園芸学会雑誌
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51 巻, 3 号
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  • 高木 敏彦, 澤野 郁夫, 鈴木 鉄男, 岡本 茂
    1982 年 51 巻 3 号 p. 257-262
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカンにおける開花前後の高温条件カ花器及び幼果の発達に及ぼす影響を調査し, ハウス栽培下で多発する奇形果の発生機構を組織学的に検討した.
    1. 開花前の高温条件により花器各部の発達が抑制され, 著しく縦長な子房形を呈した. この縦長な子房は果底部の発達が著しく, 細胞層数及び細胞径の増大カみられた.
    2. 子房壁各部位の発達に及ぼす温度の影響は果底部で著しく, 次いで果頂部に現れ, 赤道部ではほとんどみられなかった. 奇形果の発生は果底部の生長力が盛んな時期における加温処理によって助長された.
    3. 子房壁各部位の相対生長率は, 開花前は果底部, 果頂部で高く, 開花直後は赤道部で, 以後は赤道部〓果頂部で高かった.
  • 岩垣 功, 加藤 義昌
    1982 年 51 巻 3 号 p. 263-269
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカン果実の初期生育と果実品質との関係を明らかにすることを目的として, 花の種類 (直花と有葉花), 開花時期, 着花(果)位置などが異なる果実の生長過程を調査した. あわせて砂じょうの発達過程の顕微鏡観察を行った.
    1. 生理落果による落果率は, 直花果で80~90%, 有葉果で約40%であった. 直花果では早期開花の落果率が晩期開花よりも約10%高かったが, 有葉果では差が小さかった.
    2. 果実の横径は, 有葉果の方が直花果よりも常に大きく, 有葉花ではその生長速度も高かった. 晩期開花の果実は生育初期には早期開花の果実より小さかったが, その差はしだいに小さくなった. 晩期開花の果実では開花後40日までの生長速度が高かった.
    3. 子室の内壁に砂じょう突起が現れる時期は, 開花時期の早晩にかかわらず開花日とほぼ一致していた. 子室内が砂じょうで満たされる時期は, 開花時期の早晩にかかわらず6月19日ころであった. 開花後砂じょうが充満するまでに, 早期開花では40日を要したのに対して, 晩期開花では30日しか要さなかった.
    4. 有葉果, 早期開花の果実, 樹冠外周部の果実は, 直花果, 晩期開花の果実, 樹冠内部の果実に比較して大果であり, 着色度が高く, 糖度が高く, 酸含有率が低くて品質が良かった.
    5. 上記の結果から, 7月上旬から8月上旬までのおよそ1か月間に, 摘果しなければ低品質果として収穫されるであろう小果を摘除することによって, 高品質果の割合を増やすことができることが明らかであろう.
  • 李 彰厚, 杉浦 明, 苫名 孝
    1982 年 51 巻 3 号 p. 270-277
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ポット植えのリンゴ台木 M27, M9, M26, M7, MM106, M11, M16 およびマルバカイドウの8種類を供試材料として, 1980年と1981年の生長期間に各々30日間の湛水処理を行い, 各台木の生長と体内の生理的変化を調べることによって, 台木種類間の耐水性程度を比較した。
    湛水処理は, 全般に台木の新梢生長を抑制したが, その抑制程度は種類によって大きく異なった. 耐水性の最も弱かったM9においては, 湛水処理9~12日ごろから地上部に障害症状が現れると同時に葉のクロロフィル含量も著しく減少した. これに対して, 耐水性の最も強かったマルバカイドウにおいては, 全処理期間を通して何の障害も示さず, 葉のクロロフィル含量もほぼ対照区と同じレベルであった. さらに, 耐水性の弱かった種類では湛水処理によって根の代謝活性と全フェノール含量が著しく低下した. また, M9の根には湛水処理10日から20日にかけて多量のエタノールが蓄積した. 湛水処理は台木の葉の N, P, K, Mg, Ca 含量を大きく減少させ, また, 葉の蒸散抵抗値を上昇させた. 特に, M9, M26, MM106においては湛水処理による蒸散抵抗の上昇が早く, 湛水日数が長びくにつれてその値も著しく高くなった.
    以上の結果を総合的に判断して, 種類間の耐水性程度をみると, 強い順にマルバカイドウ>M16, M7>M27>M11>MM106>M26>M9 の順になると結論される.
