園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
54 巻, 2 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 多変量解析の4手法の適用
    半田 高, 大垣 智昭
    1985 年 54 巻 2 号 p. 145-154
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    日本原生のものを含めたカンキツ属35, キンカン属5種•品種について, その42形質を調査し, 大型計算機を用いた多変量解析を行った. 多変量解析は, Qモードクラスター分析法, 主成分分析法併用クラスター分析法,非線形マッピング法及び数量化理論第3類の計4法について各計算条件を決定した後に行った.
    非線形マッピング法では良い結果は得られなかった.また, 数量化理論第3類による分析が最も良い結果を示し, クラスター分析2法も条件を決定したことにより良い結果が得られた.
    シトロン, マンダリン及びブンタンは, カンキツ属の中で比較的初期に分化したと考えられる. グレープフルーッとハッサクは, 極めてブンタンに近い形態であった. マンダリン類は, 形態的な幅広い変異性を示した. さらに, ナツダイダイ, キクダイダイ, イヨ, ヒュウガナツ及びカブスは, スイートオレンジに近い傾向を示した. ヒメレモンは, レモンやラフレモンとは遠い位置になった. ベルガモットは, ライムよりもサワーオレンジやシトロン, ブンタンに近かった. シキキツは, 明らかにマンダリンとキンカンの中間に位置した. マメキンカンは他のキンカンとはかなり違った形質であった.
  • 大東 宏, 佐藤 義彦
    1985 年 54 巻 2 号 p. 155-162
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    早生ウンシュウ‘興津早生’並びに普通ウンシュウ‘シルバーヒル’の果実について, 9月から翌年3月までの間, 糖類並びに有機酸組成を調査した.
    両品種果実の主要糖類として果糖, ブドウ糖及びショ糖を分析した. 早生ウンシュウの果汁中ショ糖含量は,糖組成の中で最も優位を占め, 成熟に伴って著しく増加した. 果糖, ブドウ糖含量には, 全調査期間中一定の増減傾向はみられなかった. 普通ウンシュウの果汁中ショ糖含量は糖組成の中で最も多く, 翌年2月中旬まで漸増した. 果糖, ブドウ糖の消長は早生ウンシュウと同様の傾向であり, 調査期間中増減に一定傾向を示さなかった.
    早生ウンシュウの果皮中糖組成のうち, 果糖, ブドウ糖が多く, ショ糖は常に低かった. 普通ウンシュウの果皮中果糖, ブドウ糖は常に高い値を示し, ショ糖含量は少なかった.
    有機酸組成としてグルクロン酸, 乳酸, 酢酸, ピルビン酸, リンゴ酸, クエン酸, コハク酸, イソクエン酸及びα-ケトグルタル酸が検出された. 早生ウンシュウでは10月下旬までの間にクエン酸, リンゴ酸は半減し, 両酸が有機酸減少に占める割合は圧倒的に大きかった. 11月中旬以降, クエン酸, リンゴ酸含量はほぼ一定であった. イソクエン酸, コハク酸並びにピルビン酸含量は10月下旬~11月中旬までに著しく減少した. 乳酸, 酢酸は検出されたものの個々の量を検討することは困難であった. グルクロン酸は10月中旬までの間に激減し, その後12月中旬までほとんど一定量で推移し, 以後こん跡程度となった.
    普通ウンシュウのクエン酸含量は10月下旬までに半減し, その後12月下旬まで徐々に減少して, 翌年になるとやや増加の傾向にあった. リンゴ酸も翌年3月までの間に約半減した. これら両酸の量的消長が全有機酸含量の多少を強く左右した. イソクエン酸は翌年1月上旬までかなり多く含有されたが, その後激減してほぼ一定量で推移した. ピルビン酸含量は12月上旬まで緩やかに減少し, 12月下旬には急増して最高値を示し, その後激減して翌年2~3月まで増加した. グルクロン酸含量は12月下旬まで減少し, その後はやや多くなったもののほぼ一定量であった. 乳酸, 酢酸, コハク酸は量的に著しく微量であった. α-ケトグルタル酸は10月中旬まで多量に検出されたが, その前後はこん跡程度であった.
