園芸学会雑誌
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67 巻, 4 号
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  • / 弦間 洋, 岩堀 修一, Shuichi Iwahori
    1998 年 67 巻 4 号 p. 475-482
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ユスラウメ(Prunus tomentosa)台モモ樹(矮性台樹)の炭水化物の分配と接木部の発達を, 共台樹と比較し, 検討した.各部の乾物重は, 新葉と新梢では矮性台樹と比べて共台樹で高かったが, 根では矮性台樹で高い傾向があった.13C光合成産物の各部への転流を調査した結果, 根で高いシンク活性がみられ, それは特に細根で顕著に認められた.転流糖であるソルビトールの各部における含量は, 両台樹の間に差がなかった.矮性台樹の総炭水化物含量は, 共台樹と比べて新梢で低く, 逆に根で高い傾向があった.また, 根, 側枝, 葉のデンプン含量は矮性台樹で高い傾向があった.接木1ヵ月後に, 両台樹の接木部にカルスおよび台木穂木間を連絡する維管束形成層の発達が観察されたが, 矮性台樹ではカルスの周りや新生木部中に壊死組織がみられた.接木2∿4年後には, 矮性台樹の接木部では新生木部に壊死組織が観察されたが, 共台樹ではほとんどみられなかった.矮性台樹の接木部では道管が細く, 木部要素の発達方向にも異常がみられた.また, 両台樹でらせん状の道管が観察された.これらの結果から, 接木部の壊死組織は台木の生産する何らかの物質の接木部への蓄積と関係し, そのことが穂木の生長に影響するものと推察された.
  • 後藤 奈美, 望岡 亮介, 林 伯年, 橋爪 克己, 梅田 紀彦, 堀内 昭作
    1998 年 67 巻 4 号 p. 483-490
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    日本, 韓国および中国の野生ブドウ, ならびにブドウ栽培品種を用いて, RFLP解析およびRAPD解析を行った.リボゾームDNAの非転写スペーサー域の配列をプローブにしたRFLP解析の結果, 供試した種および変種は, 個体によって若干の差異はあるものの, それぞれ固有のバンドパターンを示した.5種類のプライマーを用いたRAPD解析の結果はUPGMAによって解析し, フェノグラムを作成した.24点の野生ブドウと16点のブドウ栽培品種は一部の例外を除いて大きく2つのクラスターに分かれた.ブドウ栽培品種の中では, Vitis labruscaとV. vinifera(東洋系および西洋系)がそれぞれのクラスターを形成した.甲州は東洋系V. viniferaのクラスターに含まれたが, RFLP解析では他のV. vinifera品種にない2本のマイナーなバンドをもっていた.
  • 平塚 伸, 久保 達也, 岡田 吉司
    1998 年 67 巻 4 号 p. 491-496
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ニホンナシにおける5個のS複対立遺伝子に対応した花柱特異的タンパク質(Hiratsukaら, 1995)の知見を元に, 新しく育成された品種を含む数品種の自家不和合性遺伝子型(S遺伝子型)を等電点電気泳動法によって推定した.推定された遺伝子型は, 圃場での交配試験によって確認された.'喜水'および'愛甘水'の花柱タンパク質のバンディングパターンは, それぞれ'新水'(S4S5)および'幸水'(S4S5)とほぼ同じであり, これらのS遺伝子型は交配試験によって明確に確認された.'筑水'は明らかにS3タンパク質をもっており, 4年間の交配試験を通じてS3S4遺伝子をもつ'新世紀'(S3S4)および'清玉'(S3S4)との結実率が劣っていたが, 完全に不和合性とは断言できなかった.'豊水'の花柱には豊富なS3タンパク質とS4またはS5と思われるバンドが認められた.そこで'長十郎'(S2S3), '青龍'(S2S3), '新世紀'(S3S4), '清玉'(S3S4)および'丹沢'(S3S5)との交配試験を行ったが, すべての組み合わせで和合性を示した.また, S3遺伝子をもつ品種の柱頭に'豊水'の花粉を交配し, S3ホモ接合体の可能性についても調査したが, これも和合性を示した.これまでに我々は'丹沢'の花柱タンパク質分析を行っていないため, '丹沢'のS遺伝子型については確信がもてないが, もしこの遺伝子型が正しいとするなら'豊水'のS遺伝子型はS3S6, S3S7あるいはS3S8と推定された.'長寿'のS遺伝子型はS2S5とされているが(安延ら, 1977), その花柱タンパク質中にはS1タンパク質と明瞭ではないもののS4またはS5タンパク質が認められた.しかしながら, '長寿'は'八雲'(S1S4), '明月'(S1S5)および'市原早生'(S1S5)と和合性を示した.これらの結果および'長寿'の育成経過から, そのS遺伝子型を考察した.
