園芸学会雑誌
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69 巻, 5 号
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  • 伊東 明子, 羽山 裕子, 吉岡 博人
    2000 年 69 巻 5 号 p. 529-535
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ'幸水'の新梢側芽の花芽着生数に及ぼす植物生長調節物質の影響を検討した.マレイン酸ヒドラジッド(C-MH), ウニコナゾールP(UCZ), ベンジルアデニン(BA), アブシジン酸(ABA)を6月上旬から8月上旬の間に'幸水'新梢に葉面散布したところ, いずれの物質も処理新梢の花芽着生数を増加させた.しかし, その効果には散布時期による変動が認められた.C-MHは7月中の散布が花芽着生数を増加させたのに対し, UCZは7月上旬およびそれ以前の散布が花芽着生促進効果を示した.BAおよびABAは6月上旬から7月下旬までの散布が花芽着生数を増加させた.一方, GA4は, 散布時期によって花芽着生に対する効果が逆転し, 6月上旬の散布は花芽着生数を減少させたが, 8月上旬の散布は花芽着生数を増加させた.本稿では, これら植物生長調節物質によるニホンナシの花芽着生数制御の機構について考察した.
  • 島田 武彦, 山本 俊哉, 羽山 裕子, 山口 正己, 林 建樹
    2000 年 69 巻 5 号 p. 536-542
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    台木品種の'赤芽'と花モモ品種の'寿星桃'のF2世代133個体(RJ集団)を用いて, モモの連鎖地図を作成した.この地図は, 3つの形態マーカー, すなわち普通性/わい性(Dw/dw), 赤葉/緑葉(Gr/gr), 広葉/細葉(Nl/nl), および41個のRAPDマーカーと30個のAFLPマーカーなどから構成され, また17∿244cMの長さの10の連鎖群からなる全長約960cMの連鎖地図である.今回初めて解析した細葉の形質は, 劣性1因子支配であること, およびわい性と完全連鎖することが明らかとなった.3種類の形態マーカーはすべて第3連鎖群に座乗し, また普通性/わい性と赤葉/緑葉は65cMの距離であった.赤葉/緑葉, 普通性/わい性に連鎖するDNAマーカーをいくつか取得することができ, 選抜マーカーや遺伝子座のホモ/ヘテロの判定に利用可能である.たとえば, AFLPマーカーの1つである, AFLP68-1はCrと5cMの距離で連鎖した.本試験で得られたDNAマーカーは, 園芸学的に重要であり, 育種の場面で今後の利用が期待される.
  • 能塚 一徳, 鶴 丈和, 白石 美樹夫
    2000 年 69 巻 5 号 p. 543-551
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ブドウ二倍体29品種, 三倍体3系統および四倍体1品種について新梢腋芽の試験管内染色体倍加処理を行った.人為四倍体(4X)の作出では, 0.05%コルヒチンの1日あるいは2日処理が適していた.コルヒチン処理芽から伸長した新梢には異常葉が多く認められ, その一部は2X+4Xの細胞キメラであった.これらの細胞キメラは, 三個体に分株することによって完全な四倍体個体が分離できる場合があった.二倍体ブドウのコルヒチン反応性には品種間差異が認められ, また, 人為四倍体の獲得率は欧州種の方が欧米雑種よりも高かった.人為六倍体(6X)では十分な発根が認められなかったが, 3Xの根端細胞を持つ細胞キメラの発根は良好であった.人為八倍体(8X)は得られなかった.部分的に8X細胞をもつ細胞キメラの生長は弱勢であり, 極端に矮化した.人為四倍体は容易に発根し, 何年も安定であり, かつ, 樹勢が強いのに対し, 3X+6Xおよび4X+8Xの細胞キメラは圃場栽培下で消失しやすく, 元の三倍体および四倍体に戻ることが多かった.人為四倍体と二倍体間での果実品質の比較では, 成熟期, 果房形, 果粒形, 果皮色, 糖度および酸度では顕著な差異が認められなかったが, 果粒重では品種間差異が認められ, 二倍体に対する四倍体での果粒重の増加率は1.1から1.5倍まで変異し, 平均1.3倍であった.
