17年生のウンシュウミカン′杉山温州′ の樹冠内陽光部及び日陰部における果実の成熟に伴う果皮並びに果汁中香気成分の変化を調査した.
1. 果皮中香気成分の変化
陽光部では, 主要成分の
d-リモネン含有比は10月上旬まで徐々に増加し, その後ほぼ一定値で推移した.次いで, 含有比の高いテルピネンは10月上旬まで急激に減少し, その後ほぼ一定となった. α-ピネンは8月~9月の間減少したが, カンフェン, δ-エレメン, デシルアルデヒド, ペリリルアルデヒド及びγ-エレメンとともに総じて含有比に変化はなかった. また,
p-シメン,β-ピネン, ノニルアルデヒド, トランスーサビネン, リナロール, β-カリオフィレン, α-テルピネオール, β-コパエン及びゲラニルアセテートは減少し, ミルセンは増加した.
日陰部では,
d-リモネンの含有比は8月~9月の間増加し, その後ほぼ一定であった. 次いで, 含有比の高いテルピネンは10月上旬まで急激に減少し, その後やや増加した. α-ピネン, カンフェン, β-ピネン, トランスーサビネン, デシルアルデヒド, リナロール, β-カリオフィレン, β-コパエン及びゲラニルアセテートの含有比は概して変化しなかった.
p-シメン, ノニルアルデヒド,β-ファーネッセン, α-テルピネオール, ペリリルアルデヒド及びγ-エレメンは減少し, ミルセン及びδ-エレメンは増加する傾向にあった. 果皮から得られた揮発性成分含量は, 8月には両着果部位ともに少なかったが,その後増加して10月には最大値を示し, 以後やや減少した. 日陰部果実の揮発性成分含量は9月~12月の間, 陽光部果実のそれよりも常に少なかった.
2. 果汁中香気成分の変化
陽光部では11月上旬には
d-リモネンの含有比が最も高く, 次いで, テルピネン, ミルセン,
p-シメン, β-カリオフィレン, ゲラニルアセテート, δ-エレメン, α-ピネン, β-ピネン, α-テルピネオール, トランス-サビネン, β-コパエン, γ-エレメン及びリナロールの順であった. 12月上旬には,
d-リモネンの含有比は著しく減少し, ゲラニルアセテート並びにトランスーサビネンは消失した. 一方, 他の成分の含有比は顕著な増加を示し,特に11月上旬にはみられなかったノニルアルデヒドが存在するようになった.
日陰部では, 11月上旬には
d-リモネンが主成分であり, 次いで, テルピネン, リナロール, ミルセン, β-カリオフィレン,
p-シメン, ゲラニルアセテート, α-テルピネオール, β-コパエン, α-ピネン, トランス-サビネγ, β-ピネン, δ-エレメン及びノニルアルデヒドの順に含有された. 12月上旬には,
d-リモネン及びテルピネンの含有比は著しく減少し, ミルセン,
p-シメン, β-ピネン, トランス-サビネン並びにノニルアルデヒドは消失したが, 他の成分の含有比は著しく増加し, 特に11月にはみられなかったγ-エレメンが12月には存在するようになった.
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