園芸学会雑誌
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70 巻, 4 号
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  • 山田 寿, 三並 純子, 天野 勝司, 門屋 一臣
    2001 年 70 巻 4 号 p. 409-415
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    '王林'のみつ症状の発生は7月初旬から8月下旬にかけて増加し, 9月下旬まで高く保たれた後, 11月初旬にかけて低下した.このみつ症状の季節的変化は気温の変化と類似し, 8月下旬の最高果実温度とみつ症状の程度との間には有意な相関があった.また, これらのみつ症状はエチレンやACCの増加のかなり前の未熟果に発生していることから, 早期みつ症状と考えられた.膜透過性はみつ症状増加の最後の時期である8月中旬から9月上旬にかけて増大し, みつ症状の程度との間に有意な相関も見られた.その他に, 8月下旬から9月上旬にかけての2週間で調査した20果実について, みつ症状の程度との間に有意な相関が認められたのは, 果肉硬度と可溶性固形物含量, 果糖, 内側果肉のブドウ糖, ソルビトール, 全糖であり, 滴定酸やデンプン, ショ糖とは認められなかった.また, ソルビトール含量の季節的変化はみつ症状の変化と平行し, 順位相関係数も内側と外側果肉でそれぞれ0.881と0.827で極めて高かった.以上の結果から, 夏季における果実の膜透過性やソルビトール含量などの生理的変化が早期みつ症状の発生に重要な役割を果たしていることが示唆された.また, 未熟期に発生する早期みつ症状の発生機構は, 成熟期の高温によるみつ症状と類似しており, 成熟期の低温で促進される通常の後期みつ症状とは異なることが推察された.
  • 高樹 英明
    2001 年 70 巻 4 号 p. 416-423
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    山菜アマドコロP. odoratum Druce var. pluriflorum Ohwiの種子の発芽様式, 休眠型, 休眠打破に関して検討した.収穫後まもない種子を10月に播種して戸外で育てた場合, 翌夏になって発芽(発根)したが, 芽の地表への出現と展葉が見られたのは翌々春の4月であった.発芽が起こるためには種子が前もって低温湿潤処理される必要があったので, 種子休眠(幼根休眠)の存在が認められたが, その休眠は5℃, 60日間処理でほぼ完全に打破された.また, 種子への5mMエテホン処理は幼根休眠打破の弱い効果を示した.幼根休眠打破後の発芽適温は17∿25℃であった.種子の低温処理を, 種子を取り出す前の果実に対して行うより, 取り出した種子に対して行うほうが, 発芽促進効果が大きかった.果実から取り出した種子を低温湿潤処理前に1週間程度風乾させても発芽に影響はみられなかった.幼根休眠打破処理後, 発芽適温下に置いた種子の発芽とその後の生長活動は90日後には停滞した.これは幼芽が休眠(上胚軸休眠)に入ったためと考えられる.幼芽が生長を再開してシュートが地表に現れ, 緑葉を展開するためには再度低温経過を必要としたので, アマドコロ種子の休眠型はBartonとSchroeder(1942)が報告したdouble dormancyに似ていた.アマドコロの上胚軸休眠打破後の地表へのシュートの抽出適温は17∿29℃であった.シュートの地表への抽出は, 幼根休眠打破後の温暖期間(21℃)と上胚軸休眠打破のための5℃処理期間の長さに大きく影響され, どちらかの期間を120日とし, 他方を90日にした場合に, シュートの地表への抽出が比較的早く, また高い率で起こった.
