本研究は,高度に水資源開発された淀川水系を対象に,気候変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)により,アンサンブル気候予測データ(d4PDFの4 ℃上昇実験)を5 kmメッシュに力学的ダウンスケーリングしたデータを用いて,気候変動が渇水リスクに及ぼす影響を評価した.バイアス補正は,多数のアンサンブルデータに適したクオンタイルマッピング法を適用し,移動窓を設定した上で移動平均を行う方法を採用した.淀川水系の渇水リスク評価のためには,日本最大の淡水湖・琵琶湖,ダムなど水資源開発施設の貯留効果を評価する必要があることから,積雪・融雪,蒸発散等の水循環過程を反映した分布型流出モデルによる流出計算を行い,利水計算を行った.なお利水計算は,琵琶湖及び各ダムによる全開発水量が利用される前提で計算している.琵琶湖水位を渇水リスクの評価指標とした確率評価の結果,全球で定常的に4 ℃上昇した将来の利水安全度は,現況で1/10に対し,将来予測では1/2未満へ低下する結果となった.また,1/100渇水年の水位は,バイアス補正無で-3.04~-3.74 m,補正有で-4.46 ~-5.92 mまでの低下が予測された.
本研究では低平地が広がる石狩川流域の千歳川流域を対象とし,経年的な河川水位,地下水位,および土壌の湿潤特性の長期変化を整理し,河川整備事業が出水時の治水対策のみでなく,平水時においても近郊農業の発展に貢献する副次的効果を有することを明らかにした.その結果,千歳川流域の近郊農業の発展には,河川の治水事業により(1)出水時の氾濫や浸水被害,それに伴う土壌流出が大きく減少したこと,(2)平水時の河川水位が,もともと泥炭湿地であった千歳川中流付近(KP22 km~28 km)にて大きく低下し,それに伴い地下水面の基底水位が低下し,湿潤条件が幾分改善されたこと,さらに(3)農業の土地改良事業による排水改良が加わることで農地の土壌湿潤状態が大きく改善し,水田から農家にとって収益性の高い畑地への水田汎用(農業生産の多様性)が実現したと考えられた.ただし,既往最大規模の降雨は40年ほど到来しておらず,今後の降雨特性の変化には留意する必要がある.
気象庁JRA-55長期再解析データを入力とした陸面過程モデルSiBUCによる解析から,2020年3月上旬の積雪相当水量は日本の多くの流域において過去60年で最少,もしくはそれに匹敵する少なさであることが明らかとなった.過去60年の積雪相当水量,気温,降水量を標準化して表す指標により各年の事例の顕著さを推計し,これにより2020年の事例の背景として関東,甲信越,北陸,南東北では過去60年で最高となる気温の影響が示唆された.一方,気温の高さが上述の地域ほど顕著ではない北海道においては数年から数十年に一度程度となる降水量の少なさの影響が示唆された.本解析により2020年の少雪は地域によりその背景にある傾向が異なることが明らかとなった.