園芸学会雑誌
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52 巻, 3 号
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  • 山下 研介
    1983 年 52 巻 3 号 p. 223-230
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    本実験においては, ウンシュウミカンとナツダイダイの接木キメラと言われているコバヤシミカンを材料として, 新•旧葉, 果実, 実生のアイソザイムパターンを観察し, ウンシュウミカンおよびナツダイダイのそれと比較した.
    1. 7月の新旧葉, 果実各部位について得られたパーオキシダーゼアイソザイムパターンは, 新•旧葉とアルベドについてはコバヤシミカンとナツダイダイとの間にはっきりとした類似性がみられた. しかし, 砂じょうについては, コバヤシミカンとウンシュウミカンとの間に類似性がみられた. エステラーゼアイソザイムパターンについてみると, フラベドとアルベドに関してコバヤシミカンはナツダイダイと全く同一のパターンを示した.
    2. 10月の新旧葉, 果実各部位について得られたパーオキシダーゼアイソザイムパターンについてみると, コバヤシミカンは旧葉とフラベドに関してナツダイダイときわめてよく似たパターンを, またアルベドと新葉に関してもかなりよく似たパターンを示した. エステラーゼアイソザイムパターンについてみると, 旧葉と種子に関してコバヤシミカンとナツダイダイは全く同じパターンを示した. フラベド, アルベド, 新葉に関しても, コバヤシミカンはナツダイダイに類似したパターンを示した.
    3. 実生の葉および根のパーオキシダーゼおよびエステラーゼアイソザイムパターンについてみると, コバヤシミカンはナツダイダイにきわめてよく似たパターンを示した.
    以上の結果より, コパヤシミカンが生長点組織分化層の第I層が温州ミカン因子, 第II層がナツダイダイ因子よりなる周縁キメラであることについて確証が深められた.
  • 河瀬 憲次, 平井 正志
    1983 年 52 巻 3 号 p. 231-237
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ‘宮川早生’及び‘杉山温州’の着色期における果皮成分の変化と浮皮との関係を調べた. 果皮の新鮮重は果肉重の増加が停止した後も増加を続け, この時期に果実が浮皮になった. この果皮新鮮重の増加は可溶性の糖の増加を伴い, 果皮乾物重の増加のほとんどが糖の増加によるものであった. 一方, 果皮のアルコール不溶物の量はほとんど変化しなかった. 着色期に果皮のタンパク質含量と酸性ホスファターゼ活性は共に徐々に増加した.
    エセフォンは浮皮をある程度助長し, 果皮新鮮重, 乾物重をやや増加させた.
    ‘杉山温州’と浮皮になりにくい‘今村温州’の着色期における果皮成分の変化を比較すると,‘今村温州’では果皮重の増加がほとんど見られず, 糖含量の増加もわずかであった. また浮皮の発生はほとんど見られなかった.
    以上の結果から, 糖蓄積と浮皮との密接な関係が明らかになり, これらに対するエチレンの関与が示唆された.
  • 間苧谷 徹, 河瀬 憲次, 禿 泰雄, 平井 康市
    1983 年 52 巻 3 号 p. 238-242
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    13年生‘杉山温州’を供試し, 樹上果をエチレン発生剤並びにエチレン発生阻害剤で処理することによって, エチレンが浮皮の発生に及ぼす影響を検討した.
    1. 100ppmエセホンを10月28日に樹上果に散布した結果, 無散布果に比較して, 果実からのエチレンの発生が増加し, 浮皮の発生は助長され, 果実比重は低下した.
    2. 11月26日, 12月1日, 同4日に各10秒間, 樹上果をリゾビトキシンのアミノエトキシ類似体(AAR)10-4M液に浸漬した結果, 無浸漬果に比較して, 果実からのエチレン発生は低下し, 浮皮の発生は抑制された. また, 果実比重も高かった.
