5月中旬より10月下旬までの種々の圃場条件下におけるカキ'平核無の個葉の純光合成速度(Pn)の測定値を用いた重回帰分析結果,"果樹の樹形•葉群構造の季節的変化推定システムFF(山本•畠,1991)および"果樹における葉面放射の樹冠内瞬時分布推定シミュレーションモデル"(山本,1988)とを用いて,同一園地,同一樹齢(14年生)の'平核無940本の樹純光合成速度(canopy photosynthetic rate)を推定し果実生産性等との関係を解析した.
1.圃場条件下のPn測定であったため,単一要因に対するPnの分布は大きくばらついたが,光合成有効光量子束密度(PPFD)に対して飽和曲線状の分布が見られ,PPFDが1,400μmol•m
-2•sec
-1付近で約22mgCO
2•dm
-2•hr
-1の飽和値が推察された.また.Pn値は多くの気象要素.葉形暫および生体情報に対して,種々の形の曲線状に分布することが推察された.
2.Pnの重回帰分析(変数増滅法)を行ったところ,寄与率は,測定された全要因(呼吸速度を除く)とこれらのべき値を説明変数として用いた場合には約80%であり,気象要因,土壌の水ポテンシャル,時間要因およびこれらのべき値のみを用いた場合には約76%であった.また,PPFDとこのべき値のみを用いた場合でも寄与率は約64%にも達し,圃場条件下の種々の要因の影響下でもPPFDがPn値に対して支配的であった.
3.上記の重回帰式,葉量がおおよそプラトーに達する7月22日1日における葉量データおよび葉面の毎時PPFD分布データ等を用いて,40本の各樹の日中(13時間)の樹純光合成量(DTPP)および日中の平均純光合成速度(DMPn)を推定したところ,DTPPは総着葉数(TLN)の多少に密接で,約390gCO
2•tree
-1•(13hr)
-1から約1,400gCO
2•tree
-1•(13hr)-1の間に広く分布したが,DMPnは約15.5mgCO
2•dm
-2•hr
-1付近に極めて狭く分布した.DTPPは葉面積指数(LAIc)が2.3付近で大きくなり,DMPnに対しては全体に山なり状に分布し,さらに葉面の日中平均PPFD (DMPPFD)との間に負の相関関係を示した.また,DMPnはLAIcあるいは平均葉面積密度(MLAD)との間に負の相関関係を示した.したがって,DTPPがある限界を越えて大きくなると樹冠内が暗くなり,葉面積当たりとしては光合成作用が低下することが示唆された.
4.DTPPが約770gCO
2•tree
-1•(13hr)
-1以上になると2年間平均果実収量(MYF)が減少する樹が多かった.また,DTPPと2年間平均果皮色(MPC)との間に負の相関関係が認められた.一方,DMPnが約15.5mgCO
2•dm
-2•hr
-1付近で着らい数(NFB)とMYFが増大する樹が多かった.
5.果実への分配率の相対値としてMYF/DTPPの値(RDR)を算出したところ,RDRは葉量の増大および樹勢の増強に伴って低下した.また,RDRとDMPPFD,MNF,MYFおよびMPCとの間に正の相関関係が認められた.
6.3次元柱状グラフによる解析の結果,RDRの低下に加えて,日当たりの悪化あるいは葉の純光合成速度の低下あるいは過度の樹勢による不良な結実性が相乗的に作用して,果実収量の極端な減少をもたらすことが示唆された.
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