園芸学会雑誌
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69 巻, 6 号
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  • 神崎 真哉, 米森 敬三, 佐藤 明彦, 山田 昌彦, 杉浦 明
    2000 年 69 巻 6 号 p. 665-670
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    完全甘ガキ品種群は遺伝的変異が小さく, 比較的新しい時期に日本において独自に発達してきたと考えられているが, 一方で, 中国原産の完全甘ガキ'羅田甜柿'と日本の完全甘ガキ品種群との関係は明確ではない.これらの完全甘ガキ品種群の類縁関係を明らかにするため, '羅田甜柿'を含めた完全甘ガキ19品種と非完全甘ガキ14品種についてAFLP法を用いた解析を行った.多型を示した138のAFLPマーカーの類似性に基づき系統樹を作成したところ, 日本の完全甘ガキ品種群は比較的近縁関係にあることが確認された.一方, '羅田甜柿'は日本の品種とは離れた関係にあることが示され, 日本の完全甘ガキ品種群の成立に'羅田甜柿'は関与していないことが示唆された.日本の完全甘ガキ品種群の中では岐阜県原産の品種の近縁性が顕著であり, これらの品種の起源はこの地方の限られた在来品種に由来していることが示唆された.また, 日本の完全甘ガキの起源であると考えられている'御所'は岐阜原産の完全甘ガキ品種群とは異なるクラスターに属し, 岐阜原産の品種群とは異なる遺伝的背景を持つことが示唆された.
  • 棚瀬 幸司, 山木 昭平
    2000 年 69 巻 6 号 p. 671-676
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ果実のスクロース代謝酵素, 特にスクロース合成酵素(SS)アイソザイムとスクロースの蓄積との関係について, 果実の生長成熟過程を通して調べた.果実におけるスクロース含量は, 未熟果では非常に少なく果実の成熟に伴って急速に増加した.このときスクロース6リン酸合成酵素活性も増加した.また, 可溶性酸性インベルターゼおよび細胞壁結合型酸性インベルターゼ活性は未熟果では高かったが, 果実生長と共に減少した.一方, SS活性は未熟果で高く, 果実生長と共に減少したが, 成熟期でのスクロース蓄積と共に再び増加し, これにはスクロースの蓄積を伴っていた.これらの活性の変化はSSアイソザイム, 即ちSSIとSSIIによるものであった.SSI活性は未熟果で高く, 果実生長と共に減少した.これに対し, SSII活性は未熟果で低く, 成熟に伴って増加した.以上の結果より, 成熟に伴うスクロース蓄積はSSII活性の発現に起因していることが示唆された.
  • 朱 月林, 伊東 正
    2000 年 69 巻 6 号 p. 677-683
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    根分け法による養分ストレス条件で, 異なる成長期における水耕トマト(Lycopersicon esculentum Mill.'ハウス桃太郎')苗の生長と主要カチオン(K, CaおよびMg)含有率を, 1998年の春作と秋作で調査した.トマト苗の根を二つに分け, 一つは園試処方の1/2単位濃度で水耕し, もう一つは水道水に浸漬した.これにより, 養分ストレスをトマト苗に与えた.対照区として, トマト苗を園試処方の1/2単位濃度で水耕した.養分ストレスはトマト苗の生長には影響を与えなかった.養分ストレスは, 園試処方の1/2単位濃度で水耕した根の乾物率と, 処理後10日の地上部乾物率を, 有意に増加させた.水に浸漬した根の生体重と乾物重は, 有意に低かった.養分ストレスは葉と根のK含有率を低下させ, 処理後20日を除いた時期には茎のK含有率も低下させた.養分ストレスは, 処理後10日と20日には園試処方の1/2単位濃度で水耕した根のCa含有率を増加させた.水に浸漬した根では有意に高いMg含有率がみられた.養分ストレスは葉と茎のMg含有率も増加させた.養分ストレスは園試処方の1/2単位濃度の培養液のEC値を著しく低減させ, トマト苗の水吸収量を有意に増加させた.
