園芸学会雑誌
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55 巻, 2 号
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  • 白石 眞一, 渡部 由香, 大久 保敬, 上本 俊平
    1986 年 55 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ブドウの果色を構成しているアントシアニン色素を薄層クロマトグラフを用いて分析を行い,‘巨峰’に関連した品種の色素組成を検討した.
    供試品種に‘キャンペル•アーリー’,‘石原早生’, ‘巨峰’,‘国宝’,‘高尾’の5品種を用いた.
    5品種に含まれていたアントシアニンは, モノグルコサイド, ジグルコサイド, p-クマール酸のアシレートグループを含めて19種であり, アグリコンの種類では, デルフィニジン, ペテュニジン, シアニジン, マルビジン, ペオニジンの5種であった.‘巨峰’は, 5種のアグリコンを全て含み, アントシアニンも12種で最も多く, ‘キャンベル•アーリー’と‘石原早生’はマルビジン系の色素を欠いていた. 一方‘国宝’と‘高尾’はシアニジン系色素を欠くアントシアニン組成を示した.
  • 内藤 隆次, 山村 宏, 吉野 克仁
    1986 年 55 巻 2 号 p. 130-137
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ブドウの側芽における壊死の発生原因と防止対策を明らかにする目的で,‘巨峰’についてまず1年枝の強さと側芽内の主芽の壊死, 翌春の発芽, 花穂の発育などとの関係を調べた. さらに, GA及びSADHの満開期前後の葉面散布が壊死の発生に及ぼす影響を調査した.
    強勢な樹の強い1年枝 (平均枝長390cm) では, 第6~20節の側芽の約80%は主芽が壊死していたのに対し, 樹勢中庸な樹の弱い1年枝 (平均枝長88cm) では, 約20%の壊死率にとどまった. そして調査したすべての1年枝について, 長さと第15節までの側芽内の主芽の壊死率との間に, r=0.77**の高い有意な相関が認められた. また, 強い1年枝を結果母枝としたとぎ, 発芽率が低く, 花穂数が少なく, 花穂長が短い傾向があった.
    GA 100ppmを満開前9日あるいは満開後7日に, 第5~9葉へ散布することにより, 第1~25節の広い範囲にわたり, 極めて高率で側芽内の主芽の壊死が発生し, また副芽の異常増加が認められた. 新梢の生長は, とくに第10節以上の節間で, 開花後散布より開花前散布で促進された.
    SADH 5,000ppmを満開前14日あるいは満開後10日に第5~9葉へ散布したところ, 両処理とくに満開前散布は新梢の生長及び第10~25節の側芽内の主芽の壊死発生に対し顕著な抑制的影響を示した.
    以上の結果より, ブドウの側芽の壊死と内生GAとの関係を推論するとともに, SADHの満開前の新梢への散布が壊死発生の有効な防止対策となることを明らかにした.
  • 山村 宏, 内藤 隆次, 田村 尚志
    1986 年 55 巻 2 号 p. 138-144
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ブドウ‘デラウエア’における果皮ワックス形成と果皮強度に及ぼす果房周辺の光度と湿度の影響をみた. 果実の発育期間を初期, 中期, 後期に分けて, 遮光には黒色寒冷紗袋を, 高湿度処理にはポリエチレン袋を果房にかけた.
    1. 定量的ワックス量と視覚評価による果粉着生量に対し, 各時期の遮光は有意な影響を及ぼさなかったが, 後期及び全期間高湿度処理はワックス形成を有意に抑制し, 視覚評価による果粉着生量も有意に劣った. しかし, これらの処理の裂果への影響は認められなかった.
    2. 後期の遮光は果皮組織のうち, 亜表皮細胞壁の厚さを有意に増加させ, 裂果が減少する傾向があった. 初期及び中期の高湿度処理は亜表皮細胞壁と小果梗の皮目を著しく発達させ, 裂果の起こる限界膨圧を高めた. これらの処理区では裂果が有意に減少した.
  • 平塚 伸, 市村 一雄, 高橋 英吉, 平田 尚美
    1986 年 55 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ニホンナシの蕾受粉による自家不和合性打破と, 花柱, 子房中のタンパク組成との関連性を明らかにする目的で本実験を行った.
    1. 蕾の発育ステージ0 (開花当日)~-8日 (開花8日前) の切り取った花柱からの花粉管出現率は, -4以上に発育したものでは自家受粉と他家受粉の差が明らかであったが, それより若い花柱では両者の差は認められなかった.