  • 荒木 斉, 中岡 利郎
    1982 年 51 巻 3 号 p. 278-285
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    本研究は低収成木樹及び老木樹における収量の増加と果実品質の向上, 並びに経済樹齢の延長をはかるために更新せん定の強さとその効果について検討した.
    1. 更新せん定の強さとその後の樹の生育との関係は, 強く切るほどおう盛な生育を示すとともに, しかもこの影響は長年月持続した. 弱い更新せん定では, 3年後に樹勢が衰弱し, 更新せん定前の状態にもどった. しかし, このような場合でも, 再び更新せん定を実施すると, 樹勢が著しく回復した.
    2. 1本の樹の中で主枝あるいは亜主枝の一部を強く更新せん定した場合に比べて, 大部分を強く更新せん定した場合には, 無更新部から発生した新梢でもその生育がかなりおう盛となる傾向を示した.
    3. 更新せん定の程度が強くなるほど, 樹冠内の葉量 (LAI, LAD) が多くなり, 葉材比及び葉辺材比が顕著に大きくなった.
    4. 1年目の樹当りの収量は, 更新せん定の強さに比例して著しく減少した. しかし, 3年目以降は, 逆に更新せん定の強さに比例して多くなり, 5年間の累積収量は, 強区が最も多く, 次いで中位区, 弱区の順となった. また, 樹冠占有面積当りの収量も, 樹当りの収量の推移とほぼ同じ傾向であった.
    5. 平均果重は更新せん定前に比べて, 更新せん定の程度が強くなるほど明らかに大きくなり, 強区では5年間この効果が認められたが, 弱区の果実は3年目で更新せん定前の状態にまでもどった. しかし, この場合でも再度の更新せん定によって5年目の果実は, 極めて大きくなった.
    6. 以上の結果から, 既成の低収成木園及び老木園における生産性の向上と経済樹齢の延長には, すべての主枝, 亜主枝を強く切りもどす一挙全面更新せん定又は数年間で樹冠全面を更新する計画的部分更新せん定の方法が適当と考えられた.
  • 高木 伸友, 井上 襄吉
    1982 年 51 巻 3 号 p. 286-292
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ブドウ‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’において, 高品質の果実を生産するために重要であると考えられる, 果房における物質蓄積とCO2排出量, ならびに, 葉におけるみかけの光合成速度の季節的変化を調査した.
    1. 果房体積の増加は典型的なダブルシグモイド曲線を示した. 体積増加の生長期別割合は, 成熟期を100として, 第1期が 37%, 第2期が 19%, 第3期が 44%であった. これに対して, 物質蓄積量の増加はむしろシンプルシグモイド曲線に近く, その生長期別割合は第1期が 11%, 第2期が 17%, 第3期が 72% で, 第3期における蓄積量が極めて多かった.
    2. 果房における乾物率は, 開花直後から急速に低下し, 第1期から第2期へ移る時点で最低になった. 第2期から上昇に転じ, 成熟期までほぼ直線的に増加した.
    3. 果房から排出されるCO2は, 単位新鮮重当たりでは, 満開後6日目に極めて高いピークが認められ, その後は急減した. 果房当たりでは, 第1期から第2期へ移る時期と第3期の初期とに2つのピークがあり, 第2期には排出量が減少した.
    4. 果房へ転流する物質量を, 蓄積された物質量と排出されたCO2のグルコース換算量の計とすると, その生長期別割合は第1期が 13%, 第2期が 20%, 第3期が 67% になるものと推定された.
    5. 葉におけるみかけの光合成速度は, 葉が展開してからほぼ1か月後の, 開花期ごろに最高に達した. 梅雨期に入ると低下したが, 果実生長第2期の7月上旬には上昇した. しかし, ピーク時の水準には達しなかった. そして, 8月からは落葉するまで低下が続いた.
    6. この葉におけるみかけの光合成速度と果房における物質蓄積速度とは異なったパターンを示した. 果実生長第3期における物質蓄積量が最も多い時期には葉におけるみかけの光合成速度は徐々に低下しており, したがって, 結実量が多過ぎれば果実生長第3期に至って果粒肥大不足, 成熟期の遅延, 糖の蓄積不足が起こる可能性があるものと考えられた.
  • 桝田 正治, 五味 清
    1982 年 51 巻 3 号 p. 293-298
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    フィシフオリア台の接ぎ木キュウリと自根キュウリの養水分吸収に関する知見を得るため, 茎切除直後から1時間ごとに木部いっ泌液を採取し無機成分の分析を行った.
