園芸学会雑誌
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62 巻, 1 号
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  • 王 近衛, 堀内 昭作, 松井 弘之
    1993 年 62 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ブドウの無核果形成機構を明らかにするため, 無核種の'モヌッカ'および'無核白'と有核品種の'キャンベル•アーリー'とを組織学的に比較検討した.
    寒天培地上での花粉の発芽率は, 'モヌッカ', '無核白'および'キャンベル•アーリー'で, それぞれ41.6,31.3および22.2%であった.
    'キャンベル•アーリー'の柱頭に無核品種の花粉を受粉したときの着果率は'モヌッカ'で61.1%, '無核白'で38.3%であり, その内の有核果率は'モヌッカ'で98,1%, '無核白'で74.5%であった.
    開花期において異常な外•内種皮, 無胚のう, 不完全あるいは退化卵は有核品種に比べて無核品種に多く認められた.
    開花15日目において, 胚乳核が分裂を開始した胚珠の率は'キャンベル•アーリー'で95.9%, 'モヌッガで47.6%, 無核白'で20.3%であった.
    無核品種の受精胚のいくつかは, 細胞分裂を開始し,無核白'では球状胚の時期に, 'モヌッカ'では心臓型胚の時期にそれぞれ停止した.
    ブドウ無核品種の無核果形成は, 開花期における胚珠と胚のうの退化による未受精と胚乳核の退化による受精卵退化と胚形成の停止によって起こるものと推定された.
  • 王 近衛, 堀内 昭作, 尾形 凡生, 松井 弘之
    1993 年 62 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ブドウの無核果形成機構を明らかにするために,無核品種の'ヒムロッド•シードレス'と有核品種の'キャンベル•アーリー'との果粒中のジベレリン(GA),インドール酢酸(IAA),アブシジン酸(ABA)含量を比較検討した.
    両品種の果粒内GA様物質の種類には違いが見出せなかったが,開花3日前から開花日にかけてLヒムロッド•シードレス'のGA様物質含量は'キャンベル•アーリー'のそれと比較して高かった.
    'ヒムロッド•シードレス'の果粒内IAA含量は開花3日前から増加し,開花3日後にピークを示した.一方,'キャンベル•アーリー'の果粒では,開花3日後に増加し始め,14日後にはピークを示した.IAA含量の最大値を示す時期は両品種問で異なっていた.両品種の果粒内ABA含量の変化の様相は,ほとんど同様であった.しかしながら,'ヒムロッド•シードレス'の果粒内ABA含量は,'キャンベル•アーリーのそれと比べて,常にやや高かった.
    開花21日後の'ヒムロッド•シードレス'の退化胚珠(退化種子)中のGA様物質含量とABA含量は,'キャンベル•アーリー'の正常種子中のそれらより低かった.
  • 中島 芳和, Slamet Susanto, 長谷川 耕二郎
    1993 年 62 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ハウス栽培のポット植えブンタン幼樹に, 1990年9月上旬から同年12月下旬まで処理期間を変えて水ストレス処理を行った. 樹の水ストレスは自然乾燥によって与え, 葉の水ポテンシャルがかん水停止後7日から13日目に, -24から-28バールに達した時点で充分にかん水した. 同年12月上旬から翌年4月上旬まで, ビニルハウスの最高温度を約25°C, 最低温度を10°Cに調節した.
    1.9月上旬から水ストレスを受けた樹では, ほとんど秋枝が発生しなかったが, 10月上旬からの樹および無処理樹では1樹当たり数本の秋枝が発生した.翌年の春枝の発生数とその長さには処理間に有意差が認められなかった.
    2.花房数, 花らい数および開花数は水ストレス処理の期間が長くなるにつれて増加した. 開花期は前年に秋枝の発生した樹よりも発生しなかった樹で早くなった. 結実率は直花で0.1~1.1%, 有葉花で4.8~6.0%であったが, それぞれ処理間に有意差を示さなかった.
    3.12月下旬の葉分析では, 水ストレスの期間が長くなるにつれて, 糖含量が増加したが, でんぷん含量は逆に滅少した. 同葉の窒素含量は無処理樹よりも水ストレス処理樹で有意的に高くなった. 12月下旬の葉のC-N率は処理間に有意差を示さなかった.
  • 福井 博一, 若山 善秋, 中村 三夫
    1993 年 62 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    西村早生'の含種子数の減少と胚のうの発育異常の発生との関係を明らかにすることを目的として,3年間にわたり胚のうの発育異常を組織学的に検討した.胚のうの発育異常には,胚のう母細胞と胚のう細胞の退化消失および複数胚のうの形成の3種類が認められた.退化消失する胚のう母細胞の発生率には年次間差異がみられ,1987年が9%,1988年が4%,1989年が1~2%の発生であった.退化消失する胚のう細胞の発生率はいずれの年でもほぼ一定で,10~13%であった.1胚珠内に形成された複数胚のうの発生は8~18%の間であり,年次間差異がみられた.開花後の受精能力からみた場合,この複数胚のうは正常な受精能力を持つ胚のうに分類できることから,種子形成の観点からは正常な胚のうといえる.したがって,洒村早生の胚のう形成期に生ずる受精能力を持たない胚のうは,胚のう母細胞あるいは胚のう細胞の退化消失によって生じ,その発生率は最も低い場合に12%前後,高い場合に22%前後であり,両者間に約10%の差が認められた.その発生率の年次変動には退化消失する胚のう母細胞の発生が大きく寄与していると考えられた.したがって,開花時にはすでに最低で1個の胚のうが種子形成能力を失っており,年によっては2個の胚のうが種子形成能力を消失していることが明らかとなった.
