園芸学会雑誌
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57 巻, 2 号
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  • 鳥潟 博高, 小林 喜男, 菅沼 広美
    1988 年 57 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    愛知県郷東町名古屋大学附属農場 (北緯35°, 年平均気温14.7°) で, ペカン5品種サクセスネ (Succes), ネリス (Nelies), シュライ (Schley), スチュアート(Stuart), カーチス (Curtis) を栽培し, 開花, 結実を調査し下の結果を得た.
    1) 1ペカンの雄花は2年生枝に直接腋生し, 雌花は, 今年生新梢に頂生することを示した.上記5品種の毎年の開花期は5月下旬~6月上旬であり, 成熟期は11月であって, 雌果の成熟には154~182日を要し, 同地の無霜期間中に成熟することを明らかにした.
    2) 開花調査の結果, サクセスは毎年開花が早く雌雄同熟か雄花先熟であった. ネリス, シュライ, スチュアート, カーチスの4品種は開花がやや遅く, 雌雄同熟か雌花先熟であった. 受粉, 結実調査の結果サクセス, スチュアート及びネリスは自家結実性のあることを示したが自然状態で充分な受粉が行なわれるか疑問であった.
    また, 日本の山野には Carya 属植物がないので, 主要品種の雌花の recipient stage に花粉の shedding が行なわれる様な受粉樹の植栽がなければ結実が望めないことを指摘した.
    3) 3ペカン5品種の100粒重はネリスが最も重く約600g, 次いでサクセス, シュライ, スチュアートで580~595g, ヵーチスは290gで最も軽量であった. 可食部率はネリス39%で最も小さく, シュライ55%で最も大きかった.
  • 岸本 修, 琴野 富美子, 寺沢 正, 藤掛 昭広
    1988 年 57 巻 2 号 p. 152-158
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    栃木県のナシ栽培面積における60%以上が防ひょう,防虫, 防鳥を兼ねた目的で白色のラッセルネットを園全面に被覆している. 本研究は, 寒冷しゃを利用した30および70%遮光実験区を設定して果実生産に関連した諸項目への影響を比較検討した.
    1. 被覆用の網の実用化試験における白色寒冷しゃとラッセルネットの遮光率は, 30と20%内外であった. 相対遮光率の算出は, 1時間当たり20cal/cm2以上の日射量のあった時間帯を基におこなった.
    2. 1樹3本の主枝をそれぞれの区として毎年3本ずつ供試して5年間実施した. 遮光率が高いほど, 着果層による透過光量の減衰の幅は少なかった.
    3. 遮光の影響は, 収穫期, 果実の糖度, 単位葉面積当りの乾物重に出やすかった. しかし30%遮光区では乾物重の1部を除き, 無遮光対照区との間に有意な差は認められなかった.
    1. 1樹を3分割しての試験区のためか, 収量, 平均果重, 平均種子数, 1枚当りの葉面積などに及ぼす影響は明らかでなかった.
    5. 以上の結果より, 防鳥網の遮光率が30%までは許容されるともいえる.
  • 真田 哲朗, 西田 光夫, 池田 富喜夫
    1988 年 57 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ニホンナシの主要栽培品種である‘二十世紀’はナシ黒斑病に罹病性であり, その防除には多大な労力が払われている. 1962年, ガンマーフィールドに‘二十世紀’を定植し. 緩照射を続け, 1981年に無病徴の1枝(γ-1-1) を選抜した. このγ-1-1の耐病性の程度を調べるため, 葉および果実に対する病原菌の胞子および毒素(AK-毒素I)の接種試験を行った.
    各葉位に対する胞子接種で, 耐病性品種である‘長十郎’は若い第2葉で20%に病徴がみられたが, 葉齢が進むと病徴は認められなくなった. 罹病性品種の‘二十世紀’では第2葉から第5葉まで100%と高い病徴の発現を示した. これに対して, γ-1-1では第2葉で80%, 第3葉で17%に病徴を示したが, 第4葉以下では病徴が認められなかった. また, 果実に対する胞子接種で, 全生育期間を通して‘二十世紀’には明らかな病徴が認められたが, ‘長十郎’では全く病徴は認められなかった. これに対して, γ-1-1は幼果に黒斑病徴とは異なる淡褐色斑を生ずるが, 接種時期が遅れるに伴って, その色調はさらに淡くなり, 淡褐色斑の発現頻度も低下した. 葉および果実に対するAK-毒素I処理を行ったが, 胞子接種とほぼ同様の結果が得られ, γ-1-1は中位の耐病性を示した.
    ‘二十世紀’はリンゴの病気である斑点落葉病にも罹病性であると報告されており, この病原菌の胞子および毒素 (アルタナリオライド) の接種試験を行った. ‘二十世紀’, γ-1-1ともに罹病性を示すが, その程度は低く, 栽培上支障はないと思われる.