    2. 花柱及び子房中の可溶性タンパク質含量は蕾の発育に伴って著しく増加したが, 組織内の濃度としてはほぼ一定であった.
    3. 等電点電気泳動によって, 花柱の発育に伴って合成される2本のタンパクバンドが険出できた. それらの等電点はそれぞれ6.0と6.1であり, ともに糖タンパクであった. また, この2本のタンパクバンドは他の組織 (子房, がく, 花梗, 葯, 雄ずい, 花弁) 中では認められなかった. 子房のタンパク質の質的な差は, どの発育ステージにおいても認められなかった.
    4. SDS電気泳動法によっても, 花柱の発育に伴って増加する2本のタンパクバンドが検出された. それらの分子量はそれぞれ5.2×104と5.8×104であった. 前者は子房, 花弁中にも存在したが, 後者は他の組織では量的にそれほど存在しなかった. また, 子房のタンパク質については, 各ステージでの差は認められなかった.
    本実験で検出されたタンパクバンドは, 花柱が強い不和合性を示すようになる時期に花柱内で増加しており, また, それらのバンドの一部は花柱にのみ特異的に存在する糖タンパクであり, ニホンナシの不和合反応と関係があるものと推察された.
  • 岩崎 直人, 大垣 智昭, 岩政 正男, 松島 二良, 石畑 清武
    1986 年 55 巻 2 号 p. 153-168
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    わが国のカンキツ生産各地における気象要素, すなわち温度, 降水量, 日照, 日射と主要な中晩生カンキツの果実品質値とを調査もしくは収集し, その間の回帰並びに重回帰解析を行うことによって, 良好な品質の果実生産地の気象要素の範囲を知ろうとした.
    温度は果実品質変異に最も影響するが, なかでもクエン酸含量, 甘味比, 果汁pH, 果皮厚, 果肉率, 果形指数, 果重が変異し, 温度に関する測定項目としては, 年及び4~11月の平均温度, 有効積算温度の影響が強い.
    雨もまた, 果実品質に有意な影響を与えることを見出したが, とくにクエン酸に, 果実発育, 成熟の時期別の降水強度によって相矛盾した結果が現れる.
    果実品質中,果汁の Brix はクエン酸や甘味比ほど気象要素に感応しない.
    各果実品質項目を従属変数として各気象要素を独立変数とする重回帰は5式得られた. また, 得られた単回帰式と重回帰式から, 良好な品質の各中晩生カンキツ果実の得られる気象要素の範囲を提示した.
    4大学連絡調査結果 (1981~1983) から, 月平均温度, 月日照時数及び月日射量との間に高い相関があり, 回帰関係が成立する. 光合成能と日射量との関係から考えて, 有効積算温度と同様に有効積算日射量による適地判定が考慮されなければならない.
  • 加藤 忠司, 山県 真人, 塚原 貞雄
    1986 年 55 巻 2 号 p. 169-173
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    アルギニン代謝に関係するグアニジノ化合物について, リンゴ, モモ, ビワ及びカキの5月上旬における1年枝及び新梢に含まれる種類及び量を調べた. ミカンについては各器官の3月から7月にかけての, また種子及び種子発芽後3週間にかけての消長を調べた. 調べたすべての果樹よりGSA, CT, GAA, AARG, GPA, GBA, ARG, GBAD, G及びMGの存在が確認された. しかしCTN, HARG及びAGMは確認できなかった. これらの他に20種以上の未確認グアニジノ化合物が検出された. ミカンの各器官及び幼植物におけるGBAD, GBA, GAA, AARG, CT, G及び多くの未確認グアニジノ化合物の消長はARGのそれに類似した. これらの結果は, ARGの代謝経路の中にGBAD, GBA, GABAを経由する経路が果樹に存在することを示唆すると同時に, 多くのグアニジノ化合物を含んだ他のARG代謝系の存在をも示唆する.
  • 山本 洋子, 石橋 寛己
    1986 年 55 巻 2 号 p. 174-180
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    早掘りした苗木の質についての調査を目的とし, 9月中旬より半月ごとに, ナシ‘幸水’, クリ‘筑波’, カキ‘富有’の1年生苗木を摘葉•掘り取り, 圃場 (火山灰土壌) に植え付け, 翌春の活着及び生育について調査を行った.
