園芸学会雑誌
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52 巻, 1 号
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  • 松本 亮司, 奥代 直己, 間苧谷 徹
    1983 年 52 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 高速液体クロマトグラフィー (HPLC法) による‘川野ナツダイダイ’果汁のフラバノン•グリコシドの分析法を検討するとともに, 樹上凍害果と貯蔵中凍害果における凍害果のナリンジン含量の違いを経時的に調査した.
    2. HPLC法とデービス法によるナリンジンの分析値の間には有意な相関があり, y=-2.502+0.647x〔y=HPLC法(mg%), x=デービス法(mg%)〕の直線回帰式が得られた.
    3. ‘川野ナツダイダイ’果汁中には, ナリルチン, ナリンジン, ネオヘスペリジンが検出され, ‘ナリンジナーゼ’による分解生成物であるプルニン及びナリンゲニンは検出されなかった.
    4. 苦味の官能評価によく一致するとされている圧搾法で得られた果汁中のナリンジン濃度 (mg%) は, 貯蔵中凍害果では増加の後, 高濃度で一定に推移した. 一方, 樹上凍害果では当初, 貯蔵中凍害果の場合と同様に増加したが, 後に減少した. ブレンダーによリ完全に磨砕して得られた果汁中のナリンジン濃度は, 両者とも圧搾法より高い水準にあり, 貯蔵中凍害果では最後まで微増し, 樹上凍害果では微増の後, 減少した.
    5. 1果当たりのナリンジン総量 (mg) は, 貯蔵中凍害果では多少の変動はあったが, ほぼ一定していた. 一方, 樹上果では凍結後, 常時, 減少し, その減少はす上りの進行と並行した.
  • 山川 祥秀
    1983 年 52 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    赤ワイン用原料ブドウ‘カベルネ•ソービニオン’‘ピノ•ノワール’‘マスカット•ベリーA’‘カベルネ•サントリー’について, 果粒成熟中の果汁成分変化と栽培上の特性を調査した.
    1. 果粒径及び果粒重の変化: ‘カベルネ•ソービニオン’は10月上旬にそれぞれ最大値14.0mm, 1.6gに達し, 晩生種の特徴を示した. ‘ピノ•ノワール’と‘カベルネ•サントリー’は9月上旬にそれぞれ14.0mm, 1.6g; 14.5mm, 1.7g, ‘マスカット•ベリーA’は9月中旬に20.0mm, 5.0gの最大値に達し, ‘マスカット•ベリーA’は大粒であった.
    2. 果汁pHの変化: 完熟期には‘ピノ•ノワール’は3.5, ‘カベルネ•ソービニオン’と‘マスカット•ベリーA’は3.4, ‘カベルネ•サントリー’は、3.3であった.
    3. 糖度の変化: ‘ピノ•ノワール’は9月上旬17%に達し, ‘カベルネ•サントリー’と‘マスカット•ベリーA’は10月上旬18%に達した. 一方‘カベルネ•ソービニオン’は10月に入っても15%前後であり, ウイルス病のため低糖度であった.
    4. 酸度の変化: ‘ピノ•ノワール’は9月上旬に1.0g/100ml以下となった. 一方‘マスカット•ベリーA’‘カベルネ•サントリー’, ‘カベルネ•ソービニオン’の3品種は10月上旬にようやく1.0g/100mlを下回ったが, 完熟期においてもなお0.9g/100ml前後と高酸度果汁であった.
    5. 糖酸比の変化: それぞれの品種の完熟期とその時点では糖酸比は‘ピノ•ノワール’は9月上旬で17.8, ‘カベルネ•サントリー’は9月下旬で19.4, ‘マスカット•ベリーA’は9月下旬で20.1を示し, ‘カベルネ•ソービニオン’は10月上旬で16.6とウイルス病のため低かった. いずれの品種も白ワイン用品種に比べ低い値であった.
    6. 酒石酸•リンゴ酸比の変化: それぞれの完熟期において, ‘カベルネ•ソービニオン’と‘ピノ•ノワール’は1.1, ‘マスカット•ベリーA’は0.8で, リンゴ酸の方が多かった. 一方‘カベルネ•サントリー’は1.3で酒石酸の方が多かった.