  • 前田 義志, 倉田 裕文, 足立 勝, 下川 敬之
    1998 年 67 巻 4 号 p. 497-502
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    暗黒下, エチレン処理されたウンシュウミカン(Citrus unshiu Marc.)果実のクロロフィル代謝経路を明らかにするため, クロロフィル代謝産物の量的変化を高速液体クロマトグラフィーにより分析・検討を行った.エチレン処理中, ウンシュウミカン果皮のクロロフィル含量に変化はみられなかった.40時間後, エチレン処理果皮は, 全クロロフィル量, クロロフィルa, クロロフィルbならびにフェオフィチンaの含量において顕著な減少がみられ, 無処理果皮では全くみられなかった.エチレン処理そして無処理の両方の果皮からクロロフィルaの代謝産物として, クロロフィリドa, 132-ヒドロキシクロロフィルa, フェオフォルビドaならびにピロフェオフォルビドaがそれぞれ検出された.これらの含量は少なく, また, クロロフィルbの代謝産物は検出できなかった.エチレン処理果実のクロロフィルa/b比は, 脱緑の進行に伴い増加を示した.以上の結果をもとにして, ウンシュウミカン果実におけるエチレン誘導クロロフィル代謝過程を考察する.
  • 後藤 隆子, 宮崎 正則, 奥 正和
    1998 年 67 巻 4 号 p. 503-506
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ホウレンソウ葉肉由来プロトプラストの収量, 分裂率および再分化の品種間差異について調査した.プロトプラスト分裂率およびコロニー形成率は品種によって大きく異なり, '禹城'が最も高かった.次に高かったのは'次郎丸'および'ミンスターランド'で, '豊葉'はプロトプラスト分裂率がやや低い値を示したものの, コロニー形成率はこれらの品種と差がなかった.'札幌大葉', 'バイキング'および'ビロフレー'の分裂率は低かった.植物体の再生は'禹城', '豊葉', '次郎丸'および'ミンスターランド'で観察された.しかし, 再分化率は分裂率の高かった'禹城'よりも'豊葉'および'次郎丸'の方が顕著に高い傾向を示した.'札幌大葉', 'バイキング'および'ビロフレー'では, 茎葉の分化が全く観察されなかった.再分化率は1.0または10.0mg・liter-1 IBAを含む培地で高かったが, 10.0mg・liter-1 IBAまたはIAAを含む培地で誘導されたシュートにはしばしばビトリフィケーションや奇形が観察された.以上の結果, プロトプラスト培養は明らかに品種の違いによる影響を受け, 比較的収量や分裂率および再分化率が高い'豊葉'と'次郎丸'が材料として適していると考えられた.
  • 河鰭 実之, 崎山 亮三
    1998 年 67 巻 4 号 p. 507-514
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    肥大生長期にあるキュウリ果実の糖濃度の決定機構について水分蓄積との関係から調べた.水分蓄積が糖濃度に与える影響を評価するため, キュウリ果実をアクリルパイプで覆って肥大成長を抑制し水分の蓄積を機械的に抑制した.この処理は, 果実肥大を新鮮重で対照果実の40から72%に抑制した.乾物率とヘキソース濃度はそれぞれ対照の127%から138%および134%から173%に増加した.スクロースは, 全糖濃度に占める割合は小さかったが, 処理後顕著に増加した.酸性インベルターゼ活性はスクロース濃度と負の相関があり, スクロースの蓄積は酸性インベルターゼ活性の低下と関係していることが示唆された.経時的に処理効果をみると, 乾物率が一定に推移したのに対し, 可溶性糖濃度は全処理期間を通じて増加し続けた.従って, 可溶性糖濃度が増加したのは, 炭水化物の流入が相対的に水の流入を上回ったためではないことを示した.可溶性糖濃度と水分蓄積との関係について考察した.
  • 足立 勝, 下川 敬之
    1998 年 67 巻 4 号 p. 515-520
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    カイワレダイコン子葉の脱緑に及ぼすエチレンの作用機構を明らかにするため, タンパク質合成阻害剤と核酸合成阻害剤の影響を調査した.暗黒下において, 子葉のクロロフィル酸化酵素(酸化分解酵素)活性と脱緑は, エチレン処理により促進された.シクロヘキシミド(細胞質でのタンパク質合成阻害剤)とアクチノマイシンD(核RNA合成阻害剤)はエチレン作用を完全に阻害したが, クロラムフェニコール(クロロプラストRNA合成阻害剤)は全く阻害を示さなかった.これらの結果は, エチレンがクロロフィル酸化酵素の合成を誘導することにより子葉の脱緑を促進することを示唆した.全クロロフィル量あるいはクロロフィルa量とクロロフィル酸化酵素(酸化分解酵素)活性との間には, 高い負の相関関係が得られた.この結果は, クロロフィル酸化酵素が子葉の脱緑過程における「鍵」酵素であること示した.