    1. 3年間を通じて, ナシとクリ苗木は11月1日以降の掘り取り苗木の健全率が高かった. カキは10月15日以降の掘り取り苗木の健全率が高かった.
    2. ナシ苗木の主枝総伸長量は, 10月15日以降では掘り取り時期が遅いほど生育はよかったが, 3年間の平均値に有意差は認められなかった. クリ苗木及びカキ苗木においても同様の傾向であった.
    3. 新根発生量は, ナシ及びクリとも11月1日と標準区 (ナシ: 11月9日, クリ: 11月13日) の苗木は, それ以前の早期掘り取り苗木よりも勝っていた.
    4. ナシ苗木の地上部及び地下部の糖類の含量は大きな変動は認められず, でんぷん含量は地上部, 地下部とも11月2日まで増加し, それ以後はやや減少した.
    5. ナシ, クリ, カキ苗木の掘り取り時期は, 11月1日以降がよいと思われる.
  • 金浜 耕基, 斎藤 隆
    1986 年 55 巻 2 号 p. 181-186
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    キュウリの主茎上における維管束の配列と雌花の花柄の維管束の分裂様式を調べた.
    1. 主茎の維管束配列に左右性が認められた.
    2. 節間の維管束は, 周辺部 (皮層) に5本, 内側(髄) に4本観察された. 周辺部の維管束は内側の維管束に比べて細かった. 節間ではこれらの維管束の相互の連絡がみられなかった.
    3. 節では中央部のリング状の維管束Oを経由してすべての維管束が連絡していた.
    4. 葉柄の維管束は, 主として, 下位方向にある節間の維管束と直接連絡し, 更にその下位の節間を経由して, 2節下位の節で維管束Oに連絡していた. 直上位の節間に直線的に連絡する維管束は少なかった.
    5. 節では, 巻きひげ, 側枝と雌花第1番花, 第2番花の基部の維管束が一本に融合して, 節の維管束Oと連絡していた.
    6. これらの結果から, キュウリの光合生産物の転流は次のように行われるものと考えられた. 光合成産物はソース葉から主として下位方向, 特に直下の節間と2節下位の節間に多く転流した後, 各方向に分配される. 葉の直上の節間への直接の分配はそれほど多くない.
    7. 花柄の維管束分裂様式に左右性と規則的な片寄りが認められた.
    8. 花柄基部に5本, 花柄頂部に10本の維管束が観察された. 5本から10本への維管束分裂様式に五つの型が観察されたが, 分裂しない維管束1本, 2本に分裂する維管束3本, 3本に分裂する維管束1本で構成される花柄が最も多かった.
    9. 分裂しない維管束は茎に近い側, 3本に分裂する維管束は茎と反対側に配列する花柄が多かった.
    10. 以上の結果, キュウリの雌花の子房ないし果実の曲がる方向は主茎における維管束配列や花柄の維管束分裂様式の片寄りと密接に関係していると考えられた.
  • 橘 昌司
    1986 年 55 巻 2 号 p. 187-193
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    2葉齢のキュウリ (品種‘四葉’と‘久留米落合H型’) とクロダネカボチャを根温12, 15, 18, 25°Cで10日間水耕栽培して, 根の脂質含有率とその脂肪酸組成に及ぼす根温の影響を調べた. 全脂質及び脂質-P含有率はキュウリでは15°C以下, クロダネカボチャでは12°Cで著しく増大したが, すべての根温でクロダネカボチャが最も高かった. また,‘久留米落合H型’キュウリは12°Cにおいて‘四葉’キュウリより含有率が高かった. 脂肪酸組成についてみると, クロダネカボチャの根はリノレン酸の割合が高く, かつ根温の低下につれてこの割合は直線的に増大し, その結果脂肪酸の不飽和度は低根温ほど高くなった. これに対し, キュウリ2品種の根のリノレン酸の割合は15°Cで高くなったが, 12°Cでは減少し, 不飽和度も15°Cで最も高かった. 15°Cでは‘久留米落合H型’の方が‘四葉’より不飽和度が高かったが, 12°Cでは両品種共に同じ低い値に低下した.
  • 矢野 昌充, 西條 了康, 太田 保夫
    1986 年 55 巻 2 号 p. 194-198
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    カットキャベツの最も重要な品質劣化要因である褐変を防止する効果的な方法を明らかにするため, 褐変の品種間差及び褐変とエチレン生成•アリルイソチオシアネート (AITC) 含量との関係について検討した.