    このように, γ-1-1は原品種の‘二十世紀’とは明らかに異なり, 黒斑病に耐病性傾向を示した. しかし, 耐病性品種の‘長十郎’に比べて耐病性の程度はやや弱く,これはγ-1-1が周縁キメラであることに帰因していると推察される. 今後, γ-1-1が周縁キメラであるか否かの確認とほ場条件下での耐病性の程度を検討する必要がある.
  • 寿松木 章, 岩永 秀人, 村上 ゆり子, 間苧谷 徹
    1988 年 57 巻 2 号 p. 167-172
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    カキ果実の生理落果と内生エチレンとの因果関係を明らかにするため, 第一次落果の終了した満開後3~4週間の果実を対象に種々の処理を行い, それらの果実からのエチレン発生量の推移と落果との関係を調査し, 以下の結果を得た.
    1. 土壌乾燥 (ポット•‘松本早生富有’) 及び遮光処理 (圃場•‘平核無’) 樹の果実は, 落果の0.5~1日前から急激にエチレン発生量が多くなり, 落果直前の発生量は150~300nl/果/0.5hに達した.
    2. ‘松本早生富有’にACCを1回散布した結果, エチレン発生量はACC濃度と比例的に増加し, 特に5,000ppm処理では無処理に比べて50~150倍も増加したが,いずれの濃度でも落果しなかった. しかし, 5,000ppmのACCを5回散布すると落果したが, 1. で得られた落果前の条件とは異なるように思えた.
    3. AVG散布果のエチレン発生量は無散布果のそれより低かったが, 落果率には処理間差がなく, エチレン生成を抑制しても離層形成は進んでいることを示した.
    4. 果径肥大を連続的に測定した結果, 正常果は日変化をしながら順調に肥大したが, 落果する果実は落果の5~6日前から肥大量は著しく減少した. 従って, 落果の原因はその頃に生じているものと思われる.
    5. 以上の結果から, 第一次落果終了後の果実の生理落果においては, 内生エチレンが落果の原因とは考え難い.
  • 山田 寿, 浜本 清, 杉浦 明, 苫名 孝
    1988 年 57 巻 2 号 p. 173-177
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    リンゴ2品種 (‘ゴールデン•デリシャス’, ‘ふじ’)の樹上において成熟期に果実周辺部の温度を制御し, 果実の温度環境が肥大生長や成熟に及ぼす影響を調査した.
    1. 果実重は‘ゴールデン•デリシャス’では21°C区でやや優れる傾向が見られたが, ‘ふじ’では果実温の影響は明らかでなかった.
    2. 果形指数 (縦径/横径) は両品種とも最も高い温度区で最も大きかった.
    3. 全糖含量は‘ゴールデン•デリシャス’では処理温度が高いほど高く, ‘ふじ’では24°C区, 10°C区, 17°C区の順に高い傾向が認められた.
    4. 両品種とも処理温度が低いほど全糖中に占める果糖とブドウ糖の割合が低く, ショ糖の割合が高くなる傾向が認められたのに対して, ソルビトールの割合にはほとんど差が認められなかった.
    5. 両品種ともリンゴ酸含量は処理温度が高いほど低くなった.
    6. ‘ふじ’の果皮中のアントシアニン含量は10°C区, 17°C区, 24°C区の順に低温区ほど高くなった.
    7. 以上の結果から, リンゴ果実の肥大生長や成熟に対しては果実そのものの温度環境が直接的に作用する面のあることが示唆された.
  • 苫名 孝, 山田 寿
    1988 年 57 巻 2 号 p. 178-183
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    リンゴの成熟果における糖組成の産地間差異に関係する要因についての知見を深めるために, 温度条件を大きく異にする栽培地における成熟期の糖組成の変化を経時的に調査した.
    1. 未熟期から調査を始めた高槻の‘ゴールデン•デリシャス’と‘ふじ’では, 8月末あるいは9月上旬ごろからショ糖の割合が急増したのに対して, 果糖とブドウ糖の割合が減少した. 一方, ‘紅玉’ではこのような代謝の転換期は明らかでなかった.
    2. 果糖の割合は‘紅玉’と‘ゴールデン•デリシャス’ではほとんどの産地で成熟の進行に伴い減少したが, 晩生の‘ふじ’では産地間で傾向が異なった. また, いずれの品種とも成熟期の果糖の割合にはあまり大きな産地間差は認められなかった.
    3. 成熟期のブドウ糖の割合はいずれの品種とも一定もしくはやや減少する傾向が認められ, また冷涼な産地ほど低く推移した.