  • 一色 司郎, 中村 典義, 田代 洋丞, 宮崎 貞巳
    1998 年 67 巻 4 号 p. 521-525
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    日本産サトイモ[Colocasia esculenta (L.) Schott]の品種分類を行うことを目的に, 日本産58品種を用いて, グルコース6リン酸イソメラーゼの遺伝子座Gpi-2, アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの遺伝子座Aat-1とAat-3, シキミ酸デヒドロゲナーゼの遺伝子座Skdhおよびイソクエン酸デヒドロゲナーゼの遺伝子座Idhの計5遺伝子座におけるアイソザイム変異の解析を行った.三倍体品種と二倍体品種の遺伝子型の比較を行った結果, 遺伝子座Aat-3の対立遺伝子aが, 供試したすべての三倍体品種において特異的に認められた.また, この対立遺伝子の有無によって, 三倍体品種と二倍体品種とが明確に区別できた.これらのことから, 日本産の三倍体品種が日本産の二倍体品種の芽条変異や二倍体品種同士の交雑に起源しないことが示唆された.解析した5遺伝子座のアイソザイム遺伝子型の組合せによって, 供試した58品種は, わずか11にしか分けられなかった.このことから, 日本産品種が比較的少数の祖先型品種に起源したことがうかがわれた.供試した品種を熊沢ら(1956)によって提案された14品種群に分け, 各品種群内のアイソザイム変異について解析した結果, 赤芽群および黒軸群では変異が認められたものの, 他の品種群内では変異が全く認められなかった.これらのことより, 各品種群内の品種間の幅広い形態的変異は主に芽条変異に起源したものであることならびに赤芽群および黒軸群がそれぞれ起源の異なる複数の祖先型品種に起源したことが推察された.
  • 山岸 博, 舘石 充, 寺地 徹, 村山 誠治
    1998 年 67 巻 4 号 p. 526-531
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    日本のハマダイコン3系統, 栽培ダイコン8品種および野生種R. raphanistrum 3系統の合計61個体を用いてRAPD分析を行い, 品種・系統内の個体間変異を調査すると共に, クラスター分析によってハマダイコンと他の2種類のダイコンとの関係を推定した.RAPD分析のためのPCRは7種類の10塩基プライマーを用いて個体単位で行った.PCRの結果, 供試個体間で多型を示す73の増幅断片を得たので, これらの断片の有無に関する類似比を, 全個体間1830組合せで算出した.栽培ダイコンは, '小瀬菜, チベット系ダイコン'の2つの在来品種を除き, 80%以上の高い品種内個体間類似比を示した.これに対して, ハマダイコンは70%弱, R. raphanistrumは50∿73%と低い系統内類似比を示し, 集団内での個体間変異が大きいことが示唆された.しかしながら, これら2つの野生ダイコンとも他の系統のハマダイコン又はR. raphanistrumの個体との類似比は系統内のそれに比べて明らかに低かった.個体間類似比を用いたクラスター分析の結果, 一部の例外を除いて同一の品種・系統に属する個体は, 各品種・系統特有のクラスターに含まれた.供試したハマダイコン3系統は, まず3系統で1つのクラスターを形成し, その後多くの栽培ダイコンが含まれるクラスターとの間で大きいクラスターを形成した.栽培ダイコンのうち'時なし'と'みの早生'の2品種は他の大部分の栽培ダイコンとハマダイコンが形成する大きいクラスターには含まれなかった.またR. raphanistrumはハマダイコン, 栽培ダイコンのいずれとも異なる位置を占めた.これらのことから, 日本のハマダイコンは, 野生種R. raphanistrumとは異なり, 栽培ダイコンに遺伝的に近縁な一群の野生ダイコンであることが示唆された.しかしハマダイコンの成立に直接関与したと考えられる栽培ダイコンは, 今回の調査では見出されなかった.