  • 加藤 忠司, 山県 真人, 塚原 貞雄
    1985 年 54 巻 2 号 p. 163-170
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカン幼樹及び切枝を使って, 14C-アミノ化合物の木部及び師部における上方移動, 及び両組織間の横方向移動について調べた. また, 自然状態の枝における貯蔵アミノ酸の移動の状況を, 環状はく皮を施した1年生枝 (21年生樹) を使って調べた.
    1. 14C(U)-L-アルギニン, アスパラギン, アスパラギン酸及びプロリンはいずれも根によって容易に吸収され, そのままの形態で旧葉及び新梢に移動した. しかし, いずれのアミノ化合物も上方移動に伴って代謝された. その程度はアスパラギン酸で特に大きく, プロリンは小さかった. そして, アルギニンとアスパラギンはそれらの中間に位置した. したがって, アスパラギン酸は代謝産物の形態で上方移動する割合が大きく, 逆にプロリンはそのままの形態で上方移動しやすく, アルギニン及びアスパラギンはそれらの中間に位置すると考えられた.
    2. 切枝において14C(U)-L-アルギニン, アスパラギン及びプロリンは, いずれも木部または師部を容易に上方移動した. また木部から師部へ, 逆に師部から木部への横移動も容易に起こった. しかし, アミノ化合物によって行動を異にし, アルギニンは師部より木部を上方移動しやすく, かつ師部から木部への横移動が逆方向の移動に勝った. 一方, プロリンはアルギニンとは逆の性質を示した.
    3. 自然状態の枝に対する環状はく皮は, その下側の師部にアルギニン, プロリン, アスパラギン及びグルタミンなどの集積をもたらし, 木部に対してもアルギニンを除いて同様の影響が認められた.
  • 河瀬 憲次, 平井 康市, 禿 泰雄, 間苧谷 徹
    1985 年 54 巻 2 号 p. 171-177
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    エチクロゼートは, ウンシュウミカンの摘果剤並びに果実成熟促進剤として実用化されているオーキシン様物質である. ナフタレン酢酸が浮皮を助長したことから,本剤についても処理時期を変えて浮皮発現に及ぼす影響とその作用機作を検討した.
    1) 摘果剤として幼果期に使用した場合, NAAは浮皮を助長したが, エチクロゼートは浮皮発現に影響しなかった.
    2) 果実肥大期にエチクロゼートを処理すると, 着色と糖度上昇を促進し, 浮皮発現を低下させる傾向がみられた.
    3) 着色開始期ごろにエチクロゼートの100ppm水溶液の2回散布により浮皮軽減効果が認められた.
    4) エチクロゼートの浮皮軽減効果について検討したところ, エチクロゼートの代謝分解により生成される 5-chloro-indazole carboxylic acid が果実からのエチレン発生量を低下させ, 浮皮を軽減させるものと考えられる.
    5) エチクロゼートにより浮皮が軽減された果実では, 無処理の果実に比べてアルベドの水可溶性画分の含有率が少なく, ヘキサメタリン酸ナトリウム可溶性及び塩酸可溶性画分の含有率が多かった.
  • 受粉直後の雌ずい内糖タンパクの組成並びに数種の自家不和合性打破処理の効果について
    山下 研介, 谷本 茂樹
    1985 年 54 巻 2 号 p. 178-183
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ハッサクの自家不和合性に関する知見を増すことを目的として実験を行い, 次のような結果を得た.
    1. ハッサクの成蕾に自家受粉並びに他家受粉を行って, 雌ずい内に含まれる糖タンパクの経時的変化を, 等電点電気泳動によっ分析した. その結果, 受粉後30分において早くも, 柱頭, 花柱, 子房のいずれの部位においても, 顕著な区間差が観察された.
    2. 自家不和合性打破に有効な方法を見出すことを目的として, いくつかの処理を試みたところ, ハッサクあるいはヒュウガナツの花粉抽出液を幼蕾柱頭に塗布した後, 自家受粉を行う方法が最も有効であった. また, 成蕾柱頭にカラタチ花粉を受粉して1時間後に自家受粉を行う方法によってもかなりの効果がみられた.
