水文・水資源学会誌
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23 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著論文
  • 手計 太一, 丸山 達也, 乾 真寛
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 23 巻 1 号 p. 18-31
    発行日: 2010/01/05
    公開日: 2010/01/27
    ジャーナル フリー
    保水性人工芝システムの熱環境特性を明らかにすることを目的とし,保水性人工芝システムと天然芝の熱伝導率・熱容量・アルベドの水文パラメータを求めた.また,模型実験により保水性人工芝システムと天然芝の表層温度・蒸発量を測定した.
    保水性人工芝システムの熱環境特性は以下の通りであった.熱伝導率は天然芝と比較して小さく,人工芝は地中に放射熱を伝えにくい.熱容量は天然芝よりも小さく,表層温度の変化は大きいと考えられる.そのため,人工芝の表層温度は日中において天然芝よりも高く,夜間において天然芝よりも低い結果が得られた.アルベドは天然芝の約1/4であり,地温の上昇に繋がるものの,反射される短波放射は小さかった.人工芝からの蒸発量は天然芝からの蒸発散量の約1/4であり,人工芝の潜熱輸送量は小さかった.
  • ― 地質の異なる2流域における検討 ―
    藏本 康平, 篠原 慶規, 小松 光, 大槻 恭一
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 23 巻 1 号 p. 32-42
    発行日: 2010/01/05
    公開日: 2010/01/27
    ジャーナル フリー
    流域からの流出は,植生の状態だけでなく地質にも規定されると言われる.このことは,植生変化の流出への影響が,流域の地質によって異なる可能性を示唆する.この可能性を検討するために,地質の異なる2流域において,森林回復が流出に与える影響を調べた.対象とした2流域は,竜の口南谷流域と白坂流域で,地質はそれぞれ付加体堆積岩と花崗岩である.森林回復前後のそれぞれ5年間の流出データに対して指数関数型タンクモデルを適用して,モデルパラメータを森林回復前後のそれぞれについて決定した.竜の口南谷流域では,森林回復による流出に変化が認められたものの,白坂流域ではほとんど認められなかった.このことは,花崗岩地質の白坂流域では,岩盤の亀裂への浸透が存在するため,森林土壌の変化による流出の変化が生じにくいためと思われた.このことから,森林管理による流出の制御可能性を調査・議論するためには,地質を考慮に入れる必要があることが示唆された.
解説
  • 丹治 肇, 小林 慎太郎, 桐 博英
    原稿種別: 解説
    2010 年 23 巻 1 号 p. 43-56
    発行日: 2010/01/05
    公開日: 2010/01/27
    ジャーナル フリー
    21世紀のエネルギー状況に対応した水田灌漑システムの再編を検討した.石油ピーク説に見られるように,21世紀には,化石燃料は枯渇する可能性がある.このため,リスク管理として自然エネルギーへの転換が多くの国で図られている.その場合には,日本では太陽光発電が主役になる.このとき,発電量の変動と発電所の分散に対応した電力グリッドの再編が課題である.解決策としてスマートグリッドの概念の提案と技術開発が始まっていて,30年後には完成予定である.そのとき水田灌漑システムも化石燃料に頼らないエネルギー自立性(self subsidence of energy)が求められよう.スマートグリッド技術には,水田灌漑システムの水管理を改善し,現在抱えている問題を解決するポテンシャルがある.このポテンシャルを活用するために,水田灌漑システムは分散型の貯水灌漑システムに再編する必要がある.この新たな水田灌漑システムでは,貯水は,自然エネルギーの発電量の変動を調整する水田灌漑電池システム(PBS: Paddy Battery System)として利用することで,電力ネットワークの一部を形成するであろう.
  • 解説シリーズ「気候変動に関する政府間パネル第四次成果報告書を読む:2014年へ向けて」
    近藤 洋輝
    原稿種別: 解説
    2010 年 23 巻 1 号 p. 59-74
    発行日: 2010/01/05
    公開日: 2010/01/27
    ジャーナル フリー
    気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は,第4次評価報告書(AR4)を2007年2月に公表した.進展した観測事実などから,「気候システムの温暖化には疑う余地がない.」と温暖化が現実化していることを初めて明記し,その原因特定に関しても,「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは,人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が非常に高い」と確実性を高めた.将来予測に関しては,モデルや実験も質・量とも進展し,最良の見積もりや可能性の高い範囲(予測幅)も出している.また,炭素循環のフィードバックにより温暖化は従来の予測より更に進むことを定量的に示し始めた.
    上記のほか,自然災害に関連する「猛暑,熱波,大雨などの極端現象は,今後ますます頻度が増加する可能性が非常に高い.」と近年の状況がさらに激化することを示している.また,「将来の熱帯低気圧(台風,ハリケーン)の強度は増大し,最大風速や降水強度は増加する可能性が高い」 ことが指摘されている.温暖化への適応策のためには,地域的により詳細な予測情報などが求められている.
  • 解説シリーズ「気候変動に関する政府間パネル第四次成果報告書を読む:2014年へ向けて」
    小端 拓郎
    原稿種別: 解説
    2010 年 23 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2010/01/05
    公開日: 2010/01/27
    ジャーナル フリー
    グリーンランドの氷床コアを見ると,最終氷期終焉後の過去11,600年(完新世)の気候は,比較的安定していたことがわかる.この期間に,人類は狩猟中心の生活から農耕中心の生活に切り替え,文化を急速に発展させた.しかしながら,この期間中にも半球規模の急激な気候変動が,いくつか起こり人類社会形成に影響した事が知られている.本稿では,8,200年前と11,270年前に起こった急激な気候変動を詳しく見てみることにより,数10年から100年程度の気候データでは想定外の気候変動がどのようなものかを検証する.
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