園芸学会雑誌
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65 巻, 4 号
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  • 劉 永立, 原田 隆
    1997 年 65 巻 4 号 p. 663-669
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    野生サルナシ(Actinidia arguta Planch.)の新梢節部切片の培養(初代培養)によって得た培養体シュートの節部切片(側芽一つをもつ)を移植して培養し(第2代培養),第3代以降の培養はこれと同様の移植を繰り返した.NAAおよびBAを含むMiller培地を用い,25°C,明所または暗所で培養を行った.
    1.野外の新梢節部切片の培養では,シュート形成率は,BA添加によって高くなり,高濃度のNAAを添加した場合に低くなった.シュート伸長はBAとNAAとの組み合せ添加により促進された.シュートの側芽数はNAA lμMおよびBA 10μMの組合せ添加区において最も多かった.また,NAA添加区では発根が認められた.
    2.培養体シュート節部切片の培養(第2代培養)では,シュート形成が高濃度のNAA添加により抑制され,BA添加により促進された.暗所培養においては,明所培養よりも,シュート長と節間長が大きくなり,シュート当たりの側芽数が多くなった.
    3.暗所培養で得た黄化シュートの節部切片を移植して暗所で培養した場合には,明所培養で得た緑化シュートの節部切片を移植して明所で培養した場合よりシュート長と節間長が大きくなり,側芽数が多くなった.
    4.15,20および25日間を単位培養期間として,25°Cの暗所で移植•培養を繰り返した場合には,シュート長および側芽数は単位培養期間が長くなるに従って多くなり,3回目以降の移植•培養においては.単位培養期間の異なる3区のいずれにおいても,ほとんど変化しなかった.
    5.単位培養期間を短縮することにより,全培養期間内に増殖できる側芽の数は多くなった.
    6.全増殖期間(D)内に増殖できる側芽数(N)はN=bD•r/b(b:一つの側芽から増殖した移植•培養可能な側芽数,r:増殖率).単位培養期間内に形成される移植•培養可能な側芽数(b)がb=eの時には,最大増殖数はNmax=eD•r/eで最大となり,この時の単位培養期間はp=e/rである.全増殖期間内の増殖数(N)と単位培養期間(p)との関係はN=(r•p)D/Pで表される.
  • 劉 永立, 並木 弘毅, 笠井 登, 原田 隆
    1997 年 65 巻 4 号 p. 671-676
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ミヤママタタビ(Actinidia kolomidtaMaxim.)の栄養繁殖ならびに遺伝的な形質改良に役立つ培養系を確立するため,BW培地(Broad-leaved tree培地とWoody plant培地の各成分を1/2ずつ混合したもの)またはMiller培地を基本培地とし,CPPU(0,0.01,0.1,1μM) とIBA (0,0.01,0.1,1μM) とを組み合わせて添加した16種の培地を用いた.
    新梢切片からのカルス形成は,CPPUおよびIBAの添加濃度が高くなるに従って促進された.BW培地を用いた場合には,シュート形成率はCPPUの添加濃度が0.1μM以上の区で100%になったが,IBAの至適添加濃度は0.01μMであった.BW培地では,Miller培地よりシュート形成率が高く,外植片当たりシュート形成数が多かった.
    また,カルスの増殖には,NAA 1μMとBA 10μMとを組み合わせ添加したMiller培地が適していた.新梢節間部組織片の培養およびカルスの継代培養第1代においては,シュート形成率が100%になったが,カルスの継代培養第1代では多芽体を形成し,これから多数のシュートが形成されたので,培養体当たりのシュート形成数が多くなった.
    培養体シュートを,Miller培地にBA(0および1μM)とNAA(0,0.1,1,10μM)とを組み合わせて添加した培地へ移植したところ,NAA 1μMを単独で添加した培地において発根率が100%になり,旺盛に生長する健全な幼植物が得られた.この幼植物を土とバーミキュライトを4:1の割合で混合した床土に移植すると,鉢上げ40日後には完全な苗木となった.
  • 矢嶋 征雄, 中村 久幸, 高橋 久美子, 渡辺 泰光, 斎藤 茂美, 横沢 弥五郎
    1997 年 65 巻 4 号 p. 677-683
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    テウチグルミ(Juglans regia var.orientis Kitamura)とペルシャグルミ(J.regia L.)の雑種とされているシナノグルミの栽培品種である'美鶴と,そのコルヒチン処理によって育成した個体('Col-美鶴')ならびにそれを母樹にして自家受粉と二倍体2品種の交雑実生樹の体細胞染色体数を調査した.
    1.'美鶴'茎頂の染色体数は2n=32を示し,二倍体であった.
    2.'C0l-美鶴'およびその接き木苗木3個体の体細胞染色体数は2n=64を示した.このことから処理育成樹は四倍体と同定された.
    3.'美鶴'(2x)の自然交雑実生7個体はいずれも2n=32の染色体をもっており,明らかに二倍体であった.
    4.'Col-美鶴'×対照樹(美鶴,2x),'豊笑'(2x)より育成した実生20個体は2n=48の染色体数をもつ三倍体であった.