  • 松井 弘之, 湯田 英二, 中川 昌一, 今井 克太
    1985 年 54 巻 2 号 p. 184-191
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ブドウ‘デラウェア’の葉に14CO2を施用し, 6, 24, 72時間後, 14C-物質が各器官にどのような割合で分配されているか, さらに, 第2実験では14CO2施用6時間後に, それが糖, 有機酸, アミノ酸にどのような割合で分配されているかについて調査した.
    1. 葉中に認められたアルコール可溶性及び不溶性14C-物質は時間の経過に伴い減少した. 葉から枝梢, 幹,根に転流した14Cは14CO2施用24時間目以後, 不溶性物質中で増加し, 可溶性物質中での増加は認められなかった.
    2. 果肉中に転流, 分配された可溶性14C-物質の量は, 果粒生長の盛んな第1期と糖の蓄積期である第3期で増加し, 特に第3期で著しかった. 一方, 不溶性物質中の14Cは第1期に比較的多く認められた.
    3. 種子中に転流, 分配された14C-物質は可溶性よりも不溶性の方が多く, 両者とも果粒生長の第1期から第2期にかけて増加し, それ以後は急減した.
    4. 葉や枝梢中の14Cは, 糖では主として sucrose, glucose, fructose に, 有機酸でも malic acid, tartaricacid に認められ, 果粒中でも sucrose を除いて葉や枝梢と同様であった. しかし, これらの物質への14Cの分配率は時期により著しく異なっていた.
  • 植田 尚, 内藤 隆次
    1985 年 54 巻 2 号 p. 192-200
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    GA処理‘ベーリーA’の小花に出現する二つの開花型について, 形態的特徴を調査した. さらに, 過去のGA処理で安定的に高い, あるいは低い無核果率の得られた樹 (前者をH樹, 後者をL樹と呼ぶ) を用い, これらの開花型の出現と無核果形成の関係を調べた.
    1. GA処理した花房の小花を開花様式により二つのタイプに分類した. すなわち, 無処理花と同様に花冠が基部から離れ帽子状となって離脱する小花を正常花, 花冠が基部から離れず頂部から裂開する小花を異常花と名づけた. 無処理花では雄ずいが雌ずいに比べわずかに長い程度であったが, GA処理の正常花では雄ずいが雌ずいの約2倍の長さを示した. 一方, 異常花は雄ずいが雌ずい柱頭に達しなかった. また, 異常花は正常花に比べ子房の肥大が著しく, 心皮数, 胚珠数が多く, さらに胚珠も大きく, 両開花型間に有意な差が認められた.
    2. H樹では満開前17日及び14日処理で異常花率が高かった. また, 結実率においても異常花が正常花より著しく高く, 着果した果粒の大部分が異常花由来果で, その無核果率は99%以上であり, 正常花由来果より常に高かった. 一方, L樹でも同時期の処理で異常花率は高い傾向がみられたが, H樹に比べそれらの値は低かった. しかし, 結実率においてはH樹と同様異常花が正常花より著しく高かった. また, 無核果率は処理時期間で有意差がなく, H樹より著しく低い70%前後の値であった. 特に異常花由来果の無核果率はH樹に比べ29~44%も低く, しかもH樹とは逆に正常花由来果より低い値を示した.
    3. これらの結果から, 異常花の出現は前処理時期と密接な関係があること, また, 異常花は正常花に比べ結実率が著しく高いことが明らかとなった. さらに, 異常花は無核果形成に有利と思われる形態的特性を備えていることが認められた. しかし, 供試2樹間で開花型と無核果率との間にむしろ逆の関係が認められたことから,開花型は無核果形成を左右する決定的要因でないことが示唆された.
  • 米森 敬三, 松島 二良
    1985 年 54 巻 2 号 p. 201-208
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    Pollination constant の甘ガキの自然脱渋機構を組織学的な面より解明するために, まずその手始めとして, 果実内でのタンニン細胞の発育過程を調査し, 脱渋性との関連を検討した.