    いっ泌率は接ぎ木•自根とも最初の採取時で最も高く, 採取時間が経過するにつれて急激に低下した. しかし, いっ泌率には日変化があり, その最大は茎切除の時刻に関係なく午後1時から3時の間に, 最小は午前7時から8時の間に認められた. 接ぎ木キュウリにおける日変化の振幅は自根キュウリのそれより小さかった.
    最初採取時のいっ泌率およびいっ泌液のNO3-N, P, Ca および Mg 濃度は接ぎ木キュウリで高かったが, K 濃度は逆に自根キュウリで高かった. これら成分の濃度は採取時間の経過とともに大きく変動した. NO3-N, K および Ca 濃度は接ぎ木•自根とも茎切除後数時間で急激に低下し, P 濃度は急激に上昇した. Mg 濃度の変化は小さかった. さらに時間が経過すると, 接ぎ木キュウリの NO3-N と K 濃度は培養液の濃度以下となったが, 自根キュウリの NO3-N と K 濃度は培養液の濃度以下とはならなかった.
    以上の結果より, 接ぎ木キュウリの養水分吸収はKを除いて自根キュウリのそれより優れるものと思われた. また, 接ぎ木キュウリの根キ NO3-N と K 吸収は, 自根に比べて茎葉から送られる代謝産物により強く依存しているものと思われた.
  • 橘 昌司
    1982 年 51 巻 3 号 p. 299-308
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    作物根は養水分吸収のほかに種々の重要な機能を有しているが, これらの機能が作物の生育, ことに不良環境に対する感受性にどのように関与しているかを明らかにすることが重要な課題である. 本研究においては作物根の機能に関する環境生理学的研究の一環として,春系キュウリの‘久留米落合H型’, 夏系キュウリの‘四葉’, クロダネカボチャ及びクロダネカボチャに接ぎ木した‘四葉’の4種の作物の生育と無機栄養に及ぼす根温の影響を比較検討するために, 第2本葉の展開した植物体を人工光下で, 12, 14, 17, 20, 25, 30°Cの根温下で10日間水耕栽培した. その結果, ‘四葉’は低根温による生育低下が著しく, その低温限界温度は‘久留米落合H型’に比べて2-3°C高いこと, クロダネカボチャは低根温耐性が高く, またクロダネカボチャに接ぎ木した‘四葉’は低根温耐性が著しく高められることが認められた. これらの作物の種類あるいは品種による低根温耐性の違いは低根温下での根の生長量の違いを反映しており, キュウリ2品種, ことに‘四葉’においては14°C以下の低根温下で根の生長が著しく阻害されたのに対し, クロダネカボチャでは12°Cまで低温ほど促進された. 接ぎ木‘四葉’も14°Cまで低根温ほど根の生長が促進された. その結果, T/R比はクロダネカボチャでは根温の低下に伴って減少したのに対し, キュウリ2品種では14°C以下になると T/R 比が増大に転じた. 葉の養分含有率はキュウリでは低根温で著しく減少したのに対し, クロダネカボチャではほとんど影響されず, 接ぎ木‘四葉’においても低根温の影響が自根のものに比べて小さかった. 各養素についてみると, P とMnがもっとも著しい影響を受け, 一方 Fe とMgはその影響が比較的小さかった. 低根温による生育の阻害程度と各養素の葉中含有率の減少程度の間に, Bを除いて, 有意な正の相関が認められた. 葉の含水率も低根温によって減少したが, この傾向は低根温耐性の小さな‘四葉’においてとくに顕著であった. 低根温下において, 根温処理後に展開した葉に葉脈間クロロシスが発生したが, この発生程度は‘四葉’でとくに著しかった.
    以上の結果から, 低根温下での根の生長阻害程度が作物の低根温耐性の重大な決定因子の一つであり, それとともに根の養水分吸収を含む諸機能の低根温に対する感受性が作物の低根温耐性に関係していると考えられる.
