園芸学会雑誌
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55 巻, 4 号
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  • 近藤 悟, 浅利 正義, 熊谷 征文
    1987 年 55 巻 4 号 p. 415-421
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    秋田県北部において1978年にリンゴ, ‘スターキング•デリシャス’を中心として‘陸奥’, ‘レッド•ゴールド’などに激しい早期落果のみられたその気象状況を検討し, 1979~1985年の気象条件と早期落果率との関係を統計的に相関及び単, 重回帰解析することにより, 早期落果に関与する気象要因を明らかにしようとした.
    1978年は満開36日後以降に落果が多発し, その気象状況は満開31日後以降, 最高及び最低気温が平年 (過去10年間の平均) を大きく上回り, また満開後27~38日に日照時間が少なく降水量の多かったことが特徴的である. 一方, 1979年から1985年までの早期落果率は満開後30日前後の気象条件と関係が深く, なかでも満開後28~34日の最低気温, 日照時間及び降水量から早期落果率を回帰する重回帰式が得られた. これらより, 特に最低気温が高く日照時間が少ないと落果を助長することが明らかとなった.
    個々の樹に対する栽培管理と落果率との関係については, 頂端新梢の伸長量の定期的な測定と葉内無機成分の分析により樹の樹勢を知る手段とし, 樹勢が強すぎたり, また逆に弱すぎても落果が助長され, 新梢伸長量と密接に関係していた. このことは強せん定を行った樹についても観察され, 強せん定は新梢伸長をおう盛にし落果を増加させた.
  • 島村 和夫, 三善 正道, 平川 利幸, 岡本 五郎
    1987 年 55 巻 4 号 p. 422-428
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ユスラウメ台及び共台 (寿星桃) の‘山陽水蜜桃’を王幹形で育て, ほぼ成木期に達した6年生及び8年生時に新梢, 根, 果実の生育を比較調査した.
    1. ユスラウメ台では10cm以下の新梢の比率が共台よりも高く, これらは着葉密度が高く, 伸長が5月中に停止した. 20cm以上の新梢は共台の方がユスラウメ台より多く, これらは6月以降も伸長を続けた.
    2. ユスラウメ台の新根生長は4月下旬から5月上旬にかけて活発で, 6月中旬にはほとんどが褐変し, 白根は消失した. 共台の新根生長はユスラウメ台より約1か月遅く始まり, 7月中旬まで多くの白根がみられた.
    3. ユスラウメ台の果実は硬核期中も活発に肥大を続け, 共台よりも大果となり, 4~5日早く完熟した. 果汁の糖度は1983年はユスラウメ台の方が高かったが, 6月下旬から7月上旬に降雨が続いた1985年は共台の方が高かった.
    4. 以上のように, モモの主幹形仕立にはユスラウメ台が適していると考えられるが, 共台でも幼木期から積極的に着果させ, 夏季せん定を十分行うなど樹勢安定を図れば, 主幹形で栽培することは十分可能であると思われる.
  • 細井 寅三, 大石 惇
    1987 年 55 巻 4 号 p. 429-433
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ブドウ‘デラウェア’の休眠枝ざしにおける発根と光合成の関係を明らかにするために, さし木33, 43, 62日後に14CO2を施し, 6, 24, 72時間後のさし穂内におけるアルコール可溶性物質中の14Cの分布を調査した.
    さし木後の日数の経過とともに, さし穂内に取り込まれる14Cの総量は著しく増大したが, 発根開始前の33及び43日後では, 施用72時間後でもそのほとんどが新芽中に存在した. しかし, 発根がみられた62日後では, 施用後の時間の経過とともに新芽から新根へ転流する14Cの量が増大し, 新根が光合成物質に対する sink として働くことを示した. また, 62日後のさし穂について, 14Cの糖, 有機酸及びアミノ酸物質への分布を調査したところ, 施用6時間後では, さし穂のいずれの部位においても14Cのほとんどが糖中に存在した. そして, 茎では上半, 下半ともに, 14Cの分布割合の変化は少なかったが,新芽及び新根では, 時間の経過とともに糖中の14Cが減少し, 有機酸中の値が増大した. また, 新根では, アミノ酸中の14Cもわずかに増大した. このように新根において有機酸及びアミノ酸への14Cの取り込みが増大したことは, それらが新根の発育に関係するものであることをうかがわせた.
