水文・水資源学会誌
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31 巻 , 6 号
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巻頭言
  • 渡邉 紹裕
    2018 年 31 巻 6 号 p. 443-444
    発行日: 2018/11/05
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

     水文・水資源学会の創立30周年を契機にして,学会のこれまでの経過を整理し,これからの展開の課題をまとめた.とくに,創立30周年記念の2つのシンポジウムでの議論や,2018年の豪雨災害や気候変動を踏まえて,1)学官民連携を具体化するための「場」の仕立てが求められることと,2)水文現象に対するさまざまな革新的な技術を活用した「超」学際的・先進的な研究は継続して展開されるだろうということ,そして3)「地球規模」の課題に対して「国際的文脈」で活動展開する「世界的枠組み」へ貢献すべきこと,を示した.

総説
  • 河村 明
    2018 年 31 巻 6 号 p. 451-466
    発行日: 2018/11/05
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

     本総説では,都市流域を対象とした洪水流出解析の現状を概説するとともに将来展望を述べている.まず,都市型水害について述べ,次いで流出解析におけるモデルの歴史を簡単に振り返りそれらを概説するとともに,都市流域への洪水流出モデルの適用の現状を紹介する.次に,集中型概念モデルの貯留関数モデルを概説するとともに,都市貯留関数(USF)モデルについて解説を行う.そして,都市流域における精緻な分布型物理モデルの必要性を述べ,高度な地物データGISについてメッシュデータとの違いを示し,高度な地物データを活用した精緻な分布型物理モデルであるTSRモデルについて概説する.最後に,集中型概念モデルや分布型物理モデルなどの課題や将来展望を俯瞰し,都市型水害の減災への提言も行っている.

  • 松山 洋
    2018 年 31 巻 6 号 p. 467-486
    発行日: 2018/11/05
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

     この30年間,地理学者が水文・水資源学会誌に公表してきた種別Aの原稿(以下「論文」)について概観し,21世紀当初挙げられた「2020年頃までに解決すべき問題」に対して,地理学者がどのように貢献してきたかについて述べた.「地理学者による論文」を,“公表時に,地理学関係の機関に属していた方たちが全著者数の1/2以上を占める「論文」”と定義したところ全体の約9 %を占め,2005年にピークがみられた.2005年には,研究ノートと原著論文の寄与が等しいことが特徴であった.研究対象地域は,国外ではアジア,国内ではつくばと東京周辺が多かった.多く挙げられたキーワードは,リモートセンシング(7回),NDVI,安定同位体,季節変化,降水,植生指標,積雪水当量(各4回)であった.1990年代はデータ解析の「論文」(含レビュー)が多かったが,2000年代後半にかけて観測の「論文」が多くなっていく傾向がみられた.2010年代は2000年代前半同様,観測とデータ解析の「論文」が同数になっていた.2020年頃までに解決すべき問題に関して,地理学者はHydrological Research Lettersの編集,観測データベースの整備,水文プロセスの発見,国際共同研究の推進,水文学の教科書執筆,など目に見える形で貢献してきた.

  • 大手 信人
    2018 年 31 巻 6 号 p. 487-499
    発行日: 2018/11/05
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

     最近30年程度の期間の森林流域における斜面水文学とその周辺の研究の流れを概観した.水文・水資源学会が設立される1980年代末までに,現在の斜面水文学に関する物理的な知見の基礎は確立していたと考えられるが,その後の30年間の間に幾つかの方向での各論の展開が見られた.そのうちの一つとして,溶存化学物質や同位体トレーサーを用いた水文過程の精緻な記述があげられる.これには溶存物質や同位体比の分析技術の進化と新しい解析手法の提案が重要なトリガーとなっていた.もう一つの展開として,森林生態系の物質循環研究への展開が挙げられる.生物地球化学的な方法を用いて水の移動とともに養分の移動や貯留,形態の変化を記述する研究は,酸性雨から窒素飽和現象に課題がシフトしつつ,北米,ヨーロッパ,日本など多くの地域で重要性を保ち続けている.今後の展開として重要性の高い課題としては,極端気象下で生じる水文現象のメカニスティックな理解が挙げられる.これによって流域に生じる種々の撹乱と回復の過程,その条件等の理解は,流域のレジリエンスを見据えた災害対策の基礎となるはずである.

  • 近森 秀高
    2018 年 31 巻 6 号 p. 500-508
    発行日: 2018/11/05
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

     本稿では,国や地域の食料を確保するための生産手段である農業とその存立基盤の一つである水環境との関係に関わる研究の動向について,農業活動が水・物質環境に及ぼす影響とその利用および対策,農地における水・物質循環のモデル化を中心として概観した.農業活動が水・物質環境に及ぼす影響の一つとして,農地の持つ洪水緩和機能を取り上げ,「田んぼダム」による水田地帯における洪水流出の制御とその効果について述べ,また,中山間農地の持つ洪水緩和機能を評価する手法について述べた.農業活動が水質に与える影響とその対策について,農地からの流出負荷と水田による水質浄化機能について述べ,この浄化機能を利用した循環灌漑について述べた.これに加え,農地における水・物質循環のモデル化について,モンスーンアジアにおける水田水利用を考慮した水循環モデルの構築とその適用例を述べ,農業水利用に対する温暖化の影響の具体的評価が可能であることを示した.また,農業地域における水の動態をシミュレートできる灌漑管理実効評価モデルや,その他のモデル化の試みについて紹介した.

  • 〜WACCA世代の挑戦〜
    田中 智大, 渡部 哲史, 小槻 峻司, 林 義晃, 丸谷 靖幸, 峠 嘉哉, 山崎 大, 木村 匡臣, 田上 雅浩, 江草 智弘, 橋本 ...
    2018 年 31 巻 6 号 p. 509-540
    発行日: 2018/11/05
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

     水文・水資源学会創立30周年を記念し,本学会に所属する12人の若手研究者が取り組む水文・水資源学の研究分野の歴史と展望を取りまとめた.本総説では, 現在の若手研究者の研究内容を示すことで水文・水資源学分野の現在のトレンドを理解し,次世代が参照できる形で現在の若手研究者の考える今後の展望と若手研究者としての今後の決意表明を各著者の専門分野に分けて述べる.対象分野は大気・水象から,データ解析,降雨流出,環境水文,農業水利まで多岐にわたり,各研究分野の最新の知見および今後の展望を解説する.最後に,これら複数の研究内容を俯瞰することで得られた応用研究の学術的価値,現地観測と数値解析の関係,人工知能技術の台頭による制御問題の拡大,学際性,研究内容による評価の違い,データ共有の重要性に関する視点をまとめる.

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