園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
74 巻, 4 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
原著論文(英文)
  • 中尾 義則, 平 知明, 堀内 昭作, 河瀬 憲次, 向井 康比己
    2005 年 74 巻 4 号 p. 275-280
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    イチョウは雌雄異株であるが, 現在, 雌雄の判別は生殖器官の観察によるしかない. そこで, 染色体における雌雄の違いについて調査した. 染色体数は雌雄ともに24本 (12対) であった. 付随体を持つ染色体の数は, 雄株と雌株それぞれ3本と4本であった. これら付随体の2本はもっとも大きな中部動原体型染色体の短腕にあり, その他の雄株の1本と雌株の2本は次中部動原体型染色体の長腕にあった. CMA染色の結果, 雌雄ともに2本のもっとも大きな中部動原体型染色体の短腕と2本の次中部動原体型染色体の長腕のそれぞれの二次狭窄部に, 合計4か所の黄色いバンドが認められた. 5S rDNAと26S-5.8S-18S rDNAをプローブとしたFISH解析で両領域ともに二次狭窄部に位置し, 雌雄間に違いはなかった. また, これらの位置はCMAバンドと同様の場所に検出された. したがって, イチョウの雌雄性の判別は付随体の数によって判別できるが, 5S rDNAと26S-5.8S-18S rDNAをプローブとしたFISHシグナルやCMA染色では判別できないことが明らかとなった.
  • 八幡 昌紀, 黒木 宏憲, 國武 久登, 長野 克也, 藪谷 勤, 山下 研介, 小松 春喜
    2005 年 74 巻 4 号 p. 281-288
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    ‘晩白柚’の実生から得られた半数体における雌性および雄性配偶子の生殖機能を評価するために, 半数体と種々の二倍体カンキツ品種との交雑を行った. 半数体に二倍体の花粉を授粉した場合では全く着果しなかったが, 半数体を花粉親とした場合, 4つの交雑組合せにおいて完全種子が得られた. これらの完全種子は正常に発芽し, 多くの二倍体実生が得られた. これらの実生は旺盛に成長し, ‘晩白柚’の形態的特徴である翼葉を有していた. さらに, ‘清見’と半数体との交雑から得られた1個体の実生について, RAPD分析およびCMA染色による染色体構成を解析したところ, 雑種であることが確認された. これらの結果から, 本半数体では正常な花粉 (n=9) が形成されていることが示唆された.
  • 澤田 博正, 竹内 繁治, 松元 克俊, 浜田 博幸, 木場 章範, 松本 満夫, 渡辺 雄一郎, 鈴木 一実, 曳地 康史
    2005 年 74 巻 4 号 p. 289-294
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    Capsicum属植物が有する抵抗性遺伝子L によるトバモウイルス抵抗性は30℃以上の高温で機能しなくなり, 圃場においてはL4 遺伝子を除くL 抵抗性打破トバモウイルスの出現が問題となっている. 効果的なトバモウイルス防除方法の開発を目的に, Capsicum annuum L. ‘南部大長’が示すトバモウイルス抵抗性の諸性質を明らかにし, L 遺伝子とは異なる新たなトバモウイルス抵抗性遺伝子を同定した. ‘南部大長’は30℃でPaprika mild mottle virus日本株 (PaMMV-J, P1型) に過敏感反応を伴う抵抗性を示したが, 24℃ではPaMMV-Jは全身感染した. 一方, TMV-OM (P0型) やPMMoV (P1,2型), さらにP1型トバモウイルスであるTMV-Obはいずれの温度でも‘南部大長’に全身感染した. L1a 遺伝子ホモ植物との交雑による遺伝解析から, ‘南部大長’のPaMMV-Jに対する抵抗性は, L 遺伝子とは連鎖しない不完全優性遺伝子によって支配されることが明らかとなった. この抵抗性遺伝子をHk と呼ぶことを提唱する. 本報は, Capsicum属植物において, L 遺伝子とは異なるトバモウイルス抵抗性遺伝子についての初めての報告である.
