園芸学会雑誌
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53 巻, 1 号
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  • 日高 哲志
    1984 年 53 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ‘トロビタ’オレンジの葯培養を試みた. 材料には1核期の花粉を含む葯を用い, 培地は, ショ糖を50g/lの濃度で, IAA及びカイネチンを種々の濃度で添加したMS培地を用いた.
    培養開始後, 約10週間で, 胚様体が葯から直接突出してくるのが認められた. IAA又はカイネチンを, 0.002または0.02mg/l含む培地で良く胚様体を分化した. またIAA, カイネチンのどちらか一方の濃度が高い場合,もう一方の濃度は低い方が胚様体を分化した. カルスは, 両者とも高い濃度の培地で良く形成されたが, 特に, カイネチンを高濃度含む培地で良く形成された.
    それらの胚様体を, 16時間照明8時間暗黒の条件下で培養すると, 幾つかは茎葉や根を分化した. また, 根の形成は, 胚様体を生長調節物質を含まない培地に移すことによって, より促進された.
    根を分化した植物体のうち, 幾つかの根端で染色体数を調査したところ, 2倍体であることが判明した. 葯から最初に分化した胚様体が, 二次的に, 多くの胚様体を分化することも, 半数体を発見できなかった一つの理由と考えられる.
  • 山下 研介, 岩永 秀人
    1984 年 53 巻 1 号 p. 6-12
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ヒュウガナツの自家不和合性打破に及ぼす蕾受粉の効果について知見を増すため, 二三の基礎的実験を行い,以下のような結果を得た.
    1. 幼蕾及び成蕾の柱頭, 花柱, 子房に含まれるタンパク様成分を, 等電点焦点法で分析し, 花蕾の齢の違いによる質的差異について検討を加えたところ, 可溶性タンパク, 糖タンパク, パーオキシダーゼに関して, 両花蕾間にはっきりとした差が認められた. しかしながら,エステラーゼ, アルカリフォスファターゼについては,さほど顕著な差は認められなかった.
    2. 幼蕾柱頭上の分泌粘液は, 成蕾柱頭に比べて少なく, 受粉した自家花粉が粘液によって覆われる過程も遅れた. また, 花粉の発芽も遅れ気味であったが, 成蕾に受粉した場合と違って, 花柱内における自家花粉管の伸長はスムーズで, 受粉7日後には花柱最下部から子房内へ侵入した.
  • 加藤 忠司, 山県 真人, 塚原 貞雄
    1984 年 53 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    21年生普通ウンシュウミカン樹 (杉山系) の2~3年生枝木質部より減圧下水置換法によって導管液を採取し,含まれるアミノ酸, アミド及び硝酸などを測定した. 主要窒素化合物はプロリン, アルギニン, アスパラギン及び硝酸であって, いずれの成分も季節的消長を示した.プロリンとアルギニンは新梢形成のごく初期に一時的な増加を示したが, 新梢の伸長に伴って急速に減少し, その後秋から冬にかけて再び増加した. これに対しアスパラギンと硝酸はいずれも5月中旬及び7月下旬にピークを示したが, 他の季節における含有量は低いレベルで推移した. 他のアミノ酸の含有量レベルは低く, かつ季節的消長も小さかった.
  • 加藤 忠司, 山県 真人, 塚原 貞雄
    1984 年 53 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    21年生普通ウンシュウミカン樹 (杉山系) より2~3年生枝を一年を通じて採取し, 芽, 葉, 2~3年生部位の皮質部及び木質部に分別した後, 主要な窒素成分の含有量を調べた. 多くの窒素成分が周年変化を示し, 旧器官においては発芽期(4月上中旬)に最高含有量を, 新梢の発達が終わる時期(7月)に最低含有量を示した. これに対し新生葉では最低値が9月に認められた.皮質部と木質部では70%アルコール不溶窒素成分 (主体はタンパク質) 含有量の減少に先立って全窒素及び可溶窒素の一時的増加が発芽時に認められ, 可溶成分にあっては遊離アルギニン及びプロリン, 特にアルギニンの一時的増加が顕著であった. 一方新芽では発芽に伴ってプロリン含有量の急激な減少と, アルギニンの一時的な著しい増加が認められた. これらの現象はまず遊離プロリンとアルギニンが新梢の形成に窒素源として使われ,次いでタンパク態窒素が利用されることを示唆している. 旧葉における主要窒素成分含量の減少は5月上旬に始まり, 7月までに全窒素の約16% (乾物当たり) が減少した. このうちの約40%は遊離プロリン窒素で占められた. これらすべての主要成分は全部位で秋から冬にかけて増加し, 特に皮質部及び葉におけるプロリンの増加が顕著であった.