  • 松原 陽一, 粥川 由美, 矢野 宗治, 福井 博一
    2000 年 69 巻 5 号 p. 552-556
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    Arbuscular菌根菌[Gigaspora margarita (GM), Glomus fasciculatum (gf), Glomus mosseae (gm) and Glomus sp. R10 (gr)]が感染したアスパラガス(Asparagus officinalis L., cv. Mary Washington 500W)実生へ紫紋羽病菌(Helicobasidium mompa Tanaka)を接種し, 発病状態を調査した.AM菌接種12週間後において, AM菌接種区では菌種に関わらず生長促進効果が現れ, その効果はGMおよびgr接種区でgfおよびgm接種区より大きかった.AM菌感染率(1個体の根系における感染率)は菌種により異なり, grで最高の50.0%, gmで最低の32.0%であった.AM菌感染植物体へ紫紋羽病菌を接種して12週間後, 根腐れはすべての処理区で現れた.しかし, 発病率はgm接種区(63.6%)を除くAM菌接種区(9.1∿45.5%)で無接種区(54.5%)より小さく, 発病指数も処理区間で同様の傾向があった.特に, gr接種区では発病率と発病指数がともに顕著に小さかった.また, 健全株の生長はすべてのAM菌接種区で無接種区より旺盛であった.これらのことから, AM菌が感染したアスパラガス実生においては, 生長促進効果がみられるとともに, ほとんどの菌種によって紫紋羽病耐性が付与され, その効果にはAM菌の菌種間差のあることが示唆された.
  • 桝田 正治, 内田 浩司, 加藤 鎌司 /, Stephen G. Agong
    2000 年 69 巻 5 号 p. 557-562
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    トマト'ファースト'にガンマー線を照射して作出したT-4雄性不稔突然変異体の春秋期における稔性回復性について調査した.挿し木によって栄養繁殖したT-4株は春期に全て不稔性を示した.これら同植物体を秋期に自然環境下で栽培したところ, すべての株が稔性回復を示し, 自家受粉花の約50%に結実がみられ, 果実当たり平均26粒の種子を得た.その自殖種子を翌春に自然環境下で栽培したところ株は全て不稔性を示した.同植物は秋期に稔性回復し果実当たり35粒の種子を得た.短日および長日処理は, 不稔性回復に影響しなかった.T-4株の人工培地上での花粉発芽率は春期より秋期の方が高かったが, その値は原品種'ファースト'と比べればはるかに低かった.春期のT-4株の花粉は発芽しても花粉管伸長速度が遅く途中で停止したが, 秋期には速まり最終の花粉管長においては'ファースト'のそれと差が無くなった.これらの結果より, T-4雄性不稔突然変異体の不稔回復は, 秋の低温に強く依存しているものと考えられた.
  • 西澤 隆, 伊藤 亜由美, 元村 佳恵, 伊藤 政憲, 冨樫 政博
    2000 年 69 巻 5 号 p. 563-569
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ネットメロン(Cucumis melo L.品種 : アンデスおよびラスター)を供試し, 遮光処理が果実の成熟に及ぼす影響を調べ, 以下の点を明らかにした.1. 供試した両品種とも, 遮光処理により果肉硬度が急激に低下した.また, この果肉硬度の低下は, エチレン生成の増加と相関が認められた.2. 無遮光区で認められる急激なスクロースの蓄積が, 遮光処理により抑制された.一方, グルコースおよびフルクトースの蓄積量は, 処理間でわずかな差しか認められなかった.3. 遮光処理は, 果肉の水浸症状を拡大させた.4. 本実験の結果, ネットメロンの果実成熟期に日射量が不足すると, 果肉組織におけるスクロースの蓄積が阻害されるだけでなく, 果肉硬度の低下も引き起こすことが示唆された.