  • 山本 隆儀, 佐藤 吉雄, 舟生 卓磨, 石嶋 幸夫, 鈴木 計恵子
    1993 年 62 巻 1 号 p. 27-39
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    5月中旬より10月下旬までの種々の圃場条件下におけるカキ'平核無の個葉の純光合成速度(Pn)の測定値を用いた重回帰分析結果,"果樹の樹形•葉群構造の季節的変化推定システムFF(山本•畠,1991)および"果樹における葉面放射の樹冠内瞬時分布推定シミュレーションモデル"(山本,1988)とを用いて,同一園地,同一樹齢(14年生)の'平核無940本の樹純光合成速度(canopy photosynthetic rate)を推定し果実生産性等との関係を解析した.
    1.圃場条件下のPn測定であったため,単一要因に対するPnの分布は大きくばらついたが,光合成有効光量子束密度(PPFD)に対して飽和曲線状の分布が見られ,PPFDが1,400μmol•m-2•sec-1付近で約22mgCO2•dm-2•hr-1の飽和値が推察された.また.Pn値は多くの気象要素.葉形暫および生体情報に対して,種々の形の曲線状に分布することが推察された.
    2.Pnの重回帰分析(変数増滅法)を行ったところ,寄与率は,測定された全要因(呼吸速度を除く)とこれらのべき値を説明変数として用いた場合には約80%であり,気象要因,土壌の水ポテンシャル,時間要因およびこれらのべき値のみを用いた場合には約76%であった.また,PPFDとこのべき値のみを用いた場合でも寄与率は約64%にも達し,圃場条件下の種々の要因の影響下でもPPFDがPn値に対して支配的であった.
    3.上記の重回帰式,葉量がおおよそプラトーに達する7月22日1日における葉量データおよび葉面の毎時PPFD分布データ等を用いて,40本の各樹の日中(13時間)の樹純光合成量(DTPP)および日中の平均純光合成速度(DMPn)を推定したところ,DTPPは総着葉数(TLN)の多少に密接で,約390gCO2•tree-1•(13hr)-1から約1,400gCO2•tree-1•(13hr)-1の間に広く分布したが,DMPnは約15.5mgCO2•dm-2•hr-1付近に極めて狭く分布した.DTPPは葉面積指数(LAIc)が2.3付近で大きくなり,DMPnに対しては全体に山なり状に分布し,さらに葉面の日中平均PPFD (DMPPFD)との間に負の相関関係を示した.また,DMPnはLAIcあるいは平均葉面積密度(MLAD)との間に負の相関関係を示した.したがって,DTPPがある限界を越えて大きくなると樹冠内が暗くなり,葉面積当たりとしては光合成作用が低下することが示唆された.
    4.DTPPが約770gCO2•tree-1•(13hr)-1以上になると2年間平均果実収量(MYF)が減少する樹が多かった.また,DTPPと2年間平均果皮色(MPC)との間に負の相関関係が認められた.一方,DMPnが約15.5mgCO2•dm-2•hr-1付近で着らい数(NFB)とMYFが増大する樹が多かった.
    5.果実への分配率の相対値としてMYF/DTPPの値(RDR)を算出したところ,RDRは葉量の増大および樹勢の増強に伴って低下した.また,RDRとDMPPFD,MNF,MYFおよびMPCとの間に正の相関関係が認められた.
    6.3次元柱状グラフによる解析の結果,RDRの低下に加えて,日当たりの悪化あるいは葉の純光合成速度の低下あるいは過度の樹勢による不良な結実性が相乗的に作用して,果実収量の極端な減少をもたらすことが示唆された.
  • 田村 文男, 田辺 賢二, 伴野 潔, 池田 隆政
    1993 年 62 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    1.ニホンナシ'二十世紀'の切り枝を用いて高温処理,無気処理および石灰窒素(20%)塗布処理を行った.葉芽の休眠打破に対する効果は,自発休眠期における45°C,4時間処理で最も高く,一方,自発休眠打破後の45°C,4時間処理は催芽を阻害した.4年生側枝の切り枝および2年生幼木に対し,高温処理および石灰窒素塗布処理を行った.Chill unit 515での45°C,4時間処理により側枝の葉芽,えき花芽および短果枝と幼木の短果枝の休眠は打破された.石灰窒素塗布処理は明確な休眠打破効果を示さなかった.
    2.連続した低温(5°C)に0,400,800,1,200時間遭遇した切り枝を,45°Cで4時間処理した後,20°C下に置き24時間後と72時間後に葉芽中のABA含量を調査した.ABA含量は0時間および400時間での処理では低下したが,800時間および1,200時間での処理では増加した.
    3.45°Cで4時間処理する前と後の切り枝にアクチノマイシンDを注入し葉芽の休眠打破に及ぼす影響をみた.処理前の注入は高温処理の休眠打破効果を低下させたが,処理後の注入は高温処理の効果を阻害しなかった.
