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和田 雅人, 嬉野 紋乃, 田中 紀充, 小森 貞男, 高橋 佐栄, 工藤 和典, 別所 英男
2009 年 78 巻 1 号 p.
32-39
発行日: 2009年
公開日: 2009/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
リンゴ由来の
AFL(
Apple
FLOICAULA LEAFY)遺伝子のプロモーター領域を β-グルクロニデース(GUS)に連結した.組換えリンゴでの GUS 活性はシュート茎頂メリステムと側芽葉腋,葉原基で観察された.このプロモーター解析により
AFL1 が花芽以外の栄養成長メリステムでも発現していること,
AFL2 の発現が培養シュートと 2 年生のポット樹でも変わらないことが明らかとなった.定量 RT-PCR により栄養成長シュートの発現より花芽の発達時期の発現が両遺伝子とも高く,花芽の発達段階とともに増加することが示された.これらのことから両遺伝子の発現様式はほぼ相同であり,栄養成長時は生育環境に左右されないが,花芽発達時期には制御されていることが示唆された.各々の遺伝子に特異的なプローブによりシュート茎頂部メリステム,側芽葉腋と葉原基での発現が実生,培養シュート,徒長枝で観察された.それぞれの方法により
AFL 遺伝子発現の解析が補強された.このプロモーター GUS と
in situ ハイブリダイゼーションの組み合わせがリンゴのプロモーターの解析に有効であることが示唆された.
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山根 久代, 福田 恭子, 松本 大生, 花田 俊男, 高 マイ, 江角 智也, 羽生 剛, 冬廣 吉朗, 小川 晋一郎, 八重垣 英明, ...
2009 年 78 巻 1 号 p.
40-48
発行日: 2009年
公開日: 2009/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
ウメ(
Prunus mume Sieb. et Zucc.)の大多数の栽培品種は,S-RNase 依存性配偶体型自家不和合性を示す.本研究では,未解明の 1K0-26 の自家和合性機構を解明するため,まず,1K0-26 と同じ
S-RNase 遺伝子型で自家不和合性の系統 1C1-10 と 1K0-26 の正逆交雑を行った.その結果,1K0-26 は雌ずい側の自家不和合性認識機構は正常であるが,花粉側の認識機構に変異を生じており,自家和合化していることが明らかとなった.また 1K0-26 の自殖後代では,
S3S3 と
S3S7 がほぼ 1 : 1 で分離したことから,1K0-26 の
S3 ハプロタイプに変異が生じていることが示唆された.次いで,
S3 ハプロタイプのゲノム構造を解析した結果,花粉
S 遺伝子である
SFB3(
S haplotype-specific F-box gene)のコード領域内に約 7.1 kbp の挿入配列が存在し,予想されるアミノ酸配列は正常型
SFB でみられるものの約半分の長さになっていた.すなわち,1K0-26 は変異型
S3 ハプロタイプ(
S3' ハプロタイプ)を有し,このため自家和合性を示すものと考えられた.
S3' ハプロタイプにみられる挿入配列には,
Sf ハプロタイプの SFB に存在する挿入配列と相同性がみられる部位が存在した.そこで両者に保存されている領域よりプライマーを作製し,ウメの 86 品種・系統を供試し PCR 分析したところ,38 品種・系統が
Sf ハプロタイプのみを,1 系統が
S3' ハプロタイプのみを,また 3 品種・系統がその両者を有することが明らかになった.ウメの自家和合性のマーカー利用選抜育種について議論した.
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郷内 武, 寺上 伸吾, 西谷 千佳子, 山本 俊哉, 霞 正一
2009 年 78 巻 1 号 p.
49-54
発行日: 2009年
公開日: 2009/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
これまでに得られているニホンナシ‘巾着’の黒星病抵抗性(
Vnk)に連鎖する 5 種類の DNA マーカーの実際の育種における有効性について,‘巾着’を親に含む4系交雑で得られた 2 集団におけるマーカーの有無と接種試験結果との比較を行うことで検証した.‘巾着’の抵抗性に連鎖した DNA マーカーと病徴程度との関連について調査した結果,‘巾着’由来の STS-OPW2~STS-OPO9 の領域を持たない個体は,全て葉に胞子形成をともなう著しい病徴(罹病性)を示した.反対に,これらの領域が‘巾着’型の個体では無病徴(高度抵抗性)のもの以外に,退緑斑や壊死斑などの抵抗性反応(抵抗性)や葉柄にわずかな胞子形成(中度抵抗性)を示す個体がみられるものの病徴は総じて軽微であった.これらのことから,‘巾着’の
Vnk の導入を目的とした育種においては,STS-OPW2 と STS-OPO9 の両方を持たない個体を罹病性と判断し淘汰することで,集団の個体数を減少させ育種効率を高めることが可能であると考えられた.
