ニホンナシ果実のエチレン生成量は, 品種間で著しい差がみられ, その生成能力が貯蔵性と密接に関わっている. 著者らはこれまで, ニホンナシACC合成酵素PPACS1およびPPACS2遺伝子のRFLP分析によりエチレン生成量が著しく多い ( >10 nL・g
-1 FW・h
-1) 品種に特異的なマーカーAおよび, エチレン生成量が中程度 (0.5~10 nL・g
-1 FW・h
-1) の品種に特異的なマーカーBを同定している. そこで本実験では, 検定交雑を行い, 様々なエチレン生成を示す品種の遺伝子型の決定を行った. 全32品種の遺伝子型を決定した結果, 例えば, ‘幸水’は
aaBb, ‘新水’は
aaBB, ‘長十郎’は
aaBb, ‘慈梨’は
AaBB, ‘鴨梨’は
AABbのように各品種の遺伝子型が決定された. ‘新水’ (
aaBB) や‘六月’ (
AAbb) といったAまたはBマーカーの遺伝子型がホモの品種は, その後代すべてが多量または中程度のエチレン生成を示すと考えられるため, 貯蔵性を目的とした育種を行う場合, これらの品種を育種親と用いるのは不適であると考えられた. このようにエチレン生成に関する遺伝子型を決定することは, 今後貯蔵性の良い品種を育種する際に重要な遺伝情報となると考えられた.
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