園芸学会雑誌
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51 巻, 2 号
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  • 宇都宮 直樹, 山田 寿, 片岡 郁雄, 苫名 孝
    1982 年 51 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    自然条件下で生育させたウンシュウミカン樹の樹上において, 成熟期に果実周辺部の温度(果実温度)を15°C, 23°C, 30°Cに制御し, これらが果実の肥大生長や成熟に及ぼす影響について調査した.
    果実重, 果皮重とも果実温23°Cで最もすぐれ, 30°Cで最も劣った. しかし, 果実比重は30°Cに比べ15°Cと23°Cでは著しく小さくなった. 果汁中の遊離酸含量は高果実温ほど低下の割合が著しかった. 可溶性固形物と全糖含量は23°Cで最も高く, 次いで30°C, 15°Cの順になった. 果皮中では低果実温ほどクロロフィル分解とカロチノイド蓄積が早期から開始された. しかし, 30°Cではクロロフィル分解は抑制され, カロチノイドはほとんど生成されなかった. ABA含量も低果実温ほど上昇開始の時期が早くなり, 30°Cではあまり増加しなかった. 特に, 各処理区て遊離型ABA含量とカロチノイド含量の変化に一致が見られたことから, 果皮中のABA含量が果実温によって影響を受けるカロチノイドの生成に関与していることが推察された. 一方, ジベレリン様物質の活性は果実温の影響をほとんど受けなかった. 以上のような果実温の効果より, ウンシュウミカンでは, 温度は果実へ直接的に作用することによっても成熟現象に影響を及ぼすことが示唆された.
  • 山本 隆儀, 渡部 俊三
    1982 年 51 巻 2 号 p. 142-151
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    セイヨウナシの Hard end 発生と水分条件との関連性を解明するために, 本障害の発生開始時期を見いだす必要がある. 本実験は, 15年生ヤマナシ台‘バートレット’ のうちから, 例年 Hard end が著しく発生する樹(多発樹)と健全樹を用い, 果実形質, 主とし♦ Calyx endの果肉細胞, 細胞膜成分及び無機成分の季節的変化などを調査比較したものである.
    1. 追熟後に果実の計測及び組織化学的観察を行った結果, 果重, 縦径, 偏平度, 平均果皮硬度, 同果肉硬度, ペクチン物質及びタンニンには, 両樹間に有意差が認められたが, 石細胞群密度, コルク物質及びデンプンには有意差は認められなかった. しかし, 1果実内果肉硬度分布と密接な関係が認められたのはペクチン物質(おそらくプロトペクチン)だけであった.
    2. 健全樹に比較して当初より多発樹の果重は軽く, 果径は短く, Mg濃度は低く, 全ポリフェノール濃度は高かった. しかし, 多発樹の Calyx end で満開40~50日後に, 健全樹より, 果肉細胞長径は短く, 果実Ca濃度は低く, 同K濃度は高くなり, 同Ca/K値は小さくなり, 塩酸可溶性ペクチン濃度は高くなった. 同様に, 満開55~60日後に, 果皮硬度は大きくなり, AIS濃度とホロセルロース濃度は高くなり, さらに, 満開60~65日後にセルロース濃度は高くなり, 果肉硬度及び偏平度の値は大きくなった.
    3. 追熟後(満開約120日後)では, Calyx end の果皮硬度, 果肉硬度, 水溶性ペクチン及び塩酸可溶性ペクチン各濃度のみ両樹間の差が顕著に拡大した.
    4. 以上の結果, 追熟中のベクチン分解が円滑に進まず, 果実が硬いことが Hard end 果の最終的特徴といえるが, 本障害そのものはそれよりもかなり以前(満開40~65日後)に発生を開始するものと思われる.
