園芸学会雑誌
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71 巻, 1 号
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  • 文 斗敬, 水谷 房雄
    2002 年 71 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    '興津早生'ウンシュウミカン樹に水ストレスを与え, 成熟期の果実の各部位の可溶性固形物含量(SSC)と酸含量に及ぼす影響を調べた.対照区の果実では横方向のSSCの差は成熟に伴って大きくなった.また, 酸含量の差は横方向では果頂部で, 縦方向では果皮部で成熟に伴なって小さくなった.満開後140日から230日まで水ストレスを受けた果実のSSCは, 水ストレスを受けない果実に比べて12%-47%増加した.その際, 果梗部への影響が最も大きかった.一方, 満開後190日から230日までの水ストレスによって, 酸含量は赤道部の果心部では対照区にくらべて11-17%高くなり, 逆に果皮部では4-13%低くなった.以上の結果より, 水ストレスによって, 果実の全部位のSSCは増加するが, 酸含量は部位によって増加したり, 減少したりすることが明らかとなった.
  • 岡本 五郎, 林 温子, 平野 健
    2002 年 71 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    2倍体の2品種('キャンベル・アーリー', 'マスカット・オブ・アレキサンドリア')と4倍体の2品種('巨峰', '翠峰')の開花前の雌ずいを横断切片とし, 花粉管誘導組織(TT)の発達過程を比較した.花柱の中央部では, TT細胞の形成開始は2倍体品種の方が4倍体品種よりも早かったが, 開花期のTTの大きさやTT細胞数には両者に一定の傾向がなかった.一方, 2倍体品種の子房上部(胚珠上部の位置)では, 隔壁の外側(子室の中心側)の3∿5層の細胞が開花13日前に円形化し, 広い細胞間隙をもつTT細胞となったが, 4倍体品種では開花9または6日前で, 1または2層がTT細胞になっただけであった.しかし, この時期の子房の生長や花粉の発達は4倍体品種の方が活発であった.以上のことから, 4倍体品種の子房内におけるTTの発達不良は, 開花1∿2週間前の隔壁細胞におけるTT細胞への転換が不活発であるためといえる.
  • 近泉 惣次郎
    2002 年 71 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    '大谷'イヨの果皮障害の発生原因を明らかにすると共に, 防止対策についても二三の検討を加えた.'大谷'イヨの果皮障害は主に貯蔵中に発生するが, 樹上の果実にも認められた.'大谷'イヨの果皮障害には3種類あることが明らかになった.一つは, 果実が受ける高温並びに日射が主因となった障害である.この障害は樹上の果実に発生する.そこで, この障害に対して"日焼け症"と呼称した.二つめは収穫時には肉眼的には健全な果実でも, 貯蔵中に果実が樹上で受けた果面の陽光部に多数の小さな斑点が発生するものである.この障害に対しては"コハン症"と呼称した.他の一つは貯蔵中に発生するが, この原因は貯蔵中の低温が主因であり, -2℃の貯蔵によって発生した.この障害は果面が赤くただれた火膨れ症状を呈するため"ヤケ症"と呼称した."日焼け症"は高温や日射を軽減する袋かけにより防止できた.20℃の予措処理とポリエチレンフィルムによる個包装を組み合わせることにより, 貯蔵中に発生する"コハン症"や"ヤケ症"の発生を抑制することができた.しかし, 個包装を開封することによってこれらの障害が発生した.