    3. 12月1日に採取した果実を脱エチレン剤(KMnO4) とともに密封容器に入れ, 20°Cで21日間放置すると, 脱エチレン剤を同封しない場合に比べて, 容器内のエチレン濃度が低下し, 浮皮の発生が抑制された.
    4. 浮皮の発生が抑制されたAAR処理及びKMnO4 同封区では, それぞれの対照区に比べて, 果皮歩合が低く, またアルベドの水可溶性ペクチン含量が低く, ヘキサメタ燐酸ソーダ可溶性及び塩酸可溶性ペクチン含量が高かった. 一方浮皮の発生が助長されたエセホン処理区では対照区との間で上記と逆の関係が見られた.
  • 志村 勲, 伊藤 祐司, 清家 金嗣
    1983 年 52 巻 3 号 p. 243-249
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1972年にニホンナシを母樹とし, それにマルメロの花粉を受粉した. その結果, 稔性種子が得られ, それらからは開花にまで至った個体が育成された. 交雑の結果及び個体の特性は次のとおりである.
    1. ニホンナシ‘八幸’,‘リ-14’にマルメロの花粉を受粉した結果, 97粒の稔性種子が得られた. 種子の発芽率は48.5%であった.
    2. 幼苗の大部分は本葉8~10枚前後の段階で枯死したが, 現在まで7個体が生存し, それらのうちの1個体が開花にまで至った.
    3. 開花した個体の葉及び花の形態的特性を総合して見ると, 本個体はニホンナシとマルメロとの中間型というよりも, ややニホンナシに類似しているといえる.
    4. ペルオキシダーゼアイソザイムの分析結果から,本個体はニホンナシとマルメロとの属間雑種と確認された.
  • 山木 昭平, 梶浦 一郎
    1983 年 52 巻 3 号 p. 250-255
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ果実のみつ症状部分における組織崩壊を, 細胞壁多糖類, その構成単糖類及び細胞壁分解酵素活性の変化によって検討した.
    みつ症状部分でのヘミセルロースを分解するキシラナーゼ, アラバナーゼの活性は, 症状初期 (段階1-2) においてのみ健全部分より増加したが, 中期 (段階3-4),後期 (段階5-6) ではもはや活性の増加は認められなかった. その他のヘミセルラーゼ (β-キシロシダーゼ, β-グルコシダーゼ, β-ガラクトシダーゼ) については, 両果肉部分で大きな活性の差は認められなかった. 一方,症状初期でのエンドセルラーゼ (中性型), 全段階でのポリガラクチュロナーゼの活性増加は前回と同様顕著であった.
    みつ症状部分での細胞壁多糖類のうち, 特にセルロース成分の分解が大きかった. 即ち, みつ症状部分のセルロース成分は, 症状初期において既に健全部分のものよりも減少し, その後症状の進行に伴いその減少はより助長され, 中期では健全部のセルロースの約85%, 後期では75%になった. また, 酸可溶性ヘミセルロース成分は中期, 後期において症状部分で減少したが, アルカリ可溶性ヘミセルロース成分は両部分において大きな差は認められなかった. 上に述べたみつ症状部分での細胞壁多糖類成分の分解過程は, 果実の過熟に伴う細胞壁多糖類の分解過程と類似していることから, ニホンナシのみつ症状は, 果肉組織の一部分が他部分よりもより早く過熟になるために発生するように思われる.
  • 弦間 洋, 藤巻 和司, 石田 雅士, 傍島 善次
    1983 年 52 巻 3 号 p. 256-265
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    モモ優良台木の大量繁殖を前提とした, さし木繁殖技術確立のための基礎的資料を得る目的で, 長野県下伊那地方産野生モモ (ネコブセンチュウ抵抗性) の緑枝ざし及び休眠枝ざしにおけるさし穂の不定根形成過程を組織学的に調査し, 併わせてコハク酸脱水素酵素活性の組織化学的調査も行った.