  • 松原 陽一, 粥川 由美, 福井 博一
    2000 年 69 巻 5 号 p. 570-575
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    Arbuscular菌根菌(AM菌)[Gigaspora margarita (GM), Glomus sp. R10 (GR)]が共生したアスパラガス(Asparagus officinalis L., cv. Mary Washington 500W)実生の生長に及ぼす温度ストレスの影響について調査した.変温条件[床土温度 : 25℃(16時間)/20℃(8時間)]下で7週間育苗後, AM菌感染率(1個体の根系における感染率)はGM接種区で63.0%, GR接種区で20.0%に達し, これらの植物体では菌種に関わらず共生関係成立による植物体生長促進効果が発現された.接種7週間後から低温ストレス条件(床土温度 : 15℃, 恒温条件)下で4週間育苗したが, この間, 無接種区では植物体生長が緩慢となった.AM菌が共生した植物体では, 特に4次茎以降の萌芽・伸長が促進され, その効果は特にGR接種区で大きく現れた.接種11週間後では, 感染率はGM接種区で48.9%, GR接種区で58.9%となり, 接種区の生長は無接種区よりも良好で, 植物体中のリン含有率も接種区で高かった.接種7週間後から高温ストレス条件(床土温度 : 30℃, 恒温条件)下で4週間育苗したが, この間, 無接種区では5次茎以降の萌芽が抑制された.接種区では特に5次茎または6次茎以降の萌芽・伸長が促進され, その効果はGM接種区で大きく現れた.また, 接種11週間後では, 感染率はGM接種区で66.3%, GR接種区で36.7%を示し, 両菌種で無接種区より旺盛な生育がみられた.これらのことから, AM菌が共生したアスパラガス実生において低温および高温に対する温度ストレス耐性がみられることが明らかとなり, 耐性がみられる温度域には菌種間差があることも示唆された.
  • / 諸隈 正裕, 三浦 由江, 長谷川 熹, 五井 正憲, Masanori Goi
    2000 年 69 巻 5 号 p. 576-583
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    日本の西南暖地におけるプロテア科植物栽培の基礎データを得るため, 実生から育成した8種(Banksia speciosa, Protea compacta, P. cynaroides, P. longifolia, P. macrocephala, P. neriifolia, P. repens, Telopea speciosissima)を用いて, 人工照明下および戸外条件下でのガス交換特性について検討した.人工照明下の測定では種により光合成活性に差があり, B. speciosaの光合成速度が最も高くT. speciosissimaの光合成速度およびクロロフィル含量が最も低かった.上記の中の5種(B. speciosa, P. compacta, P. cynaroides, P. macrocephala, T. speciosissima)を用いて1998年5月から1999年4月にかけて戸外条件下で光合成の季節変化および日変化を測定した.光合成速度(Anet)の季節的なパターンは種によって著しく異なり, 次の3タイプに分けることができた : 1)光合成速度が夏期と冬期に低く, 春期と秋期に高い(B. speciosa, P. macrocephala), 2)光合成速度が冬季に低く, 夏期と, 秋期に高い(P. compacta, T. speciosissimaの幼苗および開花株), 3)一年を通して光合成速度の変動が小さい(P. cynaroides).夜間呼吸速度は各種とも夏季に低下した.秋(1998年11月)と春(1999年4月)にガス交換特性の日変化を測定した結果, 光合成の日変化は季節による差が小さかった.秋の測定では, 種にかかわらず, 光合成に関する全てのパラメーターの最大値は午前9時∿10時に認められた.気孔伝導度(gs)の自然対数変換値と光合成速度との関係は2本の直線に回帰でき, B. speciosaは他の種より高い光合成効率を示した.Anetとgsとの関係からB. speciosaの高い光合成効率の原因として気孔以外の要因の関与が推察された.
  • 土井 元章, 胡 欲暁, 今西 英雄
    2000 年 69 巻 5 号 p. 584-589
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    収穫したバラ(Rosa hybrida L.)'ブライダル・ピンク'切り花を脱塩水を入れた試験管に生け, それをガラス槽の中に入れて14, 20, あるいは30℃の室内に置き, 槽中の水蒸気圧欠差を0(NVPD)または0.9kPa(IVPD)に制御した.設定したすべての温度および水蒸気圧欠差の保持条件下で, 切り花新鮮重は当初増加し, やがて減少に転じた.新鮮重の減少は, IVPD下で早く起こり, また温度が高い方が早く起こった.IVPD下では, 30, 20, 14℃それぞれで, 48, 144, 312時間目までにそのすべての切り花にベントネックが発生した.一方, NVPD下ではベントネックの発生がみられなかった.切り花の蒸散速度ならびに吸水速度は, 温度に関係なく, NVPD下よりIVPD下で著しく高かった.IVPD下では, 両速度とも当初増加し, 30, 20, および14℃下でそれぞれ48, 72および96時間目以降減少に転じた.IVPD下での最初の36時間における花弁の水ポテンシャルは, 30℃下では徐々に減少し, 14℃下ではあまり変化しなかった.一方, 浸透ポテンシャルは時間とともに増加し, 14℃下に比べて30℃下で高く推移した.花弁中の主要な可溶性糖類としては, 果糖, ブドウ糖, ショ糖が検出された.これらの糖類濃度は36時間目まで減少し続けたが, その減少は14℃下よりも30℃下でより大であった.しかし, 花弁の浸透ポテンシャルに対するこれらの糖の寄与は, わずか10%程度でしかなかった.これらの結果から, 収穫直後のバラ切り花の水関係には高水蒸気圧欠差が蒸散速度の増大を介して強く影響し, 引き続いて高温が, 一部呼吸基質の消費を伴い, 浸透ポテンシャルの上昇を介して影響することが示された.