    4. ショ糖の割合は‘紅玉’と‘ゴールデン•デリシ栽培地の異なるリンゴ果実における成熟期の糖組成の変化 183ャス’ではほとんどの産地で成熟の進行に伴って急増したのに対して, 晩生の‘ふじ’では産地間で傾向が異なった. また, いずれの品種とも成熟期のショ糖の割合は冷涼な産地ほど高く推移した.
    5. ソルビトールの割合はいずれの品種とも低く, 産地間差もほとんど認められなかった.
    6. 以上の結果から, リンゴ果実における糖組成の変化の様相には品種間及び産地間で若干の相違が見られるものの, 概して冷涼な産地ほど成熟期のブドウ糖の割合が低く, ショ糖の割合が高く推移することが明らかとなった.
  • 福元 将志, 青葉 幸二, 吉岡 博人, 長井 晃四郎
    1988 年 57 巻 2 号 p. 184-190
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    リンゴ樹を水耕栽培することによって人為的にビターピットを発生させた(5). ‘ふじ’のビターピット発生程度は, 果肉中のカルシウム濃度の減少と密接に関係していた.
    リンゴ果実のミクロゾーム画分にはバナジン酸ナトリウムで阻害され, 硝酸カリウムで阻害されない (K++Mg2+)-ATPase が存在した. また. 蛍光物質であるキナクリンを用いてプロトンの輸送活性を調べたところ,本ミクロゾーム画分に ATPase と同様の性質を持ったプロトン輸送活性が存在した. 即ち, リンゴ果実には原形質膜に由来するH+-ATPase が存在すると考えられた.
    ビターピット発生の重症果では, バナデート感受性ATPase 並びにプロトン輸送活性の著しい低下が認められた. このことから, ビターピットの発生する果実の原形質膜では, 正常な物質輸送を低下させるような変化を生じていることが推察された.
  • とくにアントシアニン生成とPAL活性, エチレン生成との関連について
    久保 康隆, 平 智, 石尾 慎史, 杉浦 明, 苫名 孝
    1988 年 57 巻 2 号 p. 191-199
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    袋かけと関連して, リンゴ4品種 (‘ふじ’, ‘紅玉’,‘スターキング•デリシァス (SD)’‘ゴールデン•デリシァス (GD)’)の果皮のアントシアニン含量, 総フェノール含量, PAL活性, 及び果実のエチレン排出量と果実内エチレン濃度を経時的に調査した.
    PAL活性は, いずれの品種でも幼果期に高く, その後一旦低下した後, 成熟期に再び上昇した. その再上昇の時期はそれぞれの品種のアントシアニン生成の開始期及びエチレンの発生期 (climacteric rise) にほぼ一致した. 成熟期のPAL活性は, アントシアニン生成の多い‘紅玉’や‘SD’で高かったが, ほとんどアントシアニン生成のみられない‘GD’でもかなり高かった.
    袋かけとその後の除袋により, 赤色品種では一時的に良好な着色がみられたが, 最終的なアントシアニン含量は無袋果実と変わらなかった. 除袋時に紫外線除去フィルム袋にかけかえると, 赤色品種のアントシアニン生成は顕著に抑制された.果実のエチレン濃度と生成量は, 個体間で大きく変化したが, 袋かけなどによる処理間では, 差がみられなかった.
    PAL活性は, ‘SD’では有袋区と紫外線除去区で抑制され, アントシアニン生成量との間に平行関係がみられた. しかし, 他の品種では有袋区でもかなりの活性がみられ, 処理区間によるで一貫した傾向は認められなかった.
    以上の結果から, リンゴ果実のアントシアニン生成にPAL活性の上昇は必要条件ではあるが, 十分条件とは成り得ないように思われた.
  • 山岸 博, 西尾 剛, 高柳 謙治
    1988 年 57 巻 2 号 p. 200-205
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ハクサイ品種‘野崎2号’の葉肉プロトプラストについて, 培養条件及び茎葉の再分化条件とりわけ培地中の植物ホルモンの効果について検討した.
    1) プロトプラストの初期分裂にはNAAを5mg/l,又は2.4-Dを2.5~5mg/lとし, カイネチンを0.5~1mg/lとした1/2濃度のMS培地が適しており, 2,4-Dの方がNAAより細胞分裂に効果的であった.
    2) プロトプラストからのコロニー形成には2,4-Dを0.5mg/l, カイネチンを0.5~1mg/lとした培地が適し, プロトプラストの初期分裂とその後のコロニー形成では適するオーキシン濃度が異なることが示唆された.
    3) コロニーからのカルス形成には2,4-Dを1~2mg/lとし, 2,4-Dとカイネチンの比を2:1とした培地が適していた. またカルス化培地に1/2MS培地を用いるより通常のMS培地を用いる方が, カルスの増殖に効果的であった.