    5.'Col-美鶴'の自然交雑実生14個体は2n=48の染色体数を示し,三倍体であった.
    6.'Col-美鶴の自家受粉により育成した12個体の実生のうち11個体は2n=64を示し,四倍体であった.しかし,他の1個体は2n=48の染色体をもつ三倍体であり,受粉操作上の不備によるものとも考えられ,再度検討する必要がある.
  • 本村 敏明, 日高 哲志, 秋濱 友也, 片木 新作, Mark A Berhow, 森口 卓哉, 大村 三男
    1997 年 65 巻 4 号 p. 685-692
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    カンキツ類縁種には病害虫抵抗性等の有用遺伝子を有するものが多く,育種素材としての活用が期待されている.しかし,カンキツとの類縁関係が遠くなると交雑は困難となる.これを克服する手段として細胞融合が考えられる.ここでは細胞融合法の適用限界を知るために,カンキッとカンツ類縁種の電気融合を行い,融合後の胚様体の発育について調査を行った.
    材料には,ミカン亜科カンキッ連のトリファシァ亜連,カンキツ亜連(カンキツを含む),バルサモシトラス亜連およびワンピ連のワンピ亜連とメリリア亜連内の種を用いた.
    一般的にカンキッと分類的に近縁な組合わせにおいて雑種個体の作出が容易であった.カンキッ連カンキッ亜連内のカンキッと他の種との電気融合では,多くの組合わせで融合後の胚様体形成,シュートの再分化,発根が容易であった.カンキツとカンキツ連バルサモシトラス亜連の電気融合では,比較的シュートの形成は容易であった.しかしながら,その発根は困難なために,接ぎ木したところ,一部は植物体にまで生長したが,奇形葉を呈するものも多かった.ワンピ連との組合わせの電気融合では,個体再生は極めて困難で,分化しても異常な個体しか得られなかった.カンキッとカンキッ連トリファシア亜連との電気融合では,カンキツとワンピ連よりも類縁関係が近いにもかかわらず個体再生は困難であり,体細胞雑種作出の可能性は低かった.
  • 小原 均, 加藤 誠, 松井 弘之, 平田 尚美, 高橋 英吉
    1997 年 65 巻 4 号 p. 693-705
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    キウイフルーヅヘイワード'果実の発育に及ぼす内生植物生長調節物質の役割を検討する目的で,種子および果肉(中果皮+内果皮)中のIAAおよびABA様物質含量とGAおよびサイトカイニン様活性の経時的変化を,無処理果とCPPU処理果で調査した.
    無処理果の生長は,果重増加曲線が2重S字型を示し3期に分けられたが, CPPU処理果では明確な第2期が認•られなかった.種子組織の発育をみると,珠心および内胚乳は第1期に,胚は第2期に急速に発達したが, CPPU処理果では胚の発育速度が若干遅れていた.
    種子中のIAA様物質含量およびGA様活性は,果肉中のそれらよりも常に高い傾向を示した.サイトカイニン様活性は第1期では種子中で高かったが,第2期になると果肉中の方が高かったABA様物質含量は,種子および果肉中でほとんど差異が認められなかった.
    種子中のIAA様物質含量のレベルは果実の発育と関連が深く,また,成熟期に増大する傾向にあった.種子中のGA様およびサイトカイニン様活性のレペルは,初期の急速な果実発育と種子の発育に関連が深かった.種子および果肉中のABA様物質含量のレベルは収穫期に向かって増大したことから,成熟に関連している可能性が示唆された.
    CPPUはそれ自体の強いサイトカイニン活性で果実肥大を促進させるばかりでなく,果実発育初期から中期始めにおける種子中のIAA様物質含量,GA様活性ならび中期における果肉中のサイトカイニン様活性を高める作用があり,これがCPPU処理による果実肥大促進に強く関係していると推察された.
  • 別府 賢治, 岡本 茂樹, 杉山 明正, 片岡 郁雄
    1997 年 65 巻 4 号 p. 707-712
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    開花期前後の温度環境が甘果オウトウ'佐藤錦'の花器の発育と結実に及ぼす影響について人工気象室を用いて調査を行った.
    1.開花1カ月前から開花終了時まで,昼間は10,15,20,25°C,夜間は全て外気温(処理期間中の日最低気温の平均は7.7°C)とした処理区間で,花器の発育と結実率を比較した.温度が高い処理区ほど開花時期が早く,花器が小さくなる傾向が見られた.'高砂'の花粉を授粉した結果,結実率は,10,15,20°Cではそれぞれ36,50,29%と比較的高い値を示したのに対し,25°Cではわずか2%であった.
    2.低温区(昼10°C~15°C/夜 外気温:処理期間中の日最低気温の平均は5.4°C)と高温区(昼20°C~25°C/夜 10°C~15°C)における花柱内での花粉管伸長と胚のうの発育を調査した.開花時における子房,胚珠,珠心の大きさは,高温区の方が小さかった.花柱内での花粉管の伸長速度には温度の影響はほとんど認められなかった.胚珠の発育については,開花時には両処理区とも未完成の胚のうが多く存在していたが,低温区では開花後にも発達が続き,開花2日後には8核期に達した胚のうの割合が48%に増加した.しかし,高温区では珠心および胚のうの急速な退化が生じた.