    7. ブドウ糖•果糖比の変化: それぞれの完熟期において, ‘カベルネ•ソービニオン’, ‘ピノ•ノワール’, ‘カベルネ•サントリー’はそれぞれ1.0でブドウ糖と果糖の含量が等しかったが, ‘マスカット•ベリーA’のみ0.9で, 果糖の方が多かった.
    8. 栽培上の特性: いずれの品種も栽培は容易であった. ‘マスカット•ベリーA’と‘カベルネ•サントリー’は収量規制が必要であった.
    9. 利き酒の結果:‘カベルネ•ソービニオン’と‘ピノ•ノワール’は上級ワインとなり, ‘マスヵット•ベリーA’と‘カベルネ•サントリー’はラブルスカ臭がみられ, それを防ぐため早目の収穫が必要であり, したがって, 収穫時期の決定に配慮が必要と思われた.
  • 山川 祥秀, 守屋 正憲
    1983 年 52 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ‘カベネル•フラン’のウイルスフリー樹と汚染樹の果汁成分の経時的変化を, 1982年に, それぞれ4年生の自根樹を用いて調査し, 次の結果を得た.
    1. 9月下旬, ウイルスフリー樹の果粒は果重2.15g, 果径14.5mm (果房重240g), 汚染樹のそれらは1.80g, 14.0mm (果房重170g) の最大値に達し, ウイルスフリー樹の果粒の方が重かった.
    2. 汚染樹の果汁糖度は9月上旬12%に達した後, 全く増加が見られなくなった. 一方, ウイルスフリー樹の果汁糖度は9月上旬以降も順調に増加し, 9月下旬18%に達し, 汚染樹のそれを5~6%も上回った.
    3. 9月30日, 汚染樹のグルコースは5.75%, フラクトースは5.49%であった. 一方, ウイルスフリー樹のグルコースは8.43%, フラクトースは8.96%であって, 汚染樹のそれらを大きく上回った.
    4. 果汁酸度は9月下旬, 汚染樹の0.90g/100mlに対し, ウイルスフリー樹は0.60g/100mlと低く, 低酸度であった.
    5. 9月30日, 汚染樹の酒石酸は0.900g/100mlと高く, リンゴ酸は0.388g/100mlであった. 一方, ウイルスフリー樹の酒石酸は0.664g/100ml, リンゴ酸は0.284g/100mlで, 共に汚染樹より低かった.
    6. 完熟期, ウイルスフリー樹の果汁pHは3.30, 汚染樹のそれは3.20であった.
    7. 仕込み5か月後の利き酒によると, ウイルスフリーー樹のワインは品種特有のアロマが強いが, 酸味, 渋味がやや不足した. 一方, 汚染樹のワインはアロマが劣るが, 酸味, 渋味は強く, 赤色も濃かった. したがって, 低酸含量となりがちなウイルスフリー樹の場合, 原料果実の収穫, 仕込み時期の選択に問題があるものと思われた.
  • 杉山 信男, 柴田 道夫
    1983 年 52 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    初夏と秋に, 置換性カリ含量の異なる3種の土壌でカリ無施肥区と施肥区を設けて, ホウレンソウを第8葉が展開するまで栽培し, カリ施肥の効果が栽培時期によって異なるか, 否かを確かめようとした.
    1. 秋の実験よりも初夏の実験の方が栽培期間中の平均気温が高く, 1日当たりの日射量は多く, 第8葉が展開するまでの日数は短かった. しかしながら, 第8葉展開時の地上部乾物重並びにカリ含有量は秋の実験の方が多かった.
    2. 置換性カリ含量249ppmの土壌でカリを施肥すると, 初夏の実験でも, 秋の実験でも, 地上部乾物重は有意に増加した.
    3. 置換性カリ含量412ppmの土壌でカリを施肥しても, 栽培時期に関係なく, 地上部乾物重はほとんど増加しなかった.
    4. 置換性カリ含量322ppmの土壌でカリを施肥すると, 実験を行った季節が同じでも, 地上部乾物重が有意に増加する場合と増加しない場合とがあった.