    4) カルスからの茎葉再分化にはゼアチンが効果的であり, ゼアチンを1mg/lとしたMS培地で移植後1か月以内に29%の茎葉再分化率が得られた.
    以上より, ハクサイの葉肉プロトプラストの培養において, 初期細胞分裂, コロニー形成, カルス化及び茎葉再分化のそれぞれについて適当な植物ホルモンの濃度が明らかとなった.
  • (1) ゴマ症発生中の形態及び組織化学的観察
    松本 美枝子
    1988 年 57 巻 2 号 p. 206-214
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    富山県等においてハクサイの主脈や葉脈に多数のゴマ状の黒色斑点の発生が認められた. この症状はゴマ症と呼ばれ, 発生の激しい場合は市場価格が著しく低下する. しかしゴマ症発生とその防止に関する報告は少ない.
    本報告ではまずハクサイ生育中のゴマ症発生の特徴を調査し, さらに発生部位とその周辺を形態学及び組織化学的に観察した.
    1. ‘ひばり’や‘耐病60日’に認められるゴマ症の発生は, その現象から2タイプに分けられた. タイプ1は未成葉で発生し, 初期生育が異常促進されることと密接な関係があった. タイプ2は成葉で発生し, 結球重に対する外葉重の割合の低下が関係していた.
    2. 形態学的には, 斑点発生に先だち, まず細胞内顆粒の肥大が認められ, その後細胞壁が褐変した. この細胞壁の褐変は, 細胞内顆粒や核の肥大と共にさらに拡大し, 周辺には原形質分離細胞が認められた.
    3. 組織化学的には, 斑点発生部位にクロロゲン酸の存在とポリフェノールオキシダーゼの活性が認められ,その周辺にポリフェノールの存在とパーオキシダーゼの反応が認められた.
    4. 褐変細胞の顆粒周辺に亜硝酸の分布が認められ, 細胞内顆粒の肥大が認められる部分と一致した.
  • 金浜 耕基, 斎藤 隆
    1988 年 57 巻 2 号 p. 215-221
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    キュウリの内部形態の観察結果に基づいて, 主茎及び果実内での転流経路を, 14Cを指標にして調べた.
    1. 主茎の第7葉から転流した14C-光合成産物は,14CO2施与開始20分後に第7葉直下の節間にのみ, また直下の節間を通る9本の維管束については, 第7葉側の維管束Dにのみ認められた.
    2. 14CO2施与開始90分後及び20時間後には, すべての節間で14C-活性が認められた. この場合も20分後の場合と同じ様に, 第7葉直下の節間で最も高く, 次いで2節下位の節間, 3節下位の節間の順に高かった. 第7葉から上位の節間では下位の節間に比べて14C-活性の高まりが時間的に遅かった. その中では特に第7葉側の維管束で14C-活性が高く, 反対側の維管束で低かった.このような維管束間の14C-活性の差は14CO2施与開始後の時間の経過とともに小さくなった.
    3. 第7葉と同一節に着生した果実内での14C-活性は14CO2施与開始2時間後, 4時間後, 20時間後の場合とも, 果托部, 隔壁部, 果心部, 胎座部の第7葉側の維管束で最も高かった. それぞれの部分で14C-活性が最も高かった維管束を比較すると, 14CO2施与開始後の時間が短いほど果実の外側の部分に当たる果托部で高く, 時間が経過するほど果実の内側の部分に当たる胎座部で高かった.
  • I. 原種
    松井 鋳一郎, 中村 三夫
    1988 年 57 巻 2 号 p. 222-232
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    Cattleya とその近縁のラン科11属の種の花被組織における色素分布および花被表皮細胞の形状を調査し, 花被の表色との関係を考察した.
    1. 供試した68種は, 花弁の表皮と柵状および海綿状組織におけるカロチノイドとアントシアニンの分布の違いから9群に分類できた. 黄色花は花弁にカロチノイドがあるが, Cattleya(C.) dowianaLaelia (L.)flavaなどでは柵状•海綿状組織にのみあり, L. harpophyllaL. cinnabarina などでは表皮細胞にも含まれていた.
    赤色花には, カロチノイドおよびアントシアニン両者ともにあり, Sophronitis coccineaL. milleri ではカロチノイドが表皮および柵状•海綿状組織に, アントシアニンは表皮にのみあった. L. tenebrosa の褐色の花弁ではアントシニンは柵状海綿状組織にあった.赤紫色花はアントシアニンが表皮にのみあるか, 柵状海綿状組織にあるか, その両者にあるかによって3群に分けられた. Cattleya はこの花色の代表的な属であるが, 多くの種ではアントシアニンは柵状•海綿状組織にあった. C. intermedia var. aquiniiC. leopoldiiの花弁着色部分やスポットには表皮細胞にもあった.Laelia の濃紫赤色花は表皮および柵状•海線状組織ともにアントシアニンを含み, 淡紫赤色のものでは表皮にはなかった.