  • 小池 洋男, 塚原 一幸
    1993 年 62 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    日本の主要リンゴ品種である'ふじ'のわい性台木樹(マルバカイドウN1を台木としてM.26を中間台木としたものおよびM.26を台木にしたものの2種)について,その根群と生育を調査した.
    1.M.26を中間台木とした'ふじ'樹は,定植方法の相違によってT/R率が異なり,とくに浅植え樹では,根の生育が抑制されて地上部が衰弱し,T/R率が減少した.
    2.M.26を中間台木とした'ふじ'の根群は,地表直下に発生した根が地下深く位置する苗床起源のマルバカイドウN1の根に優先して伸長肥大する生育特性を示した.
    3.有効土層が50~60cmのれき質褐色低地土におけるM.26わい性中間台木樹では,地下30cmまでに根の大半が分布し,60cmまでに95%以上の根が分布する浅い根群が認められた.
    4.並木植え密植条件のM.26わい性中間台木を用いたリンゴ樹の根群は,列内の樹間方向への伸長が抑制され,根の競合の少ない列間方向に向かって拡大した根群となることが認められた.
    5.台木の長さによってM.26わい性台木樹の生育は異なり,台木長が短いと根量が多く,わい化効果の低下することが認められた.
    これらの結果から,M系のわい性台木を用いたリンゴ樹では,中間台木利用をも含めて台木長を30~40cmとし,その10~15cmを地上に露出させて定植することが望ましいと考えられる.
  • 新居 直祐
    1993 年 62 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    数種のバラ科の果樹類(モモ,スモモ,ウメ,リンゴ,ニホンナシ,ビワ)について,師管の細胞構造を光学顕微鏡ならびに透過型電子顕微鏡を使って観察した.また,カンキツ,カキ,ブドウを対照樹として用いた.その結果,バラ科の果樹類の中肋,葉柄,果柄,果肉中の維管束の師管細胞において,細胞壁が肥厚し,内部生長した特徴的な構造がみられた.いっぽう,根においては,このような構造の発達は少なかった.細胞構造の観察から師管が内部生長した細胞壁はna-creous wallとみなされ0転送細胞とは異なったものであった.ソルビトールが主要な転流糖であるバラ科の果樹類において,師管の細胞壁の内部生長が観察されたが,スクロースの形態で主として転流する対照樹ではみられなかった.
  • 近藤 悟, 弦間 洋
    1993 年 62 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    オウトウ'佐藤錦'果実を供試して,内生アブシジン酸(ABA),エチレン発生量,果実内糖,およびアントシアニン含量の変化,また果実にABAを処理し成熟や着色とのかかわりを検討した.
    1.果実内の糖含量は,生育期間を通じてグルコース含量が最も多く,次いでフルクトース,ソルビトールの順となった.全糖含量は満開後38日以降急激に増加した.また果皮中のアントシアニン含量も同様な時期に増加した.
    2.果実からのエチレン発生量は,果重(g)当たりでは満開後17日以降徐々に減少し,満開後31日から38日にかけてわずかに増加した後再び減少した.果実当たりのエチレン発生量は,満開後31日以降大きく増加した.
    3.果肉と果皮の内生ABA含量は,満開後17日には比較的に高かったが,それ以降満開後31日まで減少した.果肉中のABA含量は満開後31日以降大きく増加し,一方果皮中では満開後31日から徐々に増加し,満開後38日以降には大きく増加した.
    4.満開後36日の果実へのABA処理は,収穫時の果実内糖含量,果皮アントシアニン含量を増加させた.
    以上より,オウトウ果実の生育,成熟および着色に内生ABAの関連する可能性が示唆された.
  • 久保田 尚浩, 西山 範子, 島村 和夫
    1993 年 62 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    共台とユスラウメ台の'山陽水蜜'および共台の'清水白桃'を供試し,果実発育の第1期と第2期に側枝に環状はく皮を行い,渋味との関連でポリフェノール含量に及ぼす影響をみた.また,成熟期の早晩や核割れの有無とポリフェノール含量との関係についても調査した.環状はく皮は,ユスラウメ台'山陽水蜜'の果実重と共台'清水白桃'の糖含量を除いては,果実の成熟を促進させ,また果実重と糖含量を増加させた.いずれの品種や台木でも,環状はく皮によって果実の全フェノール含量および高分子フェノール含量が増加した.しかし,ポリフェノール含量に及ぼすはく皮時期の影響は明確でなかった.環状はく皮していないユスラウメ台の'山陽水蜜'を除いては,早く成熟した果実ほどポリフェノール含量が多く,特に環状はく皮した場合にその差が顕著であった.環状はく皮によって核割れ果の発生が促されたが,核割れ果と健全果との間にはポリフェノール含量に差がなかった.
  • 田村 文男, 田辺 賢二, 池田 隆政
    1993 年 62 巻 1 号 p. 75-91
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    実験1においてニホンナシ'二十世紀'の葉芽の休眠の深さに与える温度の影響を明らかにするために,水挿しした枝を0°, 5°, 10°, 15°および20°Cの温度に0時間から1,500時間遭遇させた.花芽については5°および15°Cに遭遇させた枝を用い検討した.また,水挿しした枝を5°および15°Cに0時間から1,500時間遭遇させ,その枝の葉芽および花芽原基のABA含量を調査した.
