Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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82 巻, 2 号
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ORIGINAL ARTICLES
  • 森本 拓也, 平松 裕子, 伴野 潔
    2013 年 82 巻 2 号 p. 97-105
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル オープンアクセス
    リンゴの果皮色を呈すアントシアニンは,抗酸化性等の機能性が注目されている.また近年では果皮のみならず,果肉内部にもアントシアニンを蓄積する品種が育成されている.本研究では赤果肉形質を有する‘メイポール’の交雑後代(‘ふじ’ × ‘メイポール’,‘つがる’ × ‘メイポール’)を用いて,葉,果皮,果肉着色形質の遺伝解析を行い,‘メイポール’の赤果肉形質に連鎖した果実成熟に関する QTL の同定を試みた.F1集団における表現型の分離から赤葉,赤果皮,縞状果皮,赤果肉形質はそれぞれ一対の優性遺伝子によって支配されることが示唆され,赤葉形質は赤果肉形質と共分離した.着色関連遺伝子を解析すると,‘ふじ’由来の縞状着色形質は果皮のアントシアニン合成を制御する MdMYBA と対応しており,MdMYBA の遺伝子型が果皮の着色パターンにも関与することが推察された.さらに,‘メイポール’由来の赤葉/赤果肉形質は MdMYB10 と共分離し,連鎖地図上において,MdMYBAMdMYB10 は両品種の第9連鎖群下部の対応する領域にマッピングされたことから,これらの遺伝子が対立遺伝子であることが支持された.一方,各着色形質と果実成熟期との関連を検討すると,白果肉系統と比べて赤果肉系統の果実は早期に成熟する傾向が顕著に認められた.さらに QTL 解析を行うと,主要な QTL(LOD:8.94,寄与率:35.6%)が‘メイポール’の MdMYB10 近傍に検出され,赤葉/赤果肉形質には果実の早生性を支配する因子が密接に連鎖することが示唆された.
  • 山本 雅史, 土持 由, 二宮 隆徳, 古賀 孝徳, 北島 宣, 山﨑 安津, 寺本(稲福) さゆり, 楊 学虎, 楊 暁伶, ...
    2013 年 82 巻 2 号 p. 106-113
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル オープンアクセス
    日本,中国およびインドネシアの在来カンキツを含むカンキツ属 97 種類,キンカン 4 種類およびカラタチ 2 種類を供試して,cleaved amplified polymorphic sequence(CAPS)分析による葉緑体 DNA(cpDNA)の多型について検討した.全てのプライマーと制限酵素の組み合わせで出現したフラグメントのタイプから供試種は 7 種類に区分できた.タイプ 1(38 種類):C. macropteraC. hystrixC. aurantifoliaC. medicaC. limonC. grandisC. aurantiumC. myrtifoliaC. bergamiaC. rokugatsuC. sinensisC. sphaerocarpaC. nobilis(クネンボ),C. kerajiC. otoC. tarogayoC. suavissima,中国雲南および広西のマンダリン,中国雲南の雑種,C. madurensisFortunella;タイプ 2(1 種類):C. latipes;タイプ 3(2 種類):C. ichangensisC. junos;タイプ 4(6 種類):C. tachibanaC. depressa;タイプ 5(18 種類):C. jambhiriC. tankanC. sunkiC. reshniC. depressa,鹿児島並びに中国雲南および広西のマンダリン;タイプ 6(36 種類):C. nobilis(キング),C. unshiuC. reticulataC. genshokanC. clementinaC. succosaC. suhuensisC. tardiferaxC. erythoraC. kinokuniC. oleocarpaC. leiocarpa,鹿児島,中国広西,浙江,雲南および広東並びにインドネシア西スマトラのマンダリン;タイプ 7(2 種類):Poncirus. これらの結果に基づいてカンキツにおける葉緑体 DNA の分化について考察した.
  • 張 春芬, 津國 達朗, 池田 みゆき, 佐藤 守, 岡田 初彦, 大橋 義孝, 松野 英行, 山本 俊哉, 和田 雅人, 吉川 信幸, 松 ...