  • 岡本 章秀, 野中 瑞生, 須藤 憲一
    2000 年 69 巻 5 号 p. 590-597
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    クルメツツジ品種群の成立に関する知見を得ることを目的に, クルメツツジ品種群の原種とされるミヤマキリシマ, サタツツジおよびヤマツツジと, クルメツツジ品種の花芽におけるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AAT)アイソザイムをポリアクリルアミドゲル電気泳動法を用いて調査し, 野生種3種とクルメツツジ品種群とのアイソザイム変異を比較した.AATには3遺伝子座(Aat-1, Aat-2およびAat-3)が認めらた.Aat-2座にはミヤマキリシマ, サタツツジおよびヤマツツジに共通な2対立遺伝子(Aat-2100およびAat-280)と, サタツツジにAat-286, ヤマツツジにAat-290のそれぞれ種特異的な対立遺伝子が推定された.Aat-3座には3種に共通な3対立遺伝子(Aat-367, Aat-358およびAat-349)が推定された.クルメツツジ品種群のAat-2座には上述した3種がもつ4対立遺伝子のほか, Aat-2112およびAat-2104が推定された.これらの結果は, クルメツツジ品種群がサタツツジおよびヤマツツジの遺伝的影響を受けていること, ならびに供試した3種以外にもクルメツツジ品種群の成立に関与している種が存在することを示唆した.
  • 武内 俊介, 野村 和成, 内山 寛, 米田 和夫
    2000 年 69 巻 5 号 p. 598-604
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    Rehder(1940)の分類によるEurosa亜属を構成する10節, 30種ならびにPlatyrhodon亜属の2種について, 葉緑体DNAの制限酵素断片長多型(PCR-RFLP)を用いて系統関係を解析した.9組のプライマーによるPCR増幅断片と14種類の制限酵素の組み合わせから335箇所の認識サイトが検出され, そのうち33サイトにおいて種間で多型が検出された.Wagnerの最節約法による多数合意樹を作成した結果, おおむねRehderによる分類学的特徴と一致した.Synstylase節とIndica節, Carolinae節とCinnamomeae節はそれぞれ同じ分岐群を形成した.雑種由来と考えられるGallicae節とCaninae節は多系統的であった.Carolinae節, Cinnamomeae節, Pimpinelifoliae節の種は, 他の節とは遺伝的に離れて位置し, これらの節が分化した後にその他の節が出現したことが示された.一方, 形態学的分類との間でいくつかの相違点が見いだされた.R. damascenaはGallicanae節に分類される種であるが, 葉緑体DNA多型からは, R. gigantea, R. moschataと同一の多型を示し, Gallicanae節とは異なる系統である可能性が示唆された.R. centifolia, R. chinensis, R. roxburghiiは種内変異が検出された.R. centifolia'Japonica'は形態的にはCaninae節の特徴を備えていたが, すべてのPCR-RFLPsがR. caninaと同一であった.R. roxburghiinとR. roxburghiin hirtulaには制限酵素認識サイトと増幅断片長の両方に多型が検出され, 葉緑体DNAレベルで両者が異なることが示された.R. hugonisとR. spinosissima luteaはPimpinellifoliae節に分類されているが, 葉緑体DNAレベルからは比較的遠縁の系統であることが示された.以上の結果から, 葉緑体ゲノムはバラ属の種間で変異に富み, 核ゲノムレベルとは異なる系統関係の解析に有効であることが示唆された.