    実験2において水挿しした枝を5°Cの温度に0, 300, 600, 1,000時間遭遇させ,ABA 100ppmを注入した後さらに200時間5°Cに遭遇させ花芽の休眠の深さおよび花芽原基中のABA含量を調査した.
    実験1.1.5°Cの場合,葉芽で1,400時間後に,花芽で1,200時間後に自発休眠は打破された。それぞれの気温に1,500時間遭遇させた後の葉芽の催芽率は0°Cで64%,5°Cで94%,10°Cで46%,15°Cで30%,20°Cで22%であった.2.5°Cに遭遇させた枝の葉芽および花芽原基のABA含量は深い自発休眠中に急激に低下したのに対し,15°CではABAの低下は1,100時間以降にみられた.
    実験2.1.5°Cに0時間および300時間遭遇させた枝にABAを注入したところ花芽の発芽は抑制されたが,600時間および1,000時間での処理では蒸留水区との間に発芽率の明確な差はみられなかった.2.ABA 100ppmを枝に注入したところ,花芽原基中のABA含量は無処理区および蒸留水注入区の約2~3倍となった.
  • 久保田 尚浩, 高木 真吾, 工藤 正吾
    1993 年 62 巻 1 号 p. 83-88
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    モモ果実における渋味の発生要因の解明ならびにその防止策を確立するための基礎資料を得ることを目的として,渋味発生と樹勢との関係を調査した.
    同一園内に栽植されている成木の'白桃'の中から,新梢長や葉数から判断して樹勢衰弱樹および健全樹を選び,その成熟果実のポリフェノール含量を調査したところ,両者の間に大きな差はなかった.
    3本主枝の'白桃'成木において,1樹内で環状はく皮状になった主枝または成熟直前に落葉した主枝の果実は,各々の健全な主枝の果実に比べてポリフェノール含量が多く,特に環状はく皮状になった主枝で著しく多かった.
    '清水白桃'の側枝について果実発育の第1期,第2期および第3期に環状はく皮を行ったところ,第1期と第2期の処理でポリフェノール含量が増加し,またPAL活性も高まった.
    以上の結果から,モモ果実の渋味発生には,単なる老化による樹勢の衰弱よりも環状はく皮のような樹勢低下の一因となるある種のストレスの影響の方が大きく関係していると思われた.
  • 生山 厳, 小林 省蔵
    1993 年 62 巻 1 号 p. 89-93
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    単胚性二倍体のカンキツ,クレメンティン,'リー','清見'および'安芸津10号'('カラ'×ポンカン)を種子親とし,二倍体ナルト×四倍体フナドコより得た三倍体実生を花粉親として交配を行った.交配果は成熟時に収穫し,各果実より取り出した完全種子を試験に供した.
    完全種子より得た実生は大部分が二倍体で,その他異数体や一部三倍体および四倍体も認められたが,クレメンティンを種子親にしたものから2個体,'リー'を種子親にしたものから1個体の半数体が得られた.半数体の胚は,二倍体の胚と比較して大きさにほとんど差がなく,発根も正常に起こり,発根後の直根の伸びも順調であった.しかし,土に移植した後は成育は著しく劣った.これら半数体について核リボソームRNA遺伝子および葉緑体DNAの分析を行い,その起源を推定した.その結果,いずれの個体についても種子親に特異的なバンドが認められたが,花粉親に特異的なバンドは認められず,これらはいずれも種子親起源の半数体であると考えられた.
  • 宍戸 良洋, 熊倉 裕史, 堀 裕
    1993 年 62 巻 1 号 p. 95-102
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    トマトのソース•シンク関係に及ぼすソース葉やシンク葉の摘除ならびに暗黒処理の影響を明らかにしようとした.
    その結果,8葉期のトマトでは第3および4葉はそれぞれ,全シンク器官に光合成産物を分配しており,独立したソース•シンク関係を持っていることが認められた.さらに,第3葉は第8葉とは強く,第7葉とは弱いソース•シンク関係があり,第4葉では第8葉とは弱く,第7葉とは強いソース•シンク関係を持っていることが認められた.それらの関係の中で,弱い関係のシンクを摘除してもソース葉からの分配パターンはあまり変化しないが,強い関係のシンクを摘除すると大きく変化するというように,シンクの摘除は二つのタイプの反応を引き起こすことが認められた.
    1枚のソース葉以外の全てのソース葉を摘除または暗黒処理すると,残ったソース葉からの光合成産物の転流は減少した.この場合,根への分配を減少させても,将来ソースになるべき若い葉への分配を増加させるような分配パターンを示し,シンク葉を暗黒下において光合成を抑制した場合には,この分配パターンの傾向が強まることが認められた.このような反応は光合成産物の転流分配現象における劣悪な条件に対する植物体のサバイバル反応と考えられる.
  • 加納 恭卓
    1993 年 62 巻 1 号 p. 103-112
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    スイカの果実中に空洞が発生すると,その果実の商品価値は半減し栽培農家は大きな損失をこうむる.本報告では空洞の発生と果実中の細胞および細胞間隙の大きさとその数との関係について調べた.