  • クルス アンドレ フレイレ, 石井 孝昭, 松本 勲, 門屋 一臣
    2002 年 71 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    カラタチと二, 三の植物間のVA菌根(VAM)菌菌糸の分布状態を観察するために, 特別なアクリル製のルートボックスを用い, 温室内で実験を実施した.ルートボックス(45×15×3 cm)は, 中央区分に枠(37 μmメッシュのナイロン製フィルムを張り付け, 根の侵入は防げるが, VAM菌の菌糸は通り抜ける)を2面(枠間の長さ5 cm)設けて, 3区分した.この中央区分にGigaspora margarita胞子を接種するとともに, 外側の区分の一方にカラタチを, 他方に菌根形成が大であるバヒアグラスおよびキビや, 菌根形成が見られないか, あるいはきわめて小であるケイトウ, ダイコンおよびトマトをそれぞれ移植した.また, カラタチだけを移植したルートボックスも用意し, 無栽植区分に, フラッシュクロマトグラフィーで得られたバヒアグラス(BRE)およびキビ(MRE)根1 gFW相当量の25%メタノール溶出物(VAM菌生長促進物質を含む)を1週間ごとに収穫時まで土壌に施した.実験開始2カ月後, 各植物の根圏や, BREおよびMRE処理区分における菌糸分布をCCDカメラで観察するとともに, 各植物の菌根感染率並びに新しく形成された胞子数を比較調査した.その結果, カラタチ×バヒアグラス区やカラタチ×キビ区では, カラタチ, バヒアグラス, キビ栽植区分ともに, 菌糸密度, 根の菌根感染状態および土壌中のVAM菌胞子数は大であった.特に, カラタチ栽植区分よりもバヒアグラスあるいはキビ栽植区分の方が顕著であった.しかしながら, カラタチに, VAM菌が感染しにくいケイトウ, ダイコンあるいはトマトを栽植した区(カラタチ×ケイトウ, カラタチ×ダイコンおよびカラタチ×トマト)では, カラタチ栽植区分の菌糸密度は50%以上で, 菌根感染率および胞子数も大であったが, ケイトウ, ダイコンおよびトマト栽植区分の菌糸密度は20%程度と低く, また菌根形成も悪く, 新しい胞子がほとんど見られなかった.対照(カラタチ×無栽植)区ではカラタチ栽植区分において数多くの菌糸が観察されたが, 無栽植区分では菌糸や胞子がほとんど見られなかった.しかし, 無栽植区分に, BREおよびMREを処理したところ(カラタチ×BREおよびカラタチ×MRE), この区分の菌糸密度はいずれの処理区においても18%程度に増加し, 新しい胞子が形成されていた.根から浸出される物質がG. margaritaの菌糸生長に及ぼす影響を調査したところ, カラタチ, バヒアグラスおよびキビの根浸出物は菌糸生長を促進したが, この傾向はバヒアグラスおよびキビにおいて大であった.しかしながら, ケイトウ, ダイコンおよびトマトの根浸出物区では菌糸生長が阻害される傾向にあった.これらの結果は, 根からの浸出物が圃場においても土壌に生息するVAM菌の行動に著しく影響を及ぼすことを示唆している.また, BREおよびMREに含まれるある物質はVAM菌菌糸を引きつけるシグナルとして作用しているものと推察される.
  • 國分 尚, 安藤 敏夫, 光山 修司, 渡辺 均, 塚本 達也 /, Eduardo Marchesi
    2002 年 71 巻 1 号 p. 26-39
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    南米ウルグアイの102地点から採集したPetunia axillarisの種子より植物を育て, 園芸的に重要と考えられる3つの花器形質と7つの栄養器官形質を計測し, その変異幅を調査して, 有用と考えられる形質の集中する地域を抽出した.両形質の多くについて, 亜種axillaris, 亜種parodiiおよび2種の中間型の間に有意差がみられた.各群落は株の高さ, 株の幅, 開花時の側枝数の3形質を用いたクラスター分析により次の6つの形態型に分類できた.1)直立・高性, 2)中間型, 3)コンパクト, 4)粗放, 5)小型・ほふく性, 6)大型・ほふく性.これらの形態型と自生地の環境, 特に河岸, 海岸の群落について考察し, また種内分類群との関連についても述べた.さらに園芸的に利用可能と思われる形質をもつ群落とその育種における有用性について考察した.
