河道にダイナミックウエイブモデル, 氾濫計算に不等流モデル, 地下水挙動にダルシー則を用いて構築されたモデルの数値差分計算によって, メコン河下流域の洪水氾濫モデルを開発した. また, 地下への浸透計算を付加して地下水位の変動を再現した. いずれも良好な結果が得られ, プノンペン周辺における洪水氾濫の時間的, 空間的な変化が理解された. また, 本地域で氾濫が地下水涵養に大きく役立っていることがわかった. 通常の洪水規模では, 氾濫による地下水涵養量は52km
3であった.
さらに, 洪水流量が変化した場合の計算を行うことで氾濫域の変化を調べ, 現在予想されている上流側の開発に伴う洪水制御を想定し, 異なる洪水規模によって農業および地下水涵養量に及ぼされる影響を評価した. 洪水制御の方法としては, メコン河のピーク流量の減少率を洪水制御の割合とした. その結果, 次のことが明らかになった. (1) 大規模な洪水制御を行っても氾濫が起こる地域は存在する. (2) 洪水制御により, 氾濫を利用した耕作地は制限されるが, ダム貯水より広い灌漑域も得られる. (3) 地下水涵養量は大きく減少し, 44%の洪水制御では30km
3にまで落ち込む. しかし, カンボジア国内の生活用水としては充分な量である.
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