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岡田 和馬, Castillo Carlos, 澤村 豊, 中西 テツ, 安田(高崎) 剛志
2009 年 78 巻 1 号 p.
55-60
発行日: 2009年
公開日: 2009/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
ニホンナシは
S 遺伝子座の複対立遺伝子に制御される配偶体型自家不和合性を示す.雌蘂側
S 遺伝子産物として S-RNase が同定され,主要品種から 10 種類(
S1~
S9 と
Sk)の
S-RNase 対立遺伝子が単離されている.ニホンナシにおける
S 対立遺伝子の多様性を調査するため,在来品種‘千両’,‘黒木’と‘宝玉’の
S 遺伝子型を解析した.
S-RNase 特異的プライマーを用いたゲノミック PCR により,各品種から 2 本の
S-RNase 断片が増幅された.これらの
S-RNase 断片を,
S1~
S9-RNase 断片を識別する cleaved amplified polymorphic sequence(CAPS)法で分析した結果,‘千両’と‘黒木’はそれぞれ
S3- と
S2-RNase 遺伝子を有することが明らかになった.CAPS 法では識別できなかったその他の
S-RNase 断片をクローニングして塩基配列を決定した結果,‘千両’はセイヨウナシの
Se-RNase を,‘黒木’はチュウゴクナシの
S12-RNase を,‘宝玉’は
Sk-RNase とチュウゴクナシの
S30-RNase を有することが判明した.したがって,‘千両’,‘黒木’と‘宝玉’の
S 遺伝子型はそれぞれ
S3Se,
S2S12,
SkS30 と同定された.以上の結果から,ニホンナシは
S1~
S9 と
Sk 対立遺伝子だけでなく,セイヨウナシやチュウゴクナシと同じ
S 対立遺伝子を有することが明らかになった.
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山崎 安津, 北島 宣, 小原 敬弘, 田中 満稔, 長谷川 耕二郎
2009 年 78 巻 1 号 p.
61-67
発行日: 2009年
公開日: 2009/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
‘無核紀州’由来の無核性の発現を組織学的に明らかにした.‘無核紀州’およびその後代の無核性品種・系統では,有核品種にみられるような完全種子や不完全種子は認められず,無核であったが,いずれも有核品種ではみられない形態を示す受精種子を形成した.すなわち,不受精胚珠よりやや大きく,中央部に膨らみがあり,種皮が未発達な可食種子が特異的に観察され,これを A タイプ種子と仮称した.ほとんどの A タイプ種子は接合子や前胚で胚の発育が停止しており,胚の発育停止時期は受粉 10 週間後以降であった.これらのことから,無核紀州型無核性の発現は,接合子や前胚で発育が停止した胚を含む,種皮が未発達な A タイプ種子を形成することで特徴づけられると考えられた.しかし,胚乳は認められたことから,胚の発育停止は胚乳の退化に起因していないことが明らかとなった.無核紀州型の無核性発現は胚の遺伝子型に左右されないことから,A タイプ種子形成は胚における遺伝子の発現ではなく,種皮組織における遺伝子の発現と密接に関連している可能性が高いと考えられた.
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神崎 真哉, 山田 昌彦, 佐藤 明彦, 三谷 宣仁, 宇都宮 直樹, 米森 敬三
2009 年 78 巻 1 号 p.
68-73
発行日: 2009年
公開日: 2009/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
カキ(
Diospyros kaki Thunb.)は果実の脱渋性の違いによって 4 つのタイプに分類されるが,そのうち完全甘ガキ(PCNAタイプ)のみが樹上で安定して脱渋する.PCNA タイプはその他のタイプ(non-PCNA タイプ)に対して遺伝的に劣性であり,また,この形質は polysomic な遺伝様式を示す一つの遺伝子(
AST 遺伝子)に支配されているとされている.これまでに
AST 遺伝子座に連鎖している 2 つの RFLP マーカー(A1 と A2)が単離されており,PCNA タイプのマーカー選抜に有効であることが示されている.本研究は,これらの RFLP マーカーを PCR マーカーに変換することを目的として行った.まず,2 つの RFLP マーカーに対応した領域を inverse PCR によって単離した.各領域の塩基配列に基づき 2 種類のプライマーセット(E4/E9r と E4/A2r)を設計したところ,RFLP マーカーに対応した 2 つの SCAR(sequence characterized amplified region)マーカー(PCR-A1 と PCR-A2)を検出することが可能となった.‘西村早生’由来の戻し交雑集団における 2 種類の SCAR マーカーの分離は,それぞれ対応する RFLP マーカーと完全に一致していた.また,‘会津身不知’由来の戻し交雑集団 FU-275 では PCR-A2 は検出されなかったが,供試した non-PCNA 個体の全てで PCR-A1 が検出された.したがって,これらの集団では SCAR マーカーによって PCNA タイプと non-PCNA タイプの識別が可能であることが示された.一方,‘黒熊’の後代である KU-325 において,マーカー領域と
AST 遺伝子座との連鎖関係が崩れている個体が確認され,‘黒熊’由来の交雑集団では,今回開発したマーカーは有効でないことが示された.これらの SCAR マーカーを利用した遺伝解析の可能性について考察した.
