水文・水資源学会誌
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22 巻, 1 号
No.22.Vol.1
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
原著論文
  • 原 雄一, 梅村 幸一郎, 加藤 健一郎, Richard F. F. CONNOR, 佐藤 祐一
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 22 巻 1 号 p. 10-23
    発行日: 2009/01/05
    公開日: 2009/01/29
    ジャーナル フリー
    水害脆弱性指標(Flood Vulnerability Index, 以下FVIと略す)は, 流域単位で水害の脆弱性を評価する指標である. 各国での水害に関連した政策立案者が, 政策実行の際に汎用的に使用できることを目的としている. また, 水害に対する一般住民の意識向上にも活用できる. FVIは, 水害の直接的な原因となる降水量(気候的要因)以外に, 水文地理的要因, 社会経済的要因, 対策的要因が考慮されている. 本研究では, 世界の114の主要流域を対象とし, 水害の原因と結果に基づく要因連関図から11の指標をまず抽出した. 次に, 重回帰分析により, 豪雨の発生日数, 流域の平均傾斜, 流域の都市化率の3つの指標を説明変数としたFVI式を算定した.
  • ― 降雨イベントの規模が森林流域の水流発生機構に及ぼす影響 ―
    平野 智章, 寺嶋 智巳, 中村 智博, 境 優, 青木 文聡, 名波 明菜
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 22 巻 1 号 p. 24-39
    発行日: 2009/01/05
    公開日: 2009/01/29
    ジャーナル フリー
    森林植生の樹種と流域の水流発生機構との関連性を明らかにするために,針葉樹林流域(1.29 ha)と広葉樹林流域(1.28 ha)において水文観測を行った.ヒノキ林プロットでは地表流の流出応答が大きく,個々の降雨ピークに応答して地表流の流出ピークが現れたが,広葉樹林プロットでは地表流の流出応答は非常に小さかった.各プロットともに土壌の最終浸透能(6.4と26.8 mm / 5min)よりも低いと考えられる降雨強度(4.0 mm / 5 min 未満)において地表流が発生したことから,その流出形態はヒノキ林プロットでは根系流(ヒノキ人工林の根系層を流れる選択的な表層流)であり,広葉樹林プロットでは落葉層をわずかに流れるリターフローであると推察された.総降水量100 mm以上の降雨イベント(P ≧ 100 mm)では,各流域の流出応答および‘Non-reacted water’の寄与量が顕著に大きくなり,大規模台風イベント(P:117.4 mm)では流出ピークの40~50 %は‘Non-reacted water’によって構成されていた.また,降雨イベントの規模によって各流域の‘Non-reacted water’の主要な構成成分は異なる可能性があり,大規模台風イベント時の針葉樹林流域では浅い側方流と根系流,広葉樹林流域では主に浅い側方流が‘Non-reacted water’として短期流出および流出ピークに大きく寄与していると推察された.
  • ― 茨城県福岡堰地区を対象として ―
    谷口 智之, 河野 賢, 佐藤 政良, 岩本 智裕
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 22 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2009/01/05
    公開日: 2009/01/29
    ジャーナル フリー
    本稿では,茨城県福岡堰地区を対象に,流出水が集まる中通川(集水面積2,267 ha,うち水田面積1,221 ha)で観測された流量の日内変化に注目し,その原因を検討した.2004年から2006年において,中通川の水位を圧力式自記水位計によって30分毎に連続観測したところ,無降水時には6時頃を最高水位,18時頃を最低水位とする明確な日内変化が確認された.そこで,集水区域内の末端排水路についても水位を連続観測し,また,近隣の水田地帯で観測された蒸発散量記録を入手・検討することで,地域内での水の動きを定量的に分析した.その結果,以下のことが明らかになった.i)本対象地域では,排水路のレベルによらず,水位・流量の変化は同一の傾向を示している.ii)蒸発散量と流量の時間変化はほぼ一致しており,水量的にも高い相関関係が確認された.iii)中通川流量の日内変化は,水田群への安定した用水供給のもと,蒸発散によって水田湛水位が日内変化することによって発生していると推察される.
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