    2013 年 82 巻 2 号 p. 114-124
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル オープンアクセス
    リンゴの葯培養で効率的に胚様体を形成させる手法の確立を目的として,花粉ステージと花蕾ステージの関係,および葯培養前の花蕾の低温処理期間中の花粉ステージの変化と胚様体形成率との関係を調査した.まず,花蕾ステージを“Tight cluster”,“First pink”,“Pink”,“Full pink”の四期に分類し,形態的特徴をもとに各ステージの特徴を定義した.花粉ステージは,“四分子期”,“一核期前期”,“一核期中期”,“一核期後期”,“二核期前期”,“二核期後期”,“花粉成熟期”の七期に分類し,各期の形態的特徴を明らかにした.“Tight cluster”期の花粉は主に四分子期から一核中期に,“First pink”期は主に一核中期から一核後期に対応していた.また,“Pink”期は二核後期,“Full pink”期は花粉成熟期に対応していた.25 日間の花蕾の低温処理は胚様体形成に効果的であった.なかでも,低温処理 25 日目に一核後期から二核前期であった花粉は効率よく胚様体を形成した.この低温処理期間と花粉ステージの関係を実現するためには,25 日間の低温処理期間中の花粉ステージの進行を見越して,多くの花粉が一核前期と二核前期にあたる“Tight cluster”後期から“First pink”前期にかけての花蕾を採取することが適当を判断した.獲得したシュートについて SSR マーカーによる調査を行ったところ,すべてのシュートは半数体由来であることが判明した.
  • 後藤(山本) 奈美, 東 暁史, 三谷 宣仁, 小林 省藏
    2013 年 82 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル オープンアクセス
    ブドウ野生種,および栽培品種の関係を知るため,幅広い試料(北米系野生種,東アジア系野生種,Vitis viniferaV. vinifera × V. labrusca 栽培品種)を用いて,8 SSR 遺伝子座の解析を行った.SSR genotyping によって,野生種は栽培品種よりも高度に多様であることが示された.試料間の距離(1‐共有アレル率)をもとに主座標分析(PCoA)を行ったところ,野生種と栽培品種が明確に分離した.日本の在来ブドウ品種‘甲州’および中国の在来ブドウ品種‘牛奶’は,若干の特異的なアレルを持っていたが,PCoA で V. vinifera品種群の中にプロットされた.
  • 福田 伸二, 西谷 千佳子, 稗圃 直史, 富永 由紀子, 根角 博久, 山本 俊哉
    2013 年 82 巻 2 号 p. 131-137
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル オープンアクセス
    日本のビワ品種や遺伝資源合計 94 品種・系統を供試して,リンゴとナシ由来の SSR マーカーを用いて,遺伝的多様性の解析を行った.リンゴ由来の SSR マーカーでは 24 種類のうち 14 種類が,ナシ由来の SSR マーカーでは 24 種類のうち 10 種類が,ビワで明確なバンド増幅を示した.選択した 9 種類の SSR マーカーを用いて,日本や他国から導入した 61 の栽培品種,日本で採取した 33 の自生系統の合計 94 品種・系統について解析した.SSR 遺伝子型の類似度を基に UPGMA 法で作成した樹形図では,2 つの明確なグループが見出された.1 つのグループは日本や他国から導入した栽培品種,もう 1 つのグループは日本の自生系統のみから構成されていた.同一の SSR 遺伝子型を示す品種が見出され,異名同品種または変異体品種と推察された.このように,SSR マーカーは,ビワの遺伝的同定に有効であった.現在の日本のビワ品種の成り立ちについて考察した.
  • 地子 立, 荒木 肇
    2013 年 82 巻 2 号 p. 138-144
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル オープンアクセス
    雪の下で長期間貯蔵したアスパラガス(Asparagus officinalis L.)の 1 年生株から夏季にホワイト若茎を収穫する可能性について 2 シーズン(2008~2009 年および 2009~2010 年の実験)検討した.2008 年 11 月 6 日および 2009 年 11 月 12 日に掘り取った 1 年生株をコンテナの中の土に埋め込み,約 7 か月間雪の下に貯蔵した.貯蔵後,貯蔵根の糖含量を測定し,20℃ の暗室で若茎収量を調査した.充分な量の雪に覆われた場合,根株は安定的に 0~1℃ で貯蔵された.両年ともに貯蔵期間が長くなるほど,貯蔵根の糖含量は減少する傾向が認められた.また,夏季収穫では冬季収穫と比較して,若茎収量は低くなる傾向にあった.これらの結果より,貯蔵期間における貯蔵根の糖含量の減少は若茎収量に大きく影響すると思われた.しかしながら,両年ともに 6.5 か月以上貯蔵した 900 g の 1 年生根株から 190 g 以上の規格内若茎が得られており,簡易かつ低炭素システムである雪山を活用して貯蔵された 1 年生根株からホワイトアスパラガスの商業的な夏季生産が可能であることが示唆された.