  • 池田 英男, 大沢 孝也
    1982 年 51 巻 3 号 p. 309-317
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    実験1では, 培養液中のK, Ca濃度がそ菜の NH4 害に及ぼす影響について検討するために, 8種類のそ菜を供試して水耕試験を行った. 処理は NO3, NO3+NH4 (1:1), NH4 の各N区 (全N濃度12me/l) と, K あるいはCa 2, 6, 18me/lとの組合せとした. また実験2では, 随伴陰イオンを異にする数種のK及びCa塩が,レタスとホウレンソウのNH4害に及ぼす影響について検討した. 培養液のpHはすべて6.0に調節し, 処理期間は原則として3週間とした.
    1. NO3+NH4区ではいずれのそ菜もNO3区と同程度ないしはこれを上回る良好な生育を示した. またNO3及びNO3+NH4区では, 培養液中のK, Ca濃度は葉中のK, Ca濃度に強く影響したが, 生育にはほとんど影響しなかった.
    NH4区では, トウモロコシを除くそ菜は生育を阻害され, 一般に葉中K, Ca濃度は低下した. 培養液中のK, Ca濃度が増加するにつれ, 葉中のK, Ca濃度もそれぞれ増加したが, NH4区で培養液中のK濃度の増加によって生育改善効果が認められたのはトマトとインゲンマメのみであり, またCa濃度の増加で生育改善効果が認められたのはトウモロコシ, キュウリ, レタス, キャベツのみであった. しかし, それらのいずれの場合でもNH4区の生育は, トウモロコシを除いてNO3区の生育にははるかに及ばなかった.
    2. KやCaをCO3やSiO3の塩で施用すると, NH4区でも培養液のpHは長期間高めに維持された. この効果は特にCaCO3において大であった. しかし, いずれの塩を施用しても, レタス及びホウレンソウのNH4害は軽減されなかった.
  • 高樹 英明, 青葉 高
    1982 年 51 巻 3 号 p. 318-328
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ニンニクの未開発の作型である春植栽培の寒地での成立可能性について検討した.
    1. 暖地の早出し栽培の当年の春どり球を種球とする春植栽培では, 収穫球が極めて小さく, 非実用的と思われた. これに対して, 寒地の普通栽培の夏どり球を翌春まで貯蔵したものを種球とし, 以下に記した点を考慮して栽培すれば, 収穫球重は前述の栽培に比べて著しく大きくなり, 実用的にも成立する可能性が示唆された.
    2. 夏どり球の翌春までの貯蔵温度は-2°Cが最適であった.
    3. -2°C貯蔵開始時に種球が休眠状態にあると, 休眠覚せい状態にある場合に比べて, 植え付け後の発芽が遅く, 正常型球形成率と球重の劣る傾向があった. 特に, 植え付け時期の遅い場合には著しく劣った.
    4. 根雪の融雪後, 早い時期に植え付けるほど正常型球形成率と球重が大きくなった.
    5. 一般に寒地系品種は暖地系品種より正常型球形成率と球重の双方で優れていた. 寒地系品種の間では, 晩生で完全抽だい性の品種が中生ないしやや晩生で不完全抽だい性の品種より正常型球形成率が高くなり, 他の条件が適当な場合には100%になった.
    6. 種球が大きくなると正常型球形成率と球重が増大した.
    7. 以上の項目1~6の条件を最良にした春植栽培では, 正常型球形成率は100%になり, 球重も秋植栽培の8割近くに達した. また, 収穫時期は秋植栽培より数日遅れただけで, 生育期間が4か月間に短縮された.
  • 大竹 良知
    1982 年 51 巻 3 号 p. 329-337
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ハクサイの結球の機作を明らかにする一段階として, 小結球の形成に至る葉の形態形成上の変化及びそれへの温度の影響について調査した. 調査材料はファイトトロンを用い, 高温区: 30-25°C, 中温区: 23-18°C, 低温区: 15-10°C (それぞれ昼-夜温) の3段階で栽培した.
    1. 第5葉における中肋の厚さは中温区で最大になり, 高温区で最小となった. 背腹軸に沿った柔細胞の列数は低温区ほど多く, またその列数における向軸側の背軸側に対する比率は低温区ほど大きかった. 柔細胞の長さは高温区ほど大きかった. 中肋の葉脈は低温区ほど太かった.
    2. 葉身は低温ほど厚く, その表皮細胞は低温区ほど小さく, 輪郭が単純であった.
    3. 葉原基幅の増加は高温ほど速かった.
    4. 茎頂から数えて一定の位置の葉原基まで脈間形成層が認められたが, 低温区ほど古い葉原基まで, また葉原基がより大きくなるまで認められた.