  • 杉山 慶太, 森下 昌三
    2000 年 69 巻 6 号 p. 684-689
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    野生スイカおよび国内外のスイカ品種を用いて, 軟X線照射花粉を利用して作出した二倍性種なしスイカのしいな数としいなの大きさについて品種間差異, および果実品質について調査した.また, 軟X線照射線量が花粉の発芽率に及ぼす影響についても調査した.軟X線照射線量が高くなるに従って花粉発芽率が低下したが, 2000Gyまでは無照射花粉の発芽率との間に有意な差はなく, また花粉管は胚嚢に到達していることが確認された.軟X線照射花粉を利用した種なしスイカのしいな数およびしいなの大きさには, 明らかな品種間差異が認められた.普通スイカの全種子数と軟X線照射花粉を利用した種なしスイカのしいな数との相関は低かった(r=0.272).しかし, 正常種子の大きさと種なしスイカのしいなの大きさとの間には, 種子縦径 : r=0.943 P<0.001, 種子横径 : r=0.883, P<0.001の高い正の相関が認められた.軟X線照射花粉を利用した種なしスイカは, 大きさ, 果形, 果色, 果皮の厚さおよび糖度とも普通スイカと変わらず, 品質の高い二倍性種なしスイカが得られることが明らかとなった.
  • 今堀 義洋, 兼常 康彦, 上田 悦範, 茶珍 和雄
    2000 年 69 巻 6 号 p. 690-695
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ピーマン果実の成熟に伴いクロロフィル含量はGreenからYellow/Greenの熟度段階において徐々に減少し, Yellowの熟度段階で著しく減少した.対照的に, カロテノイド含量は熟度の進展に伴って徐々に増加した.ピーマン果実の成熟に伴う過酸化水素含量はGreen/Yellowの熟度段階で著しく増加し, その増加量はGreenの熟度段階の2.5倍であり, Yellow/Greenの熟度段階とYellowの熟度段階でやや減少したが, それら両方のレベルはGreenの熟度段階より高かった.ピーマン果実の成熟に伴うスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の活性はGreenからYellow/Greenの熟度段階で増加し, アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)の活性もGreenからYellow/Greenの熟度段階で増加した.ピーマン果実の成熟に伴うSODとAPXの活性変化の傾向は, 過酸化水素含量の変化の傾向と同じであった.ピーマン果実の成熟に伴うグルタチオン還元酵素(GR)の活性はGreenからGreen/Yellowの熟度段階で増加した.しかしながら, ピーマン果実のカタラーゼ(CAT)における活性の変化は, 成熟中ほぼ一定であった.これらの結果はピーマン果実の成熟に伴い過酸化水素が蓄積し, そのために抗酸化酵素の活性が高められたことを示している.
  • 劉 学軍, 中野 龍平, 久保 康隆, 稲葉 昭次
    2000 年 69 巻 6 号 p. 696-701
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ACC合成酵素の活性測定は, 果実の成熟エチレンの生合成機構の解明に不可欠である.しかしながら, バナナ果実では, ACC合成酵素活性の測定例は報告されていない.そこで, Badran・Jones (1965)が開発したPEG添加緩衡液とアセトン洗浄を組合せる抽出方法を試みたところ, 高い酵素活性が得られた.この方法を用いて, バナナ果実の成熟に伴うACC合成酵素活性の変化を測定したところ, エチレン生成の変化とよく一致していた.また, 酵素反応の最適pHは9.0, 基質SAMに対するKm値は88μM, ACC存在下での活性の半減期は18分を示した.これらの値は, 種々の植物組織で報告されている値の範囲内であった.これらの結果から, バナナ果実のACC合成酵素の抽出法としては, 果肉組織を液体窒素で凍結し, -80℃で貯蔵後にPEG添加緩衡液とともにワーリングブレンダーでホモゲナイズして, その後の精製過程でアセトン洗浄する方法が最も簡便で適切であると考えられた.