    これらのことから開花期前後の気温が甘果オウトウの結実に大きな影響を及ぼすことが明らかとなり,高温下での結実率の低下の一因として,珠心および胚のうの急速な退化が関与していることが示唆された.
  • 曹 萬鉉, 山本 昌豊, 松原 幸子, 村上 賢治
    1997 年 65 巻 4 号 p. 713-722
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    高収量•高品質のトウガラシ新品種を生育する目的で,日本在来種および韓国のF1品種を供試し,親品種と比較しながら品種間雑種の収量,果実のアスコルビン酸含量およびカプサイシノイド含量を調査した.
    1.日本の固定種間のF1雑種はいずれも親品種より高収量であり,特に'カリフォルニア•ワンダ-(CW)'を片親とした場合,-果重が大きく果数も多く,高収量であった.
    2.アスコルビン酸は,胎座より果皮に多く含まれていた.アスコルビン酸含量は,品種間差異は少なく,収穫時期による差が大きかった.いずれの品種でも,9月に最も含量が多かった.果実の発育に伴うアスコルビン酸含量の経時的変化を調べたところ,開花4~5週間後まではどの品種,F1雑種も増加したが,その後も緩やかに増加する品種と,ほとんど増加しないかむしろ減少する品種があった.
    3.カプサイシノイドは,果皮より胎座に高濃度で含まれていた.胎座のカプサイシノイド含量は,'八房などの辛味品種では1000mg/100gDW以上で,一方,辛味のない品種の°CW'と状見甘長では,カプサイシノイドはほとんど含まれていなかった.辛味のない品種と辛味品種のF1雑種のカプサイシノイド含量は,正逆交雑により大きな差が見られた.果実の発育に伴うカプサイシノイド含量の経時的変化では,どの品種でも開花2~3週間後に急激な増加が起こり,5週間後で最大となり,その後は徐々に減少した.カプサイ噛シノイド含量の最大となる時期は,果実の大きさが最大となる時期とほぼ一致していた.
  • 李 泰昊, 加藤 徹, 金山 喜則, 大野 始, 竹能 清俊, 山木 昭平
    1997 年 65 巻 4 号 p. 723-729
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    メロン果実の生長中の種子と果肉組織におけるIAA含量の変動を調べた.果肉組織におけるIAA含量は急激な果実肥大にもかかわらず果実生長期間中希釈されることなく一定に保持された.一方,種子におけるIAA含量は受粉後20日の間に急激に増加し,その後,成熟と共に激しく減少した.この結果は,種子で合成されたIAAが果肉組織に供給されることによって,果肉組織でのIAA含量が一定に維持される可能性を示唆し,種子はメロン果実生長に対して重要な役割を果たしているものと考えられる.
    また,果肉のシンク活性に関与するショ糖代謝関連酵素の活性に対するIAAの効果を果肉組織を用いて調べた.IAA処理は細胞壁結合酸性インベルターゼ,および可溶性酸性インベルターゼの活性を促進した.しかし,ショ糖合成酵素,およびショ糖リン酸合成酵素の活性は促進しなかった.このことは内生IAAが酸性インベルターゼ活性を促進する可能性を示唆する.
    以上より,種子から果肉組織に供給されたIAAは,酸性インベルターゼを活性化することにより,果肉のシンク活性を増加させ,メロン果実の生長に関与するものと考えられる.
  • 浜本 浩, 小田 雅行
    1997 年 65 巻 4 号 p. 731-736
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    昼夜温度差(DIF)によく反応するといわれるキュウリと反応が鈍いといわれるカボチャを用い,胚軸伸長への昼夜温度処理の影響を調べた.両作物の胚軸伸長は明期温度との相関が著しく高く,キュウリではDIF,日平均温度の順でこれに続き,暗期温度との相関は低かった.カボチャでは明期温度の次に日平均温度との相関が高く,暗期温度およびDIFとのそれは低かった.DIFまたは日平均温度と胚軸伸長との相関におけるキュウリ•カボチャ間の違いは,胚軸の伸長に対する暗期の適温がキュウリは低く,カボチャは高いことに原因があると考えられた.
  • 山内 益夫, 田中 智, 藤山 英保
    1997 年 65 巻 4 号 p. 737-745
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    インゲン19品種の耐塩性の強弱を判定するため,それら幼植物を0,40と80mmol•litter-1NaClを含む養液で栽培し,対照区の生育に対する相対生長量で比較した.また各部位のNaあるいはCl含有率と相対生長量との相関間関係を求めた.さらに,K,Ca,Mgの器官別含有率の変動に及ぼすNaCl添加の影響も合わせて検討した.得られた結果の概要は以下の通りである.