  • 高樹 英明
    2001 年 70 巻 4 号 p. 424-430
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    山菜オオナルコユリP.macranthum Koidz.の種子の休眠型および休眠打破に関して検討した.収穫後, 間もない種子を10月に播種して戸外で育てた場合, 翌夏に発芽したが, 芽を地表へ出現させたのは翌々春であった.発芽のためには種子が17℃以下の低温で湿潤処理されることが必要であったので, 種子休眠(幼根休眠)の存在が認められたが, その休眠は5℃, 60日間処理でほぼ完全に打破された.低温湿潤処理後の発芽適温は約21℃であった.種子の低温処理を, 種子を取り出す前の果実に対して行うより, 取り出された種子に対して行う方が発芽を著しく促進した.果実から取り出した種子を低温湿潤処理前に3日間風乾させると, 発芽が不良になった.幼根休眠打破処理後, 発芽適温下に置いた種子の発芽とその後の生長活動は60日経過後には停滞した.これは幼芽が休眠(上胚軸休眠)状態になったためと考えられる.幼芽が生長を再開してシュートが地表に現れ, 緑葉を展開するためには再度低温経過を必要としたので, オオナルコユリ種子の休眠型は前報(Takagi, 2001)で報告したアマドコロ種子の休眠型とほぼ同様であった.オオナルコユリの上胚軸休眠打破後の地表へのシュートの萌芽適温は25∿29℃であった.シュートの地表への萌芽は, 幼根休眠打破後の温暖期間(21℃)を120日とし, 上胚軸休眠打破のための5℃処理期間を90日とした場合に, 比較的早く, また高い率で起こった.
  • 下中 雅仁, 細木 高志, 冨田 因則, 安室 喜正
    2001 年 70 巻 4 号 p. 431-437
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ネギ(Allium fistulosum L.)のプロトプラスト培養系の確立を目的とし, BDS無機塩類(Dunstan and Short, 1977)を基礎としてプロトプラストの培養に好適な栄養条件を検索した.硝酸カリウムの濃度は5mMが適当であった.植物生長調整物質として, 2μMの2, 4-Dと0.2または1μMのベンジルアデニンの組み合わせが細胞分裂を促進した.培地の浸透圧は0.60osmol・kg-1前後が適した.0.2Mのスクロースと0.2Mのグルコースを組み合わせると, 細胞分裂が向上した.糖濃度を漸減することによってプロトプラストはコロニーへと発達し, 培養45日後には多くの小カルスが観察された.これらの小カルスをカルス形成培地に移植し, 約2mm大に発達したプロトプラスト由来カルスを用いて, 改変MS培地上で植物体の再生を図った.2∿3か月後には, 置床した75個体のカルス中の24個体のカルス(32%)からシュートの形成が認められた.これらのシュートを植物ホルモンを含まない培地に移植して発根を促した.ガラス温室内に移植した幼植物体は正常に生育した.
  • 加納 恭卓, 後藤 秀幸, 福田 秀範, 石本 兼治
    2001 年 70 巻 4 号 p. 438-442
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    '加賀太キュウリ'(Cucumis sativus L.)における苦味果の発生と葉中の窒素含量との関連を, 苦味果の発生が少ない系統(無苦味系統)と多い系統(苦味系統)を比較し窒素施肥量を変えて調査した.苦味のない果実の果皮とある果実の果皮における窒素含量を比較した.苦味系統では無苦味系統に比べ, 苦味果の発生率が高く, 葉中の全窒素, アミノ酸態窒素, 窒素含有率が高かった.窒素施与量を多くすると, 苦味果の発生率が高く, 葉中の全窒素とアミノ酸態窒素含有率は高く, タンパク質含有率も高くなる傾向を示した.苦味果の果皮では, 無苦味果に比べ, アミノ酸態窒素含有率は高く, タンパク質含量も高くなる傾向を示した.従って, 葉中の全窒素含有率が高くなる植物体あるいは果実では, アミノ酸, タンパク質の生成が促進され, それに伴いククルビタシンCの生合成過程に作用する種々の酵素がより多く生成される結果, 苦味果の発生あるいは果実における苦味の発現が促進されるものと推察される.
