熟度の異なるビワ果実の化学成分および生理的活性の差異について調べるため,'茂木'ビワ果実を熟度1(緑色で小さい)から熟度8(収穫熟度としてやや過熟)の段階で収穫し,表面色,果肉硬度,糖含量および糖組成,遊離酸含量,フェノール物質含量,カロテノイド色素含量,呼吸量およびエチレン生成量を調べた.
1.ハンター値で表した表面色の変化は,熟度1から4にかけて緑色が退色して黄色となり,熟度5から8にかけて赤色系の色調が発現することを示した.
2.果肉硬度は,クロロフィルがほとんど消失した熟度4以降に低下したが,その後過熟期にかけて果肉硬度は減少せず,むしろやや増加傾向を示した.
3.糖組成として果糖,ブドウ糖,ソルビトールおよびショ糖が認められ,その中で主要な糖は果糖,ブドウ糖およびショ糖であった.ショ糖含量は熟度5から8にかけては減少し,熟度8においては果糖が最も主要な糖であった.
4.有機酸はリンゴ酸が主体であり,少量のクエン酸,微量のコハク酸およびフマル酸が認められた.リンゴ酸含量は熟度の進展に伴い減少したが,クエン酸含量はほとんど変化せず,コハク酸およびフマル酸含量は増加した.
5.フェノール物質含量は熟度の進展とともに増加し,オルトージフェノールの全フェノール物質中に占める割合も熟度の進展に伴い増大した.
6.果肉の主要カロテノイド色素は,熟度2においてはβ一カロテン,熟度7においてはクリプトキサンチンであり,クリプトキサンチンは主として4種類のエステルとして存在していることが示された.
7.呼吸量は熟度の進展に伴い,減少した.エチレン生成量は,緑色が退色し黄化し始める段階および赤色系色調が発現し始める段階,すなわち色調の変換期に増加することが認、められた.
8.果実成分や果肉硬度の変化から,熟度7における収穫は適当であると思われた.
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