期的におおむね一致した. そこで前報(1)におけると同様, その時期におけるけん引根の子球肥大に対する寄与率を計算した結果, オキザリスで56~59%と著しく高く, その値は温度によって変らなかった. 一方, グラジオラスではオキザリスに比べて著しく低く, かつ温度によって相違し, 低温で比較的高かった.
  • 吾妻 浅男, 島崎 純一, 犬伏 貞明
    1983 年 51 巻 4 号 p. 466-474
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    スターチス•シヌアータの抽だい, 開花に秋~冬季の自然低温が作用していることが認められた. 次に種子の低温処理が花茎の伸長開始を早め, 開花を促進することを明らかにし, 種子の低温処理による促成栽培の可能性を検討した.
    1. 秋に播種し, 発芽•生長した株は秋~冬季の低温期を経過したのち, 初めて花茎が伸長開始し, それに引き続いて花芽を分化した.
    2. 催芽種子を2~3°Cで30日間低温処理すると, 葉数が減少し, 抽だいが早められ, 3月までの早期の切り花本数が著しく増加した. したがってスターチス•シヌアータは, 宿根草でありながら, 種子春化型植物であると考えられる.
    3. 種子低温処理の開始時期は, ピート板に播種後1~2日目が適当であった. 播種後4日以上経過し, 子葉が展開した幼苗を低温処理すると, 低温の直接的な害を受け, 処理中に幼苗が腐敗, 枯死した.
    4. 種子低温処理の温度は2°C前後が適当で, 5°Cでは処理の効果が著しく低下した. その時期は2°Cで20~40日間がよかった.
    5. 2~3°Cで30日間の低温処理を行ったのち, 5~10日間, 30°C恒温に置いたところ, 低温処理の効果が低下あるいは完全に消失し, 高温による脱春化の現象が認められた. 暖地の自然条件では9月中旬より早く低温処理を終えると脱春化の現象が認められた.
  • 山川 祥秀
    1983 年 51 巻 4 号 p. 475-484
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    白ワイン用原料ブドウ ‘リースリング’, ‘シャルドンネ’, ‘甲州’, ‘リースリング•リヨン’について, 果粒成熟中の果汁成分変化と栽培上の特性を調査した.
    1. 完熟期は‘甲州’が10月中旬, 他の3品種は9月中旬で, その時の果粒重は‘甲州’が4.0g, ‘リースリング•リヨン’が3.4gと大粒で, ‘シャルドンネ’は1.9g, ‘リースリング’は1.6gと小粒であった.
    2. 果汁pHはそれぞれ特徴ある変化を示し, 完熟期には‘リースリング’, ‘シャルドンネ’は3.5, ‘リースリング•リヨン’は3.3, ‘甲州’は3.2と低かった.
    3. 糖度において, ‘リースリング’, ‘シャルドンネ’‘リースリング•リヨン’は9月上旬に15%に達し, 9月下旬に18, 19%の最高値に達した. ‘甲州’は9月下旬に15%に達し, 10月中旬に17%の最高値に達した.
    4. 酸度は‘リースリング’, ‘シャルドンネ’ともに7月下旬に, ‘リースリング•リヨン’, ‘甲州’はややおくれて, 8月上旬に最大値に達した. 完熟期に‘リースリング’は0.60g/100ml, 他の3品種は0.70g/100ml以上であった.
    5. 完熟期の糖酸比はいずれも20以上で, その時期, 糖度(%), 酸度(g/100ml), 糖酸比は‘リースリング’9月中旬, 17.3, 0.76, 22.8; ‘シャルドンネ’9月中旬, 17.7, 0.88, 20.1; ‘甲州’10月上旬, 17.7, 0.88, 20.2; ‘リースリング•リヨン’9月下旬, 18.4, 0.81, 22.7であった.