    発根はミスト繁殖装置下の緑枝ざし, 底熱処理した休眠枝ざしともIBA処理により促進された.
    さし穂基部の組織的変化は緑枝ざし, 休眠枝ざしとも置床後5日目に, 初生根原基 (root initials) が形成層外側の二次師部柔細胞より分化し, 前者では10~14日目までに, 後者では7~11日目までに組織化された細胞群,すなわち根原体 (root primordia) に発達した. 根原体は発根前に根の形態を整え, 頂端分裂組織及び前形成層ストランドでコハク酸脱水素酵素活性が強く認められた. さらにさし穂茎部の新生木部と維管束連絡した幼根は, 緑枝ざしではさし穂の主軸に対してほぼ直角に, 一方休眠枝ざしでは, 鉛直方向に伸長して発根した.
    発根開始時期は緑枝ざしは置床後17日目, 休眠枝ざしは13日目であった. 緑枝ざしの発根はさし穂基部切断面ばかりでなく, 茎部表皮からもみられた. 一方, 休眠枝ざしはさし穂基部でのカルス形成が盛んで, 発根部位は基部切断面に限定された.
    以上の結果から, 枝梢組織の調査による厚膜繊維の連続性は, 初生根原基の分化, 発達などのいわゆる発根能力そのものに影響を及ぼすものではないと推定された.
  • 山村 宏, 内藤 隆次
    1983 年 52 巻 3 号 p. 266-272
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    デラウエア果粒の表皮ワックスは, 硬質ワックスが大部分を占め, 果粒の単位面積当たりの全ワックス, 硬質ワックス量はともに満開後30日まで急激に増加し, その後は収穫時まで大きな変化は認められなかった. 一方, し, 発育後期には徐々に増加した. また, 軟質ワックスの主成分である長鎖アルコールの組成は, 果粒の発育とともに明らかな変化がみられた. 硬質ワックスと軟質ワックスの含量や組成の変化はGA処理無核果, 無処理有核果の両者で同様の傾向が認められた.‘デラウエア’におけるGAの開花後処理が, 適期である満開後10日より遅くなると, 果皮ワックスの形成が抑制された.
    わが国の主要ブドウ5品種の果皮ワックス量を成熟時に比較した. 全ワックス量と硬質ワックス量ともに,‘デラウエア’がGA処理, 無処理にかかわらず, 最も高く, 次いで‘マスカット•ベーリーA’,‘キャンベル•アーリー’,‘巨峰’,‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’の順に低かった. 一方, 軟質ワックス量は‘キャンベル•アーリー’が最も高く, 次いで‘巨峰’, 以下GA処理‘デラウエア’,‘マスカット•ベーリーA’, GA無処理‘デラウエア’,‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’の順であった.
  • 片岡 郁雄, 久保 康隆, 杉浦 明, 苫名 孝
    1983 年 52 巻 3 号 p. 273-279
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    3品種のブドウ果粒 (‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’,‘巨峰’及び‘スーパー•ハンブルグ’) について, 成熟に伴うL-フェニルアラニンアンモニアリアーゼ (PAL) 活性の消長とアントシアニン生成の関係を調査した.
    全品種において, 果粒発育の初期に高いPAL活性が認められたが, その後ベレゾーン期まで急激に低下した.‘巨峰’及び‘スーパー•ハンブルグ’では, 果粒の着色開始とともに再び果皮中のPAL活性が増大した.‘スーパー•ハンブルグ’では,‘巨峰’と比較して, アントシアニン蓄積量が多く, PAL活性も高かった. これに対して,‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’では, 成熟期には, 果皮中にPAL活性は認められなかった.
    一方, 全品種において, 果皮中の糖含量及び果汁中の可溶性固形物含量は成熟期に急激に増加した. また,‘巨峰’及び‘スーパー•ハンブルグ’では, これらの増加開始は, アントシアニン含量やPAL活性の上昇開始に先立って起った.