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遠藤 朋子, 島田 武彦, 藤井 浩, 西川 芙美恵, 杉山 愛子, 中野 道治, 清水 徳朗, 小林 恭士, 荒木 崇, ペーニャ リアン ...
2009 年 78 巻 1 号 p.
74-83
発行日: 2009年
公開日: 2009/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
遺伝子導入したカンキツの花や果実における評価を迅速に行うため,
CiFT 共発現システムを開発した.
CiFT 遺伝子と解析目的の遺伝子を共発現させるため,解析用キメラ遺伝子断片を,
P35S::CiFT 遺伝子を持つバイナリーベクターへ挿入して
CiFT 共発現ベクターを構築した.このシステムをカラタチ(
Poncirus trifoliata L. Raf)における香気性成分代謝改変に利用した.カンキツの主要な香気性成分であるリモネンの含量を低下させるため,ウンシュウミカン(
Citrus unshiu Marc.)から単離されたリモネン合成酵素遺伝子 1(
CitMTSE1)を,アンチセンス方向で
CiFT 共発現ベクターを用いてカラタチへ導入した.遺伝子導入植物は著しい早期開花性を示し,アグロバクテリウム感染後 2 年以内に結実を開始した.遺伝子導入植物の花や果実では導入遺伝子の転写物が蓄積し,内生のリモネン合成酵素遺伝子の転写物が減少していた.また遺伝子導入植物の花や果実では,他のモノテルペンに対するリモネンの割合が明らかに低下していた.これらの結果から,
CiFT 共発現システムはカンキツの花や果実における遺伝子機能解析に有効な研究ツールであり,このような解析は,カンキツの香気性成分代謝改変を始めとする応用研究にも重要であると考えられる.
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西川 芙美恵, 遠藤 朋子, 島田 武彦, 藤井 浩, 清水 徳朗, 大村 三男
2009 年 78 巻 1 号 p.
84-89
発行日: 2009年
公開日: 2009/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
カンキツの遺伝子組換え研究に有用な果皮特異的発現を制御するプロモーターを開発するために,成熟果実の果皮で高い発現を示すカンキツリモネン合成酵素遺伝子(
CitMTSE2)の 5' 上流域をウンシュウミカン BAC ライブラリーから単離し,そのプロモーター活性をボンバードメント法,アグロインジェクション法,シロイヌナズナ形質転換体を用いて評価した.
CitMTSE2 の 5' 上流約 5 kbp(PCuMTSE2)には,孔辺細胞特異的な遺伝子やストレス関連遺伝子に関連しているシス配列が含まれていた.PCuMTSE2 を
uidA 遺伝子に連結し(pSPMTSE2),ボンバードメント法によりカンキツ組織に直接導入したところ,果実で高い GUS 活性が検出された.また,カンキツ果実にアグロバクテリア液を注入したところ,PCuMTSE2 はさじょうではなく果皮に特異的な発現を制御するプロモーター活性を持つことが分かった.pSPMTSE2 を導入したシロイヌナズナでは,GUS 活性がサヤと果柄の連結部位で検出された.これらのことから,PCuMTSE2 プロモーターは,果皮組織で高発現させるプロモーターとして利用可能であり,カンキツの遺伝子操作による改変に有効であることが明らかとなった.
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斎藤 岳士, 福田 直也, 松倉 千昭, 西村 繁夫
2009 年 78 巻 1 号 p.
