水文・水資源学会誌
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18 巻, 6 号
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原著論文
  • 倉島 栄一, 星 透, 藤井 克己, 加藤 徹, 向井田 善朗
    2005 年 18 巻 6 号 p. 655-662
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/24
    ジャーナル フリー
    生産向上と生活環境の改善を目的として展開されてきた農業農村整備事業は,多くの利益をもたらす反面,周辺の生態系にダメージを与えることが指摘され,関連法規の整備とともに,事業の方向性の転換期を迎えている.
    本研究では,圃場整備事業の一環として保全工法を施されたノハナショウブ群生地を対象として現地観測を行い,群生地の水収支の検討を行ったものである.その結果,群生地を構成する湛水域の水位差と,水収支から推定された損失水量は,40~50 mmであり,6ヶ月間の量としては少量であることが判明した.
  • 岩永 理佐, 小林 哲夫, 王 維真, 賀 文君, 手嶋 準一, 長 裕幸
    2005 年 18 巻 6 号 p. 663-673
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/24
    ジャーナル フリー
    中国内蒙古自治区の黄河流域に建設された実験トウモロコシ圃場において, 本地域の灌漑水節約の可能性をみるために, 灌漑実験を行った.根域を厚さ40 cmの第1層と厚さ60 cmの第2層に分割し, 必要灌漑水深Wa(mm)は次式のように表されものとした.
    Wa=(max[W1FCW1, 0]+max[W2FCW2, 0]) (1+α)
    ここでWi は第i 層内に含まれる水分量(mm) (i = 1, 2), Wi FCは同層の「動的圃場容水量」(mm),α は塩度管理あるいは水分一様分布のための根域濾過部分を表す.動的圃場容水量Wi FCは各層底における水分要素に作用する力が釣り合う際のWi の値と定義され, 2層BBHモデルを用いて評価される.この臨界点は静的ではなく動的な性質を有し, 地下水深と植物根による吸水能に依存する.
    実験圃場で2004年に通常通りに行われた灌漑から,α の圃場での平均値は0.75と評価された.灌漑直後地下水位が根域内まで上昇し, その下部域は長期にわたってほとんど飽和していたことから, この値は最適値よりも大きく, 過剰灌漑が行われたことは明白である.
  • 入江 達之, 金木 亮一, 古川 政行
    2005 年 18 巻 6 号 p. 674-680
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/24
    ジャーナル フリー
    琵琶湖周辺の内湖では水質浄化能を利用して,農地など面源からの汚濁負荷を削減することが期待されている.しかしながら,長年に亘って維持管理が行われていない内湖では,浄化能の低下が観測されている.その原因としては植物プランクトンの内部生産や底泥からの栄養塩の溶出が考えられる.そこで,内湖でのChl.aの濃度変動を測定し,それがSS,COD,窒素,リンなどの水質に及ぼす影響について検討した.
    Chl.a濃度の上昇は,SSとCODの汚濁を進行させるが,窒素とリンについては浄化を促す傾向が見られた.底泥からの溶出実験を行った結果,底泥からの窒素・リン溶出量は内湖への流入負荷量の3%程度に留まった.このことから,Chl.a濃度の増加には底泥からの溶出よりも流入負荷の影響の方が大きいことが確認された.
  • 井上 隆信, 松下 拓, 山田 俊郎, 松井 佳彦
    2005 年 18 巻 6 号 p. 681-687
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/24
    ジャーナル フリー
    酸性雨の影響等による水質変化を的確に捉えその現象を解明するためには,水質の連続観測データが必要となる.pHと電気伝導率(EC)は水質の代表的な指標であるが,特にpHの連続観測は測定が難しいため行われてこなかった.本研究では,pHの連続観測手法の確立を目的に,岐阜県伊自良湖流入河川の伊自良川で,pHとECについて,2001年から4年間の長期間にわたり河川水中にセンサーを設置して連続観測を行った.連続観測によるpH値と採水した試水のpH測定値では異なっていたが,試水のpH測定値を用いて連続観測データを補正することで,降雨時を含めた長期間のpHの変化を連続的に観測することができた.ただし,降雨時にpHが低下した後の上昇時には,連続観測値に一時間程度の遅れが生じていた.ECは,補正することなく連続観測が可能であった.降雨時には,他の渓流河川での観測と同様に流量増加時のpHとECの低下,流量減少時の上昇が見られ,この変化を短い時間間隔で観測することができた.融雪時には,pHの低下に対してECが上昇する傾向も見られ,降雨時とは流出パターンが異なり,降雨時よりも複雑な反応が生じている可能性が示唆された.
研究ノート
  • 恩田 裕一, 辻村 真貴, 野々田 稔郎, 竹中 千里
    2005 年 18 巻 6 号 p. 688-694
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/24
    ジャーナル フリー
    近年,林業労働力の不足,材価の低迷のため,適切に管理されずに放置され荒廃した林分が年々増大している.従来の研究によれば,人工林,特にヒノキ一斉林では,樹冠の閉鎖が進むと下層植生が消失し,浸透能が低下することが知られていたが,従来の浸透能測定法では,裸地化した林床における浸透能を正確に表現していない恐れがある.そこで本研究では,冠水型浸透計,霧雨散水型浸透装置,樹幹上から散水をする大型の浸透計を用い林内における浸透能の把握をすることを目的に研究を行った.その結果,霧雨散水型が294-670 mm/h,冠水型浸透計での測定値は,210-456 mm/h程度とかなりばらつきが多く,また,非常に高い浸透能を示す.これに対し,降雨強度35-45 mm/hの人工降雨を4回,林冠上から散水した結果,浸透能は26-34 mm/hと一桁低い値で比較的安定した値を示した.人工降雨型の浸透試験器は,スプリンクラーにより樹冠上から散水されるために,雨滴径も大きく,林内雨を再現していると考えられるため,人工降雨型を用いた場合の値が,林床が裸地化したヒノキ林の浸透能を示すとするのが妥当であり,他の方法では過大な値を得る結果となる可能性が高い.
  • 近藤 昭彦, 鈴木 力英
    2005 年 18 巻 6 号 p. 695-702
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/24
    ジャーナル フリー
    SPOT/VEGETATIONデータセットを用いてユーラシア大陸北部の積雪分布域の抽出を行った.東シベリアのスパスカヤ・パッドにおける現地観測結果を参照すると,可視と短波長赤外域のバンドのデジタル値から計算される正規化積雪指数(NDSI)は積雪状況を良く表していることが明らかとなった.その結果に基づき,NDSIの域値を0.0として積雪分布を地図化した.1999年と2000年については消雪時期をグレースケールで表したマップを作成したところ,消雪時期の年ごとの違いを良く表現でき,黄砂の発生や,植生フェノロジー等の環境解析に利用可能であることがわかった.
技術・調査報告
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