    果皮中の遊離型アブシジン酸もまた, 各々の品種の成熟期に急速に増加したが, 最大蓄積量には品種間での差異は認められなかった.
  • 小那覇 安優, 仲宗根 福則, 池宮 秀和
    1983 年 52 巻 3 号 p. 280-285
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    パイナップルの花芽誘導剤として使用しているアセチレン混合液による花芽誘導効果は処理日による変動が大きい. これはパイナップル芯部に投入したアセチレンの拡散が気温及び風速によって直接的に影響されることに起因しているものと考えられる. そこで, 筆者らはカーバイドの水との反応を抑制するために, 油脂被膜カーバイドの調製法を考案した.
    油脂被膜カーバイドの調製法は, 大豆油 (330g) を220~250°Cに加熱し, カーバイド (直径1~3mm) 1kgを入れ, 10~15分かく拌する. その後, 薄く広げ40~60分適宜かく拌しながら冷却する.
    カーバイド粒の表面に付着した油脂は急速に乾燥固化する. このようにして調製した油脂被膜カーバイドは油脂被膜が水に離脱した後にアセチレンを発生するため,アセチレン発生が緩慢に行われる. すなわち水を注入した場合は1時間後にアセチレンの発生が認められ, 全量のカーバイドが反応するのに8時間を要した.
    誘導的自然条件下にある低温期と非誘導的自然条件下にある高温期に油脂被膜カーバイドとアセチレン混合液による花芽誘導効果を比較すると, いずれの時期においても油脂被膜カーバイドは高い花芽誘導効果を示し, 処理日による変動も小さかった.
  • 糠谷 明, 増井 正夫, 石田 明
    1983 年 52 巻 3 号 p. 286-293
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    基本培養液で希釈した海水の処理が, ステージI (定植時から受粉時), II (受粉時から果実ネット発達期),III (果実ネット発達期から収穫時) の各生育段階におけるメロンの耐塩性に及ぼす影響を明らかにするため, 定植時から収穫時まで栽培した. 処理濃度は, 砂耕および土耕で0, 250, 500, 750, 1,000ppm Cl, 養液耕で0,1,000, 2,000, 3000, 4,000ppm Clとした. 実験終了時の全植物体乾物重および果実新鮮重は, 砂耕, 土耕,養液耕とも海水濃度が増加するにつれて減少した. ステージII, IIIにおける生育量の増加は, 海水高濃度区で減少した. 生育は土耕より砂耕で抑制された. 塩害症状は, 砂耕では1,000ppm ClのステージIIとIIIでわずかに現れ, 養液耕では3,000, 4000ppm ClのステージIの初期にのみ現れた. 砂耕, 土耕, 養液耕のステージIIIでは, 海水濃度が増すにつれて葉中のClとNaは増加し, SO4と浸透ポテンシャルは減少した. 土耕と砂耕を比べた場合, 葉中ClとNaはどのステージでも砂耕で高い傾向にあり, 特に葉中ClはステージIで著しく高かった. 砂耕における生育抑制の原因の一つは, 砂耕のステージIで葉に集積したClとNa, あるいはCl, Na単独の影響であると考えられる.
  • 酒井 昭
    1983 年 52 巻 3 号 p. 294-301
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ツツジ属植物の約75種の原種と栽培品種を用いて, これらの冬の耐寒性を調べ, ツツジ属植物の耐寒性の特性を明らかにした.
    1. 耐寒性の低いツツジ属植物では, 葉, 花芽, 栄養芽, 靱皮組織, 木部の間の耐寒性の差は少なかったが, 耐寒性の高いツツジ属植物では, これらの間に著しい差が認められた. 葉, 栄養芽, 茎の靱皮組織の耐寒性は花芽や木部より著しく高く, -60°Cの凍結にも耐えるものがあった. しかし花芽の小花は-35°C以下の温度に耐えるものはなかった.