    1.地上部の相対生長量と小葉のNaあるいはCl含有率の間には有意な負の高い相関関係があり,根のそれらイオン含有率と地上部の相対生長量の間には有意な高い正の相関関係が認められた.
    2.いずれの部位においても相対生長量とNaあるいはCl含有率との間の相関係数はNa含有率の方が常に高かった.
    3.使用した19品種の中では比較的耐塩性の強い品種は'シャトル 姫手亡'であり,弱い品種は'白衣笠''揚子江'であった.耐塩性は根のNa保持能が高く,小葉のNa含有率の上昇が抑制されるという特性で確保されると考えられる.
    4.KとCaの全植物体当たりの含有率比(処理区/対照区)とNa/Cl当量比の間には有意な負の相関が認められた.5.NaCl処理により,根から地上部(特に小葉)へのKとMgの移行と,茎+葉柄から小葉へのCaの移行が著しく促進された.
  • 銅谷 徳夫, 松原 幸子, 村上 謙治
    1997 年 65 巻 4 号 p. 747-752
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    セルリの半数体育成のために,葯培養と花粉培養を試みた.供試品種として'コーネル619'と'コーネル19'を用いた.
    若い3段階の令の花粉を含む葯を,1/2濃度のMSとB5培地に2,4-DとBA,3g•liter-1ショ糖,0.2g•liter-1ゲルライトを添加した培地に5月から6月にかけて植え付けた.
    'コーネル19'では4分子期の花粉から,0.5または1.0 mg•liter-12,4-Dを添加した1/2 MSまたは1.0mg•liter-12,4-Dを添加したB5培地でカルスを形成した.'コーネル619'では4分子期の花粉から0.5と1.0mg•liter-12,4-Dを添加したB5培地で,1核期前後の花粉から1.0mg•liter-12,4-Dを添加したB5培地上でカルスを形成した.これらのカルスをNAAとBAを添加または無添加のMS培地で培養することにより,不定胚を再生した.同じ組成のホルモンフリー培地へ移植することにより40日から60日後に植物体に生育した.
    種々の令の花粉を,2.5×103/ml培地の密度で, B5,NLN,1/2 MS液体培地で培養した.
    'コーネル619'では1核期前期の花粉からコロニーが形成されたが,B5および1/2 MS培地でのコロニーからのみ心臓型胚が再生したがそれ以上には生長しなかった.'コーネル19'では花粉分裂がみられなかった.
  • 太田 勝巳, 細木 高志, 松本 献, 大宅 政英, 伊藤 憲弘, 稲葉 久仁雄
    1997 年 65 巻 4 号 p. 753-759
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    定植後から収穫終了まで園試処方標準濃度液で水耕栽培したミニトマトについて,完熟果実の裂果発生時刻と果実横径の日変化および植物体内の水分移動との関係を調査した.
    1.夏季に'サンチェリー'の完熟果実250果を対象として,1時間ごとに裂果発生の有無を調査した.その結果,裂果は早朝に多く発生し,とくに午前4時~6時には裂果したすべての果実の43%が裂果した.
    2.夏季には'サンチェリーエキストラ',秋季には'サンチェリーを供試して,完熟果実横径の日変化をレーザー式変位センサーを用いて測定した.その結果,両品種,両季節とも早朝(午前6時~8時)に果実横径が増加し,午前中には減少し,午後からふたたび増加した.果実横径の増加は裂果発生の直前か裂果発生直後に大きかった.
    3.'サンチェリーエキストラ'の植物体内の水分移動量を茎流センサーを用いて測定した結果,茎と葉柄においては昼間水分の流入が多く,夜間水分の流入は少なかった.果柄においては昼間に水分が果実から流出し,夜間から早朝にかけて果実へ流入していた.
    以上の結果から,夜間から早朝にかけて果実内に水分が移動することによって果実の膨張が引き起こされ,果皮が内圧に耐えられなくなり,その結果として裂果が発生していると推察される.
  • 荻原 勲, 田倉 由紀子, 志村 勲, 石原 邦
    1997 年 65 巻 4 号 p. 761-767
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    スイートコーン雌穂先端部の発育不良粒の発生量が異なる5品種を用いて,それぞれの乾物生産量およびその雌穂内の分配,さらに絹糸抽出の時間的経過を調査し,雌穂先端部の発育不良粒の発生量に品種間差異の生じる要因を明らかにしようとした.
    1.絹糸抽出開始日が遅い品種ほど,その時の地上部重が大きく,それに伴い登熟期間中の地上部増加量が大きく,さらに収穫日には雌穂部重が大きく,雌穂に着生した発育粒数が多くなった.一方,発育不良粒は雌穂先端部に発生し,雌穂の発育不良粒の割合と登熟期間中の地上部増加量との間の相関は低かった.
    2.雌穂の発育不良粒の発生割合と雌穂上部における一粒重の減少率との間には正の相関が認められ,一粒重が基部に比べて,上部でかなり小さい品種ほど発育不良粒の発生割合が大きかった.