    1. カットキャベツの褐変, エチレン生成量, AITC 含量には品種間差があり,‘銀力’•‘四季穫’の2品種は切断24時間後の褐変が少なく (ΔE(Lab) 4以下), エチレン生成量は少なく (0.9nl•g-1•h-1以下), AITC含量は多かった (3mg•100g-1 F.W. 以上). 一方, ‘秋蒔中早生2号’•‘新A号’•‘秋徳’•‘デリシャス’•‘越のひかり’•‘新夏秋’•‘寒穫1号’•‘秋暉’の8品種は褐変が著しく (ΔE(Lab) 9以上), エチレン生成量は多く (2.3nl•g-1•h-1 以上), AITC含量は少なかった (1.2mg•100g-1 F.W. 以下).
    2. 外部から与えたAITC (キャベツ100gに対し2mg) はカットキャベツの褐変, エチレン生成, 呼吸を抑制した.
    3. 褐変•エチレン生成•呼吸に対する抑制作用は, AITC以外のイソチオシアネート類にもほぼ同様に認められたが, シクロヘキシルイソチオシアネートは褐変抑制作用を示さなかった.
  • 細木 高志, 寺林 敏, 浅平 端
    1986 年 55 巻 2 号 p. 199-206
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    春咲きグラジオラス主要5系統から各1品種を選び, 開花に及ぼす温度, 日長, 遮光の影響, 花芽の分化•発達に及ぼす球茎の低温処理の影響, 球茎の休眠打破に及ぼす温度の影響, 耐寒性及び耐乾性の違いを調べ, 夏咲きグラジオラスと生態的にどのような関係にあるか考察した. 供試品種は, Herald 系の‘Comet’, Tubergenii 系の‘Charm’, Ramosus 系の‘Robinetta’, Colvillei 系の‘Albus’, Nanus 系と Herald 系の雑種‘Elvira’及び夏咲きグラジオラス‘Traveler’を用いた.
    1. 開花に及ぼす温度の影響をみると,‘Comet’及び夏咲き品種‘Traveler’は, 20°Cより30-25°C (昼一夜) で生育させた方が早く開花した.‘Charm’は20°Cの方が早く開花し,‘Robinetta’や‘Albus’では, 30-25°Cで全く開花しなかった.
    2. 開花に及ぼす日長の影響は少なかった. しかし, ‘Elvira’は長日より短日の方でやや早く開花したが, 他の品種では長日でわずかに早く開花した.
    3. 開花に及ぼす遮光の影響をみると, ‘Comet’が遮光に最も弱く, 50%遮光ですべてブラスチングになった.‘Elvira’も遮光に弱く,‘Charm’が中間で,‘Robinetta’は最も強く75%遮光でも開花率100%となり小花数の減少もなかった.
    4. 球茎の低温処理により‘Charm’,‘Robinetta’, ‘Albus’の花芽の分化•発達が促進されたが,‘Comet’や‘Elvira’では低温の効果はほとんどなかった.
    5. 球茎の休眠打破には5品種とも高温貯蔵 (30°C) の方が低温貯蔵 (5°C) より効果があった.
    6. 耐寒性は‘Robinetta’が最も強く,‘Comet’, ‘Albus’,‘Charm’が中程度で,‘Elvira’が最も弱かった.
    7. 耐乾性は‘Robinetta’が最も強く,‘Charm’, ‘Albus’が中程度で,‘Comet’と‘Elvira’が最も弱かった.
    8. 以上の結果から, 一群にまとめられていた春咲きグラジオラスは, 典型的な秋植え春咲き性を示す品種 ‘Albus’や‘Robinetta’から, 中間的な品種‘Charm’, さらに夏咲き種の性質を示す品種‘Comet’や‘Elvira’まで混在していることがわかった. また, それらの特性は品種の親となった野生種の生態的特性を反映していた.
  • II. 染色体数によるハルサザンカ品種群のグルーピングとそれら品種群の類縁関係について
    田中 孝幸, 箱田 直紀, 上本 俊平
    1986 年 55 巻 2 号 p. 207-214
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    この研究では, ハルサザンカを‘凱旋’型4倍体品種群, 3倍体品種群,‘笑顔’型4倍体品種群及び5倍体品種群に分類し, それぞれ11,35,7及び7品種が含まれていることを見い出した. さらに, 各品種群の起源を次のように推定した. 1)‘凱旋’型4倍体品種群はサザンカとヤブツバキとの一次雑種である. 2) 3倍体及び5倍体品種群は‘凱旋’型品種群にヤブツバキ及びサザンカがそれぞれ戻し交雑して生じたものである. 3)‘笑顔’型4倍体品種群は3倍体品種群に再度ヤブツバキが戻し交雑して生じたものである.