    1. タンニン細胞の発育過程は, pollination constant の甘ガキ (PCNA) 果実とその他の品種群に属するカキ果実との間で顕著な差異が認められた. すなわち, pollinationvariant の甘ガキ (PVNA), 渋ガキ (PVA) 及びpollination constant の渋ガキ (PCA) の果実では, 7月下旬まで急激にタンニン細胞が肥大して巨大細胞となるのに対して, PCNA果実のタンニン細胞は6月下旬ごろよりほとんど肥大しなくなり, 小さいままで発育を停止した. また, 単位面積当たりのタンニン細胞数には,どの時期でも品種間で明確な差異が認められなかったため, PCNA品種ではタンニン細胞の肥大の停止する6月下旬以降, 単位面積当たりに占めるタンニン細胞の総面積が速やかに減少した. この減少過程は, PCNA品種の樹上での渋味の消長過程と酷似していた.
    2. PCNA 6品種及びPVNA 3品種の甘ガキ果実について, 渋味の大部分が消失している8月上旬に, タンニン物質の不溶化がどの程度起こっているかを調査した. PVNA品種ではいずれもタンニン細胞が完全に凝固していたが, PCNAの‘花御所’,‘裂御所’,‘天神御所’のタンニン細胞は全く凝固していなかった. また,‘富有’,‘次郎’,‘藤原御所’においても凝固していないタンニン細胞がかなり混在しており, PCNA品種のこの時期までの渋味の減少に, タンニン物質の不溶化は直接関与していないことがわかった.
    3. 以上のことより, PCNA果実の樹上での自然脱渋機構を考える時, その主たる要因はタンニン細胞の初期の発育停止によるタンニン物質の果実内での希釈効果であることが示唆された. この点, PVNA果実の脱渋機構とは根本的に異なっていることが確かめられた.
  • 兵藤 宏, 深沢 利里子
    1985 年 54 巻 2 号 p. 209-215
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    キウイ果実(Actinidia Chinensis Planch. cv. Hayward)は21°Cで0.1μlk9-1h-1の限界値を越えた後, エチレン生成量が急激に増加した. 1°Cから21°Cに移した後, 個々の果実で急速なエチレン生成が起きるまでにはかなりの時間の差がみられた. 個々の果実のエチレン生成量が増加し始めるまでの時間とその変異は,果実を低温下 (1°C) で貯蔵する期間が長くなるにつれて短かくなり, 変異は小さくなった. エチレン生成量の増大に伴い果実内部のエチレン濃度は高まり, また呼吸の増加, 可溶性固形物含量の増加, 果実の軟化が平行して起きた. 果実組織中の1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸 (ACC) 含量はエチレン生成の増大と共に増加した. ACC合成酵素の活性も, エチレン生成の顕著な組織で増加した. エチレン生成酵素 (EFE) の活性は, 果実のエチレン生成の増加と共に増加した. 果実組織のエチレン生成はアミノエトキシビニルグリシン(AVG)により顕著に抑制された. EFE活性はコバルトイオン(Co2+), プロピル没食子酸, カプリル酸によって強く阻害された. これらの結果は, キウイ果実中のエチレン生合成はメチオニンを出発物質として, ACC経路を通って進行していることを示している.
  • 金浜 耕基, 斎藤 隆
    1985 年 54 巻 2 号 p. 216-221
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1株の葉数又は葉面積, 着果数及び受光量を調節して, 果実の発育と曲がり果発生との関係を調べた.
    1. 1株に1果着果させた場合, 果実の発育は葉数5枚で順調に行われ, それ以下の葉数では葉数が少ないほど抑制された. 収穫果の曲がり角度は葉数5枚で最も小さく, 葉数が少ないほど大きくなった. 葉数1枚では曲がり果のほかに変形果が発生したり, 果実の発育が停止するものがあった.
