本研究では,従来よりも多くの要素が観測できるXバンドMPレーダ(XMP)を用いて,降水量の定量観測に重要な「融解層」を調査した.XMPでは5分ごとに12仰角で上空の3次元観測を完了する仰角運用を行っている.東京大学生産技術研究所から18 km離れた新横浜レーダを使い,高度6 kmに対応する最大仰角20°のデータを用いた.解析対象期間は2010年8月から2011年10月の約1年間のうち,東京大学生産技術研究所において日雨量が10 mmを超えた日とした.レーダの地上に相当する高度でレーダ反射強度因子が25dBZを超えた時間について「融解層」の有無を調べたところ,偏波情報である偏波間相関係数
ρHVから算出した「融解層」PMLは反射強度因子
ZH から算出した「融解層」RMLに比べ低高度に出現しており,PMLの層厚はRMLより小さかった.PMLとRMLの高度差・層厚差は,レーダが観測する降水粒子の粒径分布に関連していると考え,ZR法の雨量変換係数をRMLとPMLの高度差により変化させてレーダ雨量を算出することを試みたところ,単一の雨量変換係数を用いる場合に比べて雨量推定精度が向上する可能性が示唆された.
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