  • 大久保 敬, 上本 俊平
    1986 年 55 巻 2 号 p. 215-220
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    明及び暗黒条件下で生育させたチューリップ花茎の最下節間及び上位節間における内生ジベレリンの変化を調べた. 暗黒条件により伸長が促進される最下節間において極性が強い free 型ジベレリンの増加がみられ, その bound 型ジベレリンは減少した. 一方, 明条件下においては最上節間の伸長と極性が弱い free 型ジベレリンの増加とは平行的関係にあり, 弱極性の bound 型ジベレリンは減少した. これらのことから, チューリップ花茎の下位節間及び上位節間の伸長生長を制御しているジベレリンはその種類が異なること, 並びに光条件に依存するそれらジベレリンの free 型と bound 型の相互転換機構が存在することが示唆された.
  • 吾妻 浅男, 犬伏 貞明
    1986 年 55 巻 2 号 p. 221-227
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    スターチス•シヌアータの種子低温処理による超促成栽培の技術体系を確立するために, まず自然条件下で種子低温処理苗の脱春化が起こる時期を調べた. 次に, 種子低温処理した幼苗を脱春化を回避する温度条件に保った冷房ハウス (昼温27°C±2°C, 夜温17°C±2°C) で育苗し, 高温を受けるときの苗齢と脱春化との関係を検討した.
    1. 催芽種子を2~3°Cで30日間低温処理したのち, 幼苗を戸外の自然条件下で育苗したところ, 9月11日より早く低温処理を終えた株は高温の影響を強く受け, 種子春化による抽だい, 開花促進効果が低下あるいは完全に消失し, 脱春化の現象が認められた.
    2. 種子低温処理後の幼苗を冷房ハウス内の涼温条件下で育苗すると, 苗齢が進むにしたがって春化の効果が安定し, 展開葉が2~3枚以上に生長した苗は, 9月1日以降に自然の高温条件下に移しても脱春化は起こらなかった. さらに, 展開葉が8~10枚以上に生長した苗は, 8月下旬以降に自然の高温条件下に移しても脱春化は起こらなかった. これらの株は抽だい, 開花が著しく早まり, 1月までの早期の切り花本数が著しく増加した.
    3. 種子低温処理後の幼苗を脱春化が起こらない温度条件で育苗することによって, 低温処理時期を早めることができた. 低温処理後の幼苗を高冷地あるいは冷房ハウスで育苗して脱春化を回避し, これらの株を8月下旬~9月上旬の早期に定植すると10月から切り花出荷することができた. この栽培法と現在行われている抑制栽培を組み合わせることによって, わが国でのスターチス•シヌアータの周年栽培が可能になるものと思われる.
  • 平 智, 杉浦 明, 苫名 孝
    1986 年 55 巻 2 号 p. 228-234
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    pollination variant の甘ガキ (PVNA) 果実が樹上で自然に脱渋するのに対して渋ガキ (pollination variant (PVA) と pollination constant (PCA) の両者を含む) 果実が脱渋しない主な原因は, 果実発育中に種子から発生してくるエタノール等の揮発性物質の量の多少が大きくかかわっていると考えられる. 本研究では, 種子の揮発性物質, とくにエタノール生成能の差異が何によって左右されているかを検討するために若干の調査を行った. 結果の概要は次のとおりである.
    1. 果実の発育に伴う種子からのエタノール発生は, カキ種子の本来の特性に加えて, かなり嫌気的な果実内ガス条件がその誘因の1つになっているものと思われた.
    2. 果実よりとり出した種子を実験的に設定した種々のガス環境条件においたときのエタノール蓄積の様相及び種子の発芽に伴うエタノール発生の様相から, 概してPVNA品種の種子の方がPCA品種の種子よりエタノールを発生しやすいと考えられた.
    3. 以上のことより, 種子のエタノール発生量の多少は, 主としてエタノール生成のしやすさの程度によっており, このことが種皮のエタノール透過性とあいまって, カキ果実 (PVNA, PVA, PCA) の脱渋性に反映しているものと推察された.
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