    5. 収穫時に雨が降った実験IIでは, 他の実験に比べ, 地上部における乾物当たりのカリ濃度は高く, 体内水分当たりのカリ濃度は低かった.
    6. 以上の結果から, 収穫期まで栽培した場合には, 幼植物の場合とは異なり, カリ施肥の効果が認められなくなる置換性カリ含量は栽培時期によって変化しないと考えられた.
  • 矢田 貞美, 井本 征史
    1983 年 52 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    被覆種子を使用しての少量精密播種では, 苗立ちの安定化を図る必要がある. その対策としてハクサイを供試し, 被覆層への殺菌剤の混入が Rhizoctonia solani Kükn 菌による苗立枯れの防除に及ぼす効果を明らかにした.
    1. 被覆層に混入する薬剤とその濃度 (種子重に対する重量%) は, 出芽•生育に対する薬害の有無及び薬効の両面から, イプロジオン水和剤9%, チオファネートメチル水和剤10~14%が有望と考えられた.
    2. 育苗培地及び本圃にH-10 (培養型II), K-1 (培養型III A) 菌株のそれぞれを接種し, 実際場面での効果を検討した. 両菌株に対しては出芽, 発病, 生育状況からチオファネートメチル水和剤10%の効果が最も高かった.
  • 青木 宣明, 吉野 蕃人
    1983 年 52 巻 1 号 p. 35-44
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    チューリップ球根‘Trance’の11cm球を供試し, 予備冷蔵開始時の花芽ステージと冷蔵温度, 植え付け後の生育初期温度の三者を組合わせ, 生育, 開花, 切花品質に及ぼす影響及び年内促成などでしばしば問題となるブラインドの原因について調査した.
    1. 予備冷蔵開始時における花芽のステージが進んだ球根 (花芽分化が完了した球根) では, 冷蔵温度が低くなるほど開花率, 切花品質ともに向上した. すなわち, 2°Cや5°C冷蔵でしかも生育初期温度が中温以下では90%以上の開花率となった. しかし8°C冷蔵や栽培温度が高く維持されると腐敗病によるブラインドが著しく増加し, 切花品質も劣る傾向が認められた.
    2. 花芽のステージが低い球根 (花芽分化未了の球根) では, 冷蔵温度が高くなるほどノーズがよく伸長し, 開花率, 切花品質ともに向上した. しかし冷蔵温度が低い場合や高温で栽培された場合はブラインドが著しく増加し, 切花品質も劣った.
    3. 切花品質は花芽のステージが進んでいたものほど良質となった. 到花日数は栽培温度が高くなるほど少なくなったが, 切花品質は逆に劣った.
    4. 以上のことから, 促成栽培を技術的にシステム化していくには, 花芽のステージ, 冷蔵温度, 植え付け後の生育初期温度の三つの条件を考慮しなければならない.
  • 朱 建〓, 黄 敏展
    1983 年 52 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    この研究にはガーベラの‘アーレンスーグ’, ‘ベアトリックス’, ‘コンチネント’及び‘スーパージャイアント•イエロー’の4品種を使用した. 初代培養には花茎を材料とし, 筒状花が2列開花した時, 花の直下から4cm長さの花茎を用いた. まず70%アルコールに2~3秒間, 続いて2%NaOCl液に30分間浸して消毒した後, 滅菌水で3回洗浄した. 消毒後の花茎は両端の各0.5cmを切り捨て, 縦に2分して, 切口を培地に向けて置床した.
    基本培地には MS (Murashige•Skoog 1962) 培地の1/2量主要無機塩類, Heller の微量機塩類とMSの有機物を用い, それに Na2FeEDTA 21.4mg/lを加え, 寒天は0.8%, pHは5.6とした. ショ糖, オーキシン, サイトカイニンなどの濃度を検討した結果, 培地にはショ糖を1%, IAA 0.1mg/l, BA 10mg/l加えたのがよかった. 花茎を置床した後, 最初の2週間は完全暗黒とし, その後800lxの照明下で16時間日長に保つことによって, 16週間後には, 各花茎の切片より5個以上の幼植物が得られた.