  • ウディン A. F. M. ジャマル, 橋本 文雄, 西本 慎一, 清水 圭一, 坂田 祐介
    2002 年 71 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    開花前後の生育過程におけるトルコギキョウ[Eustoma grandiflorum (Raf.) Shinn.]花弁中のフラボノイド色素と花色変化について調査した.供試品種は, 'ブライダルバイオレット', 'あすかの朝', 'あずまの粧', 'ミッキーローズ'の4品種であり, 高速液体クロマトグラフによる色素分析から, 前二者はデルフィニジン主体型, 'あずまの粧'はペラルゴニジン主体型, 'ミッキーローズ'はシアニジン主体型であった.また, これらのアントシアニジンに加え, ペオニジンやマルビジンなどのメチル化アントシアニジンも含まれていることが明らかとなった.4栽培品種において, 花弁アントシアニンの生成は開花前に始まり, 開花後その総含量は増加していく傾向が認められ, 花弁フラボノール含量は, 開花前には最高値に達することが確認された.また, 開花日には, 開花前のアントシアニジン組成に加え, 他のアントシアニジンが新たに加わることが観察された.開花後は, アントシアニジンの比率はほぼ一定に留まり花色は変化しなかった.'ミッキーローズ'は, シアニジンを花弁中の優勢色素とする品種として確認された初めての例である.なお, 本研究に供試したトルコギキョウ品種では, 花弁フラボノイド色素間のコピグメント効果は発現していないものと推察された.
  • 立石 亮, 井上 弘明, 山木 昭平
    2002 年 71 巻 1 号 p. 48-55
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    アボカド果実からβ-ガラクトシダーゼのcDNAクローン(AV-GAL)を単離した.DNAおよびアミノ酸配列は他の植物のβ-ガラクトシダーゼ遺伝子と70%程度の相同性を示した.予想されるタンパク質の分子量は85.8kDaであり, 766のアミノ酸からコードされていた.クローンから予想されるアミノ酸配列は, glycosyl hydrolase family 35に属するタンパク質が持っている活性サイトと考えられるG-G-P-[LIVM](2)-x(2)-Q-x-E-N-E-[FY](アミノ酸182-194)の配列を含み, また, システインとセリン残基(アミノ酸35-36)の間で切断されるシグナルペプチドと予想される部分が存在した.サザンハイブリダイゼーションによって, β-ガラクトシダーゼはsmall gene familyを形成し, また, AV-GALの3'-側部分から作成したAV-GAL-Cプローブは特異性が高いことが示された.ノーザンブロットでは, AV-GAL-Cプローブは単一の3.3kbのRNAとハイブリダイズした.収穫後4日目の果実で, 明らかなmRNAの蓄積がはじめて検出され, 収穫後7日目の果実では減少した.β-ガラクトシダーゼのmRNAの蓄積は, 果実の軟化, エチレン生成と時間的に一致していた.さらに, 果実の追熟に伴うmRNAの蓄積は, アボカド果実の軟化に関与していると考えられるβ-ガラクトシダーゼのアイソフォームであるAV-GAL III活性の変動と一致した.以上の結果から, AV-GALは, AV-GAL IIIをコードしていると考えられた.
  • 文 斗敬, 水谷 房雄
    2002 年 71 巻 1 号 p. 56-58
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    '日南一号', '興津早生', '南柑20号', '久能温州', '青島温州', '宮内'イヨ, 天草, '吉田'ポンカン, '不知火', 'バレンシア'オレンジ, 'デルタ'オレンジ, 'マーシュ'グレープフルーツ, レモンとヘベズを用いて果形と酸含量の分布パターンの関係を調べた.その結果, 果実の横径/縦径の比(D/L)と中央部/果頂部の酸含量比(M/S)の間に高い相関が得られた(r=0.76).すなわち扁球形の度合が強まる程, 果実中央部の酸含量が相対的に高くなる傾向がみられた.
  • 平谷 敏彦, 清水 弘子, 市村 一雄
    2002 年 71 巻 1 号 p. 59-61
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ブルースター(Oxypetalum caeruleum Decne.)切り花の小花の老化におけるエチレンの関与について調べた.エチレンの曝露処理により小花の老化は促進された.小花の老化にともないエチレン生成量は次第に増加した.エチレン作用阻害剤であるチオ硫酸銀錯塩の処理により花持ちは著しく延長した.以上の結果より, ブルースター切り花の小花の老化にはエチレンが関与していることが明らかとなった.