  • 胡 欲暁, 土井 元章, 今西 英雄
    1998 年 67 巻 4 号 p. 532-536
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    バラ'ブライダル・ピンク'の切り花を用いて, 5℃, 72時間の湿式あるいは乾式輸送をシミュレートした.乾式輸送中の葉や花弁の水ポテンシャルは湿式輸送中のものよりはるかに低く, 切り花生体重の減少は水ポテンシャルの低下と密接な関係にあった.花弁の水ポテンシャル-0.9 MPa, 葉の水ポテンシャル-1.2 MPaの時点でベントネックの発生がみられた.葉の気孔抵抗は, 乾式輸送を行うと徐々に増加し, 輸送後の再吸水によっても十分に回復しなかった.切り花の茎基部における水通導性は, 乾式, 湿式を問わず輸送時間が長くなるに伴って減少したが, 花首部では, 乾式輸送した切り花でのみ減少した.求基方向および求頂方向による水通導性の違いはほとんどなかったこと, 輸送中を通じて水ポテンシャルは花弁より葉で低いことから, 水ストレスが発生した場合には花弁と葉の間で水分競合が生じ, 水は花弁から葉の方向に移動するものと推察された.また, 切り花の部位別水分損失率を測定した結果から, 72時間の乾式輸送では, 初期生体重の19%に及ぶ切り花の水分損失のうち, およそその1/3を葉が花らいや茎から奪い取っていることが示された.
  • 久松 完, 腰岡 政二, 窪田 聡 /, Rod W. King
    1998 年 67 巻 4 号 p. 537-543
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ストックの生長, 特に開花におけるジベレリン(GA)の役割を検討する目的で, GA4と数種ジベレリン生合成阻害剤, ウニコナゾール(UCZ), プロヘキサジオンカルシウム(PCa)およびトリネキサパックエチル(TNE)の影響について調査した.極早生品種'早麗'では, GAの生合成系初期を阻害するUCZ処理により茎伸長および花芽分化は抑制された.一方, 内生GAであるGA4およびGAの生合成系後期(活性化および不活性化過程)を阻害するPCaおよびTNE処理により茎伸長および花芽分化が促進された.晩生品種'晩麗'では, 20°/15℃区においてPCaおよびTNE処理区でのみ花芽が分化した.一方, 低温期においてはPCaにより開花が促進された.茎の伸長は, GA4, PCaおよびTNE処理により促進された.これらの結果から, ストックの茎伸長および花芽分化には活性型GAsの生合成機構とその不活性化機構の両方が, 重要な役割を担っていることが示された.さらに, 茎伸長および花芽分化における活性型GAsへの感受性あるいは反応性は品種により異なり, また, それらは温度により影響を受けることが示された.
  • 壇 和弘, 永田 雅靖, 山下 市二
    1998 年 67 巻 4 号 p. 544-548
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    新鮮なブロッコリー小花をガラス瓶に入れ, 瓶内の雰囲気を100% N2で置換後密封し10℃, 20℃および30℃で48時間保存した.貯蔵温度が高いほどメタンチオールおよびジメチルジスルフィドは多量に発生した.新鮮なブロッコリーを1℃の空気下に7, 14および21日間予備貯蔵し, その後ブロッコリー小花をガラス瓶に入れ, 100% N2で置換後密封し20℃で48時間保存した.予備貯蔵の期間が長いものほど嫌気条件下に置かれた後のメタンチオールおよびジメチルジスルフィドの発生量は少なくなった.花茎に比べ, 花蕾からのメタンチオールおよびジメチルジスルフィドの発生は顕著であった.メタンチオールおよびジメチルジスルフィドの前駆物質であるS-メチル-L-システインスルホキシド含量は花茎に比べ花蕾では約4倍多かった.また, S-メチル-L-システインスルホキシドからメタンチオールやジメチルジスルフィドへの代謝に関与するC-Sリアーゼ活性は花茎に比べ花蕾で顕著に高かった.
  • 濱渦 康範, 茶珍 和雄, 上田 悦範
    1998 年 67 巻 4 号 p. 549-555
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    高温によるトマト果実の着色阻害に関連してカロテノイド代謝について研究するため, 20℃, 30℃および35℃で貯蔵されたトマト果実の果皮切片を14C-メバロン酸(14C-MVA)と10時間, 貯蔵温度と同じ温度でインキュベートした.貯蔵期間が長いと14C-MVAのリコピンへの取り込みは貯蔵温度が高いほど少なかった.β-カロテン含量は30℃区において最も高かったが, 14C-MVAのβ-カロテンへの取り込みは貯蔵温度が高いほど多かった.カロテン類の比放射能は, 実験に用いた各貯蔵温度区の果実からの組織切片において, カロテノイド生合成経路上の成分の変換(フィトエン→リコピン→β-カロテン)の順に減少した.これらの結果から, 高温によるトマト果実の着色阻害は, 継続的な高温ストレスがリコピンの蓄積以上にβ-カロテンの生合成を刺激することが一因であると考えられた.