  • 尾崎 武, 中西 テツ, 沢野 稔, 一井 隆夫
    1984 年 53 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    14年生 (1980年) 及び16年生 (1982年) の‘キャンベル•アーリー’を用い, 1980年はエチクロゼート並びにNAAの各100及び200ppm溶液による葉面, 花穂の両処理を行い, 1982年は各50, 75及び100ppmの葉面処理を行って, それらの摘粒効果を調査した. また,1979年及び1980年に, 3年生‘キャンベル•アーリー’幼樹について, NAAの葉面及び花穂処理を行い, 処理部位の違いが花穂への同化産物の転流に及ぼす影響を14Cを用いて調査した.
    1. エチクロゼート及びNAAは葉面処理によって正常果粒数を減少させ, 摘粒効果を示したが, その程度は年によって大きく変動した. また, いずれも処理後5~8日に脱粒が多かった. なお, 花穂処理でも正常果粒数を減少させたが, 無核小果粒の着生が増加し, 高濃度ほど著しかった.
    2. エチクロゼート及びNAAは果粒の肥大を促進する傾向であった. 両者とも糖度には影響を与えなかったが, 酸度を減少させ, かつ, その減少は葉面処理の方が花穂処理よりも大きい傾向がみられた.
    3. エチクロゼート及びNAAの葉面処理によって処理後数時間から7~10日間, 結果枝先端部や葉に下垂症状がみられ, 結果枝の伸長を阻害した.
    4. NAAの葉面処理によって14Cの全転流率が著しく低下した. 花穂処理は無処理とほぼ同じであった.
    5. 花穂の上位2節目の葉からの同化産物は, NAAの花穂処理及び無処理では, 大部分が花穂着生位置より上部へ移行したが, 葉面処理では下部へ移行するものの割合が著しく増加した.
    6. 花穂の直上葉からの同化産物は, 無処理では初め花穂着生位置より上部に多く移行したが, 日数の経過につれて, 花穂並びに下部への移行が次第に増加した.NAAの花穂処理では, 処理4日後までは花穂着生位置より上部への移行が増加したが, 処理7日後には花穂並びに下部への移行が激増した. 葉面処理では, 処理4日後までは花穂着生位置より上部への移行が減少し, 花穂への移行が増加したが, 処理7日後には上部への移行が回復し, 花穂への移行が激減した.
  • 田附 明夫, 崎山 亮三
    1984 年 53 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. キュウリ果実の果実長 (l) 及び3か所の周囲長(a1, a2, a3) からFVI=l×(a12+a22+a32) を求め, 体積指数とした. FVIは体積, 新鮮重とr>0.999, 乾物重とr>0.99のそれぞれ高い相関を示した. FVIに対する回帰直線を用いて, 体積と新鮮重は誤差約3%で,乾物重は誤差約0.2gで推定できた. この体積推定法を用いると, 最短4時間の測定間隔で果実の生長をとらえることができた.
    2. 果実体積が最大の約80%に達するまでの果実の生長曲線は,‘フクダ交配ときわ光3号A型’と‘久留米落合H型’の2品種において, logistic 曲線と Gompertz曲線によりよく表すことができた. この期間の測定値から得られた Gompertz 曲線は,‘ときわ光3号A型’においては全生長期間に当てはまったが,‘久留米落合H型’では生長中期以降当てはまらず, 品種間で差異が認められた. 果実の生長曲線は single sigmoid とみなされた. 果実の相対生長率 (RGR) は果実長9~20cmの時期に最も高く, 以後急速に低下した.