  • 居城 幸夫, 堀 裕
    1983 年 52 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    母球の植え付け深さがけん引根と子球の形成•肥大に及ぼす影響を明らかにしようとした.
    1. グラジオラスでは植え付け深さ0cm区において, けん引根はいずれも0.5cmの長さで先端が褐変し, 伸長•肥大が極端に抑えられた. 深植えの15, 30cm区ではけん引根は若干伸長したが, その肥大は0cm区と同じく極端に劣った. 一方標準深さの5cm区のみはけん引根の伸長, 肥大, 収縮ともに正常に進行した. オキザリスはグラジオラスと異なり, 母球底盤部から1本のけん引根を発生する. けん引根の伸長•肥大は4~12cm区では小差ながら深植え区ほど良好であり, 0cm区でも4~12cm区の約半分の肥大を示し, いずれも順調に収縮した.
    2. 子球の肥大はグラジオラス, オキギリスとも, けん引根のそれと同様, 0cm区が終始劣った. オキザリスでは, 子球の肥大はけん引根の収縮とよく対応し, 最終重で深植え区ほど勝った. 一方, グラジオラスでは, けん引根の肥大がほとんどみられなかった30cm区で肥大が明らかに劣ったが, 同15cm区では肥大が優れ, 小差ながらけん引根の肥大•収縮が順調であった5cm区よりも優れた.
    このように子球の最終重はけん引根の肥大•収縮が最も優れた浅植え区で最大になるとはかぎらず, またその初期肥大においても浅植え区が特に勝ることはなかった. このことは, けん引根の寄与率の大小は別として, その肥大•収縮をもって子球肥大のトリガーと考えることは必ずしも適当でないことを示すものであろう.
  • 居城 幸夫, 堀 裕
    1983 年 52 巻 1 号 p. 56-64
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    光合成産物がけん引根に貯蔵され, さらに再転流されて子球の肥大に用いられる過程, 及びけん引根の子球肥大に対する寄与率を14Cトレーサー実験により解明しようとした.
    1. 生育時期別に最大葉(グラジオラス)あるいは地上部全体(オキザリス)に14CO2を施与した場合, 16時間後の14Cの全転流率は, いずれの種類においても初期施与で低かったが, けん引根肥大最高時以降の施与では60%以上, 70%近くになった.
    14Cのけん引根への分配率が最大となったのは, けん引根肥大最高期ではなく, むしろそれに先立つ肥大進行期, すなわちグラジオラスでは3~4.5葉期, オキザリスでは4~6葉期の施与で, それぞれの分配率は12,81%であり, それらの時期それぞれのけん引根のRSSが高いこととよく対応した. 子球への14Cの分配はグラジオラス, オキザリスでそれぞれ3,4葉期から認められ, 乾物分配率に先んじて14C分配率の増加がみられた. なおグラジオラスの花茎への乾物ならびに14Cの分配はけん引根肥大最高時前後, ただし14Cのそれが乾物のそれに若干先んずるかたちで, ともに急増し, 開花とともに急減した. また, 母球は専らソース器官と考えられてきたが, 少なくともグラジオラスの生育初期には, 12%に近い分配がみられた.
    2. けん引根へ最も効率的に14C-光合成産物が取り込まれる時期に14CO2を光合成させて, その後の14Cの分配をみた. オキザリスでは, けん引根の14Cが呼吸による消耗を大きく上回って減少するけん引根収縮盛期(および収穫直前) に, その減少分 (全減少量-呼吸消耗量) に近い14Cが子球に増加した. その間, 葉の14Cの減少はごく少ないので, 子球の14Cの増加は専らけん引根からの移行によるものと判断された. すなわちオキザリスでは4~5葉期の光合成産物は一旦けん引根に貯えられたのち, その収縮とともに効率的に子球に移行するものといえる. またグラジスラスでも同様に, ただし量的にははるかに小さい規模であるが, 3~4.5葉期の光合成産物の一部はけん引根を経て子球に移行すること, ただし子球肥大の後半には葉あるいは花茎を経ての移行もかなりみられることが推定された.