    5. 葉原基の伸長する角度は, 下位葉では直立していたが, 葉位が上がるに従って徐々に内側へ曲がるように変化し, 最終的には茎頂を覆うようになった. それらが次々と重なることにより小結球を形成したが, この過程は低温でより早く進行した.
    6. 葉原基中の柔細胞数の増加は高温区ほど速く, かつ下位葉では背腹でほとんど差がなかったが, 上位葉では向軸側での増加率が背軸側より大きくなった. 高温区では柔細胞数の増加が早く終ったため背腹での差が小さかったが, 脈間形成層の消えた葉原基の位置から見て, 柔細胞数は低温区ほど長い間増え続け, 背腹の差も大きくなったと考えられる.
    7. 植物体の生長に伴って, 葉原基の下偏生長が強まるのと柔細胞数の増加率において向軸側が背軸側より大きくなり, 更にその差が拡大した過程とは対応が見られた. この点から葉原基の下偏生長は, 柔細胞数の増加率が背軸側より向軸側が大きい状態において, 向軸側の細胞伸長が抑えられたため起きたと考えられる.
    8. “包被葉”の形成には葉身の下偏生長 (巻き込み) も関与していた. 葉身の下偏生長の機作は明らかにできなかったが, 双子葉植物の多くに見られるように, 細胞の増加の仕方が葉身の各組織で異なることによって起こる可能性が考えられる.
  • 篠原 温, 鈴木 芳夫, 渋谷 正夫
    1982 年 51 巻 3 号 p. 338-343
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    本研究は施設トマトの栽培法, 栽培時期及び品種と果実のアスコルビン酸含量との関係を明らかにするために行った.
    長期多段穫り栽培を水耕, 土耕で行い, 果実のアスコルビン酸含量を調べたところ, いずれの栽培法においても, 地表面に近い位置で成熟した果実は低含量であり, 上位の4果房で含量の顕著な増加が見られた. 水耕法と土耕法による果実成分には顕著な差は見られなかったが, 水耕の植物体は茎葉がやや過繁茂となり, 低位果房の果実の日射条件は悪く, アスコルビン酸, 還元糖などの含量が低い傾向を示した.
    栽培時期の影響を調べるため, 一年間にわたって毎月20日に播種し, 水耕で3段穫り栽培を行った. 果実のアスコルビン酸含量は, 果実の収穫期が12月になる8月播きのもので最も低含量であり, その後翌年4月播きまで徐々に増加し, 4月播きの果実が最も高含量となった.
    英国温室栽培用トマト, ‘ベスト•オブ•オール’, ‘マネー•メーカー’を夏及び冬の2回, 2段階の培養液濃度で水耕し, 我が国の桃色大果型品種‘FTVNR-3’と比較した. 冬作では‘FTVNR-3’の果実のアスコルビン酸含量は, 夏作のほぼ1/2に減少したが, 前者の2品種は, ほぼ夏作に匹敵する含量を示した.
  • 新美 芳二, 渡辺 宏和
    1982 年 51 巻 3 号 p. 344-349
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. ヒメサユリ (L. rubellum Baker) の組織培養による繁殖を効果的に進めるため, 既に報告した葉(9) の他に鱗片 (対照) と同等またはそれ以上の効率で子球を形成する植物体部分があるかどうから芽期から開花期までの植物体を用いて検討した.
    2. 花被片, 花糸, 花柱及び茎は子球を形成したが, それは採取時期によって異なった. すなわち花被片や茎は開花4週間前及び同2週間前, 花柱や花糸は開花時に採取した場合に比較的高い子球形成能力を示した.
    3. 花被片, 花糸及び花柱は, それらの基部側からの切片が高い子球形成率を示し, 茎では頂部付近からの切片が多くの子球を形成した.
    4. 萠芽後比較的早い時期に採取した茎の頂部5cmから調製した節切片及び節間切片はともに多くの子球を形成し, 特に節切片は非常に高い子球形成能力を持つことがわかった.
    5. 本研究の結果から, ヒメサユリの組織培養による子球増殖のために, 花被片や茎は外植体としてきわめて有効で, それらの鱗片とほぼ同等かそれ以上の子球形成能力を持つことがわかった.