  • 大川 勝徳
    1982 年 51 巻 2 号 p. 152-158
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ブドウ"マスカット•ナブ•アレキサンドリア"の芽期を中心に, 溢出液のpHの変動及びそれに含まれる右機酸含量の変化を調べた. 溢出液のpHは樹液流動開始期から, 萠芽期まで次第に低下し, 萠芽直前に最低値を示した. その後, 新梢の生長とともに徐々に上昇した, 一方, 溢出液中の有機酸はリンゴ酸と酒石酸で, それらの含量は樹液流動開始期に少なく, その後萠芽期まで徐々に増加したが, 新梢の生長とともに減少した.
    昼夜間1時間ごとに採取した溢出液のpHと有機酸含量との間にはおおむね相関関係が認められた. しかし3月中旬に夜間pHが急激に低下したにもかかわらず, 有機酸の著しい増加は認められなかった. 日没直後に石灰窒素やエスレルの散布処理, ならびに昼間アルミホイルによる地上の樹体全部の被覆処理を行い, 溢出液のpHや有機酸含量を調べた. その結果石灰窒素処理はpHに影響を与えないが, リンゴ酸含量は急に増加した. 一方エスレルや被覆処理はpHを著しく低下させたが, リンゴ酸含量は不変であった. またこれら3種の処理では, 酒石酸含量の変化はなかった.
    以上の結果から, 樹液流動開始期から芽期, さらに新梢生長期に至る溢出液のpHの急激な低下はリンゴ酸によるものでなく, それ以外の要因によるものと思われた. また昼夜間のリンゴ酸の変動は BryophyllumCrasula などのCAM植物とそれと似ていたが, 萠芽期以後その類似性は認められなかった.
  • 平井 正志
    1982 年 51 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    着色直前のビワ果実を樹上でエチレンシーブを入れたポリエチレン袋で包み, エチレンの成熟に対する効果を調べた. この着色直前の果実における可溶性の糖の含量は成熟果のそれの10%以下であったが, この処理により急速に増加した. エチレン処理果の滴定酸は処理の直後に急に減少したが, 対照果ではあまり変化しなかった. 果肉組織のソルビトール-6-リン酸脱水素酵素およびNADPリンゴ酸酵素の活性は対照果では成熟に伴って増加し, エチレン処理によりその増加は早められた. 果実の着色はこの処理で早められ, 処理の2~3日後には対照果との差が明らかになり, 葉緑素含量は急速に低下した, エチレン処理により果実は対照果より, 4~11日早く成熟した.
  • 三浦 周行, 岩田 正利
    1982 年 51 巻 2 号 p. 165-171
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    4月から10月まで毎月ベニタデを栽培し, 各月における子葉展開後のアントシアニン含量の推移を調ベ, アントシアニン生成に及ぼす栽培時期の影響を検討した.
    1. いずれの栽培時期においても, 個体当たり, および新鮮重1mg当たりアントシアニン含量は一般に子葉展開後急速に増加し, その後は緩やかに増加, あるいはほぼ一定の値を推持した. しかし, その変化の程度は栽培時期により異なり, 4月, 特に5月栽培でばアントシアニン含量は常にかなり高く, 次いで6月栽培で高く推移した. 一方, 7~9月栽培においてはアントシアニン含量は低く推移した. 10月栽培では初期には最も低かったが, 徐々に高まり, 6月栽培の値に近づく傾向を示した.
    2. 実際栽培での収穫時期に相当する本葉出現日の個体当たり, および新鮮重1mg当たりアントシアニン含量は, 4月および5月栽培で最も高く, 次いで6月および10月栽培であった. 一方, 7~9月栽培は最も低く, 4~5月栽培の60%以下であった.
    3. 少数の例外はあったが, 子葉展開日から8日後までのいずれの生育日数においても, 個体当たり, および新鮮重1mg当たりアントシアニン含最は, それまでの1日当たり日射量の影響を除くと, 日平均気温と負の高い相関を示し, 日平均気温の影響を除くと, 1日当たり日射量と正の高い相関を示した.
    4. 本葉出現日の個体当たり, および新鮮重1mg当たりアントシアニン含量も, 本葉出現日までの1日当たり日射量および同所要日数の影響を除くと, 日平均気温と負の高い相関関係にあり, 日平均気湿および所要日数の影響を除くと, 1日当たり日射量と正の高い相関関係にあった.