    部位別にみて, 最終掘り上げ時に存在する14C量が, 施与24時間後に比べて増加したのは子球のみである (グラジオラスでは木子が加わるが, その量はごく小さいので便宜的に子球のそれに加えることとする). したがって子球での14Cの増加分は, 最終的に他の部位, 特にけん引根からの移行によるものとみられる. そこで各部位で呼吸速度が同一と仮定して, 各部位から子球への14Cの移行量を計算した, その結果, けん引根の肥大盛期の光合成産物についてみる限りでは, それらのうち最終的に子球に存在したもののうちオキザリスでは約70%, グラジオラスでは約14%が少なくともけん引根を経由して移行しており, 一方, 葉から移行したものはそれぞれ23%, 65%を占めるものと推定された.
    なお, ここに示した14Cに基づくけん引根の推定寄与率と前報で示した乾物重に基づく推定寄与率とは比較的よく一致した.
  • 長島 時子
    1983 年 52 巻 1 号 p. 65-77
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ツルラン, カ•カルディオグロッサ及びガンゼキランの3種類のランを供試し, 胚珠形成及び受精後の種子形成過程を組織学的に観察するとともに, 種子形成過程と種子発芽との関係を追究した.
    1. 子房の大きさは, いずれのランにおいても, 受粉すると急速に増加した. 子房の大きさは, ツルランでは受粉後70日ごろに, カ•カルディオグロッサでは同60日ごろに, ガンゼキランでは同50日ごろにそれぞれ一定値に達した.
    2. 種子及び胚の大きさは, いずれのランにおいても, 受精すると急速に増大した. 種子の大きさは, いずれにおいても受粉後70日ごろにそれぞれ一定値に達した. 胚の大きさは, ツルランでは受粉後85~90日ごろに, カ•カルディオグロッサでは同75~80日ごろに, ガンゼキランでは同95~100日ごろにそれぞれ一定値に達した.
    3. 胚珠形成は, ツルランでは受粉後38~40日ごろに, カ•カルディオグロッサでは同34~35日ごろに, ガンゼキランでは同43~45日ごろに完了した. 重複受精は, ツルランでは受粉後43~45日ごろに, カ•カルディオグロッサでは受粉後39~40日ごろに, ガンゼキランでは受粉後48~50日ごろに行われた. 胚のう核は, ツルラン及びカ•カルディオグロッサではそれぞれ5~6個, ガンゼキランでは8個観察された. 受粉から胚発生完了までに要する日数は, ツルランでは85~90日, カ•カルディオグロッサでは75~80日, ガンゼキランでは95~100日であった.
    4. 胚発生の様相はツルラン, カ•カルディオグロッサ及びガンゼキランのいずれにおいても同様であった. すなわけ, いずれにおいても4細胞期ではA2型であり, 4細胞期以降の胚発生過程はE型 (Liparis pulverulenta型) に類似していた. またいずれにおいても胚は主としてca細胞から形成された.
    5. 受精後の胚乳核は, ツルラン, カ•カルディオグロッサおよびガンゼキランのいずれにおいても3~5個が観察された. また, いずれにおいても胚柄の存在が観察された.
    6. 種子の発芽能力は, ツルラン, カ•カルディオグロッサ及びガンゼキランのいずれにおいても16細胞期(いずれにおいても受粉後60日ごろ) 以降に認められた. なお, いずれにおいても胚発生完了前後において発芽率が最も高かった. 培地としては, MS培地及びKC培地に比較して, H培地が優れていた.
  • 高田 峰雄
    1983 年 52 巻 1 号 p. 78-84
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    カキ‘富有’果実を種々の発育段階で採取し, その後の呼吸量, エチレン生成量及び成熟の変化を, 25°Cで個々の果実について調べた.
    ステージIの果実は (6,7月採取), 呼吸のクライマクテリック様増大と大量のエチレン生成を示し, 果実は軟化し, 果色は黄化した. このステージの果実はすべて, エチレン生成のピーク時にへたが脱落した. また, 呼吸量とエチレン生成量は極めてよく似た変化を示した.