    3.絹糸抽出開始後5日に絹糸を抽出した穎花割合と雌穂上部における一粒重の減少率との間には負の相関が認められ,雌穂基部から先端部に着生する穎花の絹糸の抽出期間が短い品種ほど雌穂内における部位別の一粒重の差が小さいことが推定された.
    以上の結果から,雌穂先端部の発育不良粒の発生量に品種間差異が生じる原因には,開花前および登熟期に生産される同化産物堪の多少に加えて,雌穂内における同化産物の分配の違いが関係していた.雌穂基部と先端部との穎花の受粉•受精時期の差が小さい品種は,雌穂内での同化産物の分配が均一になり,雌穂先端部への同化産物の分配が多く,先端部の発育不良粒が少なくなると考えられた.
  • 門馬 信二, 坂田 好輝
    1997 年 65 巻 4 号 p. 769-776
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ピーマンのCMV抵抗性素材を得るために,ピーマンとトウガラシ83品種•系統およびトウガラシ属近縁種57品種•系統について抵抗性検定と選抜を行った.
    ピーマンとトウガラシのCMV抵抗性検定では,ほとんどの品種•系統が接種により高率で発病し,強度抵抗性のものは認められなかったが,49個体が無病徴であった.無病徴個体に再接種した結果,再接種後も無病徴のものが15個体認められた.これらの無病徴個体の自殖後代についての検定では,1回目の接種により約半数の個体が無病徴であり,無病徴個体への再接種により74個体が無病徴であった.再接種後も複数の無病徴個体が認められた後代系統を抵抗性系統として選抜した.
    トウガラシ属近縁種のCMV抵抗性検定では,ほとんどの系統が高率で発病したが,無病徴の39個体が認められた.無病徴個体への再接種により19個体が無病徴であり,無病徴個体はC.fmtescensに多かった.無病徴個体の自殖後代についての検定では,多くの個体が発病したが,C.fnttescensには無病徴の34個体,C.baccatumには無病徴の2個体が認められた.複数の無病微個体が認められた後代系統を抵抗性近縁種素材系統として選抜した.
    選抜されたCMV抵抗性素材系統は抵抗性に分離がみられることから,さらに選抜を続ける必要があるが,抵抗性素材として利用できると考えられた.
  • 徐 会連, Laurent Gauthier, Andre Gosselin
    1997 年 65 巻 4 号 p. 777-784
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    塩類集積と水ストレスがトマトの光合成および体内水分状態に及ぼす影響を明らかにするため,ピートモスを培地としたトマト(Lycopersicon esculentum Mill.品種'Capello')に対し高塩分(4.5mS cm-1)と低水分(55%RC.)の処理を行った.土壌容水量(SWC)が55%まで低下した一日後,見かけの光合成速度(Pn)は,対照区と比べ24%低下した.しかし,SWCを数日間同じレベルに保っていったところ,水ストレスの影響は軽減し,処理後ll,16,と28日目における光合成の低下程度はそれぞれ14%,15%と14%にとどまった.この結果は,トマト葉の光合成が水欠乏に対して馴化したことを示した.SWCが55%まで低下した一日後,葉の圧ポテンシャル(ΨP)は水ポテンシャル(ΨW)と共に著しく低下した.しかし,SWCを数日間一定に保った場合,ΨWは変わらなかったが,浸透ポテンシャル(Ψπ)が更に低かったためΨPはかなり回復した.葉の膨潤状態でのΨπが低かったことから,トマト葉内に水ストレス下で浸透調整が起こったと考えられた.いっぽう,高塩分処理を開始した一日後,Pnに及ぼす影響は認められなかったが,処理の延長につれて高塩分の影響は徐々に大きくなった.実験期間中ΨWとΨPは低下し続けたが,それと同時に浸透調整も起こったため,ΨPは一部維持された.高塩分と低水分処理にはPn,ΨWおよびΨpに対して相加効果が認められ,二重ストレス下で浸透調整が起こったにもかかわらずPnは回復しなかった.
  • 高橋 春實, 古屋 廣光, 高井 隆次, 松本 勤
    1997 年 65 巻 4 号 p. 785-790
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ニュージーランドで分離されたイチゴ黒斑病菌の菌株ICMP-2487の培養性質,形態,病原性などの諸性質をわが国の東北および北海道で分離された菌株(OH-5,90-12, MO-1, SN-3, MA-2の5菌株)と比較するとともに,本菌株に対するイチゴ'アキタベリー'の抵抗性について試験した結果,以下のことが明らかとなった.
    1.ICMP-2487はわが国の菌株と比較して,菌そうの色,菌の培養性質,分生胞子の形,大きさ,隔膜数などにはほとんど違いが認められなかった.
    2.イチゴ(58品種•系統),ナシ(3品種),キャベツ(3品種),トマト(3品種),ネギ(3品種),ニンジン(2品種),ヒマワリ(2品種)の7作物に対するICMP-2487の宿主範囲および病原生は,わが国の菌株のそれと同じであった.
    3.イチゴ'アキタベリー'はわが国の菌株だけでなくニュージーランドの菌株(ICMP-2487)に対しても病斑を形成せず,抵抗性を示した.