    5. 部位別のアントシアニン含量の推移を調べたところ, 本葉出現日までの子葉中の含量は常に下胚軸中の含量より高かった.
    以上の結果から, ベニタデのアントシアニン生成は低温, あるいは多日射の時期ほど促進されることが推定された.
  • 藤枝 國光, 藤田 幸雄, 郡司 行敏, 高橋 基一
    1982 年 51 巻 2 号 p. 172-176
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    キュウリの雌花節には, 普通一っの雌花が発育する, この標準型(SP)に対し, 1節2雌花(DP), 1節多雌花(MP)などの変異型がある. これら相互間の組合わせで, F1, F2, BC系統を育成し, それらの性表現を調査して, SP, DP, MPの遺伝解析を行った.
    その結果, これらは複対立遺伝子に支配される形質で, 1節に雌花形成数の少ない型が優性又は不完全優性であることが確められた. そこでこの遺伝子座をpfとし, SPの遺伝子をpf+, DPのそれをpfd, MPのそれをpfmと命名した.
  • 遠藤 元庸, 岩佐 正一
    1982 年 51 巻 2 号 p. 177-186
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    食用ギク及びツマギクの品種分類と育種上の問題点を明らかにするため, 現在栽培されている品種を主に東北地方, 新潟県及び愛知県などから収集し, それらの形態, 生態及び花弁の品質などについて調査を行った. 食用ギクは元来, 観賞用ギクの利用に始まったものと考えられるが, 食用ギクとしての栽培歴がかなり長い品種に加えて, 近年に至っても観賞用ギク品種からの転用が認められる. 収集した食用ギク品種118点及びツマギク品種18点について諸特性を比較検討した結果, それぞれ52及び15品種に整理された. 収集品種の主な特性は次のような傾向を示した.
    1. 花色は食用ギクでは黄, ピンク, 赤, 赤紫, 白の5種類に大別され, 大部分は黄かピンクであったが, ツマギクはすべて黄であった.
    2. 花弁の形状は食用ギクでは平弁, さじ弁, 管弁に大別され, それらが単独または2種類が種々の割合で混在していたが, ツマギクはさじ弁の1品種を除きすべて平弁であった.
    3. 香りは食用ギク, ツマギクを通じて芳香を有する品種のほか, まれに好ましくない香りを有する品種が見いだされた.
    4. 苦味は食用ギク, ツマギクいずれも弱い品種が多かった. 食味は食用ギクの半数が不良であった上に, 秋ギクに比べ夏ギク及び八•九月咲きギクに苦味が強く, 且つ食味不良の品種が多かった. 苦味が強い, または中程度の品種はすべて食味は不良であったが, 苦味が弱い品種でありながら食味不良の品種も多かった.
    5. 開花期は食用ギクでは夏ギク, 八•九月咲きギク, 秋ギクに分類でき, ツマギクはこれらに加えて寒ギクが見いだされた.
    6. 近年, 観賞用ギクから食用ギクに転用された品種には, 食味不良の品種が多かったのに対し, 一部交雑により育成された品種には品質の優れた例が見いだされた. 更に栽培歴が長い食用ギク‘延命楽’などではいくつかの特性について異なった栄養系が見いだされた.
  • 佐々木 久視
    1982 年 51 巻 2 号 p. 187-194
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    本研究はレクス胚軸組織の不定芽形成に及ほす培養温度と光の影響について検討した.
    1. 全培養期間を15°Cや20°Cの低温下に置いた場合にはほとんど不定芽形成はみられなかったが, 初期培地のカイネチン濃度の増加により不定芽形成がみられ, その最適濃度は0.5mg/lてあった. しかし, 移植培地のカイネチン濃度の増加は不定芽形成率をむしろ減少させた.
    2. 初期培地による6日間の不定芽誘導期を3日ごと, 2期に分けてそれぞれ低温及び高温処理を行った. その結果, 低温処理に続く高温は不定芽形成を促進したが, 高温処理に続く低温, 連続高温, 及ひ連続低温は不定芽形成を抑制した. また, 不定芽誘導に対し光は常に抑制的に作用した.