  • 平塚 伸, 渡辺 学, 河合 義隆, 前島 勤, 川村 啓太郎, 加藤 尉行
    2002 年 71 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ギ酸カルシウムによるニホンナシの摘花効果と, その機構について検討した.1%のギ酸カルシウム溶液を受精前の雌ずいに散布すると, 柱頭への花粉の付着と花柱内の花粉管伸長が明確に抑制され, 30∿40%の果実が落果した.一方, 同濃度の酢酸カルシウムや乳酸カルシウム溶液による摘花効果は認められなかった.有機酸カルシウムが花粉発芽に及ぼす影響をin vitroで比較すると, ギ酸カルシウムは他の塩より明らかに強い抑制力を示した.有機酸について同様に調査した結果, ギ酸の発芽抑制作用は際立っていた.以上の結果より, ギ酸カルシウムによるニホンナシの摘花機構は, ギ酸による受精阻害と考えられた.摘花されなかった果実の生長や成熟期の果汁糖度は, 対照区と殆ど差が認められなかった.このように, ギ酸カルシウムはニホンナシの摘花剤として利用できる可能性が示された.
  • 川俣 昌大, 小原 均, 大川 克哉, 村田 義宏, 高橋 英吉, 松井 弘之
    2002 年 71 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    養液栽培によるイチジクの周年生産のための基礎的資料を得ることを目的に二期作栽培を試みた.養液栽培イチジクの4年生樹を早期加温して得られた一番枝を用いた一作目と, 夏季の摘心後または切り戻しせん定後に再発芽した二番枝を用いた二作目における収量および果実の品質を調査した.なお, 培養液は園試処方の1/2単位(EC値1.5dS・m-1に相当)とし, 約2週間に1度全量交換した.1. 1月10日に切り戻しせん定を行い, 加温(最低温度15℃)を開始すると, 一番枝は1月29日に萌芽し, 果実は6月7日から9月30日まで収穫できた.また, 一番枝当たりの総収量は約1.5kg(15.0個), 平均果実重は104gとなり, 平均糖度は14%であった.2. 6月14日に一番枝を約200cm(約30節)の部位で摘心後, 最上位節から発生した二番枝は6月30日に萌芽し, 果実は11月24日から2月14日まで収穫できた.また, 二番枝当たりの総収量は約1.3kg(15.8個), 平均果実重は80g, 平均糖度は16%であったが, 12∿22節位の着果率が低かった.3. 7月26日に一番枝すべてを切り戻しせん定すると, 二番枝は8月5日に萌芽し, 果実は12月6日から2月14日まで収穫できた.また, 二番枝当たりの総収量は約1.0kg(12.5個), 平均果実重は72g, 平均糖度は16%であった.以上の結果より, 養液栽培によるイチジク4年生樹の二期作では, これまで明らかにされている土耕による早期加温栽培と比較して, 一作目の早期収穫が可能となり, 高品質・高収量の果実が得られた.また, 二期作目の果実はやや小さくなるものの糖度が一作目より高くなることから, 養液栽培によるイチジク果実の周年供給が十分可能と考えられた.
  • 田村 晃
    2002 年 71 巻 1 号 p. 74-81
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    無加温ハウス栽培におけるホウレンソウとコマツナの秋から早春にかけての耐凍性の変化を1996/97年, 1997/98年および1998/99年の3ヵ年にわたって調査し, 耐凍性とハウス内気温, 葉身の水分および糖含量との関係を検討した.ホウレンソウとコマツナの耐凍性は10月から次第に増大し, 厳寒期にはホウレンソウではTEL15, TEL50(葉片組織から凍結傷害により電解質の15%ないしは50%漏出する温度)がそれぞれ-12∿-16℃, -13∿-18℃, コマツナではそれぞれ-11∿-14℃, -13∿-16℃になった.また, ハウス内気温が上昇した3月には両作物ともに耐凍性は減少した.両作物とも, 耐凍性測定前7日間の平均最低気温と耐凍性との間に極めて高い相関関係が認められ, 平均最低気温が8℃から2℃にかけては緩やかに, 平均最低気温が2℃以下になると急激に耐凍性が増大した.このような耐凍性の変化は葉身水分含量の変化と良く一致した.また, ホウレンソウでは約10∿20 mg・g-1FW, コマツナでは約10∿35 mg・g-1FWの領域では糖含量が高まるにつれて耐凍性が増大した.しかし, それ以上の領域では糖含量と耐凍性との関係は小さかった.