    低節位に着果した果実では空洞体積も果重も大きかったが,NAAを処理した果実や摘葉処理をしたものでは空洞体積も果重も小さくなった.果実中の細胞総数は低節位果,NAA処理果,摘葉処理果では少なかった.低節位果では細胞総数中で大きな細胞が占める割合はNAA処理果や摘葉処理果に比べ高かった.また,低節位果ではNAA処理果や摘葉処理果のものに比べ,細胞間隙の大きさも大きく,数も多かった.高節位果では果重は上述した3区の果実のものよりも大きかったが,空洞体積は小さくなった.果実中の細胞総数は他の果実よりも多く,細胞総数中で大きな細胞の占める割合は低節位果よりも小さかった.また,低節位果より細胞間隙の大きさは小さく,数も少なかった.
    したがって,スイカ果実中の空洞発生について次のように推論することができよう.低節位果のように果実中の細胞総数が少ない場合には,果実内部の生長と果実外側部の生長との間に不均衡が生じ,果実内部で内部組織を引っ張るような力学的な歪みが発生し,空洞が発達する.しかしながら,細胞総数が少ない低節位果でもNAA処理や摘葉処理により果実の生長を抑制すれば,果実内部の生長と外側部の生長との間には不均衡は生ぜず,果実内部には力学的な歪みが生じないので空洞は発生しない.これに反して,細胞総数の多い高節位果では,たとえ果実の生長が促進されても内部の生長は外側部の生長と均衡が保てるため力学的な歪みも生じず空洞は発達しない.
  • 荒木 陽一
    1993 年 62 巻 1 号 p. 113-119
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    体内水分状態に基づいた温室トマトのかん水方法を確立するために,促成作型において葉の水ポテンシャルの個体間変位とその影響因子について調査した.
    栽植位置による葉の水ポテンシャルの変動係数は,畦内および畦間とも15~25%の範囲に分布した.葉位による葉の水ポテンシャルの変動係数は,5~20%の範囲内に分布した.小葉による葉の水ポテンシャルの変動係数はさらに小さく,4~10%の範囲に分布した.
    栽植位置による葉の水ポテンシャルの変異には,気温と風速が大きく関係していた.照度,相対湿度ならびに土壌水分の変化は,葉の水ポテンシャルの変異の原因としては小さなものであった.
    葉の水ポテンシャルをかん水開始の指標にするには,1温室内で3株測定すれば十分であった.その時の調査株は温室全体を代表するように選定し,最上位展開葉の下5葉目の葉の最も基部の小葉が水ポテンシャルの測定に適していた.
    さらに,土壌水分が一定でも葉の水ポテンシャルは日変化を示したので,測定時刻を決める必要があり,早朝の測定が適していると考えられた.
  • 荒木 陽一
    1993 年 62 巻 1 号 p. 121-128
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    結実期のトマト各器官の水分状態ならびに各器官への水移動速度と各器官の肥大•収縮との関係を,黄色土を用いて土壌水分減少過程で同時計測した.
    1.各器官間の水ポテンシャルの関係は土壌の水分状態により異なり,土壌水分が十分に存在する条件下では,朝夕は茎>葉>果実であったのに対し,日中には茎>果実>葉となった.しかし,土壌水分が極度に減少したpF2.8(-0.062MPa)以上では,終日,果実>茎>葉であった.
    2.土壌水分吸引圧がpF2.8以上では各部位における水移動速度は極端に小さかった.
    3.土壌水分吸引圧がpF2.8以上では葉と茎の水ポテンシャルが極端に低く'両者が果実の水ポテンシャルよりも低下した時点から果実の収縮が始まった.この時点で果実から茎への水の流出が始まったものと考えるが,本実験で用いたヒートパルス法ではそれをとらえることができなかった.
  • 高橋 春實, 高井 隆次, 松本 勤
    1993 年 62 巻 1 号 p. 129-134
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    寒冷地の半促成作型である低温カット栽培と露地栽培におけるイチゴ黒斑病抵抗性系統'M16-AR 1','M16-AR 2'および'M16-AR 3'の適応性について検討した.
    低温カット栽培では,低温制御期間中の低温量を'盛岡16号'で適当とされている1,400時間としたが,草丈,葉柄長,ランナー発生数などいずれの生育をみても'M16-AR'の各系統と'盛岡16号'の間に違いは認められなかった.また,収昼や果実の糖度,酸度'硬さにも有意差はなかった.
    露地栽培においても低温カット栽培と同様な結果が得られ,生育,収量および果実の硬さなどの諸形質において,'M16-AR'の各系統と'盛岡16号'に有意差は認められなかった.
    したがって,'M16-AR 1,2および3'の各系統は'盛岡16号'にかわる栽培種として低温カット栽培と露地栽培の両作型に適応性があると判断された.なお,これらの系統のうち,'M16-AR2'は新品種'アキタベリー'として種苗登録された.
  • 田附 明夫
    1993 年 62 巻 1 号 p. 135-142
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    キュウリ品種'ときわ光3号A型'の着果状態の果実を15~30°Cの一定の温度に制御した状態で果柄部を熱環状除皮または切断する処理を行い,処理後の果実の体積生長と呼吸の関係を調べた.
    熱環状除皮処理後果実体積は最大約30%まで増加した.処理後1日間の生長量はQ10=2の温度反応を示した.