  • 早田 保義, 小谷 和弘, 李 新賢
    2001 年 70 巻 4 号 p. 443-447
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ダイコンの発芽直後の幼苗にDIF処理を施し, 胚軸部伸長がDIFに応答するか, さらに内生IAAおよびABAがDIFによる伸長制御に関与しているかを調査した.胚軸伸長は, DIF値が大きくなるに従い促進された.特に昼間の伸長が著しく, 伸長曲線は階段状となった.また, DIF値が低下するに従い昼間の伸長が減少し, 夜間の伸長が増大したため, -10DIF区の伸長曲線は+10DIF区と逆の階段状となった.胚軸部のIAA含量の消長は, 全処理区で胚軸部伸長曲線と一致した.最も胚軸が伸長した+10DIF区のIAA含量が最も高い値であった.胚軸部のABA含量は伸長が抑制された-10DIF区で高く, 特に処理開始後36時間目から著しく上昇した.以上より, DIFによるダイコンの胚軸部の伸長制御は可能であり, DIFが胚軸伸長を制御する機作として, IAAとABAの関与の可能性が認められた.
  • 宮島 郁夫, 宮原 佳代, 嬉野 健次, 道下 紋乃
    2001 年 70 巻 4 号 p. 448-452
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    九州に分布する6種の常緑性ツツジにおけるアイソザイム変異を調査し, ツツジ類の分類に対するアイソザイムマーカーの有効性について評価した.Gpi-2, Mdh-1, Mdh-2, Pgm-1およびPgm-2の3酵素5遺伝子座を調査したところ, 6種の常緑性ツツジのなかで, サタツツジのアイソザイム変異がもっとも大きかった.ミヤマキリシマ, ウンゼンツツジおよびマルバサツキの種内のアイソザイム変異は小さかったが, ヤマツツジのそれは比較的大きかった.サツキ列に属するマルバサツキとウンゼンツツジ列に属するウンゼンツツジには, いずれもGpi-2遺伝子座で, それぞれ種特異的な対立遺伝子があり, ヤマツツジ列に属する他のツツジ類とは容易に区別できた.しかし, ヤマツツジ列に属するツツジ類の種間の区別はできなかった.これまで, 著者らはサタツツジの花色変異はマルバサツキとヤマツツジとの自然交雑に由来すると考えていたが, アイソザイム分析の結果から, サタツツジの花色変異に対するマルバサツキの関与はほとんどないことが示唆された.
  • 秋山 裕, 山内 直樹
    2001 年 70 巻 4 号 p. 453-457
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ダイコン(Raphanus sativus L., '早生四十日')子葉クロロプラストにおけるクロロフィル分解酵素活性の存在と葉の老化に伴う活性変化について調べた.無傷クロロプラストはパーコール密度勾配遠心分離法で分離した.クロロフィラーゼ活性の多くはクロロプラストに存在したが, クロロフィル分解ペルオキシダーゼ活性はほとんど認められなかった.さらに, クロロフィルオキシダーゼについて調べたところ, クロロプラスト内およびそれ以外の細胞部位での存在が認められた.子葉黄化に伴うクロロプラスト中でのクロロフィル分解酵素活性の変化について調べたところ, クロロフィラーゼ活性は増大したが, 酸化酵素, 特にクロロフィル分解ペルオキシダーゼ活性は減少した.以上の結果から, ダイコン子葉においてはクロロフィラーゼが主としてクロロプラスト内でのクロロフィル分解に関与し, 一方, クロロフィル分解ペルオキシダーゼおよびクロロフィルオキシダーゼ, 特にクロロフィル分解ペルオキシダーゼはクロロプラスト外でのクロロフィル分解物の酸化に関与しているものと推察した.
  • 土師 岳, 八重垣 英明, 山口 正己
    2001 年 70 巻 4 号 p. 458-459
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    モモの溶質品種'白鳳', 不溶質品種'アーリーゴールド', および硬肉品種'有明'を供試し, 収穫後における果肉硬度とエチレン生成量の推移を調査した.溶質品種と不溶質品種では程度の違いはあるものの, 果肉硬度の低下とエチレン生成量の増加が認められるのに対して, 硬肉品種では果肉硬度の低下とエチレン生成が認められず, 溶質および不溶質品種とは明確に異なる成熟特性を示すことが明らかになった.このように硬肉品種はエチレン生成に関する変異体であり, 生食用モモ品種の日持ち性向上育種を進める上で有用な形質と考えられる.