  • 神崎 真哉, 米森 敬三, 佐藤 明彦, 山田 昌彦, 杉浦 明
    2000 年 69 巻 6 号 p. 702-704
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    これまでに同定したPCNAタイプ識別のためのRFLPマーカーの有効性を調べるために, 中国原産の'羅田甜柿'を含めたPCNAタイプ13品種およびPCNA以外(非PCNA)の20品種を用いてRFLP分析を行った.'羅田甜柿'以外のPCNA12品種はすべて同一のバンドパターンを示し, これまでに調査したPCNA個体と同様に非PCNAの形質に連鎖している優性マーカーは確認されなかった.一方, 非PCNA品種間では多くの多型が検出されたが, 全ての品種において1つ以上の優性マーカーの存在が確認され, PCNAタイプと同一のバンドパターンを示す品種は確認されなかった.中国原産のPCNA品種'羅田甜柿'は日本原産のPCNA品種群とは遺伝的に遠い関係にあることが明らかとなっているが, 本実験においても非PCNA形質に連鎖していると考えられる優性マーカーの存在が確認され, 日本のPCNA品種とは異なるタイプであることが示唆された.以上の結果から本実験に用いたRFLP分析は日本原産のPCNA品種の識別に有効であることが示された.
  • 田淵 俊人, 伊藤 信二, 新井 紀子
    2000 年 69 巻 6 号 p. 705-707
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    トマト果実の成熟に伴う小果柄の離層の脱離過程を解剖学的および組織化学的に調べた.その結果, 完熟後1週間目には花芽分化時に形成された既存の離層組織(一次離層組織)の柔細胞が軸方向に伸長していた.伸長した細胞群は既存の離層組織から果柄の中心部と表皮の両方向に向かって発達し, 完熟後10日目には既存の離層組織の全体に認められた.伸長した細胞群は既存の離層組織で1層あるいは部分的に2層で構成され, トルイジンブルーによる細胞壁の染色性が隣接細胞よりも弱かった.完熟後2週間目には伸長した細胞の細胞壁が崩壊して細胞間隙が形成され, この間隙が既存の離層組織全体に広がって果実が脱離した.従って, 既存の離層組織は分離層としての役割を担うことが明らかになった.その一方で, 果実の直径が1cmの幼果段階で既存の離層組織の基部側に形成された二次離層組織は, 果実の成熟期には発達していなかったが, 果実が脱離した後に小果柄の基部側組織に存在していることが確認された.従って, 二次離層組織は脱離後の組織を保護するための保護層であるとみられた.
  • 早田 保義, 今泉 由紀子
    2000 年 69 巻 6 号 p. 708-710
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    わが国の代表的な4品種の観賞用ヒマワリについて, 日長が花芽分化と開花に及ぼす影響を調べた.4品種ともに播種から花芽分化までの日数は8時間日長で短縮された.しかし花芽分化から開花までの日数は, 'ビックスマイル'および'サンリッチオレンジ'では8時間日長と12時間日長で短縮され, 逆に'タイヨウ'では16時間日長で, 'バレンタイン'については16時間日長と12時間日長で短縮された.開花時の花序の直径は, 'サンリッチオレンジ', 'タイヨウ'および'バレンタイン'では処理区間での差がなかったが, 'ビックスマイル'では8時間日長で若干減少した.以上の結果より, 本実験で供試したヒマワリは品種によって花芽分化の最適日長と花芽発達の最適日長が異なることが明らかとなった.このことから, ヒマワリを栽培する場合に栽培期間の短縮を図るための日長処理時期は「播種時&acd;花芽分化期」と「花芽分化期&acd;開花時」の二つの時期に分け, それぞれの時期に適した最適日長処理を行うべきと推定された.