    3. ガラス室内における果実長約20cm以下の果実のRGRには明りょうな日内変動が観察され, 12~20時に高い値を示した. RGRの日平均値は晴天日に高く, 曇天日に低かった. また, RGRの日平均値には季節間差があり, 春の方が秋より高かった.
    4. ‘ときわ光3号A型’と‘久留米落合H型’の両品種の比較では, 果実の最終的大きさや最大に達するまでの日数が異なっていたが, 果実長約20cm以下の時期における生長速度やRGRには差がなかった.
  • 菅沼 教生, 大野 始
    1984 年 53 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ホウレンソウ種子の発芽に及ぼす高温の影響について, 西洋系品種ノーベルを用いて検討した. 発芽は20°Cで最も良く, 温度が高くなるにつれて抑制され, 35°Cにおける発芽率は10%程度であった. 高温における発芽不良は, 果皮の除去によって著しく改善された. また,水への浸漬処理によっても発芽は促進された. 果皮を除去した種子の発芽は, 種子及び果皮の水抽出液により抑制されたが, 浸漬処理をした種子の水抽出液では抑制されず, 抽出前の置床温度による抑制効果の違いもほとんど見られなかった. これらのことから, 果皮中に発芽抑制物質が存在することが示されたが, 硫酸処理, 過酸化水素処理によっても発芽率が向上したことから, 高温における果皮の発芽抑制作用を, 果皮中の発芽抑制物質のみに帰することはできず, 果皮の機械的強度やガスの透過性などの物理性も関与していることが示唆された. また, 果皮を除去した種子でも, 高温における発芽速度が遅く, 胚への高温の直接的影響も認められた.
  • 宍戸 良洋, 斎藤 隆
    1984 年 53 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    タマネギ‘札幌黄’を供試し, 低温処理による花芽形成に対する各種生長調整物質施与の影響を明らかにした.
    1. 苗の生長に対しSADH (2,000ppm) はやや抑制的であり, エセホン (500及び1,000ppm) は著しく抑制的であった. また生長抑制の度合が強いほど花芽形成に対して抑制的に作用した. 一方, GA (100ppm) は葉数の増加を促進し, 花芽形成に対しても促進的に作用した.
    2. 花芽形成に要する低温処理日数は, 葉鞘径10mm前後の大苗では約20日で, GA施与によっても短縮されなかった. 一方, 葉鞘径7mm前後の中苗の所要低温処理日数は40~50日であり, GA施与により約20日間短縮された.
    3. GAによる花芽形成の促進は, 低温処理前及び処理中に施与された場合にのみ認められ, 低温処理後の施与では認められなかった.
    4. GAの花芽形成促進効果は, GAの低温に対する代替作用によるものではなく, むしろGA施与に伴う生長点部の生理活性の増大が低温感応に対する反応速度を増大させることによるものと推論した.
  • 安木 三郎
    1984 年 53 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    従来, ランの胚あるいは子房培養により幼植物を得るには, 受粉•受精後の胚, あるいはそれを含む子房を無菌培養するという方法が行われてきた. それは, ラン科植物では一般に, 受粉後に胚珠形成が開始されるためと, 受粉後で受精前の胚珠を培養する場合, 試験管内受精させる必要性があるためである. また, 一般にランでは, 受粉から受精まで数ケ月を要する.
    本実験では, ドリティスを用いて, 受粉後20, 40, 60日目の未発達な胚珠, あるいは胚珠を含む子房をそれぞれ無菌培養し, 幼植物を得ることに成功し, ランの種子繁殖で最も一般的に行われている完熟種子の無菌培養法と比較して, 受粉から幼植物を得るまでの期間が約150日短縮された. また, 受精前に胚珠または子房の無菌培養を開始しても, 受粉していればランの幼植物 (2n) が得られ, 受精が培養中試験管内でも起こり得ることが分かった.
    子房培養の場合, 受粉後40日目の子房を材料とし,1.0ppm NAAを含む培地を用いることにより安定して多量の幼植物が得られた. 子房は滅菌後両端をナイフで切り取り, 先端 (花弁の付いていた方) を下に向けて培地に置床した. 胚珠培養の場合, 子房を切り開き, 胚珠を取り出して材料とした. 受粉後60日目の胚珠を10ppmNAA, あるいは10ppm BAとココナツ溶液25%を含む培地で培養することにより多くのプロトコーム及び幼植物が得られた. また胚珠培養の場合, 幼植物を多量に得るには, ココナツ溶液 (35%) かショ糖 (2%) が不可欠であることが分かった.