  • 壇 和弘, 今田 成雄
    2002 年 71 巻 1 号 p. 82-86
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    キャベツ幼植物の葉中の全フェノール物質およびアントシアニン含量は, 光が存在する低温下では増加した.一方, 常時暗黒の低温下では, それらの含量は変化しなかった.キャベツ幼植物から切り取った葉片をフェニルアラニンアンモニアリアーゼの阻害剤であるアミノオキシ酢酸で処理して低温下に置いたところ, 葉片の全フェノール物質含量は光下でも暗黒下でも低温遭遇によって急激に減少した.これに対して, 脂質の過酸化程度を示すTBA陽性物質含量は, 低温・暗黒下に置いた葉片では変化しなかったが, 低温・光下に置いた葉片で急激に増加した.以上の結果より, 低温・光下のキャベツ葉で蓄積したアントシアニンを主とするフェノール性物質は, 可視光を吸収して葉緑体に到達する光エネルギー量を減少させることによるチラコイドの励起エネルギー過剰の緩和や, 抗酸化作用により, 脂質過酸化を引き起こす活性酸素の発生増大を未然に防止する機能を有すると推察される.
  • 金澤 俊成, 照井 啓介, 及川 竜太, 洞口 拓朗, 菊地 甲, 佐藤 清高, 荒木 肇, 岡上 伸雄, 丁 志遵
    2002 年 71 巻 1 号 p. 87-93
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ナガイモ(Dioscorea opposita Thunb.)の雌株の獲得および育種素材としての利用を目的として, 中国で採集したナガイモの種子の生育特性を調査した.その結果, 種子の発芽率は11℃が最も高かった.葉数は, 1年生苗から3年生苗のいずれにおいても, 定植後40日から60日に急激に増加し, 定植後60日以降には増加は認められなかった.2年生苗では供試した19株中の15株に花序が発達して, 雄株が7株, 雌株が8株に分離した.2年生苗の雌株の葉数は全発育期間において雄株より少なかったが, 3年生苗の雄株と雌株の葉数の差は2年生苗と比較して著しく大きかった.雌株では開花後に緑色の子房が発達し, 成熟期には茶色のさく果となって裂開した.さく果は3室に分かれ, 各室に1∿2個の種子が形成されていた.むかごは葉腋に形成され, 外部形態は球形あるいは楕円体であった.1年生苗にむかごはほとんど形成されなかったが, 2年生苗の雄株の1株当たりのむかごの形成数は8∿124個, 雌株では2∿91個, 3年生苗の雄株では17∿930個, 雌株では16∿330個であった.むかご1個当たりの新鮮重については, 2年生苗および3年生苗ともに雌雄の株の間で大きな差が認められなかった.新塊茎の長さ, 新鮮重および太さは, 発芽後の年数とともに大きくなり, 3年生苗の雄株では新塊茎の新鮮重および太さが, 雌株と比較して顕著に大きかった.
  • 森下 昌三, 杉山 慶太, 齋藤 猛雄, 坂田 好輝
    2002 年 71 巻 1 号 p. 94-100
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    キュウリのうどんこ病抵抗性の簡易検定法を明らかにするとともに, うどんこ病抵抗性ハウスキュウリ品種を育成するための抵抗性素材を検索した.分生胞子懸濁液の保存試験から, 作製10日目の懸濁液においても実用上, 高い病原性を保持していることが認められ, 分生胞子懸濁液はうどんこ病菌の噴霧接種に有用であると考えられた.懸濁液の分生胞子密度は105∿106胞子/mlが適当であると考えられた.幼植物体, リーフディスク, 子葉および第1本葉を用いて抵抗性検定を実施したところ, 検定結果はいずれも品種の抵抗性程度とよく一致したことから, 子葉あるいは第1本葉を利用することで抵抗性の簡易検定が可能である.抵抗性品種の'あそみどり5号'および'夏節成'は, 25∿30℃の高温条件下では抵抗性を示したが, 15∿20℃の冷涼な温度条件下では罹病性を示した.また, 温度の日変化によっても品種の抵抗性は変化し, 30℃が8時間以下(15℃が16時間以上)の条件下では'あそみどり5号'および'夏節成'は罹病性となった.キュウリ遺伝資源295品種・系統を用いて, 20℃と26℃の温度条件下で抵抗性を検定し, 温度と抵抗性との関係から3群に分類した.温度条件にかかわらず抵抗性を示すI型には7品種・系統, 26℃で抵抗性を示すII型には34品種・系統, 温度条件によらず罹病性を示すIII型には254品種・系統が分類された.I型とII型には中国原産の品種・系統が多数含まれており, これらを育種素材として有効に活用することは意義あるものと考えられた.またI型の中で最も抵抗性が強い'PI197088-5'は, 冬春季のハウスキュウリで問題となるうどんこ病に対する抵抗性品種の育成に利用できる, 貴重な遺伝子源であると考えられた.