    2. シャクナゲのなかで耐寒性が特に高かったのは, 日本のハクサンシャクナゲ, エゾムラサキツツジ, 合衆国のR. catawbiense で, それらの花芽は-30°Cの温度に耐えた. 花芽が-25°Cまたはそれ以下の凍結に耐えるシャクナゲの大部分はポンティクム系に属する. また, 耐寒性の高い栽培種の大部分はR. catawbienseR. carolinianum のいずれかを片親とする交雑種である. アザレア系では, 北米の東部に自生するR. viscosum, R. arborescens や中国東北区から朝鮮半島に分布するクロフネツツジの耐寒性が特に高かった. 日本に自生するツツジ類の多くは-20~-25°Cの低温に耐えた.
    3. ツツジ属植物の氷点下の温度に対する適応戦略は, 組織, 器官によって異なり, 葉, 栄養芽, 茎の靱皮組織など細胞外凍結, 花芽の小花はおもに器官外凍結,木部の放射組織は過冷却で氷点下の温度を耐える.
    4. ツツジ属植物の耐寒性は, 年温度差が大きく, しかも冬の寒さが厳しいところに自生しているものほど耐寒性が高い. それに対して年温度差が少なく, 冬の寒さが厳しくない, 東ヒマラヤ, 雲南西北高地のシャクナゲの耐寒性は低い.
  • 石田 明, 増井 正夫, 糠谷 明, 重岡 広男
    1983 年 52 巻 3 号 p. 302-307
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    培養液中の多量, 微量要素及びB濃度が, 秋ギクの生育, 切り花の日持ち並びに葉縁の褐変に及ぼす影響を明らかにしようとした. 品種‘精興の花’の挿し芽30日後の苗を, 砂を詰めた木箱(40×40×12cm)に4本ずつ定植し, ガラス室内の自然日長下で栽培した. 処理は第2表に示したように, 多量要素及び微量要素濃度を1S(標準) と3S (標準の3倍) の2段階, そして, Bを0.5, 1.0, 1.5ppmの3段階とした6区 (1区4反復) を設けた. 培養液 (1回, 1箱当たり0.5l) は, 7月11日から開花期まで, 晴天日は1日2回, 曇天日は1日1回施用した. また, 雨天の日は施用しなかった. 草丈は多量要素の高濃度処理区で減少した. 切り花新鮮重は低多量要素でB高濃度区において減少した. 根乾物重は多量要素, 又はBを高濃度で施用した場合に減少した. 切り花の日持ちは, 高濃度のB処理によって18~22日間も減少した. 開花日には処理の影響がみられなかった. 下位葉における葉縁の褐変は, 微量要素又はBの高濃度区では8月下旬に, また, 多量要素及び微量要素の高濃度区並びにB中濃度区では9月下旬に発現した. その後,その症状は下位葉から上位葉へと進展した. 葉縁の褐変は葉のB含量と高い相関々係がみられた. B含量は下位葉においてやや高かった.
  • 青木 宣明, 吉野 蕃人
    1983 年 52 巻 3 号 p. 308-315
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    栽植密度が早期促成チューリップ (1月開花) の生育や切花品質に及ぼす影響を知るため, 1979年にはDH系の‘Apeldoorn’及びSE系の‘Cassini’を1980年には‘Apeldoorn’,‘Cassini’及びT系の‘Trance’を供試し, 乾物生産面から検討を加えた.
    1. 群落内日射量は促成期間中, 粗植区ほど多かった. しかし葉質を決定する葉積重の推移には, 日射量の影響が明らかでなかった.
    2. 乾物生産量は,‘Cassini’は生育初期から中期にかけて,‘Apeldoorn’では生育初期に, 密植区の乾物生産量が標準区や粗植区より大であった. しかし開花時では逆に劣った.