    本実験の結果は, ブドウ‘デラウェア’の休眠枝ざしにおける光合成が, 分化後の根の発育に重要な役割を果たすことを確証づけた.
  • 高木 信雄, 清水 真寿美, 荻野 尚裕, 前田 幸男, 赤松 聡, 大和 田厚
    1987 年 55 巻 4 号 p. 434-444
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    宮内イヨカンの着花過多樹における, 開花期の窒素と光合成産物の転流を15Nと13Cを用いて検討した.
    (1) 宮内イヨカンの着花数, 特に結実し難い直花の増加は, 新梢の発生数を減少させ, また, 樹全体の結実率を低下させた. 落花による窒素の損失量は着花数に比例して増加し, 葉花比が10以下の着花過多樹では採収果実の10%以上に達した.
    (2) 結実率の高い有葉花では, 開花前4~5日の間の子房の肥大量が直花の子房よりも大きかった. 開花約3週間前の4月20日の施用窒素は, 満開時までに新梢や花へ移行し, 子房の生長を促進し結実率を高めた. 一方, 開花初期の5月8日の施用窒素は, 結実に対する効果は認められなかったが, 開花終了後新梢へより多く移行した. 9月1日に施用した窒素の多くは11月中旬までに吸収され, 葉中の15N含量は翌年の2月まで変化しなかった. その後3月から5月の間に, 枝葉や細根中の15N含量は低下したのに対して, 新生器官の新葉や花中の15N含量が高まった. 4月20日及び9月1日に施用した15Nは, 開花期の花と新梢及び着生花と落花中にほとんど均一に転流した. したがって, 花中の15Nの大部分は落花によって損失した.
    (3) 13C標識光合成産物は, 結実の良好な有葉花の子房へ多く移行したが, 1樹の総移行量は落花器官中の方が多かった. 新葉中の13C含量は全器官中で最も高く, しかも, その割合は開花期間中変化しなかった. 旧葉中の13C含量は急速に減少し, その減少量と花の含量の増加量はほぼ一致した.
    以上のように, 開花期の窒素と光合成産物の転流様式にはかなりの差異が認められ, 開花3週間前の施肥窒素による結実促進は, 光合成を介した間接的効果によると推測された. また, 宮内イヨカンの着花過多樹の開花後の新梢の生長促進に対しては, 開花期ころの窒素の施用が適切であると判断された.
  • 斎藤 隆, 高橋 秀幸
    1987 年 55 巻 4 号 p. 445-454
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    キュウリの雌花発現に対するエチレンの作用機構を生理学的に明らかにすることを目的として, エスレルまたはエチレンの施与部位を変えると同時に, 摘葉処理を組み合わせ, さらに, エスレル施与後の各部位のエチレン発生量を経時的に測定し, エチレンの作用を葉の役割との関連から検討した.
    1. エスレルを第1葉のみ, 第2葉のみ, 第3葉のみあるいは茎頂部のみに部位別施与しても, 第2葉と茎頂部施与または全面施与の場合と同様に雌花発現が著しく助長された.
    2. エスレル施与と摘葉処理を組み合わせた場合, 葉が存在すれば茎頂部のみ, または根部にエスレルを施与しても雌花発現は誘起されたが, 全ての展開葉を摘除して茎頂部, または根部にエスレルを施与しても雌花発現誘起作用はほとんど認められなかった.
    3. 第2葉のみを残して他の展開葉を摘除し, 残した第2葉にエスレルを施与し, 経時的に施与葉の第2葉を摘除した場合, 施与6時間後に摘除すると雌花は全く発現せず, 施与12~24時間後に摘除した場合にはわずかに雌花が発現し, 3日, 6日と施与葉摘除までの時間が長くなるにつれて雌花発現節数が増加し, 施与10日後に摘除した場合には施与葉無摘除区とほぼ同程度の雌花節数が発現した.