    2. 1株に2~3果着果させた場合, 1果当たり葉数が3枚あると個々の果実は順調に発育し, 収穫果の曲がり角度は小さかった. しかし, 1果当たり葉数が1枚であると, 発育の優勢な果実は最初に伸長して曲がり角度の小さい果実となるが, 劣勢な果実は伸長が遅れて曲がり角度の大きな果実あるいは変形果となった.3. 1株に1果着果させて葉面積を変えた場合, 果実の発育は葉面積1,200cm2で順調に行われ, 曲がり角度は最も小さかったが, それ以下の葉面積では, 葉面積の小さいほど発育が抑制され, 曲がり角度が大きくなった. 摘葉時期の影響は葉面積1,200cm2ではみられなかったが, それ以下では摘葉時期が早いほど果実の発育が抑制され, 曲がり角度も大きくなった.
    4. 1株1果着果, 葉数3枚又は5枚の株を寒冷しゃで被覆した場合, 被覆枚数が多いほど果実の発育が抑制され, 曲がり角度が大きくなった. 寒冷しゃ被覆の影響は葉数が少ないほど強く現れた.
    5. 以上の結果から, 葉数•葉面積の減少や受光量の減少は, 葉の光合成量, さらには果実への光合成産物の供給量を減少させて, 曲がり果の多発や曲がり角度の増加をもたらすものと考えられる.
  • 斎藤 忠雄, 渡辺 慶一, 高橋 文次郎
    1985 年 54 巻 2 号 p. 222-230
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    火山灰土壌下層土の床土量が, 温室メロンの生育と果実の肥大及び品質に及ぼす影響について検討した.
    1. 火山灰土壌下層土区は, 沖積土壌区に比べて初期生育は劣ったが後期には差がなくなった. 1株当たりの床土量では10kg区が最も劣り, 15, 20, 25kg区の順に生育は勝った.
    2. 果実の発育肥大と重量は沖積土壌区に比べて火山灰土壌下層区が勝り, 両土壌とも10kg区で劣ったが, 床土量を増すにつれて果実の重量は増加した.
    3. 果実のネット及び果形, 果色など外観的品質は, 火山灰土壌下層土では15kg, 沖積土壌では20kg以上の区が良好であった.
    4. 果実の糖度, 糖含量 (ショ糖, ブドウ糖, 果糖) について, 火山灰土壌下層土区は沖積土壌区に比べて糖度, ショ糖, 果糖含量には顕著な差がなかったが, ブドウ糖含量が高かった. 糖含量の合計は床土量の20, 25kg区が高く, 10, 15kg区で低かった.
    5. 果実のクエン酸含量は, 沖積土壌区に比べて火山灰土壌下層土区が低く, 床土量を増すにつれて高まった.
    6. 果実の水溶性ペクチン含量は, 沖積土壌区に比べて火山灰土壌下層土区が全般的に高く, 床土量による差はなかった.
    7. 果実の食味は, 沖積土壌区に比べて火山灰土壌下層土区がわずかに劣った. 床土量では10kg区が最も劣り, 15, 20kg区が良好であった.
    8. 植物体のリン酸含量は沖積土壌区に比べて火山灰土壌下層土区が低く, カリウム, カルシウム, マグネシウム含量が高かった. 床土量を増すにつれてリン酸, カリウム含量が低く, カルシウム, マグネシウム含量が高くなった.
    9. 以上の結果から, 本実験では1株当たりの床土量は, 沖積土壌の20~25kgに対して火山灰土壌下層土では15~20kgが適量と思われた. すなわち, 火山灰土壌下層土を床土に利用する場合, 床土量を減じても沖積土壌と同様に利用し得ることが明らかになった.
  • 長島 時子
    1985 年 54 巻 2 号 p. 231-241
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    キエビネ, カ•エルメリ及びトクサランの3種のランを供試し, 胚珠形成及び受精後の種子形成過程を組織学的に観察するとともに, 種子形成過程と種子発芽との関係を追究した.
    1. 子房の大きさは, いずれのランにおいても, 受粉すると急速に増加した. 子房の大きさは, キエビネ及びトクサランでは受粉後50日ごろに, カ•エルメリでは同60日ごろにそれぞれ一定値に達した.