    2. 供試した種は Hunter 表色法によって3群に分けられた. 花弁にカロチノイドのみを含む, 黄色ないし橙色花は色相(b/a)が0.47以上に, カロチノイドとアントシアニンが共にある赤色花は0.47_??_b/a>-0.13に,アントシアニンのみを含むいわゆるカトレア色の紫赤色花は-0.13_??_b/a>-1.0にあった.
    カロチノイドを含む花弁では, カロチノイドが多いと明度が高くなった. アントシアニンのみを含む花弁や唇弁では, アントシアニンが多いと明度が低くなった.
    3. 花弁と唇弁の上面表皮細胞は種によって大きさおよび形に変異がみられた. 属を同じくする種ごとにみると変異は連続的であり, 小さいものは四角で, 光沢のある花にみられ, 大きいものはビロード状を示す花にみられて長三角形であった. 表皮細胞の大型化と四角形から長三角形への変化は進化の方向を示すものと思われ,C. labiata, L. purpurataBrassavola digbyana などのように鑑賞価値が高く, 花径の大きな花の表皮細胞は, それぞれの属内では最大で長三角形であった.
  • 箱田 直紀, 秋浜 友也
    1988 年 57 巻 2 号 p. 233-242
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    サザンカの園芸品種を分類する目的で, 形態的特性44形質を用いて主成分分析及びクラスター分析を行った.
    1. 主成分分析における第1主成分はサザンカ及びヤブツバキの種特性を示すと思われる諸形質と極めて相関が高く, 第2主成分は花の大きさや花弁の数など園芸的に重要な諸形質の総合特性値を示すものと考えられた.これらの結果は, 種との類縁関係及び人為的選抜に基づく変異の両面から, 品種の分類が可能であることを示している.
    2. 各品種のスコアを用いた第1主成分Z1及び第2主成分Z2を両軸とする平面座標上で, 各品種は従来から分類されてきた6群に分けられた. Z1-Z2平面上でハルサザンカ群の品種は自生サザンカとヤブツバキの中間に位置し, サザンカ群, カンツバキ群, タゴトノツキ群の各品種及びユチャは自生サザンカに比較的近縁であることが認められた.
    3. クラスター分析により広義のサザンカ品種は5群に分類された. これらの結果は従来から広く用いられてきた分類によく一致した. しかし, サザンカ群とカンツバキ群品種は器官の大きさや数など園芸的変異によって区分され, 種との類縁関係による差異は認められなかった. タゴトノツキ群の一品種‘田毎の月’はユチャに極めて近く, 他群の品種とは明らかに区別できた.
    4. 以上のことから, 長期にわたる種間, 種内交雑及び人為選抜により品種が多様化したサザンカ品種の分類には, 多変量解析法が有効な手段となると思われる.
  • テイ リージュアン, 竹能 清俊, 堀 裕
    1988 年 57 巻 2 号 p. 243-249
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    パフィオペディルム属の幾つかの種及びそれらの間の交配種を材料として, 種子発芽, プロトコームの生長及び幼苗への分化のそれぞれの過程における最適な培地及び光条件を検討した. 種子発芽及びプロトコームの生長は Norstog 培地, 暗条件下で最も優れていたが, この条件下ではすべてがプロトコームの段階にとどまり, 幼苗への分化は起こらなかった. Burgeff EG-1培地上では種子発芽率は低かったが, 発芽したものは明下で培養されれば多くが幼苗に分化した. Norstog 培地上での暗培養期間が6週間以下の場合は, 暗培養期間が短くなるほど発芽率は低く, 発芽後のプロトコームの生長も劣った. 暗培養期間が6週間より長い場合は, 発芽率に顕著な差はなかったが, プロトコームの生長は暗培養期間が長くなるほど良好であった. しかし, Norstog 培地上での培養が続く限り幼苗への分化は起こらなかった.次に, Norstog 培地, 暗条件下で培養して得た, 発生段階の異なるプロトコームを材料とし, プロトコームの幼苗への分化に最適な培養条件を検討した. プロトコームを横径が0.5~1.0mmの段階まで生長させてからBurgeff EG-1培地に移植し, 明条件下で培養したときに最も高い率で幼苗が得られた.
  • 新美 芳二, 遠藤 由紀夫, 有坂 英一
    1988 年 57 巻 2 号 p. 250-257
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    試験管内で培養したヒメサユリ子球の移植後の生育を確実に行う方法を確立するため, 150~300lx, 24±1°Cで培養したヒメサユリ子球を用いて, 移植前の処理温度と期間及び種々の濃度のGA3溶液への浸漬処理の効果について調べた.