  • 吉田 裕一, 森本 義博, 横山 和平
    1997 年 65 巻 4 号 p. 791-799
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    有機物投入量の異なる15棟のイチゴ栽培ハウス内のCO2濃度変化から夜間のハウス内のCO2発生速度と換気回数を推定し,土壌有機物がハウス内のCO2環境ならびにイチゴのCO2同化と収量に及ぼす影響について検討した.土壌中の炭素濃度は大量の有機物施用を長期間続けたハウスほど高くなる傾向にあり,土壌からのCO2発生速度と土壌中炭素濃度の間に正の相関が認められた.また,養液栽培に転換後,すなわち有機物投入が行われていない期間が長いハウスほど土壌からのCO2発生量が少なかった.土壌からのCO2発生速度が高く,密閉度の高いハウスほど夜間ハウス内に蓄積されるCO2が多くなった.その結果,午前中のハウス内のCO2濃度が高く維持され,光合成によるイチゴの同化量が増加し,光合成効率も高くなった.また,各農家の出荷数量と栽培ハウスの土壌中炭素濃度との間に有意な相関が認められたことから,土壌微生物の呼吸基質としての有機態炭素濃度の増加に伴う土壌からのCO2発生量の増加が,無機養分供給量の増大や土壌物理性の改善とともに,施設栽培イチゴにおける有機物の大量投入による収量増加の大きな要因の一つであることが明らかになった.
  • 山根 健治, 久地井 恵美, 藤重 宣昭, 峯岸 長利, 尾形 亮輔
    1997 年 65 巻 4 号 p. 801-807
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    BA前処理によりLc.IreneFinney'York'およびBtc.Mem.HelenBrownLSweetAfton'切り花のエチレン生成が抑制され,日もちが延長された.BA前処理とチオ硫酸銀(STS)散布の組み合わせ処理はC. Carl Hauserman 'z-784c'切り花の日もちを相乗効果的に延長した.L. purpurata切り花はエチレン生成速度が最も高く,BAとSTSを用いたいずれの処理によってもエチレン生成と日もちは影響されなかった.すべてのカトレヤ類切り花においてBA前処理は花弁中の全可溶性糖含量に影響しなかった.花弁のしおれの開始にともない,花弁の全可溶性糖含量はほとんど変化しなかった.これらのことから,カトレヤ類切り花の老化にはエチレンが関係しており,BA前処理の日もち延長効果の一部はエチレン生成の抑制によることが示唆された.また,全可溶性糖含量の低下は花弁のしおれの直接的な原因ではないと考えられた.
  • 伊東 明子, 久松 完, 祖一 範夫, 野中 瑞生, 天野 正之, 腰岡 政二
    1997 年 65 巻 4 号 p. 809-816
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ストック,キンギョソウ,パンジー,インパチェンスの苗を供試し,初期生長におけるDIFおよび平均気温の効果を,温度範囲15°Cから25°Cで評価した.
    DIFおよび平均気温が伸長生長に及ぼす影響はすべての植物で認められた。草丈,第1節問長の伸長は,平均気温よりもDIFの影響が大きく,ODIF区に比較して,+DIFで促進され,-DIFで抑制された.ただし,伸長に対しては平均気温の影響が大きく,プラトーに達する前の初期生育段階では,好適気温の下で伸長が大きかった.第1葉葉柄長も草丈と同様の傾向を示し,+DIFにより伸長が促進され,-DIFにより抑制された.葉身長,葉柄長の伸長はいずれもDIFの影響よりも平均気温の影響が大きかった.同じ植物の間では,葉身長,展葉速度が最大となる平均気温は,互いにきわめて近かった.このようにD工Fは,植物の伸長がプラトー段階に達したときの最終的な伸長量を制御することから,草丈の制御に利用できるものと思われた.しかし,展葉速度に表される生育速度はDIFよりも平均気温による影響が大きいことから,育苗のように短期間での草丈制御を目的とする場合,DIFを変化させるよりも平均気温を変化させることによる草丈制御の方がより簡便であると考えられた.
  • 伊東 明子, 久松 完, 祖一 範夫, 野中 瑞生, 天野 正之, 腰岡 政二
    1997 年 65 巻 4 号 p. 817-823
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    植物の生育初期に与えたDIFがその後の生育に及ぼす影響を,ストック,キンギョソウ,パンジー,インパチェンスの苗を供試して検討した.
    DIFは,草丈,第1節間長,第1葉葉柄長を制御し,+DIFによって大きく,-DIFによって小さくなった.葉身長,葉数は,DIFによる影響が小さく,急速伸長時にあたる処理開始13日目では,ストック,キンギョソウで+DIFによって大きくなったが,伸長停止期にあたる試験終了の23日目には,供試した4種の植物すべてにおいて処理区間の有意差が認められなかった.