  • 石井 孝昭, 松本 勲, シュレスタ Y. H., ワモッチョ L. S., 門屋 一臣
    1998 年 67 巻 4 号 p. 556-558
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    カンキツ園に生息する草を4月上旬と7月上・中旬に採取し, それらの草の根におけるVA菌根(VAM)菌の感染状態を観察した.その結果, 春草ではスイバ, カモジグサ, ハコベ, クサフジ, ホトケノザおよびウマゴヤシ, 夏草ではヒメムカシヨモギ, イヌビユ, ギョウギシバ, ガズノコグサ, ツユクサ, カタバミおよびメヒシバにおいて, 70%以上の菌根感染率を示した.また, 春草のハコベ, クサフジおよびホトケノザにおいてはVAM菌胞子が根中に多数形成されていた.しかし, イヌタデ, ギシギシおよびスギナでは感染がみられなかった.
  • 濱野 恵, 三浦 周行, 田部井 豊
    1998 年 67 巻 4 号 p. 559-561
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    イチゴ'女峰'の果実生育の初期に発現する遺伝子をディファレンシャルディスプレイ法により解析した.開花後0, 2, 4, 7, 10, 13日の果実から抽出したRNAを基に合成したcDNAをPCR反応の鋳型に用いた.異なる遺伝子発現を示唆するPCR産物11本のうちSGR101, SGR701の2本をサブクローニングして塩基配列を決定した.ホモロジー検索の結果, SGR101はリボソームタンパクS6キナーゼのホモローグであるアラビドプシスのcDNAと, SGR701はインゲンマメのヒドロキシプロリンリッチ糖タンパクの遺伝子と高い相同性があった.SGR101およびSGR701はともに痩果の相対生長速度が最も高く果実が生理的に活発な時期に発現しており, それらが果実生育にかかわる機能について考察した.
  • 劉 永立, 鈴木 卓, 笠井 登, 原田 隆
    1998 年 67 巻 4 号 p. 562-566
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    サルナシ(Actinidia arguta)培養体シュートから切り出した側芽の凍結保存に関する基礎的知見を得るため, 凍結媒液処理および低温馴化の影響について検討した.1. 凍結融解後における側芽の生存率は低温処理により大きく左右され, 5℃で4週間低温順化処理したのち, 0℃で2週間低温順化処理した側芽では, 凍結・融解後の生存率が高かった.2. 凍結に先立って側芽を凍結媒液に浸漬する場合, 凍結媒液中のDMSO濃度は15%, 浸漬時間は1時間, 凍結媒液温度は0℃が適当であった.3. 低温順化した側芽は, DMSO 15%とグリセリン8Mまたは11.5Mとを組み合わせて添加した凍結媒液中に60分間浸漬し, 次に, 0.5℃・min-1の冷却速度で-30℃まで緩速冷却したのち液体窒素に浸漬して1時間保ち, その後融解してから培養すると, 50%の生存率が得られた.凍結・融解後に生存している側芽を培養すると完全な幼植物となり, 形態的変異は認められなかった.
  • 宇都宮 直樹, 木内 宏彰, 松井 美徳, 竹林 晃男
    1998 年 67 巻 4 号 p. 567-571
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    キトサンオリゴ糖を主成分とする土壌改良剤と窒素施用量との組み合わせ処理がムラサキクダモノトケイソウの開花および果実生長に及ぼす影響を1993年から1995年まで3年間調査した.土壌改良剤は窒素多量区において開花数, 収穫果実数, 果実重, 果汁量をいずれの年も著しく増加させた.一方, 窒素少量区において土壌改良剤を施用すると, 当年は開花数が著しく減少し, その後の2年間においても開花数はほとんど影響を受けなかった.しかし, 1994および1995年には窒素少量区の果実重および果汁量は土壌改良剤処理により増加し, それらは土壌改良剤を与えない窒素多量区とほとんど同じになった.土壌改良剤および窒素施用のどちらも着果, 成熟所要日数, 果汁中の可溶性固形物含量および酸含量には影響を及ぼさなかった.以上の結果から, 本研究に用いた土壌改良剤は, 窒素量が十分な条件下で施用すると, ムラサキクダモノトケイソウの果実生産をより安定させると考えられた.さらに, この改良剤を継続的に施用すると窒素施用量を少なくしてもある程度の果実生産を確保できる可能性が示された.
  • 平 智, 松本 尚子, 小野 未来
    1998 年 67 巻 4 号 p. 572-576
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    完全甘ガキ'次郎'と無核の不完全渋ガキ'平核無'の果実の発育中の可溶性タンニンの生成と蓄積ならびに果実内における不溶化の様相を調べた.可溶性タンニンは両品種とも果実発育の第2期の初め頃まで果実内に生成・蓄積したが, 蓄積量は'平核無'の方が'次郎'よりはるかに多かった.'平核無'のタンニンは発育期間を通してほとんどすべてが可溶性であり, 果実当たりの全タンニン含量は第2期以降ほぼ一定の値を保った.一方, '次郎'は発育の前期から全タンニン中に占める不溶性タンニンの割合が比較的高く, 第1期の後半には約半分を占めた.また, 第2期以降果実当たりの全タンニン含量が減少したことから, 不溶化したタンニンの一部は本実験で用いた方法では抽出できなくなったものと考えられた.以上のことから, '次郎'の可溶性タンニンは'平核無'に比べて容易に不溶化するが, いったん不溶化すると再び可溶化しにくいものと推察された.