90-96
発行日: 2009年
公開日: 2009/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
薄膜水耕装置で栽培したトマトを用いて,塩ストレス処理が,光合成産物の分配および果実のシンク強度に関係するスクロース分解酵素の活性に及ぼす影響を評価した.塩ストレス処理として,第 1 花房の第 1 花開花から収穫まで培養液に NaCl を添加して電気伝導度を 8.0 dS/m に調整した.塩ストレス処理により果実重量は対照区の 59%まで減少した.糖度は,対照区が 6.5%であったのに対し,塩ストレス区では 9.2%であった.塩ストレス処理により,光合成速度が低下し,植物体全体の
13C 同化量は減少したものの,果実への
13C 同化産物の分配率は有意に増加した.可溶性および細胞壁結合型酸性インベルターゼの活性には,塩ストレス処理の影響はみられなかった.しかし,スクロースシンターゼの活性は,塩ストレス処理により,果実の発達期間中,常に対照区より高く推移した.これらの結果より,塩ストレス処理によるトマト果実の糖度増加の原因として,吸水制限による濃縮効果以外に,スクロースシンターゼの活性増加による光合成産物の果実への積極的な取り込みがあると考えられた.
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福岡 信之, 増田 大祐, 金森 友里
2009 年 78 巻 1 号 p.
97-102
発行日: 2009年
公開日: 2009/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
スイカ苗を 2006 年 4 月 19 日に露地に定植した.果実肥大後期のスイカ果実周辺温度と果実の糖蓄積との関係をみるため,開花後 20~48 日の間,果実にポリエチレンフィルム,赤外線カットフィルム,黒色ナイロンネットをそれぞれ被覆する区を設けた.被覆期間中の果実温は,無被覆の対照区に比べてポリエチレンフィルム被覆区で高く,赤外線カットフィルムや黒色ナイロンネット被覆区で低かった.果実肥大はポリエチレンフィルム被覆区で促進され,赤外線カットフィルムや黒色ナイロンネット被覆区で抑制された.果実の中間部と皮境部の果肉細胞の肥大成長は,前者で後者に比べて顕著に促進された.ポリエチレンフィルム被覆区では果実のいずれの部位においてもグルコースとフラクトースの含量が低かったが,赤外線カットフィルム被覆区では果実の中間部と皮境部のフラクトースとシュークロース含量が高かった.以上より,果実肥大後期の高温による活発な細胞肥大は果実の糖含量の低下に密接に関係し,この期間に赤外線フィルムを被覆して低温とすると,糖含量の高い果実が生産できると考えられた.
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志賀 一孔, 宇野 雄一, 金地 通生, 稲垣 昇
2009 年 78 巻 1 号 p.
103-108
発行日: 2009年
公開日: 2009/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
アスパラガスの葯由来カルスから再分化したシュートには倍数体や異数体が含まれていることが予想されるが,発根率が極めて低く,染色体観察による倍数性の判定は困難である.そこで,育種材料として重要な倍数体を培養中に判別するために,シュートを材料としたフローサイトメトリー分析(FCM)を行った.供試した 110 個の葯由来シュートのうち,83 個体が二倍体,21 個体が四倍体,3 個体が八倍体,3 個体が 4
x と 8
x の混数体であった.また,長径 1~1.5 mm の花蕾からの処理区において最も多くの倍数体と混数体が得られたことから,四分子に分かれる前の花粉母細胞の分裂核が融合した可能性も考えられた.FCM によって同定した倍数体のシュート(葉状茎および茎)の気孔長を走査型電子顕微鏡(SEM)により調査した.その結果,成熟度別に分類した場合に,倍数性による明確な差が示された.茎と葉状茎の気孔長は,倍数性が高まるにつれて有意に長くなった(
P < 0.001).また,葉状茎よりも茎が,未成熟よりも成熟個体の方が,有意に長い気孔を有していた.未成熟組織の気孔を SEM により観察した結果,孔辺細胞が表皮細胞より低く沈み,未発達であると考えられた.また,圃場栽培植物よりも培養シュートが,雌株よりも雄株の方が長い気孔を有することが明らかになった(
P < 0.001).これらの結果から,アスパラガスの気孔の長さは,雌雄,生育環境および発達段階などによって影響を受けることが明らかになり,それらの要因をできる限り取り除けば,気孔長は倍数性を特定する信頼の高い指標となることが示唆された.
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黄 佳盛, 李 慧津, 呂 廷森, 蔡 進来, 立澤 文見
2009 年 78 巻 1 号 p.