  • 矢野 隆, 新開 志帆, 井上 久雄, 森口 一志
    2000 年 69 巻 6 号 p. 711-717
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ユスラウメ台木を用いたモモ栽培においては, '川中島白桃'では衰弱症状が発生しやすいが, 'あかつき'は衰弱症状の発生が少ない.そこでユスラウメ台木樹における衰弱症状発生に関わる要因を炭水化物栄養の面から明らかにするため, 普通台木とユスラウメ台木に接いだ両品種について, 細根, 1年生枝, 新梢, 葉のデンプンと可溶性糖類の季節的消長を比較した.休眠期のデンプン, 可溶性糖類の消長は, 同じ台木では, 品種による明らかな差はみられなかった.ただし, 両品種ともにユスラウメ台木樹では開花前の細根のデンプン含量が普通台木樹の半分程度であった.果実生育期のユスラウメ台木の'川中島白桃'における細根, 新梢のデンプン含量は果実生育期間を通じて普通台木のものより低かった.これに対して, 'あかつき'の細根, 新梢のデンプン含量は両台木間で顕著な差はみられなかった.これと同様な傾向は細根の総糖およびソルビトール含量についてもみられた.なお, 新梢の糖含量や1年生枝, 葉のデンプン, 糖含量等については, 両品種間で樹勢衰弱につながる顕著な差は認められなかった.これらの結果から, ユスラウメ台木の'川中島白桃'で衰弱症状が発生しやすい一つの原因は, 果実生育期における細根のデンプンおよびソルビトールや, 新梢におけるデンプンの欠乏によるものと考えられる.
  • 久保 達也, 平塚 伸
    2000 年 69 巻 6 号 p. 718-723
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカン果実の果皮の粗さに及ぼす外生植物生長調節物質の影響について調査したところ, ジベレリン酸(GA3)およびベンジルアデニン(BA)の塗布処理によって果皮は粗くなり, 特にGA3の影響が顕著であった.GA3は, 処理時期が早く濃度が高いほど収穫期の果実の果皮表面をより粗くした.果皮半分への局部的なGA3処理は, 処理側の果皮のみを粗くした.果皮が滑らかになる横向き果と粗くなる上向き果の内生GA様物質含量を比較すると, 6月下旬では上向き果の方が明らかに高かったが, 7月中旬以降の差は認められなかった.
  • 文室 政彦
    2000 年 69 巻 6 号 p. 724-731
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    被覆条件下の根域制限ベッド(培地量約160 liter/樹)に植栽した5年生ニホンナシ'幸水'27樹を供試し, 着果程度が乾物生産および分配に及ぼす影響を検討した.F/L比(果実乾物重/葉乾物重)が高いほど収量が増加したが, 平均果重は減少する傾向がみられた.F/L比が高いほど新梢, 旧枝, 穂木部材, 太根および台木部の各乾物重が減少した.新梢数, 総新梢長, 葉数, 葉面積および葉面積指数が増加するにつれて, それぞれ新梢, 旧枝, 穂木部材, 穂木部, 太根, 台木部および全樹の各乾物重は増加した.F/L比が高いほど旧枝, 穂木部材, 太根および台木部の各乾物増加量が減少した.F/L比と単位葉面積および単位葉乾物重当たり乾物生産量との間には, 正の相関が認められ, F/L比が高いほど葉の乾物生産力が高まった.F/L比が1.85(葉果比35)の場合では, 年間の葉1m2当たり乾物生産量は約0.542kg, 葉1kg当たり乾物生産量は約6.332kgであった.新梢数, 総新梢長, 新梢乾物重, 葉数, 葉面積, 葉面積指数および葉乾物重が増加するにつれて, それぞれ旧枝, 穂木部材, 穂木部, 太根, 台木部および全樹の各乾物増加量が増加した.同化産物の分配率については, 果実への分配率が高いほど新梢, 旧枝, 太根および台木部への分配率は減少した.穂木部への分配率は台木部への分配率に対してきわめて高い負の相関があった.
  • 霞 正一, 八城 和敏, 林 幹夫
    2000 年 69 巻 6 号 p. 732-735
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    食用ハスは交配可能な期間が短い.そこで, 交配期間を拡大するため, 貯蔵花粉による交配の有効性を検討した.花粉を室温(29±3℃)に放置した場合, 7日間で種子形成能が消失した.花粉をシリカゲルとともに-20±1℃に14日間貯蔵した場合, 開花1日後に自然開葯した花粉をすぐに用いた交配と同程度の種子形成率を示した.この方法をいくつかの交配組合せに適用しても, ほぼ同じ結果であった.同様の方法で, 花粉を約1年間貯蔵すると, 種子形成率は低下したが, 少数ながら種子は得られた.これらの結果から, 花粉をシリカゲルとともに-20±1℃に貯蔵することで食用ハスの交配期間を拡大できることが明らかとなった.