  • 姜 奉均, 韓 尚憲
    2005 年 74 巻 4 号 p. 295-299
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    ジャガイモの種イモを噴霧耕で生産する場合, 停電によって培養液の噴霧が停止する危険性があり, また, 皮目が肥大し品質が低下することが問題となる. 培地底部から垂らした帯状の布で培養液を毛管現象によって吸い上げ, 培地内に培養液を供給して作物を栽培するシステムは, これらの問題を解決する方法として開発された. 一方, これらのシステムでは培地内に養分が蓄積すること, 培養液を吸い上げる布に根が張り付いて再使用ができないなどの問題点もある. 本研究では, 培養液は使用せず水のみを吸い上げ, 単肥あるいは市販の緩効性肥料 (Multicote, OsmocoteおよびMagamp K) を混合した培地に水分を供給する栽培システムによるジャガイモの種イモ生産性について調査した. 地上部の新鮮重は, 培養液供給処理区が72.9 g, Multicote 100 g区では66.4 gと大きな値を示した. いずれの緩効性肥料でも施肥量が多いほど地上部の新鮮重が増加した. 総塊茎重は培養液供給処理区と比べMulticote 100 g/box区とOsmocote 80 g/box区で4~13%多かった. 吸水させる帯状の布に附着した根量は, 緩効性肥料処理区で培養液供給処理区の13%であった.
  • 福原 公昭, 李 新賢, 岡村 真由美, 中原 一晃, 早田 保義
    2005 年 74 巻 4 号 p. 300-305
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    イチゴ品種‘とよのか’の香気成分をPorapak Q (PQ) カラムで抽出し, ガスクロマトグラフィ-オルファクトメトリー (gas chromatography-olfactometry (GC-O)) およびアロマ抽出物希釈分析法 (aroma extract dilution analysis (AEDA)) を用いて, 香気に寄与する成分の解析を行なった. 抽出物は自然なイチゴ様の香気を示し, 52の匂いを有する成分が含まれていた. そのうち, 14成分がFD (flavor dilution) ファクター81以上を示し, カラメル様の甘い匂いを有する2, 5-dimethyl-4-hydroxy-2H-furan-3-oneが19483と最も高く, 次にココナッツやモモ様の香気のγ-dodecalactone, γ-decalactoneおよびδ-decalactone並びに酸臭のhexanoic acidおよび2-methylbutanoic acidが243以上であり, グリーンな香気のcis-3-hexenal, trans-3-hexenol, cis-2-nonenal並びに汗様のtrans-nerolidol, 甘い香気のδ-dodecalactoneおよびvanillin, カンキツ様を伴う花様香気のlinaloolおよびシナモン様の未同定成分を併せて8成分が81であった. 上記の14成分に加え, 揮発性の高い果実様の香気を有するethyl 2-methylbutanoate, ethyl 3-methylbutanoateおよびethyl hexanoateなどのエステルのFDファクターが比較的に高く, ‘とよのか’イチゴの香気形成にこれらの成分が大きく寄与しているものと考えられた.
  • 鄭 成淑, 鄭 新淑, 大野 始, 原 徹夫, 松井 鋳一郎
    2005 年 74 巻 4 号 p. 306-310
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    東洋ランのCymbidium Elfs Castle ‘China Peak’の偽球茎から発育した根茎の繁殖への応用を目的として, 植物生長調節物質処理における根茎の反応と根茎からのエチレン発生および内生ジベレリン活性を調査した. 暗黒で発育した2~3 cmの根茎に100 ppmのアミノエトキシビニルグリシン (AVG), ウニコナゾールまたは10 ppmジベレリン (GA3) を散布し, さらに暗黒条件あるいは明条件 (60%遮光下) で栽培した結果, 根茎の生長は光によって抑制されたが, 葉の生長は促進された. AVGの散布では根茎の長さと節間長は減少したが, 葉長と根数は増大した. GA3散布により葉長は増大したが, 根数には影響が見られなかった. ウニコナゾール処理では根数は増加したが, 葉長には影響が認められなかった. エチレン生成量とジベレリン様物質含量の測定には東洋ランのCym. ‘Miss Taipei’の根茎を用い, Cym. Elfs Castle ‘China Peak’と同様の処理を行った. エチレン生成は対照区と比べ, すべての処理区で根茎からのエチレン生成が抑制された. 対照区では, GA3, GA4およびGA7様物質が検出された. GA3様物質含量は明条件では増加したが, ウニコナゾール散布区では著しく減少した. 一方, 全GA様物質含量に対するAVG散布の影響は認められなかった. これらの結果から, 根茎の生長と発育にはジベレリンおよびエチレンの両者が関係していることが示唆され, 根茎中の植物ホルモンレベルを制御することによって, 繁殖用母株を確保できる可能性が示された.