    (i) 試験管から取り出してそのまま移植したヒメサユリ子球は出葉せず, 子球の休眠打破には8°C以下の低温処理が必要であることがわかった.
    (ii) 4°C, 12週間低温処理した子球は移植後の栽培温度(15, 20, 25°C) にほとんど影響されず, 移植20日後にはすべての子球が出葉した. しかし処理期間が10週間以下の子球では, 出葉開始及び出葉率は移植後の栽培温度の影響を受けた. これらのことから, ヒメサユリ培養子球を移植する場合は, 4°Cで12週間以上の低温処理が必要であると結論された.
    (iii) 低温処理を全くしなかった子球及び短期間の4°C低温処理した子球を種々の濃度のGA3溶液に24時間浸漬したあと移植した. 250mg/l以上のGA3単独処理は子球の出葉に効果を示したが, 低温処理とGA3処理をした子球と比べ出葉開始は大幅に遅れ, GA3単独処理は低温による休眠打破効果を完全には代替出来ないことがわかった.
    (iv) 2週間以上低温処理したあと, 250または500mg/l GA3溶液に浸漬して移植した子球の平均出葉日は, 低温処理のみの子球と比べて早まった. また, 移植12週間後の子球生体重の増加率も, 12週間低温処理のみ行った子球と比べほぼ等しいかまさっていた. 以上のことから, ヒメサユリ培養子球の休眠打破に必要な低温処理期間はGA3浸漬処理を併用することにより大幅に短縮され, 子球の生長も促進されることが明らかとなった.
  • 河原林 和一郎, 浅平 端
    1988 年 57 巻 2 号 p. 258-268
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    テッポウユリを中心に, 数種類のユリについて茎端部組織の培養を行い, 葉条や根の形成•生育におよぼす培地組成及び培養条件の影響について検討を行った.
    1. 塩類濃度 (特にNとK) の高いMSの主要塩類組成を用いると, 茎端部組織の生育が促進され, 速やかな発根と葉条基部の肥大•りん片化が認められた.
    2. 茎端部組織の生育に対する培地の好適pH範囲と培地の硬度の影響を調べた結果から, 寒天8g/lを加え, pHを5.7に調整した培地が適していることがわかった.
    3. 茎端部組織から得られる葉条の生育と球根の肥大は, NAAを0.1mg/lの濃度で培地に添加することに268 河原林和一郎•浅平 端より促進さた. また, ヤマユリ, カノコユリでは, BA
    0.1~1.0mg/lあるいはカイネチン1.0mg/lを添加すると, 茎端部組織の表面全体から多数の芽が分化し多芽体 (不定芽塊) が形成された. この不定芽塊は, 分離して移植すると培地中の生長調節物質の種類に応じて不定芽増殖や球根形成を行い, 増殖材料として利用できることがわかった.
    4. 茎端部組織から得られる葉条の生育には, 23~28°Cの培養温度が適しており, 23~24°Cでは葉の伸長が促進され, 27~28°Cでは伸長葉数が減少し, りん片の肥大が促進された.
    5. 培養中の照明については, 1,500~4,000lxの照度で十分であり, 葉の伸長も良好であった. 暗黒でもりん片の肥大は比較的良好であったが, 葉の伸長は抑制された.
    6. 茎端部組織の生長円錐体側を下にして培地に置床すると, カルスのみが形成された.
  • 雨木 若慶, 山本 幸男
    1988 年 57 巻 2 号 p. 269-272
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    テッポウユリの自家不和合性の機構を明らかにするため, 異品種またはあらかじめ受粉した雌ずいと未受粉雌ずいを接合して, 新たに与えられた花粉の花粉管伸長を調べた. 雌ずいは, 柱頭側から1.5または2.5cmのところで切断して2分し, シリコンゴム管を用いて接合した.
    接合雌ずいでは intact 雌ずいと比べて花粉管伸長は若干劣ったが, 自家不和合反応が明らかに認められた.異品種の雌ずいを接合して受粉した結果, 自家不和合反応は自家の雌ずい切片部分で表われたが, 子房側切片の影響がより強く表われた.
    あらかじめ受粉した雌ずい (子房側) と未受粉雌ずい(柱頭側)を接合し自家受粉した. 前もって他家受粉した花柱内では, 未受粉, あるいは前もって自家受粉した花柱内に比べ, 自家花粉の花粉管伸長が顕著に促進された.
    前もって行った受粉と接合操作までの時間間隔を変えて調べた結果, 前もって他家受粉した場合柱頭から子房に向かって, 花粉管を伸長させるに必要な条件が0.5cm/hの速度で作られて行くことが示された. 前もって自家受粉した花柱内では上述のような花粉管を伸長させるに必要な条件は作られなかった. また, 花粉管伸長抑制物質も作られなかった.