    3. LAIは密植になるほど大きく, とくに‘Cassini’では区間差が著しかった. また‘Cassini’ではLAIと単位面積当たりの球数とはおおむね比例していた.
    4. CGRはほぼいずれの時期も密植になるほど大で,とくに‘Cassini’ではその傾向が著しかった. また‘Cassini’のCGRは生育中期まで急増したが, その後は一旦低下したのち再び増加した. 一方,‘Apeldoorn’のCGRの増加は生育中期まで小さく, 後期に著しくなった.
    5.‘Apeldoorn’の切花品質は密植になるほど劣化した. しかし‘Cassini’や‘Trance’では栽植密度による差がなかった. また花蕾乾重量が個体全乾重量に占める割合は, 3品種とも栽植密度による差はなく, 茎乾重量は密植になるほど, 葉乾重量は粗植になるほどその割合は大となった.
    6. 以上の結果を総合し, SE系の‘Cassini’やT系の‘Trance’では, 慣行栽植密度 (127球/m2) を上回る密植栽培が可能であることが示唆された. これに対しDH系の‘Apeldoorn’では慣行の栽植密度が適当であると推察された.
  • 後藤 明彦, 荒木 忠治
    1983 年 52 巻 3 号 p. 316-324
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    サンボウカン果実のじょうのう果梗端部す上がり砂じょう及び中央部のゲル化及びす上がり砂じょうの化学組成を調べ, また, 光学顕微鏡による若干の観察を行った.
    顕微鏡観察によると, 果梗端部す上がり砂じょうの砂じょう膜は著しく肥厚していたが, 中央部す上がり砂じょうの膜の肥厚は, それほど著しくなかった. また,PAS染色により, 砂じょう膜及び内部柔組織の細胞壁多糖類成分は, ゲル化及びす上がり砂じょうで増加していることが示された.
    パルプ量, アルコール不溶性固形物 (AIS) 含量はす上がり砂じょうで健全砂じょうより高かった. 細胞壁多糖類については, ゲル化及びす上がり砂じょうで, 熱水, ヘミセルロース, セルロースの各画分が健全砂じょうより高かったが, シュウ酸塩画分の増加はわずかであった.
    果梗端部す上がり砂じょうでは, 同部健全砂じょうに比べて, 遊離酸, フラボノイド, カロチノイド, RNAの含量は低く, 結合酸, ビタミンC, 全-N, AIS-N, アミノ-Nのそれは高く, 全糖は変らなかった. 中央部ゲル化砂じょうでは, これらの成分は全て健全砂じょうより低かった. しかし, 同部す上がり砂じょうでは, AIS-N, アミノ-Nはゲル化及び健全砂じょうより高く, また, 全糖, 結合酸, フラボノイド, カノチノイド, ビタミンC及び全-Nはゲル化砂じょうよりは高かったが,健全砂じょうよりは低かった. RNAはゲル化砂じょうとほぼ同じであり, 遊離酸は低かった.
    無機成分 (粗灰分, Ca, Mg, K, Na) については, いずれも, 果梗端部す上がり砂じょうで健全砂じょうより高かった. 中央部ゲル化砂じょうでは, 健全砂じょうよりわずかに低かったが, す上がり砂じょうでは, ゲル化砂じょうに比べてCaが高く, Kが低かった.
    これらの結果に基づき, サンボウカン果実砂じょうのゲル化及びす上がりの発現過程を考察した.
  • 北村 利夫, 板村 裕之, 福島 忠昭
    1983 年 52 巻 3 号 p. 325-331
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    3品種 (‘大石早生’, ‘ビューティー’及び‘サンタ•ローザ’) のスモモ果実を供試し, 成熟期間中に数回採取した果実について, 20°C貯蔵中の呼吸量 (炭酸ガス排出量), エチレン発生量, アブシジン酸含量, 並びに果肉硬度などの成熟に伴う変化を調べた.