    本実験により, ドリティスにおいては, 受粉後60~65日に受精が起こるが, それより前の受粉後20, 40, 60日目の子房, あるいは胚珠を培養することにより幼植物が得られることが確認された.
  • 新美 芳二
    1984 年 53 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ヒメサユリ (Lilium rubellum Baker) の子球の発達を試験管内で促進するため, 葉切片に形成された子球(第1次子球) を外植体から分離し, それらをNAAとBAを種々の濃度で含有する修正MS-基本培地 (12) の明条件及び暗条件で培養した.
    1. NAAは単独では0.1mg/lのみが第1次子球の生長を促進した.
    2. 0.1または1mg/lのNAAを含む培地に0.001mg/lのBAを添加すると第1次子球の生長は一層促進されたが, 0.1mg/lのBAは子球の生長を抑えた.
    3. 第1次子球は新たに子球 (第2次子球) を形成し, 0.01mg/l以上のNAAと0.01mg/l以下のBAを含む培地で第2次子球がよく形成された.
    4. 0.1mg/l以上のNAAは第1次子球の発根を促進したが, BAは発根を抑え, 特に0.1mg/lのBAは, 発根をほとんど完全に抑えた.
    5. 第1次子球の生長, 発根及び第2次子球の形成は全般的に暗条件よりも明条件で促進された.
    6. NAA及びBAを種々の濃度で含有する培地の明条件と暗条件で培養した第1次子球を, 低温処理 (3°C, 60日間) したのち圃場に植えた場合, 明条件で培養した子球の出葉が暗条件のものより全般的にすぐれていた. 培地に添加した生長物質は圃場での子球の出葉に抑制的に作用する場合が多く, 特に0.1mg/lのBAといずれの濃度でのNAAを含む培地の暗条件で培養した子球の出葉は著しく抑制された.
    7. 本研究の結果から, ヒメサユリの第1次子球は, 0.1mg/lのNAAと0.001mg/lのBAを含有するMS-基本培地の明条件で培養するとよいことがわかった.
  • 稲葉 昭次, 岡本 一郎, 伊東 卓爾, 中村 怜之輔, 橋本 陞
    1984 年 53 巻 1 号 p. 66-78
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    現在のわが国流通バナナの大部分を占めるフィリピン産‘Cavendish’の成熟特性を調査した.
    15°C~35°Cで追熟させた場合, 30°C以上の温度では果皮が褐変して完全には黄化せず, 特に35°Cでは果肉も boiled 状となった. 15°Cでは果肉は正常に成熟したが, 果実両端の緑色が消失せず, 果皮と果肉の熟度が一致しなかった. 20°C及び25°Cでは, 正常な成熟がみられ, この範囲内が追熟の適温と思われた.
    1~5000ppmの各種濃度のエチレンで24時間処理し, 20°C一定温度下で追熟させた場合, その後の成熟様相には処理濃度間の違いは認められなかった.
    果実が樹体に着生している間は, 開花後120日ごろまで肥大が続き, 最終的には裂果を伴って黄化したが, 正常な形での成熟現象は起こらなかった. しかし, デンプン含量及び有機酸含量の変化からみて, 開花後90日ごろから樹上でも内的な成熟が始まるように思われた.
    開花後65~105日の果実を日本まで輸送し, 25°C一定温度で追熟させた場合, 65日及び75日収穫果では入手後の green life は10日以上あったが, 85日及び95日収穫果では3~4日と短くなり, 105日のものは輸送中に黄化してしまった. しかし, climacteric 開始以後の成熟特性には, 収穫熟度による違いはほとんど認められなかった.
    以上のことから, 現在のフィリピン産‘Cavendish’バナナの成熟特性をみると, 過去の主流品種である‘GrosMichel’や‘仙人蕉’と基本的には変わらないように思われる. しかし, 糖組成や温度に対する反応など, 細部にわたっては異なる面もみられるため, 今後バナナを取り扱う上で注意が必要であろう.