  • 渡辺 和志, 加茂 知子, 西川 芙美恵, 兵藤 宏
    2000 年 69 巻 5 号 p. 605-610
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ブロッコリー(Brassica oleracea L. cv Italica)の小花は収穫後室温で急速に老化した.ブロッコリーの20℃貯蔵における老化の過程で小花のエチレン生成量は明確に増加し, 最大値に達した後減少した.エチレン生成量の増加はがく片の黄化(クロロフィルの減少)の急速な進行と関連していた.小花の1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)酸化酵素活性は急速に増加し, ピークに達した後急激に低下した.ACC酸化酵素活性の増減はエチレン生成のそれとほぼ平行であった.1mMジャスモン酸メチル(MJ)処理により小花のエチレン生成とACC酸化酵素活性は対照区と比較して促進され, ピークは早く, そして高い値を示した.クロロフィルの分解もMJにより促進された.1mM MJ処理によりACC合成酵素活性は対照区と比較して高まり, ACCレベルの顕著な増加に関連していた.またエチレン生成量の増大はジャスモン酸生合成の阻害剤であると考えられている10mMジエチルジチオカルバミン酸(DIECA)処理により抑制され, 遅れた.これらの結果はジャスモン酸がブロッコリー小花においてエチレン生成を促進することによって老化の促進に関わっていることを示唆している.
  • 山崎 篤, 田中 和夫, 吉田 澪, 三浦 周行
    2000 年 69 巻 5 号 p. 611-613
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ネギの中生品種の脱春化について明らかにするため, '金長'および'浅黄九条'を用い, 夜間は7℃の低温に遭遇させ, 昼温を20℃および35℃として, 40日間および60日間処理を行い, 生育, 花芽分化および抽台に及ぼす高昼温の影響について調査した.草丈は'金長'では35℃の高昼温区で低くなったが'浅黄九条'では差が認められなかった.35℃区では, 両品種において20℃区に比べて葉鞘径が小さく, 出葉数は多くなった.両品種とも花芽分化は高昼温によって抑制され, 20℃区では100%花芽分化したのに対して, 35℃区の花芽分化率は54∿75%であった.また, 花芽の発育は35℃区において20℃区よりも遅れていた.60日間処理によっても高昼温の花芽分化抑制効果は変わらず, 抽台率は両品種とも75%となった.以上の結果から, ネギの中生品種'金長'および'浅黄九条'は, 昼温35℃, 夜温7℃の処理によって脱春化を起こしうると考えられる.
  • 深井 誠一, 下村 孝, 近藤 哲也
    2000 年 69 巻 5 号 p. 614-616
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ジャノヒゲ[Ophiopogon japonicus (L.f.)Ker-Gawl](ユリ科)において多胚種子形成が確認された.開花後2ヶ月を過ぎた8月下旬に胚のうの基部側に分裂組織が現れ, なめらかな表層をもつ球状の胚に発達した.その胚の内側から新たな胚が出現し, 同様の方法で次々に新しい胚が形成され, 最終的に大きさの異なる複数の胚からなる多胚が完成した.おのおのの胚は無菌的に取り出して培養すると完全な植物体に発達した.
  • 駒村 研三, 壽松木 章, 福元 將志, 加藤 公道, 佐藤 雄夫
    2000 年 69 巻 5 号 p. 617-623
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    マルバカイドウ台リンゴ'紅玉'樹の生長および果実生産に対する窒素施用の影響を, 草生ほ場に-N(無施用), 1N(5kg・10a-1), 2N(10kg・10a-1), 4N(20kg・10a-1)の4処理区を設け, 10∿32年生の23年間にわたり解析した.窒素施用の影響は, 幹周やせん定枝量では5年目以降で差がみられ, 4N区が明らかに優った.葉中窒素含有率は窒素施用量が多いほど高く, 処理開始3年目から差がみられ, 試験後半には全処理区間で有意差がみられた.果実生産に対する窒素施用の影響は, 品質で大きく, 収量にはほとんどの年次で処理間差がなかった.一方, 窒素施用量が多いほど着色不良な果実が多く, また着色不良果は着色良果と比較し糖度および果肉硬度が低かった.以上の結果, 窒素の多量施用は樹体生長を旺盛にするものの果実品質では負の影響が大きく, 当リンゴ園土壌では10a当たり10kg以下が適正窒素施用量であるとみなされた.また, 土壌の肥沃度によっては窒素肥料無施用でもリンゴ樹の生育と果実生産が長期にわたり維持できることが明らかとなった.