    3. 不定芽誘導に対する低温処理の効果は10~20°Cで顕著で, しかも短期間で有効であり, 組織当たりの不定芽数も多く, 高い不定芽形成率が得られた.
    4. 高温下で3~4日間培養後. 直ちに移植培地に移した場合, 短期間の低温前処理を与えた場合に比し組織当たりの不定芽数は減少した. しかし不定芽形成率は65~93%を示した.
    5. 高温処埋後の低温はその処理期間が長いほど不定芽誘導を抑制した.
    6. 低温処理後高温を与え, その後さらに低温処理することにより不定芽誘導をほぼ完全に抑制された. また, 高温処理後の低温による不定芽誘導の抑制効果はその後再び高温を与えても消去されなかった.
    7. 不定芽形成期では, 培養温度にかかわらず, 光処理により不定芽形成は抑制された. 不定芽生長期では温度及び光処理による顕著な影響はみられなかったが, 高温下では光処理により不定芽の生長は促進された.
    8. 以上の結果より, レタス胚軸組織はオーキシン及びサイトカイニンを含む培地て暗所下低温処理に続く高温により不定芽の誘導が促され, その後の移植培地における1週間の暗所下て不定芽形成がなされ, それに引き続き不定芽の生長が進展するものと思われる.
  • 間苧谷 徹, 山田 昌彦, 栗原 昭夫, 秋元 稔万, 井伊 谷雄平
    1982 年 51 巻 2 号 p. 195-202
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    脱エチレン剤の利用による, 甘ガキの‘富有’及び‘袋御所’の貯蔵法と, 貯蔵に適したガス組成について検討した.
    1. 果実の軟化に最も影響を及ぼしたのはエチレンであり, 次いでCO2であった. すなわち, 果肉の軟化を遅延させるためには, 果実内外のエチレン濃度の低いことが先決であったが, 同時に果頂部が黒褐変しない範囲でCO2濃度を高めることが効果的であった.
    2. 0.04mmポリエチレン袋に脱エチレン剤を封入することで, ‘富有’の軟化と‘袋御所’の果頂軟化をかなり抑制することができた.
  • 高田 峰雄
    1982 年 51 巻 2 号 p. 203-209
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    6月から11月にかけて採取したカキ‘富有’果実を, 10ppmのエチレンで処理した場合の呼吸量, エチレン排出量及び成熟の変化について25°Cで調べた.
    1. 果実は採取翌日から, 1日, 2日及び3日間エチレンで処理した. どの発育段階の果実も処理によって呼吸量が増大し, 内生エチレン生成が誘起され, 果肉の軟化が始まった. 果実の発育段階別に見ると, エチレン処理の効果は, ステージIIIの果実に対してよりもステージIの果実に対して大きかった. このことは, エチレンに対する果実の感受性が, 果実の成熟が進むにつれて弱まることを示すように考えられた. 呼吸のクライマクテリック (あるいはクライマクテリック様) ピーク値及びエチレン生成のピーク値は, 果実の発育段階が進むにつれて急減した. 果肉の軟化はエチレン処理により早められた.
    2. ステージIIIの果実に1日間のエチレン処理を隔日に繰り返した場合, 初めの2~3回目の処理までは, 果実は処理のたびに反応を示したが, それ以後の処理に対しては反応を示さなくなった.
    3. カキ果実の示した種々の特性から考えて, カキ果実はクライマクテリック果実とも, またノンクライマクテリック果実とも異なる型の果実のように思われた.
  • 山本 博道, 萩沼 之孝
    1982 年 51 巻 2 号 p. 210-218
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    0°C及び室温に貯蔵されたリンゴ‘スターキングデリシャス’について, 振動リード法と音響インパルス応答法を適用し, 果肉テクスチャーを測定した. 振動リード法では, 短冊形果肉切片の, たわみ振動の共振曲線から, 動的弾性率 (E′) 及び損失弾性率 (E′′) を測定する. 共振ピークの高さの任意倍の振幅でのピーク幅を用いてE′, E′′を求める式を導いた. E′は107dyne/cm2, E′′は106dyne/cm2のオーダーであった. E′及び音響インパルス応答法により打音から求められた指標は, 貯蔵温度の異なるサンプルでは有意な差を示し, 果肉硬度の差に対応していた. 振動リード法及び打音による方法は, リンゴの果肉硬度測定法として有効であることが認められた.