109-114
発行日: 2009年
公開日: 2009/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
ランタナは台湾の自然環境への適応性があり,雑草として帰化したと考えられる.野生化したランタナの類縁関係を調べるため,台湾に分布している 1 種 3 変種(38 か所で採集した 38 個体)と 5 園芸品種の合計 43 個体を集めた.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてこれらの花弁のアントシアニン組成を比較し,さらに 2 つの形態特性も検討した.HPLC 分析の結果,42 個体で,6 種類のアントシアニンのうちの 5 種類が検出された.同定されたアントシアニンはシアニジン 3-グルコシド,3,5-ジグルコシド,3-マロニルグルコシドおよびペオニジン3,5-ジグルコシド,3-マロニルグルコシドであった.各植物のアントシアニン組成の違いは,いくつかの重要な意味を持つ比率であることを示していた.これらの結果,野生化した植物を園芸品種から区別することができた.今後,さらにランタナの花色は野生化した植物と園芸品種の間で交雑され多様化していくと考えられた.
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木村 鉄也, 八木 雅史, 西谷 千佳子, 小野崎 隆, 伴 義之, 山本 俊哉
2009 年 78 巻 1 号 p.
115-123
発行日: 2009年
公開日: 2009/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
13 種類のカーネーション SSR マーカーを濃縮ライブラリー法により得た.設計された 13 種類すべての SSR プライマーにおいて,カーネーション品種‘フランセスコ’と‘バーバラ’由来である目的の DNA 断片長がそれぞれ増幅された.13 種類の SSR マーカーから得られた 32 種類の推定対立遺伝子と 15 種類の多型バンドを用いることで,突然変異品種を除く 39 品種を識別することができた.‘ウイリアムシム’の枝変わり品種である‘ユーコンシム’と‘ホワイトシム’では,‘ウイリアムシム’と同じ遺伝子型を示した.13 種類の SSR マーカーのうち,3 種類(CB026a, CB057a, CB060a)は,3 つ以上のバンドがみられたことから,複数の遺伝子座由来と考えられた.単一遺伝子座由来と考えられた他の 10 種類の SSR マーカーにおいて,各 SSR 遺伝子座毎の対立遺伝子の数は,1(CB020a と CB041a)~9(CB003a)で,平均は,3.2 であった.ヘテロ接合度の観察値(
HO)とヘテロ接合度の期待値(
HE)は,それぞれ 0~0.59(平均 0.30)及び 0~0.68(平均 0.34)であった.品種識別能力は,0(CB020a と CB041a)~0.93(CB026a)で,平均 0.49 であった.種内交雑により得られた 2 品種の親子鑑定には,単一遺伝子座由来と考えられるこれら 10 種類の SSR マーカーを用いた.両品種とも母親と父親に由来すると推察される遺伝子を持っていたことから,雑種性が示された.今回開発された SSR マーカーは,カーネーション品種の同定と親子鑑定に有効であった.
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山田 寿, 安藤 友美, 津谷 健太, 天野 勝司, 山本 善彦
2009 年 78 巻 1 号 p.
124-130
発行日: 2009年
公開日: 2009/01/28
ジャーナル
オープンアクセス
半乾燥柿であるあんぽ柿の製造中に発生する褐変のメカニズムを解明するため,酵素的および非酵素的褐変に関連するいくつかの成分を調査した.‘愛宕’の褐変は水分含量が約 50%以下になると発生し始め,手もみ処理は乾燥と褐変を促進した.ポリフェノール含量は褐変が生じる前の最初の 7 日間で急激に減少した.ポリフェノール酸化酵素活性は乾燥中徐々に低下し,乾燥 + 手もみ区が乾燥区よりも低く推移した.アスコルビン酸は乾燥中減少したが,乾燥 + 手もみ区の方が減少割合は大きかった.デヒドロアスコルビン酸は中期にやや停滞したが,乾燥中徐々に減少し,後半には乾燥 + 手もみ区の方が低かった.アスコルビン酸の非酸化的分解産物であるフルフラールは乾燥 + 手もみ区と乾燥区でそれぞれ 4 日目と 10 日目から増加した.果糖とブドウ糖はショ糖の急減にともなって最初の 4 日間で急増し,乾燥 + 手もみ区が乾燥区より高く推移した.アミノ酸含量は乾燥中徐々に減少し,処理区間に差は認められなかった.果糖から褐変物質が生成される際の中間物質とされるヒドロキシメチルフルフラールは乾燥中減少し,その減少割合は乾燥 + 手もみ区の方が大きかった.以上の結果から,‘愛宕’のあんぽ柿の褐変にはアスコルビン酸の酸化的および非酸化的分解経路が主に関与しており,酵素的褐変やメイラード反応はあまり重要な役割を果たしていないことが示唆された.
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