    2. 種子及び胚の大きさは, いずれのランにおいても, 受精すると急速に増大した. 種子の大きさは, キエビネ及びトクサランでは受粉後80日ごろに, カ•エルメリでは同60日ごろにそれぞれ一定値に達した. 胚の大きさは, キエビネでは受粉後95~100日ごろに, カ•エルメリでは同65~70日ごろに, トクサランでは同87~90日ごろにそれぞれ一定値に達した.
    3. 胚珠形成は, キエビネでは受粉後43~45日ごろに, カ•エルメリでは同35~37日ごろに, トクサランでは同30~31日ごろにそれぞれ完了した. 重複受精は, キエビネでは受粉後48~50日ごろに, カ•エルメリでは同40~41日ごろに, トクサランでは同34~35日ごろにそれぞれ行われた. 胚のうは, キエビネ, カ•エルメリ及びトクサランのいずれにおいてもそれぞれ5~6個が観察された. 受粉から胚発生完了までに要する日数は, キエビネでは95~100日, カ•エルメリでは65~70日, トクサランでは87~90であった.
    4. 胚発生の様相はキエビネ, カ•エルメリ及びトクサランのいずれにおいても同様であった. すなわち, いずれにおいても4細胞期ではA2型であり, 4細胞期以降の胚発生過程はE型 (Liparis pulverulenta 型) に類似していた. また, いずれのランにおいても胚は主としてca細胞から形成された.
    5. 受精後の胚乳核は, キエビネ, カ•エルメリ及びトクサランのいずれにおいても3~5個が観察された.また, いずれにおいても胚柄の存在が観察された.
    6. 種子の発芽能力は, キエビネ及びトクサランでは8細胞期 (前者では受粉後70日ごろ, 後者では受粉後55日ごろ) 以降に, カ•エルメリでは前胚の4細胞期以前(受粉後45日ごろ) にそれぞれ認められた. なお, いずれにおいても胚発生完了前後において発芽率が最も高かった. 培地としては, MS培地及びKC培地に比較して, H培地が優れていた.
  • 崎山 亮三, 神保 雅弘
    1985 年 54 巻 2 号 p. 242-246
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    収穫したキュウリ果実 (品雑‘久留米落合H型’) を20°C, 不飽和水分条件下に9日間貯蔵した. 果肉片の酸素吸収速度は一度低下したのち上昇した. この上昇は果肉内気体の圧力増加と蓄積開始に対応していた. しかし, 酸素吸収速度は気体圧力に比較して早くピークに達し, その後の低下が急速であった. この間, 気体の蓄積は進行した. 酸素吸収量の低下にもかかわらず, 気体圧力の低下がゆるやかで, 気体蓄積が進んだ事実から, 気体の蓄積に膜の透過性の低下が関与している可能性が示唆された.
    7.5°Cで貯蔵した果実では, 果肉内気体の圧力は低下してほぼ大気圧に等しくなり, 7.5°Cで測定した果肉片の酸素吸収速度は貯蔵期間中低く保たれた. しかし, この果肉片の酸素吸収速度を20°Cで測定すると, 貯蔵期間中の変化は20°C貯蔵果の果肉片で得られた結果とほぼ同じであった.
  • 阿部 一博, 茶珍 和雄
    1985 年 54 巻 2 号 p. 247-256
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    本研究は, 収穫したナス果実に一定期間コンディショニングを施し, その後の1°C貯蔵中の低温障害の発生に及ぼすコンディショニング処理の影響を調べるとともに, この過程における表皮構造の変化を走査電子顕微鏡で調べたものである.
    1. 10°C並びに20°Cで5日~15日間コンディショニングを行った果実は, 処理後の1°C貯蔵中の低温障害発生が軽減され, 商品性保持期間が収穫当日から1°C貯蔵した果実より長かった.
    2. 10°C並びに20°Cでのコンディショニングは, その後の低温貯蔵中のピッティングの発生を2~3日遅らせた. しかし, 収穫当日から低温貯蔵したナス果実に発生するピッティング (ピッティングI型) と, コンディショニング後低温貯蔵したナスに発生するピッティング(ピッティングII型) は外観上相違がみられた.