  • 清水 圭一, 徳村 哲也, 橋本 文雄, 坂田 祐介
    2005 年 74 巻 4 号 p. 311-317
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    変化アサガオはアサガオ (Ipomoea nil (L.) Roth.) の品種群の一つであるが, そのなかで“出物”と呼ばれる系統は, 花や葉の形態変異のために不稔となっており, 種子繁殖のためには大変な労力と時間を必要とする. そこで不稔となる変異遺伝子をヘテロで持つ兄弟株から未熟胚を採取し, 3 mg・L-1 NAA, 60 g・L-1ショ糖及び3.2 g・L-1ゲランガムを含むMS培地で培養し, 胚様体を形成させた. 胚様体は同じ培地に継代培養することで維持した. 胚様体を0.2 mg・L-1 IAA, 2 mg・L-1 BA, 30 g・L-1ショ糖及び10 g・L-1寒天を含むMS培地に移植するとシュートが形成された. シュートは1/2MS培地とフロリアライトを含む発根培地で発根させ, 順化した. 再生させたシュートや花の形態から目的とする出物の変化アサガオを再生する胚様体を選抜した. 選抜された胚様体は継代培養によって増殖し, 1年以上再生能力が維持された. 再生した植物体には大きな培養変異は観察されなかった.
  • 喜多 晃一, 倉重 祐二, 遊川 知久, 西村 繁夫, 半田 高
    2005 年 74 巻 4 号 p. 318-323
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    ヨウラクツツジ-ツツジ属間雑種の多くはアルビノまたは淡緑色であった. アルビノが出現する原因を明らかにするために, 属間雑種およびヨウラクツツジ属内の正逆交雑実生においてPCR-RFLP分析を行い, プラスチドDNAの遺伝性を調査した. その結果, すべてのアルビノと淡緑色個体はツツジ属のプラスチドDNAを有し, すべての緑色個体はヨウラクツツジ属のプラスチドDNAを有していた. したがって, ツツジ属のプラスチドDNAとヨウラクツツジ属のゲノムとの間で不調和が起きていることが示唆された. さらに, ウラジロヨウラクを母親にした交配で得られた実生のほとんどがプラスチドDNAの父性遺伝を示したことから, 葉緑体ゲノム-ゲノム間の不調和とプラスチドDNAの遺伝性とは互いに独立した関係にあることが示唆された.
  • 陳 敏詩, 石黒 泰, 景山 幸二, 松本 省吾, 福井 博一
    2005 年 74 巻 4 号 p. 324-329
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    バラ根頭がんしゅ病抵抗性の発現機構を明らかにするために, Agrobacterium tumefaciensの植物細胞壁への付着に着目し, バラの抵抗性の高低と菌の付着との関係について走査型電子顕微鏡を用いて比較検討した. 無接種区において抵抗性が高い‘PEKcougel’および‘Lifirane’では顆粒物質が多量に分泌され, 植物細胞壁表面が覆われていたのに対して, 抵抗性が低い‘Dukat’, Rosa multiflora‘Matsushima No. 3’およびRosa canina‘Pfänder’では顆粒物質の分泌が少なく, 細胞壁表面が露出していた. 接種区において抵抗性が低い品種では, 菌が分泌する繊維状物質によって菌相互が集団を形成するとともに, 植物細胞に付着した. 抵抗性が高い品種では, 菌が分泌する大量の顆粒物質によって植物細胞壁表面が覆われ, 菌の付着が阻害された. 接種前に加熱して殺した‘PEKcougel’の茎組織に菌を接種した結果, 顆粒物質の分泌が認められず, 抵抗性が低い品種と同様の菌の付着が観察された.