  • 馬 彪, 樽本 勲, 劉 慶昌
    2001 年 70 巻 4 号 p. 460-462
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    Lycoris属植物における雑種胚の救済効率を高めるために, 受粉後20日目に摘出したL. sanguineaの自殖胚珠を実験材料として, 培地の組成, 基本培地およびカゼイン(CH)添加について検討した.培地組成はショ糖濃度3%, pH5.8が適当であり, また基本培地については, macro-saltsを含めたMonnier培地に基づく改良MS培地(mMS2)が優れていた.mMS2に500mg・liter-1CHを添加した培地(mMS2+500mg・liter-1CH)は, Lycoris胚培養培地として一般的な1/2MS培地に比べ, 著しく高い発芽率と実生苗形成率を得た.この(mMS2+500mg・liter-1CH)培地で胚珠培養を行った結果, L. albiflora×L. sanguineaで15.4%, またL. radiata×L. sanguineaで43.2%の種間交雑個体を得た.以上の結果から, 改良MSに500mg・liter-1CHを添加した培地(mMS2+500mg・liter-1CH)を用いる胚珠培養方法は, Lycorisの種間交雑の獲得に効果的であると考えられる.
  • / 弦間 洋, / 岩堀 修一, Jumnong Uthaibutra, Shuichi Iwahori
    2001 年 70 巻 4 号 p. 463-465
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    高Ca/Nおよび(Ca+Mg)/K比を示す土壌から収穫した, タイ産マンゴー'ナム・ドク・マイ'果実は硬度が高く, jelly seed(果心部軟化)由来の変質が少なく, 日持ちも良かった.また, 果実内Ca含量および(Ca+Mg)/K比と貯蔵性には高い正相関があった.果肉のX線微小分析は, Kが広く果肉柔組織に分布し, Ca濃度は貯蔵障害が発生する果肉内部で低いことを示した.以上から, マンゴー果実内低Ca含量がjelly seed発生に関係し, 生育園地の土壌無機成分組織に影響されることが推察された.
  • 松浦 克彦, 田辺 賢二, 田村 文男, 板井 章浩
    2001 年 70 巻 4 号 p. 466-472
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    無加温ハウス栽培の7年生イチジクを用い, 13Cをトレーサーとして, 下位節の着果肥大期と成熟期における結果枝内の光合成産物の分配について調査した.1. 下位節の着果肥大期には, 第3節葉の光合成産物は, 同じ節の果実と下の節の茎部へ多く分配され, 第6節葉では上下節へ, 第9節葉は新梢上部に多く分配された.生長第1期の果実は高いシンク活性を示すが, 果実の形を呈する(着果期)までの花序でも, 果実より低いもののシンク活性を示した.2. 収穫1週間前の油処理によって成熟促進された第5節の果実は, 高いシンク活性を示した.この期間, 第3∿7節の葉が, 第5節の果実に対する光合成産物の主な供給源であった.