    ステージIIの果実 (8月採取) では呼吸量の増大は見られたが, ピークは出現しなかった. これに対し, エチレン生成においては明白なピークが見られた. 果実の軟化と果色の黄化も起こったが, へたの脱落は見られなかった.
    ステージIIIの果実 (10月採取) では呼吸量の増大と少量のエチレン生成が見られたが, 両者ともピークは認められなかった. また果実の軟化は起こったが, へたは脱落しなかった.
    エチレン生成に関しては, 果実の成熟 (発育) が進むにつれてその生成能が急速に減退するように思われた.
    果実の呼吸量及びエチレン生成量を測定する場合には, 個体差の大きいことを考慮して, 個々の果実について測定することが望ましいと考えられた.
    種々の点から検討した結果, カキ‘富有’果実はクライマクテリック型果実ともまたノンクライマクテリック型果実とも異なる型の果実のように思われた.
  • 宮崎 丈史
    1983 年 52 巻 1 号 p. 85-92
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    収穫後, 常温流通する青ウメの鮮度保持をはかるため, 包装及び果実由来の包装内エチレン除去の効果について検討した.
    1. 青ウメは, 収穫後22°Cにおくと, 3~4日目にはその一部が黄化し始め, 以後は急速に黄変した. また果実成分は, 糖分が減少する一方, 主たる有機酸であるクエン酸は, 黄化が始まるまでは増加し, その後は減少する傾向を示した.
    2. 収穫した青ウメは, クライマクテリック型の呼吸を行い, そのピーク時には大量のエチレンを生成した. 青ウメを収穫後ただちにポリエチレン包装し, 包装内の酸素濃度を4~5%以下として呼吸を抑制すると, 無包装に比べ, およそ2日程度鮮度保持期間が延長された. しかし, 酸素濃度が0.5%以下となるような包装条件は, 果実に代謝異常やそれに伴う障害を発生させることから不適当と思われた.
    3. 適切な変成ガス環境が得られる包装を行い, エチレン除去剤を用いて包装中に果実から放出されるエチレンを除去すると, 青ウメの追熟の開始は遅延された. その結果, 包装だけの場合に比べ, さらに2日程度の鮮度保持期間の延長が可能となった.
  • 山脇 和樹, 山内 直樹, 茶珍 和雄, 岩田 隆
    1983 年 52 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    キュウリ果実の低温障害の発生機構を細胞内顆粒のレベルで解明する目的で, ショ糖密度こう配遠心分離法によって細胞内顆粒を分離し, 密度こう配中での顆粒標識酵素活性の分布パターンを調べた. ここでは, 特にミトコンドリアの酵素を中心に低温障害との関係を考察した. 貯蔵は果実を有孔ポリエチレン袋詰とし, 1°Cあるいは15°Cに保った.
    1. 低温障害の症状としては, ピッティングが1°C貯蔵5日ごろから認められた. 1°C3日では外観は健全であり, これを15°Cに移しても明確な症状は現れなかった. 15°Cでは7日後も健全な外観であった.
    2. 低温障害に伴う内的異常を示す指標として, 膜透過性の変化をみるため, キュウリ果肉切片からのK+イオン漏出速度を測定した. 1°Cでは直ちにK+イオン漏出速度が増大し始め, ピッティング発生に先立って膜透過性の増大が進展すると思われた. 15°C貯蔵果ではほとんど変化がなかった.
    3. 1°Cに貯蔵したキュウリ果実のミトコンドリアのチトクロムC酸化酵素とリンゴ酸脱水素酵素の活性は, ピッティング発生に先立って低下した. すなわち, 低温によるミトコンドリアの機能低下が障害発生前に起こったと考えられる. 早期 (1°C 3日) に昇温すると, この活性の低下は回復した.
    4. ミトコンドリアのNADHチトクロムC還元酵素は, 1°C貯蔵で活性が増大し, ピッティング発生果ではショ糖密度こう配中での分布が広がった. 15°C貯蔵果では活性が低下した.
  • 堀 裕
    1983 年 52 巻 1 号 p. 113-115
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
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