    4. 部位別エチレン処理と摘葉処理を組み合わせて行うと, 無摘葉の状態では茎頂部のみにエチレンを処理することによって全体処理の場合と同様に雌花発現が誘起された. しかし, 全ての展開葉を摘除して茎頂部にエチレンを処理した場合, 及び第3葉のみを残して他の展開葉を摘除し, 第3葉にエチレンを処理した場合には雌花が全く発現しなかった.
    5. エスレル施与によって, 施与部位でエチレン発生量が著しく増加すると同時に他の部位でも増加したが, 施与2日後に比較して施与5日後には各部位とも全体的に減少した. 茎頂部にエスレルを施与した場合の茎頂部のエチレン発生量は, 無摘葉区に比べて摘葉区で著しく多かった.
    6. 以上の結果から, 茎頂部のエチレンレベルと雌花発現は密接な関係にあるが, エチレンレベル単独では雌花発現機構を説明することは無理であり, ある一定のエチレン濃度が保持されるとともに, 成熟葉で生成される花成刺激の供給によって, 雌花発現が誘起されるものと推察される.
  • 郭 秀年, 藤枝 國光
    1987 年 55 巻 4 号 p. 455-460
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    栽培カボチャの自殖と種間交配を行い, 種子の発育について調査した. 種間交配では, 胚乳の生長は自殖の場合に似ていたが, 胚の生長は自殖よりも劣った. 正常な受精後の胚の生長にみられる自殖と種間交配との違いは, 胚と胚乳の和合性の差異にもとづくものと思われる.
    同じ組合せの種間交配でも, 親の品種により種子の発育に大きな違いを生じた. 種間交雑の成功には, 品種間差異がある.
    5~6mmの自殖胚の胚培養には, 無機成分1/2濃度•有機成分標準•シュクロス5g/lのMS培地が適していた. この培地は1~2mmの種間交雑胚の培養にも適用できる. 親品種の選択と胚培養技術を活用することで, カボチャの種間雑種を効率よく作出できる.
  • 橘 昌司
    1987 年 55 巻 4 号 p. 461-467
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    低根温耐性を異にするキュウリ2品種 (‘四葉’と‘久留米落合H型’) 及びクロダネカボチャを根温12, 14,17, 20, 30°Cで1日及び5日間前培養したあと, ホーグランド液 (第2液, 1/3倍) 250mlの入ったポリびんに移して, それぞれの根温における24時間の養水分吸収速度を測定した.
    吸水速度は低根温によって抑制されたが, その程度はキュウリにおいて著しく, クロダネカボチャは顕著な抑制を受けなかった. キュウリにおいては, 2品種ともに前培養日数の増加によって低根温下での吸水速度の低下程度が増大した.
    一方, 養分吸収速度は, キュウリ2品種においては, 養分によって違いがあったが, 概ね14~17°C以下の低根温で低下がみられ, 前培養日数の増加によりその程度が増大した. また, NO3-N, K, Caでは12~14°Cで外液への漏出が起こった. これらの傾向は‘四葉’の方が‘久留米落合H型’より顕著であった. なお, NH4-Nに限って, 低根温下で吸収速度の増大する傾向が認められた.
    これに対して, クロダネカボチャではPを除いて両前培養区ともに根温の影響をほとんど受けなかった. P吸収速度は前培養1日区では12°C区でのみ低下したが, 前培養5日区では12°Cにおいても低下はみられなかった. また, 低根温によるNH4-N吸収速度の増大は顕著ではなかった.
    水分吸収速度に対する養分吸収速度の比率 (養水分吸収比) はキュウリ2品種では根温の低下に伴って低下し, 5日間の前培養によってこの傾向は一層増大した.しかし, クロダネカボチャでは養水分吸収比は全体的に低根温によってむしろ高くなる傾向がみられた.