    6. 完熟期の酒石酸•リンゴ酸比 (T/M) とブドウ糖•果糖比 (G/F) は‘リースリング’1.5, 0.9, ‘シャルドンネ’は1.1, 1.0, ‘甲州’は2.0, 0.9, ‘リースリング•リヨン’は1.6, 1.0であった.
    7. 栽培上の特性は, ‘リースリング’は密着果房で裂果しやすく, 白腐れ病, 晩腐病に弱い. 成熟日数が短いことから寒冷地の栽培に適している. ‘シャルドンネ’は病害に強く, 収量も多く, 栽培しやすい品種で, 寒冷地の栽培に適している. ‘甲州’, ‘リースリング•リヨン’はべと病にやや弱いが栽培しやすい品種で, ‘リースリング•リヨン’は収量規制が必要であった.
    8. 利き酒の結果, ‘リースリング’はアロマ弱く, ボディーも不足していた. ‘シャルドンネ’はフルーティーでボディーもあり, 調和がとれていた. ‘甲州’はフレッシュでフルーティーであった. ‘リースリング•リヨン’は際立った特徴はなく, 少々水っぱかった.
  • 橋永 文男, 伊藤 三郎
    1983 年 51 巻 4 号 p. 485-492
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ハッサクとブンタン果実を1か月おきに採収し, 部位別にリモノイド含量を測定した.
    1. ハッサクの果肉のリモノイドはリモニンが主成分であり, 9月に50ppmを示した. 果肉とじょうのう膜のノミリンは8月に最も濃度が高く (20ppm く 500ppm), 以後急減した. 種子ではノミリンが10月に, またリモニンが11月に最高値を示した.
    2. ブンタンはフラベド以外のすべての部位でノミリンが他のリモノイドに比べて多く, とくにアルベドとじょうのう膜では顕著であった. じょうのう膜のリモニンはデオキシリモニンと同じ含量を示しながら変動した. 種子では種核のリモノイドの方が種皮より顕著に高く, 12月に最高値を示した.
    3. ブンタンの個体当たりのリモノイド含量は最高200mgに達した. 種子のリモノイド濃度は高いにもかかわらず, 種子重が少ないため, その含量はアルベドやじょうのう膜より少なかった. 両果実とも各部位でノミリンのピークのあと1か月でリモニンのピークが現れることが明らかになった.
  • 一井 隆夫, 浜田 憲一
    1983 年 51 巻 4 号 p. 493-501
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ナルトミカンの果皮の老化に伴う, 果皮フラベド組織中のリポキシゲナーゼ (LOX) 及びヒドロペルオキシド開裂酵素活性の変化を調べた. 酵素活性は, それぞれ, リノール酸及びそのヒドロペルオキシドを基質として, 生成するn-ヘキサナール量 (nl/g新鮮重) で示した.
    LOX活性は, 夏, 幼果期に高く, 秋~冬の着色期に低く, 早春, 再び増大し, 成熟期 (4月ごろ) にかなり高い値を示した. 以後, 果実の回青とともに低下した. 開裂酵素活性はLOX活性に比して著しく高く, 季節的な変化はLOX活性のそれとほぼ同じであった.
    幼果期 (8月11日), 着色期 (12月13日及び2月2日) 及び成熟期 (4月17日) に果実に採取し, 1~25°Cに貯蔵して酵素活性を測定した. LOX活性は貯蔵温度とともに増大した. しかし, 幼果期から成熟期へと果皮の老化が進むに従って, 15°C以上の高温はLOX活性の増加を抑制するようになり, 成熟果では適温は15°Cへと低下した. 貯蔵果の着色は, 幼果期には25°C, 着色期(12月13日) には15°Cでもっとも早まった.
    採取果にエセホン (500ppm) 処理すると, 着色が促進され, LOX活性が増大した. ジベレリン (100ppm) 及び高温 (35°C, 48hr) 処理によって, 着色の抑制とLOX活性の低下がみられた.
feedback
Top