三宅島は円錐形をしており,直径約8.7km,標高814mの小規模な火山島である.三宅島全域にもたらされる降水量と,酸素安定同位体比の時空間変化を明らかにするために,島全体に14ヶ所の降雨採水器を設置し,1994年の7月から1995年の7月にかけて10回のサンプリングをおこなった.その結果,三宅島における降水の酸素安定同位体比の時系列変動は日本本土のそれに従うにもかかわらず,高度効果は-0.1~-0.17‰/100mとなり,日本本土にて観測された値(-0.2~-0.25‰/100m)よりも低い値を示した.しかしながら,世界中の他の地域から報告されたデータを用いた再解析を試みたところ,高度効果は標高に依存していることが明らかになった.この結果を考慮にいれると,三宅島における高度効果は,特別に小さいわけではない.また,年間降水量の分布と酸素同位体比の加重平均値の分布には,地域毎に大きな差が見られた.降水量が最も大きくなったのは,風向き斜面の標高400~600mの地域であった.それに対して,同位体が最も軽い値をもったのは,その反対斜面の標高400~600mであった.以上より,三宅島における降水の酸素安定同位体比時空間変動には,同位体の雨量効果,高度効果が大きく影響していることが明らかになった.さらに,雨陰効果と思われる現象も確認された.
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