  • 石井 現相, 西條 了康
    1987 年 55 巻 4 号 p. 468-475
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ダイコンの栽培条件が全糖含量, ビタミンC含量, β-アミラーゼ活性に及ぼす影響を検討し下記の結果を得た.
    1. 収穫時期が早いほどビタミンC含量, β-アミラーゼ活性が高い傾向がみられた.
    2. 全糖含量は春まき栽培では収穫前5日間の積算日射量と正の相関関係があり, 晩夏まき栽培では収穫前7日間の積算降水量及び積算平均気温と負の相関関係があった.
    3. 作型間の比較では, 全糖含量は晩夏まきが春まきより高く, β-アミラーゼ活性は春まきが晩夏まきよりも高い傾向があった.
    4. 土性 (黒ボク土と沖積土) の種類を変えて栽培すると, 沖積土区が黒ボク土区よりも全糖及びビタミンC含量, β-アミラーゼ活性がわずかに高まる傾向があった.
    5. 遮光処理, ポリマルチ栽培及び栽植密度は全糖及びビタミンC含量, β-アミラーゼ活性にほとんど影響がなかった.
    6. 品種間差異を10品種の変動係数及び内容成分の最高と最低の品種の比で検討した結果, 品種間による差異はβ-アミラーゼ活性が最も大きく, それぞれ変動係数が64.6%, 最高と最低の活性比は7.1倍, 次いで, ビタミンC含量で31.1%と2.6倍, 全糖含量が最も小さく13.7%と1.4倍であった.
  • 金浜 耕基, 斎藤 隆
    1987 年 55 巻 4 号 p. 476-483
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. メロン, キュウリ, トカドヘチマの果柄と果実の維管束連絡は, 主として, 果柄→果托→果皮 (外果皮→中果皮→内果皮)→隔壁→果心→胎座→種子の順序であった. 果柄頂部から直接果心部へ連絡する維管束も観察されたが, 果托部の維管束より細く, 本数も少なかった.
    2. 維管束の基本数は, 果柄頂部, 果托部及び外果皮部では10本, 果心部では1心皮当たり1本, 胎座部では1種子当たり1本であった. 中果皮部と内果皮部及び隔壁部では多くの維管束が認められ, 基本数は決定できなかった.
    3. 維管束の走向は, 果柄, 果托部, 外果皮部, 内果皮部及び果心部では求頂的であり, 中果皮部, 隔壁部及び胎座部では果実横断面において, それぞれ, 接線方向, 求心的及び遠心的であった.
    4. マクワウリ‘早田ウリ’の両性花の心皮数は3~6枚の範囲であったが, 5枚の花が最も多かった. 夜温が低いと5枚の花が多く, 夜温が高いと3, 4枚の花が増加した. 心皮数5枚の花では, 5枚の心皮と花托部•外果皮部の10本の維管束との対応が最も整っていたので, 早田ウリの心皮の基本数は5枚とみられた.
    5. 早田ウリの心皮の配列型を心皮の大きさを考慮してみると, 心皮数3枚の両性花では4種類, 4枚の両性花では8種類, 5枚の両性花では5種類が観察された.
    6. 心皮の配列型 (第2~4表) の出現率は, 心皮数3枚ではIII1, 4枚ではIV1 とIV3, 5枚ではV2 とV4が多かった.
    7. ウリ科野菜の心皮が個体発生の過程で普通葉の場合と同様に1枚から5枚に増加すると考えれば, 主として, I, II1, III1, IV1 又はIV3, V2又はV4の配列型になるものと考えられた (第12図).
    8. 以上の結果, 1個の子房や果実を構成する複数の心皮の間に本来の発生位置や時期の違いがあるものと考えられた. したがって, 特定の心皮の発生位置や時期の違いが特定の心皮ひいては, 子房や果実の特定の部位の肥大の良, 不良と関係すると考えられた.
  • 前川 進, 鳥巣 陽子, 稲垣 昇, 寺分 元一
    1987 年 55 巻 4 号 p. 484-489
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    セントポーリアの葉面かん水によって起こる葉の障害について, その発生の原因を明らかにするために個葉を用いて種々の水温に浸漬処理を行った.