    熱環状除皮と果柄部切断では処理後の果実の呼吸速度の時間変化はほぼ同様だった.処理t時間後の呼吸速度(R)はR=a•e-b•t+cによく当てはまった.定数bとcのQ10は約2だった.
    果実温度が30°Cのとき,果実の呼吸量は直線回帰によって体積と体積生長量に比例する2成分に分離できた(r=0.99**).この回帰から推定された維持呼吸速度の値はcに近かった.
    熱環状除皮後,果実の乾物重,エタノール可溶性固形物含量,エタノール不溶性固形物含量は有意には変化しなかった.果実の浸透ポテンシャルの変化は生長に伴う希釈によって説明できた.果実のヘキソース含量は処理後約15%低下した.
    以上の結果から,熱環状除皮後の果実肥大のエネルギー要求は正常に生長している果実とほぼ同じと思われた.キュウリ果実のエネルギー代謝は水の流入を伴う細胞肥大の過程と密接に関連していると思われた.
  • 鈴木 晴雄, 尾林 誠一, 山岸 順子, 稲永 忍
    1993 年 62 巻 1 号 p. 143-148
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    浸種やプライミングなどの播種前処理を行ったニンジン種子について,適温および低温下における発芽と幼根の生長を,無処理種子のそれらと比較した.
    発芽率は,無処理種子では低温下において著しく低下したが,プライミング種子では2°Cにおいてもほとんど低下せず,浸種種子でも低温下における低下がかなり緩和された.ニンジン種子においては,播種前処理中に発芽過程が進行することにより,処理後の発芽限界温度が低くなると考えられた.
    平均発芽所要日数は,低温下において,無処理種子では著しく増大し,浸種種子では増大の絶対値は無処理種子と比較してかなり小さかったが,25°Cの値に対する増大比でみると無処理種子と大差がなかった.一方,プライミング種子では増大の絶対値,増大比とも,無処理種子と比較して明らかに小さかった.ニンジン種子においては,プライミングにより,低温下でも発芽過程の進行を促進する何らかの生理的変化が誘起されることが示唆された.
    発芽所要日数の変動係数は,無処理種子と比較して,浸種種子では大きく,プライミング種子ではさらに大きかったが,発芽温度による一定の傾向は認められなかった.
    幼根の伸長速度は,無処理種子と比較して,プライミング種子では明らかに高く,浸種および催芽種子でも多少高かった.ニンジンにおいて,播種前種子処理による幼根生長の促進効果は,発芽適温下と比較して,低温下で高く現れることはなかった.
  • 鈴木 晴雄, 稲生 英夫, 山岸 順子
    1993 年 62 巻 1 号 p. 149-154
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    浸種やプライミングなどの播種前処理を行ったニンジン種子について,異なる水分ストレス条件下における発芽および幼根の生長を,無処理種子のそれらと比較した.
    発芽率は,-1.0MPaにおいて,無処理種子では明らかに低下し,浸種種子でも低下する傾向が認められたが,プライミング種子では低下が認められなかった.ニンジン種子においては,発芽率にみられる水分ストレスに対する感受性は,播種前処理中の発芽過程の進行により低くなると考えられた.
    平均発芽所要日数は,無処理および浸種種子では浸透ポテンシャルの低下に伴って増大し,その度合いは浸種種子の方が大きかった.しかしながら,プライミング種子では,平均発芽所要日数は-0.4あるいは-0.6MPaまでまったく増大しなかった.プライミング種子と浸種種子との間で認められた,発芽所要日数の水分ストレスに対する感受性の違いは,播種前処理中の種子細胞内の浸透調節に起因することが示唆された.
    発芽所要日数の変動係数には,浸透ポテンシャルの影響が認められなかったことから,発芽所要日数のばらつきは,水分条件に影響されないと考えられた.
    幼根の伸長速度は,無処理および浸種種子では-0.4MPa以下で,プライミング,催芽,およびプライミング後催芽の各種子では-0.2MPa以下で浸透ポテンシャルの低下に伴って低下し,催芽およびプライミング後催芽の両種子で低下の度合いが大きかった.幼根の生長の水分ストレスに対する感受性は,無処理種子と比較して,プライミング種子ではやや高く,催芽およびプライミング後催芽の両種子では著しく高いことが明らかになった.
  • 遠藤 元庸, 稲田 委久子, 上本 俊平
    1993 年 62 巻 1 号 p. 155-163
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    シカクマメの高緯度•寒冷地における若莢生産を目的とした栽培適応性の検討を行った.
    1.供試材料には,九州大学で選抜された日長不感応性品種の'KUS-8',5KUS-10','KUS-12'および'KUS-101'の4品種を用い,4年間にわたり本学(盛岡市,北緯39。42')研究圃場の露地およびビニールハウス内で試験栽培した.
    2.生態的特性調査(1988年)により,播種の適期は5月中•下旬と判断され,本県での栽培適応性をもつ品種として,早生種の'KUS-8'および中生種の'KUS-12'を選抜した.