  • 王 世平, 岡本 五郎, 平野 健
    1998 年 67 巻 4 号 p. 577-582
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    根域制限栽培された'巨峰'ブドウ樹について, 休眠期から開花期に至る体内の炭水化物および窒素化合物の変化を調査し, 普通の地植え樹と比較した.12月上旬の両樹各部の糖, デンプン, 全窒素濃度に大きな相違はなかった.発芽期には, 樹体各部のデンプンが減少し, 糖濃度が上昇したが, 根域制限樹の小根ではその変化がとくに大きかった.窒素濃度の上昇は地植え樹の幹や母枝で著しかった.幹から採取した樹液や若い新梢でも根域制限樹の方が糖濃度が高く, 窒素濃度は低かった.この傾向は満開期の樹液, 新梢各部, 花穂でも同様であった.これらの根域制限樹の栄養条件の特徴と新梢の生長, 結実性との関係について考察した.
  • 桝田 正治, 古市 朋子, 馬 有会, 加藤 鎌司
    1998 年 67 巻 4 号 p. 583-588
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    トマト種子へのガンマー線照射により得られた雄性不稔突然変異を葯の形態と色から3タイプに分類し, 花粉崩壊の発育段階および遺伝様式を調査した.T-1は雄ずい, 雌ずいとも正常に発育し, 外観上'ファースト'と区別できない.葯の色は黄色であり, 花粉崩壊の発育段階は小胞子期であった.T-2は雄ずいが萎縮し, 葯の向軸側の色は黄褐色となり, 花粉崩壊の発育段階は減数分裂から四分子期に至る間であった.T-3は雄ずい, 雌ずいとも正常に発育する.葯の色は黄色である.雌ずいが雄ずいよりも長く, かつ葯筒の先端が若干裂開するので柱頭が露出する.花粉崩壊の発育段階は四分子形成直後で, 多くは四分子がルーズな塊状を呈し, なかには既に崩壊しつつあるものも観察された.いずれの雄性不稔タイプもM2世代, M3世代において可稔 : 不稔の分離比が期待値3 : 1に適合したこと, また雄性不稔株にヘテロを交配した集団での分離比が期待値1 : 1に適合したことから, 雄性不稔は単一の劣性遺伝子によって支配されているものと推察された.
  • 吉岡 宏, 清水 恵美子, 福岡 信之, 藤原 隆広, 佐藤 文生
    1998 年 67 巻 4 号 p. 589-594
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    キャベツセル成型苗の苗質評価基準の一つとして, 定植後の苗の引き抜き抵抗値による発根力の評価方法を検討した.1. 定植後のセル成型苗の根重増加量および新根発生量と引き抜き抵抗値との間には, 定植後8日目まで高い正の相関関係が認められた.2. 定植後に苗を暗黒下に置くと, 苗の引き抜き抵抗値は著しく低下した.3. 引き抜き抵抗値は苗の引き抜き速度の影響を受けなかった.4. 定植用培養土の粒径の影響は, 調査時における引き抜き抵抗値から定植直後の測定値を差し引くことで除外できた.5. 定植時に根鉢の直下にプラスチックのプレートを埋設し, 根を横方向に伸長させると, セル成型苗の発根力の差をより高精度に測定することができた.6. 携帯型プッシュ・プルゲージを用いた引き抜き抵抗値の手動測定は簡易測定法として有効であった.本研究の結果から, 定植後8日以内であれば, セル成型苗の発根力の評価が苗の引き抜き抵抗値の測定によって可能なことが明らかになった.
  • 霞 正一, 佐久間 文雄
    1998 年 67 巻 4 号 p. 595-599
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    食用ハスの効率的な交配方法を確立するため, 開花, 受精および種子形成を調査し, 以下の結果を得た.1. 開花は1日のうちで午前6 : 00∿7 : 00に最大に花弁が開き, 午前12 : 00頃に閉じ, ほぼ4日間続いた.開花当日の満開時の花の口径は'天王', '早霞'が1∿10cm, '中国'が1∿5cmであった.2. この3品種では雄ずいは開花当日には開葯していなかったが, 開花1日後には大部分が開葯し, 開花2日後には全部が開葯していた.3. '天王'では雌ずいの受精能力が開花前日からあり, 開花当日に最も高く, 開花1日後にやや低下し, 開花2日後には全くなかった.4. '早霞'では交配に用いる花粉は開花1日後の花からの採取が最も適していた.5. 以上の結果から, 開花前日に除雄・袋かけした開花当日の雌ずいに, 開花前日に袋かけした開花1日後の自然開葯した花粉を交配することで, 最も効率的に種子が形成されることが明らかとなった.6. また, この交配方法は種子形成において交配組合せ別の差異が少なく, 多くの食用ハスの交配組合せに適用できると考えられた.