  • 佐藤 達雄, 吉田 誠, 大矢 武志
    2002 年 71 巻 1 号 p. 101-106
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    野菜の高温ストレス耐性を評価する手法として, パルス変調(PAM)クロロフィル蛍光測定法の妥当性を検討した.野菜17種25品種を昼温20℃/夜温10℃の人工気象室で栽培し, (1)明期14時間を, 20℃とした;(2)明期開始とともに5℃hr-1の割合で加温し, 35℃に到達後, ただちに5℃hr-1の割合で冷却して20℃とした;(3)明期開始とともに5℃hr-1の割合で加温し, 35℃に到達後, 35℃に3時間保ち, その後, 5℃hr-1の割合で冷却して20℃とした.48日後, 葉切片に45℃の高温ストレスを与えてPAM法によりクロロフィル蛍光を測定し, 光化学系IIが吸収した光あたりの電子伝達量ΦIIを算出した.その結果, 供試した作物は, 高温順化の有無に関わらず高い高温ストレス耐性を示す野菜, 高温順化によって耐性を獲得する野菜, 高温ストレス耐性が低く, かつ高温順化能のない野菜の3種に大別された.この類別は, 供試した作物の温度特性とよく合致した.従って, 本法は高温ストレス耐性の簡便な指標として, 生育適温が広い範囲におよぶ各種の作物に適用可能である.
  • 峯 洋子, 崎山 亮三, 坂 齊
    2002 年 71 巻 1 号 p. 107-113
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    循環型養液栽培の培養液除菌システムの一つである緩速砂ろ過法について, 流入菌濃度とろ過水菌濃度に基づいた除菌率の測定を試みた.トマト青枯病細菌の培養懸濁液を添加して, 濃度1.2×103 cfu・ml-1とした井戸水をろ過装置に32時間流入させた.ろ過装置の温度設定30℃の場合は, 菌流入処理開始後16時間目ごろからろ過水へ菌が流出し始め, 32時間目に最大菌濃度2.2×102 cfu・ml-1に達した.菌流入開始24時間目から36時間目までの12時間のろ過水の平均菌濃度1.7×102 cfu・ml-1を定常状態に達した値とみなし, 流入菌濃度と合わせて, 除菌率を86%と算出した.温度無制御のろ過装置では除菌率は99%となった.緩速砂ろ過がトマト青枯病の栽培システム内での拡散を抑制する効果を調べる試験を行った.緩速砂ろ過を組込まないNFTトマト栽培システムでは, 2株のトマト青枯病細菌接種株から他の株へと発症が広がり, 接種後25日目には同一ベッド内の18株すべてが枯死した.培養液の病原菌濃度は試験期間中増加し続け, 最終的には107 cfu・ml-1に達した.これに対し緩速砂ろ過を組込んだNFTシステムでは, 接種株の下流にある株への病害拡散は抑えられなかったものの, 上流にある株はすべて発症を免れた.ろ過後の培養液にトマト青枯病細菌はまったく検出されなかったが, 病害株根部を通過した後の培養液では病原菌濃度が104 cfu・ml-1まで上昇し, その濃度は試験終了時まで低下しなかった.
  • 深井 誠一, 上ヶ市 洋子, 山崎 教道, 張 偉, 五井 正憲
    2002 年 71 巻 1 号 p. 114-122
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    徳島県那賀川流域にのみ自生するDendranthema属植物の1種であるナカガワノギクの分布, 形態的変異および葉緑体DNAの変異について調査した.1. 自生地の分布はTanaka(1960)の報告とほぼ一致した.調査された36系統には, 葉および花序の形態に大きな変異があり, 開花期の早晩性も認められた.2. 特に大型の草姿をした3系統は, 気孔の形態, 根端分裂組織の染色体数, フローサイトメーターによる核DNA量の相対値などから2n=72の八倍体であることが明かとなった.3. 葉緑体DNAをPCRで増幅したところ, trnK領域で多型を示す二つの集団が自生地の中にみられた.