    1. 葉温30°Cの葉を15°Cの水に30秒間浸漬したとき内葉より葉齢の進んだ外葉で葉の障害は大きかった.
    2. 浸漬前の葉温が20°, 25°及び30°Cの葉を種々の温度の水に浸漬したとき, それぞれの葉温より5~10°C低い水温で障害の発生が見られ, さらに温度差が大きくなると障害の程度も大きくなった.
    3. 葉温30°Cの葉を15°Cの水に時間を変えて浸漬したとき, 1秒間浸漬しただけでも障害が発生した.
    4. 30°Cから15°Cまで5°Cずつ段階的に水温を落として浸漬したとき, 葉の障害は各水温に15秒の浸漬ではその発生をみたが, 30秒以上の浸漬ではみられなかった.
  • 中村 怜之輔, 藤井 誠記, 稲葉 昭次, 伊東 卓爾
    1987 年 55 巻 4 号 p. 490-497
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ナス果実の収穫時の紀質と低温耐性との関係を考察するために, 栽培中の土壌水分条件と施肥量が収穫後の果実の低温耐性に及ぼす影響について調査した.
    湿潤条件で栽培したナス果実は, 収穫後の低温耐性が低くなる傾向が認められた. 収穫3日前に土壌水分を変更した試験で, 乾燥から湿潤に切り替えた場合にも, 低温耐性が低くなることが認められ, 収穫直前の土壌水分条件が強く影響してくることがうかがわれた.
    施肥量と低温耐性との関係については, NとPで, 不足状態では耐性が低下したが, 2倍量施用では多施用の影響は明確ではなかった. Kについては, 本調査の範囲では一定した傾向はみられなかった.
  • 加藤 公道
    1987 年 55 巻 4 号 p. 498-509
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    エタノールのみまたはエチレンと併用して処理したカキ果実を5~40°Cの異なる温度の恒温室内に置き, 脱渋及び追熟期間中の果実形質その他の変化を調査した.
    果実のタンニン含量の減少は高温下ほど速く, その速度は温度が10°C上昇すると約1.9倍になった.
    果肉の硬度は, 最初は緩やかに低下し, その速度は15~40°Cに比べて10°Cではやや遅く, 5°Cではかなり遅くてほとんど認められないほどであったが, その後は急速に低下し, その速度は5~25°Cでは相違がほとんど認められなかった. 10°Cでは, 急速な硬度低下が15~30°Cより早く始まり, 軟化した果肉は水浸状を示す傾向が認められた.
    果皮のクロロフィル含量の減少は15°C付近で速く,低温の5°Cと高温の30°Cではともに遅かった. 一方, カロチノイド含量の増加は, 5~30°Cでは高温下ほど速かった. なお, 果皮にはリコピンがほとんど含まれていなかった.
    硬度低下はエチレン処理果の方が無処理果より早かった. エチレン処理により促進された硬度低下の促進程度は, その後いずれの温度下に移しても, ほとんど変わらずほぼ一定で経過した.
    ダンボール箱内のエタノールガス濃度は, アルコール溶液を散布した後急上昇して約1時間後にピークに達し, その後急速に低下した. この変化は, 高温下ほどいくらか速かった. 散布したエタノールのほとんどは, 低温の10°Cでも3日以内に果実内に浸透すると推定された.
  • 山内 直樹, 飯田 修一, 南出 隆久, 岩田 隆
    1987 年 55 巻 4 号 p. 510-515
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ホウレンソウを材料として, 脂質の加水分解に作用する Lipolytic acyl hydrolase (LAH) のクロロプラストでの存在と, 貯蔵に伴う LAH のクロロプラスト中での変化について検討した.
    クロロプラストの分離には, 分画遠心法並びにショ糖密度勾配遠心法を用い, 標識酵素などの分布から, LAHはクロロプラストのチラコイドに局在するものと推測した.