  • 松添 直隆, 圖師 一文, 城島 十三夫
    1998 年 67 巻 4 号 p. 600-606
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    土壌水分含量がミニトマトの果実の色と色素含量に与える影響を, 果色の異なる4品種を供試して検討した.春・秋作の'ミニキャロル'(果色 : 赤色)と秋作の'チェリーピンク'(桃色)において, 土壌水分制限によって着色が著しく促進された.ほとんどの品種において, 土壌水分制限により完熟果の色相角度が低下し, また彩度が高くなり果色が良好になった.果色に与える土壌水分の影響は春作より秋作で顕著であった.しかし'オレンジキャロル'(黄橙色)では春・秋作共に果色に影響は認められなかった.赤および桃色型品種において, 完熟果の生体重当たりの有色カロチン含量は土壌水分制限によって増加した.また土壌水分制限によって完熟果の有色カロチンに占めるリコピンの生成割合は高くなった.一方'イエローキャロル'(黄色)の生体当たりのβ-カロチン含量は土壌水分制限により増加した.しかし'オレンジキャロル'のβ-カロチン含量には土壌水分制限処理による影響は認められなかった.
  • 村上 賢治, 西岡 順子, 松原 幸子
    1998 年 67 巻 4 号 p. 607-612
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    サトイモの品種'八頭'と, マレーシア産の栽培品種'Malaysia No.4'との間でプロトプラストの電気融合を行い, 植物体を再生させた.'八頭'は1 mg・liter-1 2, 4-D+1 mg・liter-1 2 ipを添加したMS液体培地で培養した懸濁細胞, 'Malaysia No.4'では2 mg・liter-1 2, 4-D+2 mg・liter-1 2 ipを添加したMS液体培地で培養した懸濁細胞からプロトプラストを単離し, 電気融合を行った.融合処理後, 雑種細胞を1/2濃度のMS無機塩+Kao・Michayluk (1975)の有機添加物+0.1Mグルコース+0.3Mマニトール+0.2 mg・liter-1 NAA+2 mg・liter-1 BAを添加した液体培地に再懸濁し培養した.形成したコロニーは, 0.2 mg・liter-1 NAA+2 mg・liter-1 BAを添加したMS固体培地に移植して不定芽を誘導し, 再生した苗条をホルモン無添加のMS固体培地に移植し発根させた.融合処理した細胞からは, 植物体が約200個体再生し, 圃場で旺盛に生育した.再生した植物体は, 両親のどちらよりもやや草丈が低く, 葉が小さかった.球茎は, ほぼ両親の中間的な形態であった.染色体数は56本で, 両親の染色体数の和と考えられた.球茎の貯蔵タンパク質の電気泳動パターンを調べた結果, 両親のバンドを併せもったパターンを示した.以上の結果からみて, 再生した植物は体細胞雑種と判断された.
  • 郭 世栄, 名田 和義, 橘 昌司
    1998 年 67 巻 4 号 p. 613-618
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    キュウリ幼植物が低酸素培養液で良く生育できることに硝酸還元酵素(NR)活性が関係しているかどうかを明らかにするために, 0, 1, 2, 4 ppmの溶存酸素濃度(DO)で生育したキュウリとトマトの根と葉のin vivo NR活性および根のピリジンヌクレオチド濃度(NADとNADH)と, 低DO下でのキュウリの生育に及ぼすNR阻害剤の影響を調べた.根のNR活性は2作物とも低DO下で増大したが, その程度はキュウリの方が大きかった.キュウリでは低DO下で葉のNR活性もいちじるしく増大したが, トマトでは増大はみられなかった.根のピリジンヌクレオチドについては, NAD濃度に明らかな作物間差異がみられ, トマトでは低DO下で低下したのに対して, キュウリでは低下は起こらなかった.NR阻害剤(50μM/lタングステン酸ナトリウム)をDO 1, 4 ppmの培養液に添加すると, キュウリの根および葉のNR活性はDOレベルにかかわらず顕著に低下したが, 生育の阻害程度は4 ppmより1 ppmでの方が大きかった.以上の結果から, キュウリの根域低酸素耐性には根や葉のNR活性の高まりが関係していると考えられる.
