東洋ランの
Cymbidium Elfs Castle ‘China Peak’の偽球茎から発育した根茎の繁殖への応用を目的として, 植物生長調節物質処理における根茎の反応と根茎からのエチレン発生および内生ジベレリン活性を調査した. 暗黒で発育した2~3 cmの根茎に100 ppmのアミノエトキシビニルグリシン (AVG), ウニコナゾールまたは10 ppmジベレリン (GA
3) を散布し, さらに暗黒条件あるいは明条件 (60%遮光下) で栽培した結果, 根茎の生長は光によって抑制されたが, 葉の生長は促進された. AVGの散布では根茎の長さと節間長は減少したが, 葉長と根数は増大した. GA
3散布により葉長は増大したが, 根数には影響が見られなかった. ウニコナゾール処理では根数は増加したが, 葉長には影響が認められなかった. エチレン生成量とジベレリン様物質含量の測定には東洋ランの
Cym. ‘Miss Taipei’の根茎を用い,
Cym. Elfs Castle ‘China Peak’と同様の処理を行った. エチレン生成は対照区と比べ, すべての処理区で根茎からのエチレン生成が抑制された. 対照区では, GA
3, GA
4およびGA
7様物質が検出された. GA
3様物質含量は明条件では増加したが, ウニコナゾール散布区では著しく減少した. 一方, 全GA様物質含量に対するAVG散布の影響は認められなかった. これらの結果から, 根茎の生長と発育にはジベレリンおよびエチレンの両者が関係していることが示唆され, 根茎中の植物ホルモンレベルを制御することによって, 繁殖用母株を確保できる可能性が示された.
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