    3.栽培試験(1991年)では,選抜した上記の2品種を供試し,5月21日および5月31日に播種して露地栽培により調査を行った.その結果,1)第1着花節位は,'KUS-12'が'KUS-8'に比べて低かった.2)結莢率は,花房の出現時期および系統により異なり,その率は0.9~27.1%とかなりの範囲で変異が見られた.3)若莢の収穫期間は,52-63日,若莢収量が最も多かった区は,5月21日播種区で10a当たり,'KUS-8'では1,903.5kg,'KUS-12'では1,622.8kgであった.
    4.以上から,高緯度•寒冷地におけるシカクマメの若莢生産を目的とした露地での経済的栽培が,十分に可能であるとの見通しが得られた.
  • 川合 貴雄, 飛川 光治, 藤沢 敏寛, 小野 芳郎, 石橋 英二
    1993 年 62 巻 1 号 p. 165-172
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    夏播きダイコンの赤心症発生に対するホウ砂および過リン酸石灰の抑制効果について土壌の種類別に検討した.さらに,それらの効果を水耕法によって検証するとともに肥大根のPP含量とPPO活性について調査した.
    1.褐色低地土(砂土)および中粗粒黄色土(砂壌土)では,ホウ砂施用によって赤心症の発生株率が低下し,肥大根のホウ素含有率が高まった.しかし,黒ボク土では,ホウ砂を施用しても赤心症の発生は防止できず,肥大根のホウ素含有率も高まらなかった.ところが,過リン酸石灰の施用は黒ボク土においてさえ赤心症の発生を抑制し,肥大根中のリン含有率も高まった.
    2.水耕における肥大根の内部褐変は,ホウ素欠除によって発生し,その障害程度は低液温(11。~21°C)区よりも高液温(28°~29°C)区で著しかった.しかし,肥大根のホウ素含有率は低液温区よりも高液温区の方が高く,肥大根の内部褐変は,ホウ素含有率の高低だけでは説明できないことが示唆された.
    3.水耕でホウ素を欠除させると肥大根のPPO活性は高まったが,PP含量は増加しなかった.また,ホウ素供給下でリン酸を欠除させても内部褐変はみられなかったが,ホウ素欠除下でリン酸濃度を高めると肥大根のPPO活性が低下し,内部褐変の障害程度も減少した.このことから赤心症の発生はPP含量の増加よりも,むしろPPO活性の増大に起因しているものと考えられる.
  • 窪田 聡, 米田 和夫
    1993 年 62 巻 1 号 p. 173-179
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    本実験はファレノプシスの生育•開花と栄養状態に関する基礎資料を得るために,生育•開花ならびに栄養状態に及ぼす光強度の影響について検討したものである.
    光強度の低下により,葉と根の生育は抑制され,乾物生産量は減少した.光強度の低下により,還元糖含有率,窒素吸収量は低下したが,可溶性窒素含有率は増大した.
    弱光下では,窒素の吸収と代謝に必要な還元糖が不足したため,窒素吸収量の減少と,窒素代謝の阻害が起こり,窒素の乾物生産効率が低下し,生育が停滞したものと考えられる.
    花茎発生および開花は,光強度の低下による生育量の減少と代謝活性の低下により,抑制されたものと考えられる.
  • 小池 安比古, 今西 英雄
    1993 年 62 巻 1 号 p. 181-187
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    スカシユリ系交雑品種の抑制栽培のためには,品種による花芽分化開始時期の早晩にかかわらず,秋にりん茎を入手後速やかに1°C湿潤で4~8週間予冷し,続いて-2°~-4°Cに移して凍結貯蔵すれば好結果が得られることが明らかになった.-4°C貯蔵球は-2°C貯蔵のものに比べ,発芽はやや遅れるが,切り花の品種は若干良くなった.真夏の高温時の植え付けでは,開花率の低下や切り花品質の著しい低下がみられた.
  • 高山 智子, 豊増 知伸, 山根 久和, 室伏 旭, 矢島 久史
    1993 年 62 巻 1 号 p. 189-196
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    スカシユリの球根の休眠打破には, 低温処理が有効である. そこで, 休眠中のスカシユリ球根に含まれるアブシジン酸 (ABA) とジベレリン (GA) の定性分析を行うとともに, 低温処理によるそれらの内生量の変動を調べ, スカシユリ球根の萌芽と内生ジベレリン,アブシジン酸との関連を追究した.
    まず, 休眠球根から, ガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー (GC/MS) 法により, アブシジン酸 (ABA) を同定するとともに, ジベレリンA1(GA1), GA4, GAg, GA12, GA15, GA19, GA20,GA24, GA34, GA44, GA51,3-epi-GA4を同定し,GA4に至るearly-non-hydroxylation pathway (非水酸化経路) とGA1に至るearly-13-hydroxylation path-way (C-13位水酸化経路) の独立した二つのジベレリン (GA) 生合成経路が機能していることを明らかにした.
    次に, 低温処理に伴う内生GA, ABAの量的変動を対応する重水素標識化合物を内部標準としたガスクロマトグラフィー/選択的イオンモニタリング(GC/SIM) 法を用いて追究した, GA4は, 内生量が低温処理中増加し, 球根の萌芽に促進的に働く主要なGAであると考えられる. また, 休眠打破に抑制的に働くと予想されるABAが低温処理中増加するという興味深い結果も得られた. 一方, GA1, GA20, GA19などのC-13水酸基を有するGAは低温処理中減少し,処理後も低いレベルでしか存在しなかった.