  • 米田 和夫, 鈴木 信利
    1998 年 67 巻 4 号 p. 619-625
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    本実験はオドントグロッサム類の栽培管理の安定化を図るための基礎的な資料を得る目的で生育・開花に及ぼす温度と光強度の影響と, それにともなう養分吸収量の変化について検討した.供試材料には, Wilsonara 〔Odontocidium Solana 'Hamana Gold'×(Odontioda Torlana 'Blue Moon'×Odontioda Ingera 'Lyoth Rex'〕(実験1)とOdontonia Lovely Morning 'Sayaka'(実験2)の, それぞれの特性を有する2種類の属間交雑由来植物を用いた.実験1. 温度の影響1) 展開葉面積, 葉緑素濃度, バルブ径, 根長および乾物生産量は18℃区で最も増加した.2) 展開葉面積の増大の時期は25℃区で, 18℃区と11℃区に比べてそれぞれ4週, 12週早かった.3) 無機養分含有率は, 18℃でP含有率が高かったほかは温度処理区間で大きな差異はみられなかった.しかし養分吸収量は18℃区が最も多く, 特にNおよびPの吸収量が顕著であった.4) 生育適温は18℃付近にあり, 花茎は25℃区で一部発生し, 開花に至った.実験2. 光強度の影響1) 展開葉面積は弱光区(遮光率87.5%)で大きかったが, ほかの器官の生育は抑制された.2) N, P, Kの含有率は弱光区では, ほかの処理区に比べて高かった.しかしN, P, Kの吸収量は光強度の顕著な影響は認められなかったが, Caの吸収量は弱光により減少した.3) 花茎発生株数には, 光強度の明らかな影響はみられなかったが, 弱光区で開花日は約10日遅れた.4) 強光区(遮光率50%)と中光区(遮光率68%)は生育量, 養分吸収量および開花について大きな相違はみられなかったが, 強光区で葉緑素濃度が減少し, 多数の株が葉焼けを起した.5) 生育および開花を促進するための光強度は, 中光区程度がよいと判断された.
  • 松村 智広, 金地 通生, 稲垣 昇, 前川 進
    1998 年 67 巻 4 号 p. 626-631
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    種子発芽時における耐塩性種の選抜の可能性を模索するために, キク科の栽培花き植物18種20品種およびキク科の塩生植物ウラギク(Aster tripolium L.)を用いて, NaClストレス下での種子発芽および初期栄養生長を調査した.50∿300 mMのNaCl下での発芽試験に基づいたクラスター分析から, ベニバナが発芽時の耐塩性が最も高いと評価した.ウラギクはNaClストレスによって発芽が抑制されたが, 300 mMの高塩環境下ではベニバナに次ぐ高い発芽性を有した.ベニバナ, ウラギクおよび発芽時の耐塩性が比較的低かったクリサンセマム・パルドーサムをNaCl水耕した時の初期栄養生長期の耐塩性は, ウラギク, パルドーサム, ベニバナの順に高く, パルドーサムおよびベニバナでは茎葉に比べて根の生長が有意に抑制された.以上のように, ベニバナ, パルドーサムおよびウラギクの間で比べた耐塩性の程度は, 種子発芽時と初期栄養生長期とでは異なったので, 種子発芽時の耐塩性によってキク科花き植物の耐塩性種を選抜できる可能性は低いと考えられた.
  • 深山 貴世, 稲本 勝彦, 土井 元章, 今西 英雄
    1998 年 67 巻 4 号 p. 632-634
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    1. スターチス・シヌアータ(Limonium sinuatum Mill.) 'Early Blue'の花穂切片を外植体とし, 4週間の初代培養を20℃ならびに27℃下で行った後, 20℃4週間の発根培養に移し, 器外に植え出して20℃で栽培した.20℃区では67%が抽だいしたのに対し, 27℃区では13%にとどまった.2. 初代培養後, 20℃での4週間の継代培養を繰り返し, 最後に発根培養を行って植え出したところ, 初代培養後ただちに発根培養に移した場合, 抽だい率は67%であったのに対し, 1回継代培養を行うと抽だい率は43%と低くなり, 2回以上継代培養を行うと全く抽だいが観察されなくなった.3. 継代培養中に2℃4週間の低温処理を行い発根培養に移した場合, また発根培養中に同様の低温処理を行った場合, いずれも植え出し後の抽だい率が著しく高くなった.4. 継代培養中に2℃4週間の低温処理を行っても, その後20℃で増殖のための継代培養を繰り返すと, 植え出し後の抽だい率が低下した.5. 以上より, スターチス・シヌアータの培養苗生産においては, 高い培養温度や継代培養の繰り返しが培養苗の開花能力の消失を引き起こす原因となること, 培養中に低温処理を行うことにより培養苗に開花能力を再付与しうることが示された.
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