    以上の結果から, テッポウユリの自家不和合性は, 自家受粉の場合花粉管伸長の条件が作られないことによるものと考えた.
  • 石田 明, 糠谷 明, 重岡 廣男
    1988 年 57 巻 2 号 p. 273-278
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    培養液中のBとCa濃度が, 秋ギクの品種‘精興の花’の生育, 切り花の日持ち並びに葉縁褐変に及ぼす影響を明らかにしようとした.
    培養液のBとCa濃度を変えて, 川砂と田土の培地に施用した. 切り花の日持ちは, 培養液のB濃度が高まるにつれて低下した. B処理による日持ちの低下は, Ca濃度を高くすると抑制された. B濃度が高い場合に, 葉縁褐変の発現が早められ, その障害の程度は著しくなった. Ca濃度が高い場合, 葉縁褐変の発現がやや遅れた。葉のB含量は, 培養液のB濃度が高まるにつれて増加した. しかし, 培養液のCa濃度を高めると減少した. 葉縁褐変葉における葉縁部のB含量は1,150から1,725ppmで, 健全部に比べて著しく高かった.
  • 古在 豊樹, 岩浪 好恵
    1988 年 57 巻 2 号 p. 279-288
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    カーネーション小植物体の外植片を準備ステージ (増殖ステージ直後から順化ステージ直前まで) 期間中組織培養した. 組織培養には. 成型プラスティックで閉栓した試験管を用い, 通常の炭酸ガス濃度, 光量子束に比較して, 高炭酸ガス濃度 (培養室内1000~1500vpm),強光 (光合成有効光量子束150μmol m-2s-1) 下で培養した. 培地中のショ糖濃度が小植物体の生長に与える影響も, 上記条件下で, 検討した.
    小植物体の生長は炭酸ガス施用と強光によりかなり促進された. 培養中における小植物体の乾物重と生体重の増加は培地ショ糖濃度1%の炭酸ガス施用区が最大で,次いで, 炭酸ガス施用区の培地ショ糖濃度0%, 2%区, 炭酸ガス無施用区の培地ショ糖濃度2%, 1%, 0%の順となった. 小植物体は強光の炭酸ガス施用下では独立栄養的に生長した.
    小植物体の純光合成速度と呼吸速度, および培地の全糖と栄養塩類の減少量の算定結果にもとづいて, 各処理区における小植物体の乾物重の相違を考察した.
    組織培養苗の大量生産システムを開発するに際しての, 実験結果の意味を考察した.
  • 月 徳, 今西 英雄
    1988 年 57 巻 2 号 p. 289-294
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. ダッチアイリス品種‘ブルー•マジック’の促成栽培における開花に及ぼすエチレン処理の影響を調べた.
    2. エチレン無処理のりん茎を低温処理後ハウス (3~25°C) で促成栽培して開花をみると, 9cm球は開花率が低く, 7及び8cm球はほとんど開花しなかったのに対して, 低温処理前にりん茎をエチレン10μl/lで24時間3回くりかえして気浴処理すると, 開花率は極めて高くなり, しかも開花期がよくそろった.
    3. 10μl/lのエチレンを気浴した場合, 8cm球では3時間以上, 7cm球では12時間以上の処理で開花率が高くなり, 開花率を高めるために必要な気浴時間は大球よりも小球の方が長いことが分った. なお, 8cm球を用いて1日当り23時間の処理を9回くりかえしても害作用はみられなかった.
    4. エチレン濃度と気浴時間を組合わせて処理したところ, 0.1μl/lの濃度ではいずれの気浴時間でも開花率を高める効果がみとめられなかったが, 0.5~10,000μl/lの範囲の濃度では濃度が高いほど高い開花率を得るために必要な気浴時間が短縮された.
    5. 7, 8, 9及び10月の初めに10μl/lのエチレンで気浴時間を変えて処理し, その後の花芽分化率を調べたところ, 高い花芽分化率を得るために必要な気浴時間は9月まで処理時期が遅れるにつれ短くなった.
  • 真子 正史
    1988 年 57 巻 2 号 p. 295-303
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ハッサクのコハン症は貯蔵中の発生は少なく, 出庫後2~3日で急増した. 発生割合は年次間の差が大きく,収穫時期間では, 12月後期収穫果でその発生割合は高かった.
    コハン症はワックス処理や50°C, 5分間の温水処理によって抑制された. 出庫後の室温が高くなるほどコハン症の程度は甚しくなった.
    露地栽培の果実に比べて, ハウス栽培の果実はコハン症の発生が明らかに少なく, 出庫後の果実の呼吸量やエチレン発生量は低く経過した. ハウス栽培の果実でコハン症の発生がほとんど見られなかったことから, 両者の果実の成分, 生理, 潜伏性の病原菌の種類と密度などについて, 今後検討する必要がある.