  • 曽根 一純, 望月 龍也, 野口 裕司
    2000 年 69 巻 6 号 p. 736-743
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    イチゴの国内品種29点と外国品種14点を用い促成および露地栽培における糖・有機酸の含量・組成を調査し, 食味官能評点と糖・有機酸の含量・組成ならびにこれらの収穫期間を通じた変動係数との関係を検討した.1) 食味官能評点の優れる品種群は, 劣る品種群と比較して全糖含量, 糖酸比およびSuc/有機酸比率が有意に高く, 全有機酸含量が有意に低かった.また, 食味官能評点の変動係数が小さい品種群は, 高い品種群と比較して糖・有機酸の含量・組成に違いはみられなかったが, 全糖含量, Suc比率, Glu比率および収穫期間を通じたCit比率の変動係数が有意に小さかった.2) 食味官能評点はSuc/有機酸比率およびCit比率の変動係数を説明変数とする重回帰式により比較的良く説明され, 糖酸比, 特にSuc含量が高く, 有機酸組成の収穫期間を通じた安定性の高い品種ほど食味評価が優れると考えられた.また, 食味官能評点の変動係数はGlu比率の変動係数, 全糖含量の変動係数およびCit比率の変動係数を説明変数とする重回帰式により比較的よく説明され, 全糖含量および糖・有機酸の組成の安定性が高い品種ほど収穫期間を通じた安定性は優れる傾向がみられた.3) これらのことから, 食味が優れ, なおかつ収穫期間を通じた食味評価の安定性の高い品種を選抜するためには, 糖酸比, 特にSuc比率が高く, 全糖含量および糖・有機酸の組成の収穫期間を通じた安定性が高い系統を選抜していくことが有効と考えられた.
  • 樋口 幸男, 北島 章好, 荻原 勲, 箱田 直紀, 志村 勲
    2000 年 69 巻 6 号 p. 744-748
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    異なる温度条件下におけるプリムラ・オブコニカのプリミン分泌状況を調査し, 幼苗期におけるプリミン検定の可能性について検討した.1. 'Crystal Apricot'では子葉展開期からプリミンの分泌が認められたが, フリー品種の'Libre Light Salmon'では認められなかった.2. 'Crystal Apricot'を低温(昼温20℃, 夜温13℃)および高温(昼温30℃, 夜温23℃)下で育苗し, 個体別および葉位別にプリミン分泌率を調査した.低温下で育苗した場合は, 第1葉展開期にはすべての個体がプリミンを分泌していた.さらに, 低温下では下位葉のプリミン分泌率も高く維持された.一方, 高温下で育苗したところ, プリミン分泌の開始が遅れ, 一度分泌したプリミンの消失も早かった.また, 育苗温度に関わらず最上位葉の一つ下位の葉においてプリミン分泌率が高かった.3. プリミンを保有している'Crystal'シリーズ4品種について葉位別のプリミン分泌率を調査した.プリミン分泌の早晩には, 品種間差異が認められたが, 各品種とも低温下では第1葉展開期の子葉において, また, 高温下では第5葉展開期の第4葉においてプリミン分泌率が100%であった.4. 幼苗期に毛じの形態からプリミン分泌の有無を判定するには, 低温下では第1葉展開期の子葉を, 高温下では第5葉展開期の第4葉を調査すればよいことが明らかとなった.
