ヒメユリを用い小輪系アジアティックHb. を育成するため, アジアティックHb. とヒメユリの交雑親和性,F
1個体への戻し交雑親和性などを調査するとともに,得られた雑種の切り花特性など実用性を調査した.
1.通常交配ではアジアティックHb. とヒメユリの交雑では結実しなかった. ヒメユリ×アジアティックHb. の交雑では, 通常交配の他, 花柱切断受粉法を用いても結実しなかった.
2.花柱切断受粉法を用いたアジアティックHb. ×ヒメユリ, チョウセンヒメユリとの種問交雑では, すべての組合せにおいて結実率は100%であった. しかし, 得られた種子を土壌に播種したが, 発芽しなかった. 交雑種子は, 異常胚乳を持つか, まったく胚乳を欠いているほか, 胚は1~6mmのカルス状などの奇形胚であった. 子房あたりの胚の数は0.5~21.0個,交雑した26組合せの子房あたりの平均胚数は5.1個であった.
3.エゾスカシユリ×ヒメユリの交雑では, 交雑胚は, やや湾曲した奇形胚でその大きさは4~6mmで,比較的正常胚に近いものであった. 胚乳は, ゼリー状であり土壌に播種したが発芽しなかった.
4.胚培養では, 交雑組合せによって, 雑種胚の生存率に差がみられた. 24組合せで胚培養を行ったが,その生存率は平均で47.4%であった.
5.雑種を子房親として戻し交雑した場合, ヒメユリの花粉で交雑したときにのみ種子が得られた. 一方,両親を子房親として雑種の花粉で戻し交雑した場合は,雑種の花粉稔性 (25~100%) は高かったが, アジアティックHb. ×雑種の場合のみ高い親和性が得られた.
6.戻し交雑で得られた種子のおよそ半数は外見的に異常が見られ, 土壌に播種したところ, 発芽率は20.3~34.0%であった. 戻し交雑で得られる胚を胚培養したところ, 実生が得られる率は著しく向上した.
7.雑種は, 草姿, 花容は交配親の中間型であるが,花は比較的小輪, 草丈が高性, 細葉であるため, 全体的な草姿はヒメユリにやや近かった. 促成栽培では,開花期は3月下旬 (12月25日定植), 抑制栽培では11月上旬 (9月7日定植) であった. 雑種は十分切り花や交配母本として用いられるものと思われた.
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