  • 泉 秀実, 伊東 卓爾, 吉田 保治
    1988 年 57 巻 2 号 p. 304-311
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    生育中の普通ウンシュウ, 早生ウンシュウ及びハッサクにおいて, 光環境の違いによる果実の肥大, 着色度,果皮フラベド中の糖及び AsA 含量への影響を調べ, さらに糖含量と AsA 含量との関係について検討した.
    1. 果実の発育は, ウンシュウミカン及びハッサクいずれも日照量の多い樹冠外側の果実の方が, 内側に比べ果径, 果実重共大きい傾向を示した.
    2. ウンシュウミカン, ハッサク共果実の肥大の停止期に入るとともに, クロロフィルは消失し着色の促進が認められた. カロチノイド含量は, いずれの品種でも樹冠の外側の果実の方が内側の果実に比べ, 常に高かった.
    3. フラベド中の AsA 含量は, ウンシュウミカン,ハッサク共果実発育に伴って増加傾向を示したが, それぞれ肥大が停止する時期から増加が緩慢または一定となった. 樹冠の外側の果実は, 内側の果実に比べ AsA 含量は常に高く, 普通ウンシュウでは発育に伴ってその差が大きくなった.
    4. フラベド中の糖組成として, 果糖, ブドウ糖及びショ糖が検出され, ウンシュウミカン, ハッサク共果実の発育に伴って増加傾向を示した. ショ糖含量は, 肥大の停止時期から増加が緩慢または一定となり, AsA 含量の変化と類似した. 糖含量も樹冠の外側の果実の方が内側の果実に比べ, 発育期間中を通じ高い含量を示した.
    5. 普通ウンシュウを用いて, 環状はく皮, 摘葉処理及び生長調整物質の塗布処理を施し, フラベド及び果汁中の糖と AsA 含量を比較した. ショ糖含量と AsA 含量の間には高い正の相関がみられ, フラベドでは+0.82, 果汁では+0.95の相関係数が認められた.
  • 藤田 修二, 東野 哲三
    1988 年 57 巻 2 号 p. 312-318
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    低温貯蔵したハッサク果実を出庫後, その貯蔵温度を変化 (5°Cから20°C) させることにより, コハン症が高率で発生した. コハン症発現にともなう果皮化学成分の変化について, アスコルビン酸 (AsA) 及びクロロゲン酸(Chl)に着目して, 追究した.
    果皮フラベド健全部の AsA 含量はアルベド部よりも高く, 出庫後の貯蔵中にコハン症が発生するとともに著しく減少した. また, コハン症が発生した実験区のフラベド部 AsA 含量は200mg%以下であった.
    Chl はフラベド部に局在の (アルベド部の5~10倍),その含量は出庫後の貯蔵中にやや増加する傾向にあった.
    また, フラベド障害部の AsA, Chl 両成分含量は, 健全部のそれらに比べてかなり低かった.
    果汁の糖度及び AsA 含量の出庫後の貯蔵中の変化は小さかった.
    以上の結果から, コハン症の発生と果皮フラベド部のAsA 含量との間には密接な関係があり, その含量がコハン症の発生を占う1つの指標となることが明らかとなった.
  • 石井 勝, 新堀 二千男
    1988 年 57 巻 2 号 p. 319-323
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    コカブの予冷出荷に関する基礎試験として, 温度別の呼吸量 (CO2排出量) の調査を行うとともに, 温度別,部位別の数種内容成分の変化と黄化や腐敗などの外観的な品傷みとの関係を検討した. 得られた結果の概略は以下のようであった.
    1. CO2排出量は高温下ほど多く, 品温が10°C上昇することに約2倍に増加した. また, CO2排出量は収穫後の経過時間が短かいほど多い傾向があった.
    2. CO2排出量自体は28°C下で70mg/kg•h前後で特に多い品目とは言えないが, これはかぶ部と葉部とが合わさった形態での排出量であり, 葉位を含めての部位別のCO2排出量と成分や外観品質の変化との関連を検討することが必要と考えられた.
    3. 試験開始時 (収穫数時間後) のアスコルビン酸,クロロフィル, カロチン, 全糖の各含量は, 未展開葉を含む最も内側の葉区分を除き, 外側の葉区分ほど少ない傾向があり, その後の変化では温度が高いほど, また外側の葉区分ほど減少速度が速く, 外側の葉から黄化や腐敗などの品傷みが始まることとこれらの成分の減少とが関連があるように思われた.
    4. 以上の試験結果から, 傷みやすい外葉を荷造り調製時に多く除去することや収穫後できる限り早く予冷することが, 黄化や腐敗などの発生を抑制する点で重要となることが推察された.
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