  • 窪田 聡, 山本 淳子, 高沢 容子, 逆井 肇, 渡部 一夫, 米田 和夫, 松井 信行
    2005 年 74 巻 4 号 p. 330-336
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    オドンチオダの生育・開花と個葉の光合成に及ぼす光強度と温度の影響について検討した. バックシュートとカレントシュートの最終葉の光合成は, 約30℃の葉温で著しく抑制され, 光合成速度の低下は気孔コンダクタンスの低下と関連していた. バックシュートとカレントシュートの光飽和点はわずかに異なった. これらの葉の光合成は約400 μmol・m-2・s-1の光強度が最適であった. 糖とデンプンは強光条件下ではバックシュートの偽球茎に大量に蓄積した. それらの同化産物量はカレントシュートが葉を活発に展開させている時期には著しく低下し, その後再び増加した. したがって, バックシュートの偽球茎とカレントシュートの間には同化産物の転流が起きているものと考えられた. 28/18℃で栽培された植物は, 実験開始2か月後にはすべて枯死し, 本種の高温耐性が乏しいことが示された. 生育と開花は光合成の最適条件に概ね合致する23/13℃, 最大光強度300~500 μmol・m-2・s-1で促進された.
  • プラノーム ヤンカンマン, 深井 誠一, 市村 一雄
    2005 年 74 巻 4 号 p. 337-341
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    STS無処理または処理のカーネーション (品種エクセリア) の切り花を用い, 24℃または32℃で品質保持とエチレン生成を比較した. 24℃では, STS処理によりカーネーションの品質保持期間は延長され, STS無処理のカーネーションでは, 処理9日後から花弁のin-rollingが観察された. 32℃ではSTS無処理のカーネーションにおいても, 処理14日後でもなお花弁のin-rollingが認められず, STS処理した区と同等の品質保持期間を示した. STS無処理のカーネーションでは, 24℃では処理8-9日後にエチレン生成のピークが認められたが, 32℃ではごく微量のエチレン生成にとどまった. 32℃に1日置きその後24℃に移した区では, 24℃一定の区と同様のエチレン生成のピークが認められた. 一方, 24℃に1~5日おき, その後32℃に移した区ではエチレン生成はごく微量であった. 以上の結果より, カーネーションの切り花は, 32℃におかれた場合, エチレン生成が抑えられることが明らかとなった.
短報(英文)
  • 奥田 均, 野田 勝二, 平林 利郎, 米本 仁己
    2005 年 74 巻 4 号 p. 342-344
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    成熟期の異なる13品種のウンシュウミカン (Citrus unshiu M.) を対象に芽の休眠 (paradormancy) の深さを枝挿し法により比較した. ウンシュウミカンの芽の休眠は9月下旬を中心に9月から10月にかけて深かった. そこで, 9月下旬にDTB (萌芽所要日数) を指標にして休眠の深さを比較したところ, 11月中旬までに果実が成熟する早生・極早生種および‘久能温州’は21日以内に萌芽することはなかった. それ以降に成熟する品種は21日以内に萌芽し, DTBは成熟期が遅い品種ほど短かった. これらのことによりウンシュウミカンの芽の休眠には品種間差が存在し, それは果実の成熟期と関連することが示唆された.
原著論文(和文)
  • 福田 伸二, 稗圃 直史, 山本 俊哉, 寺井 理治, 根角 博久
    2005 年 74 巻 4 号 p. 345-349
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/11
    ジャーナル フリー
    ビワがんしゅ病抵抗性遺伝子と連鎖するDNAマーカーを開発するために, ‘陽玉’× 74-1737のF1集団から抵抗性とり病性のDNAバルクを設計し, 2390種類のプライマー (セット) を用いて検討した. その内, OPAY02とOPAY16を組合わせたプライマーセットは, 抵抗性遺伝子と連鎖する857 bpのDNA断片を増幅した. このRAPDマーカーと集団との組換え価は, 1.1% (LOD値23.7) であった. さらに, このRAPDマーカーをSTS化し (STS-Psea1aマーカー), 同様の集団で検定を行った結果, DNAマーカーとしての特異性は失われなかった. また, ‘福原早生’ב白茂木’のF1集団との組換え価は, 9.3% (LOD値13.2) であった. ビワの40品種・系統を供試してSTS-Psea1aマーカーによるビワがんしゅ病抵抗性の検定を行ったところ, 88%の品種・系統で接種試験と一致したことから, 本マーカーはビワがんしゅ病抵抗性育種に有用であると示唆された.
feedback
Top