    急速伸長時におけるDIFの正負変更処理により,DIFの影響が認められたすべての部位でその後の処理による顕著な差が生じた.ただし,+→-の変更処理効果よりも-→+の効果の認められる頻度の方が高かった.また,変更処理後の伸長は,変更処理時まで-DIF下にあり伸長を抑制されていた区の方が,それまで+DIF下にあった個体よりも変更処理後の伸長速度は大きく,生育初期に受けた温度処理の影響が,それ以降の生育に大きな影響を及ぼしていないことと判断された.以上のことから,DIFは苗生産においても実用可能な技術であると考えられた.
  • 遠藤 元庸, 金 〓心, 稲田 委久子
    1997 年 65 巻 4 号 p. 825-833
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    小輪ギク'YS'は栽培ギク中,染色体数が最少(2n=36)の品種で,育種素材としての利用が期待される.しかし,花粉稔性が低いため,これを回復させる目的で,培養茎頂のコルヒチン処理による倍加個体の作出を行い,得られた倍加個体の諸特性を調査した.
    1.培養茎頂を0.05~0.2%のコルヒチン(2%DMSOを添加)を含むMS固形培地(IAA 1 mg/l,KIN3mg/lを添加)で12~48時間処理した.再生個体中68個体を供試し,鉢上げ1か月後に根端の染色体数を調べた(第1次調査)結果,0.2%コルヒチンの24,48時間処理区で倍加細胞をもつ6個体が得られた.
    2.上記6個体中2個体を供試し,栽培6か月後に染色体数を調査した結果,いずれも根端と茎頂の染色体数が異なった.そのため上記6個体の冬至芽由来156個体を供試し,根端分裂組織のみの第2次調査で96個体の倍加個体を選抜し,ついでこれらの茎頂の第3次調査を行い,倍加細胞のみが観察された78個体を倍加個体として選抜した.
    3.倍加個体をハウス内で栽培し,諸特性を調査した結果,倍加個体は元の品種と比較して,1)草丈は明らかに嫉小化し,枝,葉,花らいの着生数が少なく,開花期が遅れた,2)花粉稔性は明らかに回復した,3)花粉および気孔の大きさは差異がなかった.
  • 新美 芳二, 李 同華, 松尾 勝仁
    1997 年 65 巻 4 号 p. 835-842
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,アジアテイックハイブリッド品種'エンチャントメント'の受容性と自家不和合性反応を開花7日前から開花8日後までの蕾または花に受粉して調査した.
    'エンチャントメント'×イワユリ(L.maculatum)の交雑受粉の結果,開花6日前から開花6日後までの雌ずいは健全な有胚種子を形成し,開花前日,開花1,2,4日後に受粉した場合,完熟種子数は開花当日に受粉した場合より多く得られ,開花2日後の雌ずいは,さく果あたり236粒の種子を生じた.'エンチャントメント'の自家受粉では,開花当日では種子は形成されず,花粉管は花柱長の約85%しか伸びなかった.そして開花3日後に受粉した場合と比較して,花粉管の先端が異常に肥大したり,奇形となった花粉管の割合が高く,また生殖核の分裂が遅れた.開花3日前から開花6日後までに受粉された雌ずいは,開花当日を除いてすべての処理区でさく果を形成し,開花6日後の雌ずいは46粒の完熟種子を,他のものは10数粒から20数粒の完熟種子を形成した.
    自家受粉あるいは交雑受粉で得られた完熟種子を播種してそれらの発芽力を調べたところ,その発芽開始日および播種45日後の発芽率に違いがあった.交雑受粉では開花当日に受粉した雌ずいから得られた種子の発芽力がすぐれ,最終発芽率75%となった.一方,自家受粉では開花2日前の受粉によって得られた種子は72%の発芽を示し,種子が最も多く得られた開花6日後の雌ずいの種子の発芽率は44%であった.
  • 細木 高志, 長廻 智美, 木村 大輔, 西本 香織, 長谷川 隆一, 太田 勝巳, 杉山 万里, 春木 和久
    1997 年 65 巻 4 号 p. 843-849
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    RAPD分析により21のシャクヤク品種または原種の分類を試みた.40種の10merのランダムプライマーが試験され,このうち11種が多型マーカーとして有効な99のDNA増幅断片を生産した.これらのマーカーにより21の遺伝子型が区別でき相互間の類似値が求められた.クラスター分析による樹系図によると,P. lactiflora品種はP. officinalis品種と明らかに区別できた.後者はP. tenuifolia, P. peregrinaの1品種および満州シャクヤクと関連があった. P. lactiflora品種は,1部を除いて日本,中国および洋種グループにおおむね分けられた.RAPDによる21の遺伝子型の分類は形態による分類とおおむね一致した.また花弁のフラボン/フラボノール物質による分類とも部分的に一致したが,花弁のアントシアニジンによる分類とは一致しなかった.