  • 上田 悦範, 岩田 隆
    1982 年 51 巻 2 号 p. 219-223
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    冷凍イチゴの香気の劣化の様相を, ‘ダナー’, ‘宝交早生’用いて調べた. 凍結臭 (泥臭) は‘ダナー’で1か月後, 宝交早生では1週間後に最も強く感じられ, それより長く貯蔵すると弱くなる傾向にあった. また‘ダナー’は‘宝交早生’に比べて凍結臭が強く感じられた.
    生果においては生成する揮発性成分の大部分はエステル類で占められていたが, 冷凍貯蔵した果実の解凍中及び解凍後に発生する揮発性成分を調べるとエステル類は少なかった. カルボニル化合物の発生程度は生果, 冷凍貯蔵果とも同程度であった. 揮発性成分を冷却トラップで捕集したものには, 生果においても凍結臭様の臭気が感じられた. 生果及び冷凍貯蔵果より抽出した脂質の脂肪酸組成は両者差異がなく, 冷凍貯蔵によって遊離の脂肪酸が増加することもなかった.
    以上の結果から冷凍イチゴ果実から発生する揮発性成分は, 新鮮果実の香気を特徴づけるエステル類が著しく少なく, 一方カルボニル化合物は一定のレベルを保っているなど, 生成する揮発性成分のバランスがくずれ, 生果では隠されていた不快臭が目立つようになると考えられる. またこの程度は品種により差があるため, 冷凍イチゴの原料には品種を選ぶ必要があると考えられる.
  • 岩田 隆, 杉浦 弘隆, 白幡 啓一
    1982 年 51 巻 2 号 p. 224-230
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    エダマメは収穫後の食味•外観の劣化が速いが, 莢を離さずに, 全値物体 (全株) をホリエチレン袋に密封する“葉付ぎ包装”によって品質が保持されることをさきに報告した. 本報はその効果を確認するとともに, 効果の発現に関係する諸要因を検討したものてある.
    品種は‘白山ダダチャマメ’を用い, 全株を0.03mmの低密度ポリエチレン袋に密封し, 20°Cに保持するのを葉付き包装の基本とした. 対照区は莢を有孔ポリエチレン袋に詰めた. 食味変化の目安としては全糖含量及び遊離アミノ酸指標 (ニンヒドリンに反応する80%アルコール抽出物) の変化を用いた.
    莢の外観は, 対照区が20°C4~5日で変色し, 商品性が失われたのに対し, 0.03mmポリエチレン袋の葉付き包装では1週間以上よく緑色を保持した. 0.04mmでも同様であり, 0.06mmの袋では若干劣ったが対照区よりはるかに勝った. 全体を針孔包装したものは対照区より良好であったが, 密封包装に比べ劣化が速かった.25°Cにおいても葉付き包装の外観保持効果は明らかで, ライナー包装も有効であった.
    対照区の糖及びアミノ酸は1~2日で急減したが, それらの減少は葉付き密封包装によって顕著に抑制された. また葉付き有孔包装によっても抑制されたが, 密封包装には及ばなかった. 根を切除した株, あるいは莢及び葉を付けた枝の密封は, 全植物体の密封に比べ効果が不確実であった. 葉身を全部切除した株ては著しく効果が減じ, 各葉身の1/2を切除した株ては効果が半減した. しおれた葉の株では, 葉付き包装による成分保持効果が減少した. 葉付き針孔包装もある程度の効果を示したが, 密封包装より劣った.