  • 河原林 和一郎
    1993 年 62 巻 1 号 p. 197-205
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ササユリ球根の実用的な大量増殖技術の開発を目的として, りん片培養の過程を省力化でき, かつ, 培養をスケールアップできる可能性が高いと考えられるいくつかの培養方法について比較検討するとともに, 液体培地中におけるりん片切片からの子球の増殖に及ぼす培養条件の影響について検討した.
    1.液体支持材培養, 液体振盪培養, 液体通気培養およびカプセル培養を比較•検討した結果, りん片切片から子球を大量に増殖する実用的な培養方法としては, 液体通気培養が最も適していると考えられた.
    2.りん片切片からの子球の分化は, 培養3週から8週にかけて急激に増加し, その後の増加数は少なくなった. 平均球径の増加は, 3週から5週にかけてみられた後, 停滞し, その停滞は子球の分化が少なくなる8週以降も続いた. したがって, 子球を効率よく肥大させようとする場合, 培養8週頃以降には, 新たな培地の補給が必要であると推測された.
    3.液体通気培養において, 培地の主要塩類濃度やショ糖濃度を, 寒天培養における場合と同程度あるいはやや低くすると子球の分化が早まる傾向があった.培養8週での培養結果からみると, 主要塩類濃度はMS標準濃度の3/4倍が, ショ糖濃度は4%程度が適していると考えられた.
    4.液体通気培養における培地中の生長調節物質として, NAAが子球の分化促進に有効であった. NAAの濃度は, 子球増殖率, 培養スペースの有効利用, 増殖した子球の取扱いの容易さなどを考慮すると, 0.01mg•liter-1が適していた. KinetinやABAの添加は,子球の分化を抑制した.
    5.通気ガス中の酸素濃度としては, 20.9% (すなわち大気) が子球の分化に適しており, 酸素濃度をさらに高めても子球分化に対する促進効果は認められなかった. 培養温度については, 子球の分化を抑制するような28°C以上の高温を避ければ, 23°Cを中心としたやや低温側の広い温度範囲で培養できることがわかった. 培養中の光の影響については, 明条件と暗条件とで, 子球の分化にほとんど差はみられなかったが,前者では, 分化した子球からの葉の伸長や発根がやや多くなる傾向が認められた.
  • 上田 悦範, 白 晋和, 吉岡 博人
    1993 年 62 巻 1 号 p. 207-213
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    岩手県産リンゴ'スターキング•デリシャス'を大阪に常温輸送後直ちに低密度ポリエチレン袋で密封包装し,8°Cで11週間貯蔵した.ポリエチレン袋は厚さ30μm(薄手区)および50μm(厚手区)を用いた.また対照として,有孔包装(30μm,開孔率約1%)も設けた.密封包装により,酸素濃度は薄手区で12~15%,厚手区で5-9%になり炭酸ガス濃度は薄手区で4%,厚手区で5~6%になった.密封包装により袋内は低酸素,高炭酸ガス条件となり,果実の呼吸量およびエチレン生成量は有孔区より抑制された.果肉の軟化も有孔区に比べ薄手区で2週,厚手区で4週程度遅れた.
    ブチルアセテートや2-メチルブチルアセテートなどのリンゴ香気に寄与する揮発性成分は貯蔵開始時にも生成量がかなりあった.
    有孔包装では貯蔵後も増加し,貯蔵後5週で最高値になった.その後果実の老化が進むとともに,エチルアルコールおよびそのエステルの生成が急増した.
    厚手区では貯蔵中,ブチルアセテート,2-メチルブチルアセテートの生成が抑制され,またただちにエチルアルコールおよびエチルエステルが大量に生成し,異臭と感じられた.
    一方,薄手区では上記リンゴの香気に寄与する両エステルの生成がやや抑制されたが,エチルアルコール,エチルエステルの生成は低レベルを保った.
  • 蔡 護華, ガンガ プラサド カレル, 橋永 文男
    1993 年 62 巻 1 号 p. 215-220
    発行日: 1993年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    マルブッシュカン果実 (鹿児島県東町産) を11月,12月と2月に別々に採収し, 部位別, 熟度別にわけて, 酢酸エチルでリモノイドを抽出したのち, 高速液体クロマトグラフィーを用いてリモノイド含量を測定した.
    1.他の多くのカンキツ果実, 例えば, 早生ウンシュウミカン, ナッダイダイなどと異なって, マルブッシュカンの主要なリモノイドは種子以外のすべての部位でノミリンであった. ただ種子ではノミリンはリモニンの次に多かった.
    2.部位別のリモノイド濃度は種子が最も高く (11月, 3,270ppm), 次いでじょうのう膜, アルベド,フラベド, 果肉 (11月, 45ppm) の順に少なくなった.
    3.すべての部位で最大のリモノイド濃度を示した時期はいずれも11月の採収果であった. 適熟果を採収時期で比較すると, 11月に最も多く, 以後減少し,2月になるとわずかに増加した.4.アルベド以外のすべての部位では, 未熟から適熟まではリモノイド濃度が急増したが, 適熟を過ぎると, 大きく減少した. 特に, 12月の種子では顕著であった. これに反して, 果肉のリモニンおよびアルベドのリモノイドの濃度は未熟から過熟までの全過程で増加した.
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