    1. 時期を追って果実を採取し, それぞれ採取後20°Cで24時間保持後の呼吸量を測定した値から, 樹上での成熟に伴う呼吸量の変化を推測すると, 3品種ともclimacteric パターンを示したが, 早生種の‘大石早生’及び‘ビューティー’は晩生種の‘サンタ•ローザ’に比べ climacteric rise の開始時期が早く, その進行は急速であった.
    2. 採取後20°C貯蔵中の呼吸量の変化は3品種とも同じ傾向を示し, 採取果の生育段階によって異なった.即ち3品種とも, 樹上での呼吸量が漸減して最低値(climacteric minimum) に達するまでの期間中の採取果では呼吸量は漸減ないし一定の値を示し, エチレン発生量は微量で推移し, 迫熟はわずかしか進行しなかった. 樹上での呼吸量が増加し始めた (climacteric rise)時期の採取果では, 採取後直ちに呼吸量の増加が起こり, 典型的な climacteric rise を示し, エチレン発生量の増加を伴って追熟が急速に進んだ.
    3.‘大石早生’及び‘ビューティー’では果皮の着色,果肉の軟化などの成熟現象と climacteric rise とがいっせいに, 急速に進行した. 一方,‘サンタ•ローザ’では果皮の着色に比べ climacteric rise の進行は緩慢であった.
    4. アブシジン酸含量は樹上成熟中及び採取後追熟中とも増加した. 採取後 climacteric rise が起こらなかった早い時期の採取果もその含量は増加した.
    5. 時期を変えて採取した‘サンタ•ローザ’果実を採取後直ちに500ppmのエチレンガスで48時間処理した. エチレン処理が成熟の引き金として作用したのは, 樹上での呼吸量が climacteric minimum の段階以後の採取果であった. それより以前の段階の採取果ではエチレン処理によって climacteric rise 及びエチレン発生量の増加は共に誘起されなかった.
  • 山脇 和樹, 富山 光子, 茶珍 和雄, 岩田 隆
    1983 年 52 巻 3 号 p. 332-338
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    キュウリ果実の低温障害とミトコンドリアの機能との関係を明らかにするため, 貯蔵温度及び湿度条件が, 低温障害の発生並びにミトコンドリアの呼吸機能に及ぼす影響について調べた.
    湿度条件の検討は, 乾燥しやすい有孔包装区および乾燥しにくい無孔包装区 (非密封) を設けることによって行い, 1, 6, 15°Cに貯蔵した. 1°C貯蔵の有孔包装区では貯蔵2日後にピッティングが発生したが, 1°C無孔区では4週後にみられた. 6, 15°C貯蔵では発生しなかった.
    CO2排出量の変化において, 1°C及び6°C貯蔵では,無孔区が有孔区を上回る値を示した. 1°C貯蔵から15°Cに移すと急増したが, その傾向には包装法による差はなかった.
    貯蔵に伴うミトコンドリアの基質酸化能並びに酸化的リン酸化能の変化を調べた. コハク酸酸化速度は, 6°C及び15°C貯蔵では漸増あるいは変化がないのに対して, 1°C貯蔵では減少した. 各貯蔵温度区で無孔区が有孔区を上回った. 呼吸調節率 (RCR) は, 貯蔵開始時約1.6であったが, 1°C貯蔵では急減し, 4日以後1.0となって呼吸調節能を示さなくなった. 6,15°C貯蔵では約1.3に減少後あまり変化はなかった. これらについては各温度とも有孔, 無孔区の差はほとんどなかった.ADP/O比もRCRと同様, 有孔, 無孔区の差は明確ではなく, 6°C及び15°Cで若干増加したのに対し, 1°Cでは急減した. 1°Cでの呼吸調節能の低下は, 貯蔵1週まで可逆的であり, 15°Cへの昇温により回復した.
    以上のことから, 1°Cの有孔包装区において早期にピッティングの発生がみられたが, ミトコンドリアの機能の低下は包装方法と直接かかわりなく, 1°Cの低温によって急速に誘起されるものと推測された.
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