  • 馬 旭偉, 池田 妃美子, 門畑 かおり, 下川 敬之
    1997 年 65 巻 4 号 p. 851-857
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    バナナ果実におけるクロロフィル含量の変化に及ぼすエチレン処理の影響を明らかにするため,DMF抽出法を用いて果皮から色素を抽出しクロロフィル含量を測定した.その結果,バナナ果実のエチレン誘導クロロフィル分解は,エチレンにより誘導または促進される酵素によりクロロフィルαを優先的に分解し,脱緑を促進することが分かった.また,エチレン誘導クロロフィル分解過程に果色の色彩表現法による脱緑程度を表わす式((L+b)/2+a)とクロロフィル含量との間には非常に高い負の相関関係(r=-0.959,P<0.001)があることから,果色の脱緑を示す指標として,この式はバナナ果実の場合も適切であることが確認された.
    In vivoにおけるバナナ果皮のエチレン誘導クロロフィル分解機構を明らかにするため14種類の阻害剤で処理を行い,それにともなう果色の変化を色彩色差計で測定し,上記の式を用いて検討した.その結果,鉄キレート剤による阻害より鉄要求性の酸化酵素の関与と,還元剤あるいはラジカル消去剤により阻害されることからラジカルの関与とが明らかとなった.また,PCMBにより弱く阻害されたことから,バナナ果皮ではウンシュウミカン果実の場合とは異なり,クロロフィラーゼがクロロフィル分解の初期反応にあまり関与していないのと思われた.
    これらの結果から,バナナ果皮のエチレン誘導クロロフィル分解においてFe2+(Fe3+),02(02-)の関与する酸化反応が分解系路の一段階であることが示唆された.
  • 濱渦 康範, 茶珍 和雄, 丁 長奎, 黒岡 浩
    1997 年 65 巻 4 号 p. 859-869
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    熟度の異なるビワ果実の化学成分および生理的活性の差異について調べるため,'茂木'ビワ果実を熟度1(緑色で小さい)から熟度8(収穫熟度としてやや過熟)の段階で収穫し,表面色,果肉硬度,糖含量および糖組成,遊離酸含量,フェノール物質含量,カロテノイド色素含量,呼吸量およびエチレン生成量を調べた.
    1.ハンター値で表した表面色の変化は,熟度1から4にかけて緑色が退色して黄色となり,熟度5から8にかけて赤色系の色調が発現することを示した.
    2.果肉硬度は,クロロフィルがほとんど消失した熟度4以降に低下したが,その後過熟期にかけて果肉硬度は減少せず,むしろやや増加傾向を示した.
    3.糖組成として果糖,ブドウ糖,ソルビトールおよびショ糖が認められ,その中で主要な糖は果糖,ブドウ糖およびショ糖であった.ショ糖含量は熟度5から8にかけては減少し,熟度8においては果糖が最も主要な糖であった.
    4.有機酸はリンゴ酸が主体であり,少量のクエン酸,微量のコハク酸およびフマル酸が認められた.リンゴ酸含量は熟度の進展に伴い減少したが,クエン酸含量はほとんど変化せず,コハク酸およびフマル酸含量は増加した.
    5.フェノール物質含量は熟度の進展とともに増加し,オルトージフェノールの全フェノール物質中に占める割合も熟度の進展に伴い増大した.
    6.果肉の主要カロテノイド色素は,熟度2においてはβ一カロテン,熟度7においてはクリプトキサンチンであり,クリプトキサンチンは主として4種類のエステルとして存在していることが示された.
    7.呼吸量は熟度の進展に伴い,減少した.エチレン生成量は,緑色が退色し黄化し始める段階および赤色系色調が発現し始める段階,すなわち色調の変換期に増加することが認、められた.
    8.果実成分や果肉硬度の変化から,熟度7における収穫は適当であると思われた.
  • 壇 和弘, 等々力 節子, 永田 雅靖, 山下 市二
    1997 年 65 巻 4 号 p. 867-875
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    嫌気条件下で貯蔵したブロッコリーによる異臭の発生の解明を目的とした.急速に嫌気状態を形成させるために,ブロッコリーは厚さ100μmのポリエチレンフィルムで密封包装し,20°Cで4日間貯蔵した.包装袋内の雰囲気は貯蔵8時間以内に02濃度0.5%以下,CO2濃度20%以上に到達し,このような嫌気条件下で異臭の発生が認められた.嫌気包装袋内のヘッドスペースガスからはエタノール,アセトアルデヒド,メタンチオール,ジメチルジスルフィドが同定された.硫黄化合物のメタンチオールおよびジメチルジスルフィドは異臭の主要な構成物質であり,このような硫黄化合物の生成に関与しているC-Sリアーゼ活性は嫌気包装区と対照区とも貯蔵期間を通して変化しなかった.花蕾部からの電解質漏出程度を測定したところ,嫌気包装区では対照区と比較して電解質漏出程度は増大した.また,嫌気包装ブロッコリーから調製したミクロソームの脂質中の遊離脂肪酸のレベルは対照区よりも明らかに高かった.
    これらの結果から,嫌気条件下で貯蔵したプロッコリーの異臭の原因となる硫黄化合物のメタンチオールおよびジメチルジスルフィドは嫌気条件下における生体膜の機能低下に伴う局在性の破壊によって酵素と基質が接触することによって生成されたのではないかと推察された.
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