  • 福田 文夫, 横山 直美, 吉村 隆二, 久保田 尚浩
    2001 年 70 巻 4 号 p. 473-480
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    モモの生理的落果の原因を明らかにするため, 核割れ, 落果ともに発生しやすい'清水白桃'の果実発育を, 核割れしやすいが落果しにくい'武井白鳳'と'めごひめ', および両者ともに発生しにくい'大和白桃'と比較した.核割れ果率は'武井白鳳'と'めごひめ'が最も高く, '清水白桃'がこれに次ぎ, '大和白桃'で低かった.'清水白桃'の落果率は極めて低かったが, 果実発育にはいくつかの特徴が認められた.すなわち, '清水白桃'では第1期後半の生長が'大和白桃'よりも大きく, 核の生長も発育期間を通して'大和白桃'よりも'武井白鳳'と'清水白桃'で大きかった.'清水白桃'では, 種子生長が'大和白桃'よりも優れた反面, 乾物率が第2期中期以降著しく低かった.'清水白桃'の胚の大きさと細胞径は発育期間を通して'大和白桃'よりも小さかった.'清水白桃'の核割れ果では, 核と種子の新鮮重が採取した果実の平均値よりも大きい傾向であったが, 種子の乾物率と胚の大きさは採取した果実の平均値と同程度かもしくは著しく小さかった.'清水白桃'の落下果実ではそうでない果実に比べて種子重, 胚乳および胚が小さかった.'清水白桃'について摘果量を2段階に変えたところ, 強摘果区では弱摘果区に比べて果実肥大が優れ, 核割れ果率が上昇し, 生理的落果率が高まった.一方, 胚の大きさは, 採取果実では核割れの有無に関係なく強摘果区で小さいものが多く, また落下果実では両区ともに小さいものが多かった.これらの結果を基に, '清水白桃'で生理的落果が起きやすい原因を考察した.
  • 大城 晃, 安間 貞夫, 石田 隆
    2001 年 70 巻 4 号 p. 481-488
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    カキ'前川次郎'の隔年結果性を生態的, 樹体栄養的特徴から解明するために, 解体前10年間の生態的特徴と6年間の栄養成分含有率について調査し, さらに, 隔年結果樹と対照樹を解体し, その器官別乾物重と栄養成分蓄積量を調査した.1. 隔年結果樹における正常花の着生は, 年次変動が大きかったが, 落果率は対照樹と大きな差はなかった.豊作, 不作年とも対照樹に比較し, 隔年結果樹の平均果重はやや小さく, 糖度も低かった.2. 隔年結果樹は樹全体の乾物蓄積量が少なく, 特に地上部の減少が顕著であった.3. 隔年結果樹は, 結実前年の葉中窒素, リンが対照樹より低く, 結実後の葉中窒素とリン, 休眠期の1年生枝のリンとカリウムが低かった.器官別無機成分含有率では, 隔年結果樹のリンは1年生枝と2年生枝を除く, 全ての器官で対照樹より低く, カリウムは地上部で低かった.4. 隔年結果樹では1年生休眠枝中のデンプンが豊作年で極めて低かった.対照樹では収量が多いにも関わらず, デンプンは高かった.器官別デンプンにおいて, いずれの器官も地上部より地下部で高かった.隔年結果樹のデンプンは前年の結実過多の影響を受け, いずれの器官でも対照樹より低かった.5. 以上のことから, '前川次郎'の隔年結果は, 着果過多が樹体のデンプンと三大無機要素を減少させ, そのことが翌年の着花数の減少を誘引し, 不作年が隔年に生じたものと考えられる.
  • 大城 晃, 安間 貞夫, 石田 隆
    2001 年 70 巻 4 号 p. 489-495
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    静岡県におけるカキ'前川次郎'の低生産樹を生態的, 樹体栄養的特徴の観点から検討した.すなわち, 低生産樹と対照樹を解体し, その器官別乾物重と栄養成分蓄積量および解体前の生態的特徴と栄養成分含有率について検討を加えた.1. 低生産樹は正常花の着生が少なく, 落果率はやや高く, 平均果重は小さかった.2. 低生産樹は対照樹と比較し, 結果樹齢の初期には木の大きさは同程度であった.その後, 少ない収穫量のため, 乾物蓄積量が多くなり, 地下部で大きく, 特に根幹, 特大根が大きく, 細根, 小根は同程度であった.3. 低生産樹は無機成分含有率について解体前の葉ではリンが, 休眠期の1年生枝では窒素とリンが低く, 解体後の器官別無機成分含有率では比較的太い根の部分で窒素, 全体的にリンが低かった.4. 低生産樹の炭水化物は対照樹と比較し, 休眠期の1年生枝および器官別で同程度含まれていた.5. 以上のことから, 低生産樹は花数が劣って, 収穫量が少なく, 地下部割合が大きいことが認められた.さらに無機成分含有率は低い一方, 冬季の炭水化物量は対照樹とほぼ同様であることが特徴として見出された.
