降雨中の遮断の挙動について検討した論文「Iida S, Levia DF, Shimizu A, Shimizu T, Tamai K, Nobuhiro T, Kabeya N, Noguchi S, Sawano S, Araki M. 2017. Intrastorm scale rainfall interception dynamics in a mature coniferous forest stand. Journal of Hydrology 548:770-783.」に2018年水文・水資源学会論文賞が与えられた.本稿は当該論文の背景や経緯を記述するものである.
本稿は平成30年度水文・水資源学会論文奨励賞が与えられた論文「松浦拓哉,手計太一,北隆平,溝口俊明:黒部川扇状地における自噴井の湧水量と水質の特徴,水文・水資源学会誌,Vol.30, No.6, pp.373-385, 2017.」について,研究の経緯と研究の概要を述べたものである.
東京都区部の下水道普及率は100 %に達しているが,合流式下水道が約80 %を占めるために,降雨時に多量の懸濁物質(SS)が河川に流入,下流汽水域に堆積し,降雨後に様々な水質問題が発生させている.これらの問題を解決するために,SSの発生・流下過程をモデル化し,汽水域に到達するSSを定量的に評価するモデルが必要とされる.本研究では,東京都呑川をフィールドとして,下水道内2か所の水深と濁度の連続計測結果をもとに,下水道流出計算ソフトウェアMIKE URBANを用いてモデルパラメータを調整することで,両地点の観測結果を良好に再現できた.次に,河道の一次元不定流モデルに全吐出口からの放流量を代入して数値解析を行ったところ,汽水域上流端に達するSSの経時変化も良好に再現できた.さらにパラメータ同定を行った出水とは別の3出水について同モデルを適用し,それらについても観測値を良好に再現できることを確認した.以上より,都市河川の水質環境を評価するためのツールとして,MIKE URBANが有効であることが示された.
筆者らは,都城盆地における地下水中の硝酸性窒素濃度を長年観測してきた.観測は,1995年11月から開始し,毎年2月と8月を中心に行った.しかしながら,未観測地点の硝酸性窒素濃度を知りたい場合もある.そこで,本研究では既観測地点の空間的に分布した時系列の硝酸性窒素濃度を用いて未観測地点の硝酸性窒素濃度を補間する方法を開発した.提案法は,既観測地点の硝酸性窒素濃度を用いて未観測地点の硝酸性窒素濃度を補間する際,既観測地点の硝酸性窒素濃度の影響度を既観測地点と未観測地点の空間的距離,既観測時点と未観測時点の時間的間隔,既観測時点と未観測時点の硝酸性窒素濃度の相関係数の三つの要素を用いて計算した.提案法の有効性を評価するために,2007年から2016年までの2月と8月の硝酸性窒素濃度を用いて実験を行った.観測地点は808箇所であり,これらの観測地点の中から毎年2月と8月には500から600箇所の観測を行った.実験の結果,提案法は較差平均が約1.0 mg/Lで硝酸性窒素濃度を補間することができることがわかった.
近年の日本国内では間伐などの森林管理が十分に行われていない事例が見られる.その結果,土壌の流出が発生して水資源の劣化を招くおそれがあり,これらを防止するためにいくつかの予測モデルが適用されてきた.これらのモデルのうちUSLE(Universal Soil Loss Equation)に代表される経験モデルが多数のデータを必要とするのに対して,EUROSEM(EUROpean Soil Erosion Model)などの物理モデルは多数のデータを必要としないことから条件の異なる日本国内の山地に適していると考えられる.さらに物理モデルはhydrographやsedigraphなどの非定常解析にも適しており,貯水池や飲料水における取水管理にも適用できる.本報ではこのEUROSEMを現地に適用することにより雨水が土壌中へ浸透もしくは地表面を流出する現象のモデル化を行った.ここではEUROSEMモデルが表面流を浸透強度に支配されるHorton流として計算していることから2つの改良浸透モデルを提案し,降雨-流出イベントにおけるhydrographを良好に再現した.