  • 岸本 久太郎, 八木 雅史, 小野崎 隆, 山口 博康, 中山 真義, 大久保 直美
    2013 年 82 巻 2 号 p. 145-153
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル オープンアクセス
    現在のカーネーション(Dianthus caryophyllus L.)園芸品種の多くは微香性で,その香りは主に安息香酸メチルで占められている.強いあるいは特徴的な芳香を有するナデシコ属野生種は,カーネーションの芳香性向上に有用な遺伝資源の可能性がある.われわれは,カーネーションと芳香性野生種の種間交雑系統の花の香りをガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)を用いて調査し,芳香性カーネーション育種における野生種の有用性を評価した.多様な芳香族化合物を持つ D. hungaricus と安息香酸メチルが香気成分を独占的に占めるカーネーションを交雑したが,その種間雑種には,芳香族化合物の多様性は獲得されていなかった.また,われわれは,香気成分の多様性が乏しいカーネーション園芸品種と芳香性野生種の種間交雑によって得られた既存の雑種系統を解析した.カワラナデシコ(D. superbus var. longicalycinus)は,β-オシメンや β-カリオフィレンを豊富に有していた.これらのテルペノイドは,本野生種とテルペノイドを欠いたカーネーション系統との種間交雑種において,主要な香気成分として獲得されていた.3 種類の未同定の野生種(Dianthus sp. 4,5 および 6)は,オイゲノール,ベンジルアルコール,o-アニス酸メチル,サリチル酸メチルを含む多様な芳香族化合物を豊富に有していた.これらの芳香族化合物は,カーネーションと野生種の種間交雑種においても認められ,その量は,親系統のカーネーションよりも増加していた.ナデシコ属野生種の香気成分発散能はほとんどの交雑種に遺伝しており,化合物の種類や量は親系統のカーネーションより増加する傾向にあったたものの,特定の遺伝様式は見出せなかった.いくつかの交雑種の花からは遺伝した化合物に由来する香りが感じられ,種間交雑の効果が確認された.カワラナデシコや Dianthus sp. 4,5 および 6 は,カーネーションにテルペノイドや多様な芳香族化合物を導入するために有望な交雑相手であると考えられる.
  • 落合 正樹, 松本 省吾, 前坂 昌宏, 山田 邦夫
    2013 年 82 巻 2 号 p. 154-160
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル オープンアクセス
    花卉において開花現象は観賞価値に関わる重要な要素である.トルコギキョウの開花時の花弁では新鮮重や形状,大きさ,色が大きく変化するとともに,細胞壁の伸展性の上昇も見られた.これは開花における花弁の成長が主に細胞肥大によってもたらされていることを示している.一般的に細胞壁の伸展性の制御に関わるタンパク質としてはエクスパンシンとエンド型キシログルカン転移酵素/加水分解酵素(XTH)が知られている.そこで本研究ではトルコギキョウにおいて開花現象とエクスパンシンおよび XTH の関与について調査した.展開中の花弁よりクローニングを行ったところ 3 種類のエクスパンシンと 1 種類の XTH の cDNA が得られた.発現解析によりこれらの遺伝子は主に花弁で発現することが判明した.さらに,各タンパク質に特異的な抗体を作製しウェスタンブロット法により花弁でのタンパク質の量的変動を調査した.その結果,エクスパンシンは蕾から開花中にかけて蓄積し,XTH は花弁の展開が起きる期間にのみ蓄積することが判明した.今回,タンパク質量の変化を観察できたことでエクスパンシンおよび XTH が開花現象に関与していることがより直接的に示唆された.