  • 向井 啓雄, 高木 敏彦, 梶田 信明, 西川 咲百合, 原田 久, 村井 泰広
    2000 年 69 巻 5 号 p. 624-628
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカンの8品種の果汁における糖含量および'宮川早生'と'青島温州'の果汁と果皮における糖含量をHPLCで経時的に測定した.果汁の糖含量の変化において品種間で著しい差異は認められなかった.成熟期間中グルコース/フルクトース比にピークが認められたが, その時期的変化には品種間で著しい差異は認められなかった.果汁におけるスクロース含量の増加開始は早生の'宮川早生'と晩生の'青島温州'とも9月からであった.しかし果皮における糖含量の増加は青島温州で遅れた.ウンシュウミカンの果汁における糖集積のパターンには品種間の差がほとんどないと考えられた.
  • 小野 俊朗, 藤原 康弘, 依田 征四, 高木 伸友, 久保田 尚浩
    2000 年 69 巻 5 号 p. 629-634
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ブドウ'ピオーネ'の成木で, 毎年着色が良好な樹(A, B)と不良な樹(C, D)から穂木を採取し, それをテレキ5BB台木に接ぎ, 得られた個体を同じ園内に定植して新梢や果実の生長を比較した.さらに, 樹体間で果実着色に違いが生じる点を, 13C光合成産物の転流・分配の面から検討した.新梢生長, 新梢当たり葉面積, 葉のクロロフィル含量には着色良好樹, 不良樹間に差がなかった.果実肥大は, 良好樹, 不良樹間の差よりも樹体間差の方が大きかった.果実の糖含量と果皮のアントシアニン含量は, 成熟期間を通して不良樹よりも良好樹で多く, 特に成熟開始2∿3週間後以降に両者の差が大きく現れ, 収穫時には後者が前者の2∿3倍であった.本梢葉の13C濃度は, 処理終了時には不良樹よりも良好樹で高かったが, その後は良好樹, 不良樹とも急速に低下し, 72時間後には両者に差がなくなった.副梢葉の13C濃度は良好樹, 不良樹間に大差なかった.果実の13C濃度は, 両者とも処理終了後急速に上昇したが, 72時間後以降の上昇は不良樹よりも良好樹で大きかった.処理終了120時間後の新梢各部における13C分配率は, 果実では不良樹よりも良好樹で高かったが, 本梢葉では逆に不良樹で高かった.これらのことから, 'ピオーネ'における果実着色の樹体間差には成熟開始期以降における光合成産物の果実への転流量の違いが関係していると観察された.
  • 梁 順子, 雨木 若慶, 樋口 春三
    2000 年 69 巻 5 号 p. 635-640
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    カランコエのin vitro実験系を用い, 開花に必要な最少短日処理期間, 外植体サイズおよび花成誘導前の長日処理期間が花成反応に及ぼす影響について検討し, さらにin vivoで同様の実験を行い, 結果を比較した.花成誘導に要する最少短日処理期間は, in vitroでは5週間, in vivoでは2週間であった.しかし, 短日処理期間を長くするほど発らいが早くなる傾向は, in vivoおよびin vitroとも同様であった.展開葉1, 2および3対の外植体(茎頂部)または挿し穂を用いたところ, 発らい日数についてin vitro下では外植体サイズによる差は見られなかったが, in vivo下では展開葉1対区の発らいが展開葉2対区, 3対区よりも遅れた.花成誘導前に1∿4週間の長日処理を行うと, in vitro in vivoとも長日処理期間が長いほど発らい日数が短縮された.以上の結果, カランコエのin vitro実験系では2対展開葉までの発根した茎頂外植体を用いれば, in vivoと質的には同様の花成反応が得られた.