  • 山崎 基嘉, 辻 博美
    2001 年 70 巻 4 号 p. 496-500
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    シュンギク心枯れ症の発生に, 高温時期における花芽分化が影響しているかどうかを明らかにするために, 以下の調査を行った.1. 各生育ステージの株に対して30℃の高温処理を行った結果, 生長円錐膨大期∿小花形成後期の株への処理では心枯れ症が発生したが, 栄養生長期や花弁形成期以降の株への処理では発生しなかった.2. 塩化カルシウム溶液を茎頂付近へ滴下した結果, 心枯れ症発生抑制効果が認められた上, 草丈が大きくなった.しかし, 花芽の発達を抑制させる効果は認められなかった.3. 抽だい・開花させた株を用いて, 心枯れ症の発生状況と生育調査を行った結果, 心枯れ症発生株は, 正常株と比較して, 草丈および茎長が小さく, 花らいの直径も小さかったが, 葉数は多かった.また, 心枯れ症発生株の障害葉数と葉数との間にのみ, 有意な正の相関が認められ, 葉数が多い株ほど心枯れ症を発生する割合が増加した.そして, 障害株および正常株において, 葉数と花らいの直径との間の相関分析を行った結果, ともに有意な負の相関が認められた.以上の結果から, 高温下で花芽の分化が抑制された場合に, 葉が多く分化し, それらが発達する過程で養分の競合が起こることが, 一部の葉位に心枯れ症を発生する要因の一つであると推察された.
  • 谷川 孝弘, 小林 泰生, 松井 洋, 國武 利浩
    2001 年 70 巻 4 号 p. 501-509
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    1. 'あすかの桜'と'あすかの朝'を供試し, 播種直後から30/25℃(昼/夜温)で0∿6週間育苗して苗齢を異にした苗を, 11℃で3週間低温処理し, その後30/25℃, 27.5/17.5および22.5/12.5℃で栽培したところ, 苗の抽だい株率は, 生育温度が30/25℃では13∿88%だったのに対し, 22.5/12.5℃では苗齢に関わらず100%抽だいした.3週間低温遭遇した苗に対し, 高温は抽だいを促進しなかったことから, 高温下におかれること(低温に遭遇しないこと)は直接, 形態的なロゼット化を誘導する要因と考えられる.2. 'あすかの粧'と'都桃'を供試し, 播種直後から35/25℃で0∿6週間育苗した苗を, 11℃で5週間低温処理し, その後35/25℃∿25/15℃で栽培したところ, 低温処理終了時の苗齢が'あすかの粧'では1.1節, '都桃'では2.3節以上に達していた場合に限ってすべての株が抽だいし, それ以下の苗齢では高温下で栽培するほどロゼット株率が高くなった.3. 'あずまの桜', 'あすかの桜'および'あすかの朝'を供試し, 播種直後から35/25℃で0∿14日間育苗した苗を, 11℃で1∿5週間低温処理し, その後35/25℃で栽培したところ, 3∿5週間の低温処理により, 苗齢に関わらずほとんどの株が抽だいした.同様に, 播種直後から4∿8週間高温下で育苗し, その後, 3∿6週間の低温処理を行ったところ, 5週間以上の低温処理により, すべての株が抽だいした.このことから, ロゼット性の弱いこれらの品種では, 一定の低温量を充足することが抽だいの条件であると考えられる.