  • 久保 崇, 森 源治郎, 小田 雅行, 小長井 雅昭
    2002 年 71 巻 1 号 p. 123-126
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    カラー'ヘーゼル・マリー'の頂芽, 頂芽の直下から4葉目までのえき芽(1∿4葉えき芽)あるいは5∿8葉目までのえき芽(5∿8葉えき芽)の茎頂を外植体に用い, 多芽体の誘導を試みた.頂芽茎頂を外植体とした場合には頂芽由来の1本のシュートが発育し基部にカルスを形成するのみであった.一方, えき芽の茎頂を外植体とした場合には, 多芽体の形成が認められた.多芽体形成率は5∿8葉えき芽よりも1∿4葉えき芽の茎頂を外植体とした場合に高かった.次に, 1∿4葉えき芽の茎頂を外植体とし, 培地のBA濃度を検討した.その結果, 2 mg・liter-1を含む培地で多芽体形成率が最も高くなった.また, このようにして形成された多芽体は1 mg・liter-1BAを含む培地で効率的に増殖した.
  • 井上 知昭
    2002 年 71 巻 1 号 p. 127-132
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    夏咲き系'Prima Donna', 春咲き系'Royal Rose'および冬咲き系'茅ケ崎11号'の3品種を用いて, 種子春化日数(1℃で0, 10, 20, 30, 40, 60日間)と栽培時の日長(8, 10, 12, 14, 16, 24時間日長)を組合わせ, 最低夜温15℃で発らい・開花に及ぼす影響を調査した.種子無春化では3系統とも8時間日長で最も高節位で, 遅く発らいした.発らい節位には顕著な系統間差がみられ, 夏咲き系が高く, 冬咲き系が低く, 春咲き系は両系統の中間であった.3系統とも種子春化処理日数30日の発らい節位は, 種子無春化に対して夏咲き系ではほぼ14時間以上で, 春咲き系ではほぼ12時間以上で顕著に低下し, 冬咲き系では日長の影響は小さく, いずれの日長でも顕著に低下した.さらに, 種子春化処理日数60日の発らい節位は, 3系統ともやや低下したが, この段階でも夏咲き系では日長間差が大きく, 春咲き系で小さく, 冬咲き系では差が認められなかった.発らい節位と第1花の開花節位の差は, 種子春化の有無に関わらず, 冬咲き系ではいずれの日長でも, 春咲き系では12時間以上, 夏咲き系では16時間以上の日長でほとんど生じなかった.しかし, 夏咲き系と春咲き系では種子春化処理日数が短く, かつ短日ほど発らい後のアボーション, 栄養芽および落らいの発生が多く, 発らい節位よりも開花節位は高くなった.以上の結果, 3系統とも種子春化処理日数は30日以上で, 栽培時の日長は夏咲き系で16時間以上, 春咲き系で12時間以上, 冬咲き系ではいずれの日長でも開花が顕著に促進されることが明らかになった
  • 稲垣 栄洋, 寺田 吉徳, 山本 美智子, 大塚 寿夫, 本間 義之
    2002 年 71 巻 1 号 p. 133-138
    発行日: 2002/01/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ササユリ子球生産期間の短縮を目的として, ササユリ未熟種子の発芽能力と発芽を促進する方法について検討し, 以下の結果を得た.1. 種子および胚の大きさは, 交配後2ヵ月でほぼ一定値に達した.ササユリ未熟種子は交配後2ヵ月で発芽能力を有し, 交配後3ヵ月の未熟種子は80%以上の高い発芽能力を有していた.2. 交配後4ヵ月の未熟種子では高温処理により発芽率が高まったが, 交配後3ヵ月種子では高温処理に対する反応は認められなかった.3. 交配3ヵ月後の未熟種子は, 付傷処理により発芽率が高まった.また, 水酸化ナトリウム(NaOH)や次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)への浸漬処理によっても, 未熟種子の発芽率を高めることが可能であった.
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