    ホウレンソウを25°Cに貯蔵すると, 貯蔵3日から葉の黄化がみられ, さらに貯蔵6日では黄化が顕著に認められた. 貯蔵に伴うクロロプラストでのLAH活性の変化についてみたところ, 貯蔵3日で活性が増大し, 以後減少して貯蔵6日では貯蔵当日より低い活性を示した.
    以上の結果から, LAHはクロロプラストに局在し, Lipoxygenase とともにクロロプラスト脂質の分解に作用し, 生じた過酸化物がクロロフィルの分解に関与するものと推察した.
  • 平田 貴美子, 茶珍 和雄, 岩田 隆
    1987 年 55 巻 4 号 p. 516-523
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. ヨウサイを1, 6, 9, 12, 15, 20及び30°Cに貯蔵したところ, 1~9°Cで低温障害が発生し, また茎の先端から2~3枚までの若葉と若茎が褐変した. 成熟葉も後に暗緑色化したが, 相対的に成熟葉は低温耐性が大であった. 収穫時のヨウサイのK+漏出速度に対するアレニウスプロットをとると, 10~16°C付近で break が起こり, この温度付近がヨウサイの生体膜相転換の臨界温度であろうと推定した. 1°C及び15°C貯蔵のヨウサイについてK+漏出速度の変化を調べると, 1°Cの若葉において障害発生前に著しい増大が認められたが, 成熟葉ではほとんど変化しなかった.
    2. 貯蔵中の遊離アミノ酸の変化を調べたところ, アラニンが低温で急激に増加した. フェニルプロパノイド代謝の出発物質であるチロシンとフェニルアラニンは, 15°C貯蔵では増加し, 低温下では障害発生前に増加した後減少した.
    3. ヨウサイの褐変基質としてカフェー酸及びクロロゲン酸の存在が確認された. フェニルアラニンからクロロゲン酸へと代謝される経路に位置するフェニルプロパノイド類の貯蔵中の含量変化を調べたところ, 低温区では15°C区に比べ障害発生前に大きく増加, あるいは15°C区における増加に先行して増加した.
    4. クロロゲン酸生成の前段階で重要な役割を持つヒドロキシシンナモイル CoA リガーゼ (CL) の特性を調べたところ, ヨウサイではカフェー酸に対する基質特異性が大であった. CL活性は1°C及び15°C貯蔵ともに増大した後減少したが, 1°Cでの増大が早く, 障害の出現する前にピークに達した. 同様の変化が, クロロゲン酸生成の最終段階に関与するカフェオイル CoA: キナ酸ヒドロキシトランスフェラーゼ (CQT) においてもみられた. 若葉中のCQT活性は1°C貯蔵のものが15°C貯蔵のものより顕著に増大した.
  • 筬島 豊, 和田 浩二, 伊東 裕子
    1987 年 55 巻 4 号 p. 524-530
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    E•A除去剤とプラスチックフィルム密封包装を併用する簡易CA貯蔵法をウメ, カボスに適用し, 炭酸ガス, エチレン及びアセトアルデヒド濃度と鮮度保持効果, 生理障害抑制効果との関連性を, 包装フィルムの性質をパラメータとして検討した.
    1. ウメ緑果は本法によると20°C, 9日以上の貯蔵が可能であった.
    2. ウメの生理障害は炭酸ガス濃度約20%環境下から激増し, 25%以上では全果に障害を生じた. E•A除去剤は生理障害を顕著に抑制し, 25%炭酸ガス濃度下においても障害の発生は0~4%であった.
    3. 本法により低温 (5°C) の貯蔵を行ったカボス緑果は4か月以上の脱緑抑制及び生理障害抑制が可能であった.
    4. カボス緑果は袋内アセトアルデヒド濃度が2ppmを超えると急激に生理障害を生じ, 10ppm では全果に障害が発生した.
    5. エチレン及びアセトアルデヒドの発生は密封袋内炭酸ガス濃度に影響された. この炭酸ガス濃度の高低は, 対象青果物の呼吸量とフィルムのガス透過性によって決定された.
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