  • 北川 博敏, 川田 和秀, 樽谷 隆之
    1982 年 51 巻 3 号 p. 350-354
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    スダチの長期貯蔵には温度が最も重要で, この実験の範囲では1~2°Cがよかった. そして, 厚さ0.02~0.03mm程度のポリエチレン袋に包装して貯蔵すると, 蒸散防止および緑色の保持に効果が大きかった. また, 貯蔵前の予措は障害および腐敗の防止に大きな効果があった. 温度, フィルム包装, 予措を組み合わせると4~6か月間緑色に貯蔵することが可能であると思われる.
    このように, スダチを緑色に保つにはポリエチレン袋などで密封し, 袋内の二酸化炭素濃度をある程度高く保つことが必要であるが, 袋内のガス濃度が高過ぎると果皮に障害を発生し, 腐敗の原因になる. 実際の貯蔵では緑色の保持と障害の発生のバランスをとることがもっとも難しいところである.
  • 広瀬 智久
    1982 年 51 巻 3 号 p. 355-361
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. キュウリ果実の低温障害を軽減する目的で, 5°C冷蔵中に, 種々の条件下で一時的加温処理を行い, その影響を調べた.
    2. 18°Cで7時間の加温処理を行った場合, 5°Cへ戻した果実の呼吸量はかなり減少し, 低温障害も非常に抑制された. しかし, 加温処理が遅くなるに従って, これらの効果は小さくなった.
    冷蔵3日以後, 2日置きに反復処理をした果実の, 呼吸量及び低温障害の抑制は, 更に顕著となった.
    3. 冷蔵開始から4日後に18°Cの加温処理を行った場合はその時間が長いほど, その後の呼吸量の減少が大きく, 低温障害発生の時期も遅延する傾向を示した. 特に, 24時間以上の処理での効果は著しく大ぎくなった.
    4. 18°C以上の温度で, 冷蔵4日後に24時間の加温処理を行った結果, 4月収穫果では処理温度が高くなるに従って, その後の呼吸量は低下し, 低温障害の発現も著しく遅延した. そして, 13日間の冷蔵後室温へ出庫し3日間放置した場合, 対照区では果実表面の大部分(60~90%) が腐敗したのに対し, 18°C及び36°Cで処理した果実の障害は軽徴であった. 更に36°C及び40°Cで処理した果実は極めて高品質に保たれた. しかし,42°Cで処理した果実には高温障害による部分的腐敗が認められた.
    7月収穫果でも処理温度が高いほど, その後の呼吸量は減少した. 対照区の低温障害は, 4月収穫の場合に比較して激しかったが, 処理による障害抑制の傾向は同様で, 36°C及び40°C処理の果実の品質は良好であった. 42°C処理では, わずかに黄色味を帯びたが, 高温障害による果実の腐敗などの変化は全くなかった.
  • 李 正吉, 岩田 正利
    1982 年 51 巻 3 号 p. 362-368
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    サトイモ塊茎を4°Cに貯蔵し, 内部褐変を発生させ, その過程における組織形態的変化を対照の13°C区と比較しつつ観察し, また褐変に関係のあるフェノール性物質ならびにポリフェノール•オキシダーゼの分布を組織化学的に調べた.
    1. サトイモ塊茎にはタンニン細胞があり, 内部貯蔵柔組織より表皮部柔組織と維管束組織に多く分布する傾向がみられた. また柔組織のタンニン細胞は一般に楕円形, 維管束組織では長方形であった.
    低温障害による内部褐変が肉眼的に認められる前から一部のタンニン細胞はすでに粒状化し, やや褐変しており, その周囲の柔細胞にも褐変が及んだ. 肉眼的に内部褐変が認められるようになると, 褐変したタンニン細胞が増加し, その周囲の柔細胞の褐変程度も増大した.
    一方, タンニン細胞以外の柔細胞では内部褐変の発現前から核が膨脹し, 白色体やアミロプラストは核の周囲に集合した. 褐変が現われると, これらの柔細胞はすでに原形質分離を起こしており, 核は逆に縮小し, ついで核のみならず白色体やアミロプラストも崩壊した.
    2. 塊茎中のフェノール性物質は主としてタンニン細胞中にあるが, 乳管中にもその存在が認められた.
    ポリフェノール•オキシダーゼ活性はタンニン細胞のほか乳管, 一般の柔細胞でも認められた.
    3. 低温貯蔵した場合, 内部褐変が現われるとフェノール性物質検出試薬に対する呈色反応は不明瞭になったが, ポリフェノール•オキシダーゼ活性は認められた.
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