水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
29 巻 , 2 号
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巻頭言
  • 島谷 幸宏
    2016 年 29 巻 2 号 p. 105-106
    発行日: 2016/03/05
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル フリー
     「防災」とは人間が生活する「環境」を災害から守ることであるから,「環境」と「防災」は本来,対立概念では決してない.しかし,災害復旧や災害の復興において,しばしば,「環境」と「防災」に関して,コンフリクトが生じる.復興初期のムードに基づいた復興計画では,「生命・財産」に重点が置かれた計画になりがちであるが,復興中後期の段階になると,暮らしや教育,環境,利便性,福祉などで,環境の質の向上を目指した要求が社会から出てくるようになる.そのような社会状況の変化に対応して,「環境」と「防災」のコンフリクトが発生する.そのことを防ぐためには,災害にかかわる関係者が,災害発生後の社会状況が時間的に大きく変化することを十分に理解することがまず重要である.そして,復興時の社会状況や雰囲気に流されない強い精神力と復興後の社会に対応した環境も含めた復興計画を立案できる力量を備える必要がある.
原著論文
  • 高瀬 恵次, 小倉 晃, 藤原 洋一, 丸山 利輔
    2016 年 29 巻 2 号 p. 107-115
    発行日: 2016/03/05
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル フリー
     本研究では積雪深の再現を主目的として,石川県林業試験場内の気象露場で観測された積雪深をはじめ,降水量,気温などの気象データに基づいて降雪・積雪・融雪モデルを構築し,その構造およびモデルパラメータについて検討を行った.本モデルは,降雨・降雪の判定,新雪および積雪層の密度計算,日気温法(Degree-day法)に準じた融雪計算から構成されている.降雨・降雪の判定には気温に加えて湿度を採用した.密度計算では新雪と積雪層それぞれのサブモデルを採用し,とくに積雪層の密度は気温と積載荷重により増加するものとした.融雪量は気温,純放射,地中熱伝達量の関数とした.その結果,モデルによる積雪深および積雪層密度の計算値は観測値と非常によく一致し,本モデルの有効性を検証することができた.また,モデルに含まれるパラメータの重要性について検討し,いくつかのパラメータについては省略したり既存の値を採用しても再現精度は低下しないが,融雪計算に気温のみを用いた場合には融雪期の積雪深変化や消雪日にかなり大きな違いが生ずることを明らかにした.
  • 若松 孝志, 池田 英史, 中屋 耕, 阿部 聖哉, 佐伯 明義
    2016 年 29 巻 2 号 p. 116-129
    発行日: 2016/03/05
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル フリー
     林床環境が表面流の発生におよぼす影響を明らかにするため,地表面に土壌の一部が露出したヒノキ人工林(ヒノキ林)と林床がほぼ完全に被覆したコナラを主体とする落葉広葉樹林(コナラ林)において,面積約1 m2 の調査プロットを設けて,林床被覆の状態,表面流出量および土壌水分量を継続的に調査した.両地点ともに,土壌浸透能は降雨強度に比べて極めて大きいにもかかわらず,ほとんどの降雨イベントで表面流が発生することが観測された.ヒノキ林はコナラ林に比べて,表層土においてより強い撥水性を示すとともに,土壌水分量の変動が大きく,降雨前の土壌水分量と表面流出率(表面流出量/林内雨量)の間に負の相関関係が認められた.そのため,土壌が乾燥した条件で撥水性がより強く発現することにより,表面流の発生が促進されたと考えられた.一方,表層土の撥水性が小さいコナラ林では,ヒノキ林に比べて表面流出率の変動が小さく,降雨強度が小さい条件でも表面流が発生する傾向にあることが観測された.これらのことから,コナラ林では,雨水がリター層中を連続的に流れるリターフローが発生していると考えられた.
解説シリーズ「都市気象学の体系化に向けた最近の研究から」
  • 河合 徹
    2016 年 29 巻 2 号 p. 130-139
    発行日: 2016/03/05
    公開日: 2016/06/04
    ジャーナル フリー
     ヒートアイランドや集中豪雨に代表される都市固有の気象現象が引き起こされる要因の一つに,都市化に伴う熱収支の変化が挙げられるだろう.筆者らは都市化に伴う熱収支の変化と,この要因を把握するために,屋外に大規模な模型都市を作成して気象観測を行ってきた(Comprehensive Outdoor Scale Model Experiment for Urban Climate; COSMO).本稿では,COSMOと実都市より得られた熱収支データをレヴューし解釈する.都市は裸地等に比べて温まりにくく冷めにくい性質を持つ.これが夜間に顕著になるヒートアイランドを引き起こす一因となる.都市化(建物が立ち並ぶこと)がなぜこのような変化を引き起こすのかについての物理的なメカニズムを述べ,また,サイトや季節間で熱収支がどの程度異なり,なぜそのような違いが生まれるのかを考察する.さらに,都市熱収支のモデリングについても概説し,主要な空気力学的地表面パラメータである熱粗度のパラメタリゼーションにCOSMOを利用した事例を紹介する.
記録・報告
発想のたまご
若手のページ
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