  • 後藤 丹十郎, 景山 詳弘, 小西 国義
    2000 年 69 巻 6 号 p. 749-757
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    カーネーションおよびシュクコンカスミソウのセル成型育苗において, セル容量と育苗期間が移植時の作業性と移植後の生長および開花に及ぼす影響を調査した.両種ともセル容量6ml(406穴), 20ml(128穴)のセル成型トレイに挿し, 育苗期間をカーネーションでは挿し芽後20, 30, 40および50日間, シュクコンカスミソウでは挿し芽後22, 32, 42および52日間とした.両種とも育苗期間が長くなると, またセル容量が大きいほど移植時の苗質は優れていた.カーネーションではセル容量が異なっても, 根鉢形成程度にほとんど差はみられなかった.しかし, シュクコンカスミソウでは小さなセルでの根鉢形成は早いが, セル容量20mlでは育苗期間が52日でも根鉢を形成したセルは85%であった.両種とも, 完全に根鉢が形成された苗は移植後の生育が抑制される傾向にあった.シュクコンカスミソウでは育苗期間が長くなるほど, 多肉根の発達が劣っていた.両種とも育苗期間が長くなるほど, 摘心から収穫までの日数と節数が増加した.シュクコンカスミソウでは, セル容量6mlは20mlと比較して摘心から収穫までの日数が長くなった.これに対してカーネーションでは大きな差は認められなかった.一方育苗期間が長くなるほど, カーネーションでは切り花重と切り花長が増加したのに対し, シュクコンカスミソウでは切り花本数が著しく減少した.以上の結果より, カーネーションのセル苗では根鉢形成前に移植した方が生育が良いが, 根鉢形成後10日程度でも実用的な苗として利用できる.しかし, シュクコンカスミソウでは根鉢形成後に移植した場合は著しく生長が劣るため, 根鉢形成前に移植する必要があると考えられた.
  • 花田 裕美, 平井 正志
    2000 年 69 巻 6 号 p. 758-763
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    スイートピーと宿根スイートピーの16品種・系統について, 12塩基のランダムプライマーを用いたRAPD分析により, それらの遺伝的関係の解析を行った.UPGMAクラスター分析の結果, スイートピー(Lathyrus odoratus L.)全体では0.925と遺伝的に近縁であることを示した.また, スイートピーの原種といわれている宿根スイートピーでは, 類縁度係数0.352と遺伝的に極めて遠いことが示された.これらの結果より, スイートピーでは, 品種間は近縁であるためDNA多型は少ないが, 今後, 交配育種等で新品種を育成するうえで, それぞれの後代の形質を早期に検定するために連鎖マーカーを利用した選抜法が応用できると考えられる.
  • 徳元 正和, 玉城 雄一, 太郎良 和彦, 浦崎 直也, 安富 徳光, 知念 功
    2000 年 69 巻 6 号 p. 764-766
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    パパイアの未受精胚珠から再生した8個体の植物体について形態的特性を調査した.再生植物体は親系統株と定植6カ月後に比較した結果, 3個体は樹高が低かった.樹高の低い個体の内, 2個体は幹径が小さく, 果実も小さかった.しかし, 他の1個体は幹径が大きく, 初着花高が低く, 果実は大きく糖度は高かった.後者の果実形質は親系統株に似ていたが, 樹高や初着花高の低い形質は特有なものであった.他の5個体の形態には親系統株と比べ大きな差は認められなかった.
  • 大石 一史, 奥村 義秀, 森岡 公一
    2000 年 69 巻 6 号 p. 767-769
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    接種源としてのキク白さび病菌を増殖し安定的に維持するために, 培養容器内の無菌のキク幼植物体を用いて本病原菌を培養した.1. 温室内の発病葉を接種源に用い, 無菌のキクに接触しないように培養容器内の上方に固定して接種することにより, 雑菌の汚染を免れてキク白さび病菌のみを感染させることができた.2. いったん培養容器内のキクがキク白さび病に感染すれば, その発病葉を接種源として培養瓶の蓋に張り付け接種する方法で本病原菌を継代培養し増殖することができた.3. 培養容器内のキクで発病したキク白さび病菌は, 4カ月間の低温貯蔵が可能であった.4. 培養容器内のキクで継代培養した本病原菌は, 14カ月後も土耕栽培のキクに対する病原性を維持していた.
  • 小池 安比古, 井上 知昭, 鈴木 重俊, 樋口 春三
    2000 年 69 巻 6 号 p. 770-772
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    宿根スイートピーの開花に及ぼす日長の影響を調べた.8&acd;12時間日長の短日条件では開花せず, 16時間日長ないしは暗期中断で開花が促進される長日植物であることが明らかになった.なお, 早期に播種して最低15℃の温室で16時間日長として栽培すれば, 周年開花が可能と考えられた.
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