  • 川原田 将也, 野村 佳宏, 原田 太郎, 森田 重人, 増村 威宏, 山口 博康, 棚瀬 幸司, 八木 雅史, 小野崎 隆, 佐藤 茂
    2013 年 82 巻 2 号 p. 161-169
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル オープンアクセス
    カーネーション花弁から,クチクラワックスの前駆物質である超長鎖脂肪酸合成に関わる脂肪酸鎖長延長酵素複合体を構成する 3 種の酵素の遺伝子(DcKCR1, DcHCD1, DcECR1)をクローニングして構造を明らかにした.この 3 種の遺伝子と,以前に明らかにされていた DcKCS1 とを合わせて,カーネーションの超長鎖脂肪酸合成に関与する複合体を構成する 4 種の異なる酵素遺伝子の cDNA が,1 つずつ明らかにされた.4 種の酵素遺伝子は,カーネーション‘ライトピンクバーバラ’の開花時の花弁で活発に発現していたが,老化時の花弁では発現量が激減した.4 つの酵素遺伝子の発現は,開花時の花弁の展開生長に伴うクチクラワックス成分の供給に関与していると推察された.長寿命品種である‘ミラクルルージュ’では通常の花持ち期間を示す‘ライトピンクバーバラ’に較べて,花弁表皮のクチクラ層の厚さが 1/4 であり,また,DcKCS1DcKCR1DcHCD1 の発現も極端に少なかった.これから,‘ミラクルルージュ’の長寿命性はクチクラ層の形成とは関係しないことが推定された.
  • Eun-Mi Yang, Ho-Min Kang, Joung-Min Kim, Jongyun Kim, Hye-Sook Jang, C ...
    2013 年 82 巻 2 号 p. 170-178
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル オープンアクセス
    切り花の色の見え方は光環境によって変化する.我々は目視による色測定によって 6 種の異なる花色を持つバラ(白,赤,オレンジ,黄色,紫,赤紫)が生花店の光環境によってどのように変化するのかについて調査した.目視による色測定は国際照明委員会(CIE)の測色法を用いて 3 人の専門家によって行われた.6500 K(対照区),3500 K,2800 K の蛍光灯および 6500 K の LED ランプを実験に用いた.色の見え方はランプの種類やバラの花色によって変化した.対照区として用いた 6500 K の蛍光灯に比較して 2800 K の蛍光灯では白色のバラ以外のすべての花色のバラで知覚色が大きく変化した(ΔE > 10).3500 K の植物育成用ランプでは紫色のバラの知覚色が大きく変化した(ΔE > 34).6500 K の LED ランプを用いた場合に,すべての花色の ΔE の平均値が最も小さくなった.赤,オレンジ,黄色のバラでは 2800 K のランプに比較して 6500 K の LED ランプで見た目の色の違いが大きく,これは LED ランプのスペクトルが狭いことが原因であると考えられた.様々な花の本来の色を表現するためには,生花店の照明として自然光に近い白色蛍光灯を用いるのが適切である.
  • 棚瀬 幸司, 大津 佐和子, 佐藤 茂, 小野崎 隆
    2013 年 82 巻 2 号 p. 179-187
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル オープンアクセス
    花持ちに優れるカーネーション‘ミラクルシンフォニー’(MS),系統 006-13,系統 62-2,対照品種‘ホワイトシム’(WS)の花におけるエチレン生成,エチレン生合成遺伝子,老化関連遺伝子の解析を行った.WS では収穫 6 日後に典型的な老化の兆候である花弁のインローリング,生重の急激な減少,急激なエチレン生成量の増加が観測された.MS,006-13,62-2 では典型的な老化の兆候は観察されなかったが,花持ち日数と収穫 15 日後のエチレン生成量に違いが見られた.006-13,62-2 では収穫 15 日後に低レベルのエチレン生合成遺伝子(DcACS1DcACO1)の発現が確認され,わずかにエチレンを生成していた.一方,MS ではエチレン生成量,DcACS1DcACO1 の発現のいずれも極めて低レベルであった.006-13,62-2 では収穫 15 日後に老化関連遺伝子(DcCP1DcbGalDcGST1DcLip)の発現上昇が観察された.これらの遺伝子は外生エチレン処理により発現量が上昇することから,わずかなエチレン生成が老化関連遺伝子の発現を誘導し,花弁の老化を引き起こすと考えられる.一方,外生エチレン処理により発現が低下する DcCPIn は老化とともに発現量が低下するが,MS,006-13,62-2 における収穫 15 日後の DcCPIn の発現量には大きな差が見られなかった.これらの結果から,花持ちに優れるカーネーションでは,エチレン生成量,エチレン生合成遺伝子および老化関連遺伝子の発現量が低下し花持ちが延長している可能性が示唆された.
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