  • 伊豫 知枝, 河野 澄夫
    2001 年 70 巻 4 号 p. 510-515
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    糖度選別機の糖度測定精度の維持および安定化を図ることを目的とし, 貯蔵が果実スペクトルに及ぼす影響およびその対策について検討し, 次の結果を得た.(1) 貯蔵によりリンゴ果実の近赤外スペクトルは上下にシフトした.(2) スペクトルを主成分分析した結果, 貯蔵前区, 1ヶ月貯蔵区, 3ヶ月貯蔵区および5ヶ月貯蔵区の第1主成分軸および第2主成分軸からなる平面における散布位置が異なった.貯蔵前区に比べ1ヶ月貯蔵区は第2主成分軸の負の方向に, 3ヶ月貯蔵区は第2主成分軸の正の方向に, そして5ヶ月貯蔵区は第1主成分の負および第2主成分の正の方向に分布した.(3) 貯蔵前の試料を用いてBrixの検量線を作成したところ予測標準誤差(SEP)0.35°Brixの良好な結果が得られた.しかし, この検量線による5ヶ月貯蔵区の予測結果では検量線の不適合が発生した.そこで, 全試料を統合して検量線を作成したところ, 測定精度が高く適合性のよい検量線が得られた.(4) 各貯蔵区のスペクトルを貯蔵前区の平均スペクトルへ合わせ込むMSC処理を行うことにより, スペクトルの上下シフトが軽減できた.(5) MSC処理をしたスペクトルを用いることにより, 各貯蔵区への適合性の高い検量線の開発が可能となった.
  • 金田 美奈子, 原 慶明, 鈴木 隆, 白石 卓夫
    2001 年 70 巻 4 号 p. 516-518
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    本研究は, 開花期の甘果オウトウの花芽雌ずいが褐変化する温度条件の決定を目的とし, 凍結の有無, 花芽サイズ, および花芽温度と雌ずいの障害度合について相関を調べた.-1.5℃以下まで冷却された花芽の約半数が, 凍結を開始した.内部温度-1.5∿-2.5℃で凍結過程にある花芽の雌ずいは, 30∿40%が褐変した.しかし凍結しない場合でも, -1.5℃以下まで冷却され1∿2時間経過した花芽の雌ずいは褐変し, 雌ずいの褐変化は凍結によってだけでなく, 氷点以下の非凍結状態でも引き起こされることが判明した.この凍結によらない雌ずいの褐変は, 未成熟な花芽ほどより顕著であり, 生育に伴う何らかの構造的・生理的変化によって支配されることが示唆された.
  • 浅尾 俊樹, 谷口 久美子, 冨田 浩平, 細木 高志
    2001 年 70 巻 4 号 p. 519-521
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    養液栽培された葉菜類について, 自家中毒の種間差異について検討した.6科16種の葉菜類を活性炭添加および無添加の条件において培養液非交換で栽培した.葉菜類の収量にあたる地上部の生体重は, パセリ, セルリー, ミツバ, リーフレタス, サラダナ, 葉ゴボウ, シュンギク, チンゲンサイおよびケールで活性炭添加区に比べて無添加区で劣った.活性炭無添加による生育抑制はパセリで最も著しかった.コマツナ, ハクサイ, 葉ダイコン, ネギ, シソおよびホウレンソウでは活性炭無添加による生育の抑制はみられなかった.以上より, セリ科, キク科および一部のアブラナ科に自家中毒を示す葉菜類がみられた.
  • 西村 秀洋, 渥美 茂明
    2001 年 70 巻 4 号 p. 522-524
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    大量増殖した2サイズ(直径4-8と8-12mm)の小球をそれぞれ, 0, 20, 200ppmのGA4溶液に2または20時間浸漬するか, 5℃で60日間低温処理した.その後, 小球を25℃, 12時間日長で60日間栽培した.その結果, いずれのサイズの小球も200ppm溶液に浸漬した小球は低温処理したものと同様に出芽し, また鱗片葉数は低温処理したものより多かったが, その鱗片葉は小さく, 小球重量は減少しなかった.
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