山腹斜面における降雨流出機構を検討するため,新第三紀丘陵性山地において,土層構造の調査,水分変動・地下水位変動の観測を行なった.まず,土研式簡易貫入試験機を用いた斜面の土層構造の調査結果を基に,明瞭な不透水性の基盤を持たない実際の斜面での流出発生機構を検討し,そのような斜面での洪水流出に寄与する飽和側方流の発生場として,貫入抵抗値Ne=20に対応する深さを連ねた面を考え,これを水文学的基盤と名付けて,その特性を考察した. 次に,降雨にともなって山腹斜面内に発生する地下水面の観測から,飽和側方流が山腹斜面流出の主体であることを確認するとともに,急な山腹斜面より構成される小流域の流出機構として,地上流の発生を重視した従来のvariable source area conceptに代わって,水文学的基盤上の飽和側方流の発生を重視するvariable source volume conceptとも言うべき考え方を検討した.まだ検証は十分ではないが,急勾配・脆弱な地質・森林の繁茂を特徴とするわが国の山腹斜面では従来のsource areaの概念よりも有効であろう.
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