    3. ピッティングII型は無孔ポリエチレン袋で包装した場合より, 有孔ポリエチレン袋で包装した場合の方が多く発生し, ピッティングI型は無孔ポリエチレン袋の包装区で多く発生した. コンディショニング後ナス果実を殺菌し, その後低温貯蔵するとピッティングII型の発生は減少した.
    4. 20°C貯蔵された果実では, 菌糸が多くみられる表皮部がほぼ円形に隆起しており, 隆起部に菌糸が果実内に侵入している状況がみられた. 低温貯蔵で発生したピッティングI型の表皮構造を観察すると, 100~1,500μmの陥没が連なり, 表皮細胞の破壊や配列の乱れは認められなかった.
    5. コンディショニング後の低温貯蔵で発生したピッティングII型は, 直径が100μm~300μmの陥没であり, 陥没部の中央部並びに周辺部に糸状菌 (Alternaria菌) が多くみられた. ピッティングII型の切断面をみると菌糸が果実内部に貫入しており, ピヅティングI型とは異なり, 表皮細胞並びに表皮から数層内部の柔組織細胞の変形により陥没の生じることが明らかとなった.
  • 伊東 卓爾, 中村 怜之輔
    1985 年 54 巻 2 号 p. 257-264
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    7種類の青果物を用いて, 特定の基準温度を中心に変動する温度変動 (方形波型) がそれらの鮮度変化に及ぼす影響について調査した.
    アスパラガスでは, 温度変動幅が大きくなるに従って, 外観鮮度の低下, 若茎硬度の増大及びアスコルビン酸含量の減少が速まった. ソラマメのサヤの外観は, 温度変動による影響をあまり受けなかったが, マメ (種子) は悪影響を受け, ヘソ部は±1°C程度の小さな変動によって明らかに褐変が進行した. エンドウ (サヤ用種) の外観鮮度は温度変動の影響を受けにくく, ワケギ, シイタケ及びエノキタケでは, 温度変動の影響を強く受け, 変動区の外観鮮度低下が速やかであった. ブドウ ‘マスヵット•オブ•アレキサンドリア’ は, 梗軸の褐変が変動区でやや速まったが, 果房全体の外観は変動区と基準温度区との間に差はみられなかった.
    以上の結果から, アスパラガス, ソラマメ, ワケギ,シイタケ及びエノキタケは温度変動許容度が小さく, 貯蔵中は安定した低温維持が要求されるが, エンドウ (サヤ用種) 及びブドウ ‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’ は, 温度変動許容度が比較的大きく, 貯蔵中にある程度の温度変動が生じても許容されることが明らかになった.
  • 山内 直樹, 南出 隆久
    1985 年 54 巻 2 号 p. 265-271
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    本研究は, パセリーにおけるペルオキシダーゼによるクロロフィルの分解について追究した. パセリー葉身のエタノール抽出物にペルオキシダーゼ並びに過酸化水素を添加すると, クロロフィルの分解が認められた. しかしながら, 精製したクロロフィルはペルオキシダーゼ•過酸化水素系で分解されなかった. この結果から, パセリーのエタノール抽出物中に含有される未知物質がペルオキシダーゼ•過酸化水素系によって酸化され, その酸化生成物がクロロフィルを分解しているものと思われたので, 以下未知物質の検討を行った.
    未知物質は溶媒分画並びにカラムクロマトグラフィーによって分離され, 紫外部吸収極大位置からアピゲニン配糖体であると推定した. さらに, 塩酸による加水分解によりアグリコンを抽出し, 薄層クロマトグラフィーでのRf値並びにスペクトル特性の検討により, 未知物質はパセリーの主要フラボノイドのアピゲニンであることを同定した.
    以上の結果から, パセリーにおけるクロロフィルの分解は, ペルオキシダーゼがアピゲニンを酸化し, 生成したアピゲニンの酸化物がクロロフィルを分解することを認め, 収穫後におけるパセリーの黄化にペルオキシダーゼが関与しているものと推察した.
feedback
Top