  • 澤野 稔, 水野 進, 孫 緒孟, 小机 信行
    1984 年 53 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    トマトの追熟に及ぼす rin 因子の抑制作用を更に明確に調べるため, 正常種‘Rutgers’と同質遺伝子系統のrin 変異種の果実を用いて, 呼吸及びエチレン発生量,ABA及び幾つかの果実成分の貯蔵中の変化を調査した.
    1. 貯蔵中の果実の炭酸ガスとエチレン発生量は‘Rutgers’では breaker stage から dark pink stageの間にピークがみられたが, rin果実では呼吸のクライマクテリック•ライズ及びエチレン発生量の上昇はみられなかった.
    2. 果肉部の遊離ABA含量は‘Rutgers’ろ rin で共に貯蔵9日目にピークに達し, 以後減少した. その含量は‘Rutgers’におけるよりもむしろrinの方が多かった. 結合ABAは遊離ABAのそれとほとんど平行的な変化を示したが, その割合は遊離型に比べて低かった.
    3. 果肉部のIAA含量は‘Rutgers’においてのみ追熟中増加し, dark pink stage をピークに検出されたが, rin ではほとんど検出されなかった.
    4. 果肉部の炭水化物含量と滴定酸度は貯蔵日数の経過につれて漸減したが, ‘Rutgers’と rin 両果実間に大差はみられなかった.
    5. 貯蔵中の果肉部における主要な遊離アミノ酸はアスパラギン酸, スレオニン+セリン区分, グルタミン酸, フェニールアラニン及びγ-アミノ酪酸であった. これらのアミノ酸のうち, アスパラギン酸とグルタミン酸含量は‘Rutgers’と rin で共に貯蔵中著しく増加した. 他のアミノ酸については大きな変化はみられなかった.
  • 石井 勝, 大久保 増太郎
    1984 年 53 巻 1 号 p. 87-95
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    周年出荷が要望される中で, 高温時期に黄化や腐敗の発生が問題となるニラについて, PE(ポリエチレン) 袋による密封包装を併用した予冷出荷による鮮度保持について検討し, 以下のような結果を得た.
    1. 黄化や腐敗の抑制に対して低温の効果が高いこと, また高温下でのこれらの抑制に対してPE袋密封包装の効果が高いことが明らかになった.
    2. 呼吸の抑制及びクロロフィル, 還元型ビタミンC, カロチンの各含量の減少抑制に対しても, 同様に低温とPE袋密封包装の効果が高いことが明らかになった. ただし, 還元型ビタミンCの減少抑制に対するPE袋密封包装の効果は, ガス障害 (葉先きを中心に脱水したような凹みができ, 異臭が発生し, やがて発酵した状態を呈すようになる) の発生のみられる条件下では認められなかった.
    3. 高温下でのPE袋密封包装では, ガス障害がみられたが, この障害の発生は, PE袋に数個の針穴を付けることで防止できた. しかし, 実際の流通 (PE袋包装-予冷出荷) ではそれほど長時間高温にさらされることはないと考えられること, 若干の異臭は実用上あまり問題でないこと, さらに針穴を付けることはPE袋包装による黄化や腐敗の抑制効果を減じることなどを考え合わせると, 特に異臭が問題となる場合以外には, 密封包装-予冷出荷システムが望ましいと考えられた.
    4. 以上の検討結果や実用面の検討結果などに基づき, 約110gの束としたニラ10束をPE袋 (厚さ約0.025mm, 大きさ約30×45cm) に密封包装後, 4袋ずつ段ボール箱に縦詰めして強制通風冷却し, 保冷輸送する出荷システムを確立した. この出荷システムは,PE袋密封包装によるMA効果 (modified atomosphereeffects) がかなり大きいため, 冷却速度が若干遅くとも, また輸送中の品温上昇がある程度大きくとも鮮度保持効果が高く実用的であるため, 多くのニラ産地で利用されるようになってきている.
  • 小西 国義
    1984 年 53 巻 1 号 p. 96-99
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
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