  • 高橋 芳弘, 前田 義志, 倉田 裕文, 東 理恵, 下川 敬之, 足立 勝
    2000 年 69 巻 5 号 p. 641-645
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    エチレン処理したウンシュウミカン果実の果皮より調製した粗酵素液中に, クロロフィルaを分解する酵素が存在することを明らかにし, この酵素反応にはH2O2とp-クマル酸が必要であること, 至適pHは酢酸緩衝液で4.0であること, タンパク質量に対する反応量は60∿180μgまでほぼ直線的であること, Km値はクロロフィルaに対して26.1μM, p-クマル酸に対して103.6μM, H2O2に対して184.2μMであることを示した.またこの反応が, チロン, Mn2+, ヒドロキノン, アスコルビン酸, n-プロピルガレート, シアン化カリウム, アザイドにより阻害されることから, フリーラジカル, O2-の関与が示唆された.C132-ヒドロキシクロロフィルaがクロロフィルaの主たる分解産物として検出されたが, 分解量に比して, その生成量は少なかった.反応液のUV/VISの差スペクトル変化をみると, 赤色領域のピークおよびソーレー帯のピークが同時に減少しており, このことから, クロロフィルaはクロロフィル-ポルフィリン環の開裂を起こして分解していくものと思われた.無色蛍光クロロフィル代謝産物(FCCs)の生成は, 2, 4-ジクロロフェノール(DCP)を用いることによって確認されたが, p-クマル酸を用いた場合には認められなかった.以上のことより, クロロフィルaは, C132-ヒドロキシクロロフィルaや, FCCsのような中間体を蓄積せずにクロロフィル開環代謝産物へと分解されることが示唆された.
  • 秋元 浩一, 内野 敏剛, 中野 浩平, 安永 円理子, 黒木 信一郎, 濱中 大介
    2000 年 69 巻 5 号 p. 646-652
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    作物を軟質プラスティックフィルム袋に入れ, 袋内のガス濃度測定を連続あるいは任意時間毎に行って呼吸速度を計測する方法は, 定温でガス濃度一定のような定常条件ばかりでなく, 大気圧のもとでダイナミックに変化する環境下での作物の呼吸反応を明らかにできる測定法と考えられる.従ってこの方法は, 流通過程のように変動することの多い環境に対する植物の呼吸反応を測定するのに有効である.本報ではこれをフレキシブル呼吸速度測定法と名付け, ガス透過のあるフィルムを用いる測定法の問題点を示し, これを解決するためにガス透過が無視できるフィルムを用いた測定法の有効性について検討した.実験にはキュウリ'シャープ1'を供試した.呼吸作用の抑制にはO2濃度の減少が大きく影響するが, CO2濃度の増大においても類似の傾向が認められ, また呼吸抑制は両方のガスの作用と言うよりも, 一方の優勢なガス濃度に支配される傾向があった.O2濃度が8%に低下するとO2消費速度はCO2排出速度より低下し, 5%まで低下するとそれまで低下していたCO2排出速度は増加に転じ, 3%では急上昇して呼吸商も増大した.このO2濃度値が嫌気呼吸発生の閾値と考えられた.大気圧から加圧状態になった時に呼吸は一時抑制される傾向があり, 変動圧力の呼吸への影響が示唆された.ガス透過が無視できるフィルムを用いたフレキシブル呼吸速度測定法は, 厳密に制御された通気法による測定結果と同等の結果となり, 環境に対する非定常過程の作物の呼吸反応をよく表すことが実証された.
  • 糠谷 明, 張 洪基
    2000 年 69 巻 5 号 p. 653-655
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    園試処方1単位, 同1/2単位, 静大処方1単位の3種類の培養液を用いて温室メロンをロックウール栽培し, 秋作における養分吸収特性を調査した.茎葉生体重は静大1単位区, 園試1/2単位区で勝り, 果重は園試1単位区で勝った.各成分の1日当たり吸収量(me・plant-1・day-1), 吸収濃度(me・liter-1)は, 3処理区とも生育前半に高く, 後半に低かった.園試1単位区の吸収濃度, 1日当たり吸収量は, 他の2処理区より大きい傾向を示した.以上の結果, 1日当たり吸収量, 吸収濃度は既報(張・糠谷, 1997)の春作と同様な推移を示したが, 生育前半は秋作より春作でやや高く, 生育後半は秋作が高い傾向を示した.
  • 藤岡 唯志, 藤田 政良, 岩本 和也
    2000 年 69 巻 5 号 p. 656-658
    発行日: 2000/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    わが国のエンドウ品種について, 未熟小葉切片を培養し, 植物体再生のための培養条件について検討した.1. わが国のエンドウ品種のシュート形成には, 未熟小葉切片の培養が良く, 供試6品種中5品種が30%以上の形成率であった.2. 播種後2日目および3日目の小葉からのシュート形成率は30%以上であり, 根形成も認められたが, 5日目および10日目の小葉切片はカルスを形成したが, 形態形成は全くみられなかった.3. 植物体再生は, シュート形成とシュートからの発根の2段階の培養により可能であった.
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