    葉付き包装は豆の硬化抑制にもある程度有効であった. 袋内のガス濃度は, O2が12%, CO2が5%程度であり, 0.06mmの袋でもほぼ同水準であり, 温和なCA条件であった. このため, 莢のみを密封したときにみられるガス障害を回避できるものと思われた.
  • 李 正吉, 岩田 正利
    1982 年 51 巻 2 号 p. 231-236
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    キュウリ‘ときわ新2号’の果実を4°Cに貯蔵し, ピッティングや白濁液漏出などの低温障害による症状を発生させ, その過程における果皮部, 果肉部の組織形態的変化を対照の13°C区と比較しながら検鏡観察した. なお, ピッティングは低湿度下で, 白濁液漏出は高湿度下で生じやすい傾向があった.
    1. ピッティング症状が外観的に認められる前から気孔下腔に隣接する柔細胞が原形質分離を起こし, 扁平化した。扁平化は表皮に平行方向と内部方向に次第に増加し, 気孔周辺の表皮下8~10層の柔細胞に及んだ. さらに表皮細胞も扁平化し, 気孔周辺を中心に陥没するようになると, 外観的にピッティングとして認められるようになった. その後, 扁平化細胞は表皮下15~20層にまで及び, また個々の気孔を中心とする扁平化部が拡大して相互につながり, ピッティング部の陥没はより深く, 広くなった.
    2. 白濁液が漏出する場合には, その前から気孔下腔に隣接する柔細胞ては細胞器官や細胞壁の一部が崩壊した. 細胞の崩壊は気孔近くの表皮細胞ならびに表皮下7~8層以上にわたる柔細胞にまて及んだ. この崩壊物は組胞間隙のみならず気孔部を通して外部にも溢出し, 白濁液漏出として認められた.
    3. ピッティングなどの症状が認められるようになると気孔近くの表皮細胞とその直下の柔細胞ては核が縮小後, 葉緑体と共に崩壊した. 一方, 気孔から離れた部分の表皮細胞とその直下の柔細胞, ならひに果肉部の柔細胞ては外部症状が現われる前に核が一時膨張したが, その後原形質分離と共に縮小した.
  • 李 正吉, 岩田 正利
    1982 年 51 巻 2 号 p. 237-243
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ナス‘黒光新2号’の果実を4°Cに貯蔵し, ピッティング, 褐変などの低温障害を発生させ, その過程における果皮部, 果肉部の組織形態的変化を13°C区を対照として比較した. さらに褐変発生とフェノール性物質ならびにポリフェノール•オキシグーゼとの関係を検討した.
    1. ピッティング発生前に, 表皮下3~10層目の一部の柔細胞ではすでに原形質分離を起こしていた. 発生の初期段階では, まず表皮下約8~10層目の2~3層の, 原形質分離を起こしている柔細胞が扁平化した. ピッティング程度が進むに伴い, 上記の扁平化細胞は褐変すると共に表皮方向ならびに表皮と平行方向に増加した. 最終段階では表皮細胞まで原形質分離, 扁平化おらびに褐変を生じ, さらに表皮下15~20層の柔細胞にまで及んだ. また, 褐変した細胞内には黄褐色の粒状体が認められたが, 特に表皮付近の柔細胞に多かった.
    2. 果皮部がピッティングを生じないで褐変する場合にも, 組織形態的変化はピッティング発生の場合とほとんど同様で, 細胞が扁平化しないだけが異なった.
    3. 果肉部の柔細胞では褐変前に核が一時的に膨脹したが, その後褐変すると, 柔細胞の原形質分離と共に縮小した.
    4. ナス果実中のセなフェノール性物質はクロロゲン酸と思われ, 維管束組織, 種子中に多く存在し, 果皮部にはアントシアンのほかに, クロロゲン酸以外のフェノール性物質の存在が推定された. また, ポリフェノール•オキシターゼ活性も果皮部, 果肉部, 維管束組織, 種子中に見出された.
    5. 低温貯蔵中に, 褐変が生ずるとフェノール性物質検出試薬に対する各組織の呈色反応は不明瞭になったが, ポリフェノール•オキシダーゼ活性は幾分認められた.
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