本研究では,岐阜県と富山県を流れる神通川流域内の全ての公立小学校と中学校の校歌において神通川がどのように歌われているのかを分析した.その結果,神通川に近い学校の歌詞には神通もしくは神通川が含まれることが明らかになった.学校校歌は時代背景と関連が強いものの,河川の整備状況とも関連していると考えられる.各河川流域の文化を調査分析する上で,流域内の小学校や中学校の校歌を調査することで歴史的な背景や河川の整備状況も推定できる可能性があることを示唆し,さらなる課題を示した.
人と水に関する新たな学問「社会水文学」(socio-hydrology)が提唱されて以降,人間-水システムの動態や共進化に関する研究が急速に進んでいる.本論では社会水文学の体系と研究の世界的動向を解説するとともに,それらを踏まえて,日本における社会水文学の展開の可能性と課題について考察を行った.社会水文学は,人間-水システムの相互作用の中に潜む「規則性」または「再帰性」を見出す実証的学問であり,「歴史社会水文学」,「比較社会水文学」,「帰納社会水文学」の3つの体系によって成り立っていることを研究事例とともに解説した.また,日本における社会水文研究の展開の可能性と課題として,①パラダイムシフト研究,②日本の蓄積の活用と学際的コミュニティの形成という2点を提示した.
インドネシアでは小水力発電等の再生可能エネルギーによって遠隔地域における村落の電化が進められてきた.しかし,そのような村落に設置された小水力発電所(MHPP)の導入後の維持管理については追跡調査が行われておらず,MHPPの運営実態については十分にわかっていない.本研究では西ジャワ州の遠隔農村であるCiptagelar(チプタゲラ)集落を対象に,住民主体で管理されているMHPPの運営実態の詳細を明らかにすることを目的として,小水力発電事業の歴史,MHPPの概要,およびその運営状況を調査した.チプタゲラ集落にある4つのMHPPはこれまで,人為的な操作ミスや災害等により度々故障し,長期的に稼働停止する場合があった.MHPPの維持管理・運営コストと電気料金の帳簿データを精査した結果,住民からの電気料金によってMHPPの最低限の維持管理はできるが,災害復旧費等は確保できない状況にあることがわかった.取水河川の流況から推定したMHPPの発電出力から,使用可能電力の偏在が確認され,余剰電力の有効活用や災害へのレジリエンスを高めるマイクログリッドが有効であると考えられた.
学位取得後の10年間を振り返り,次の10年間の研究について考えを巡らせた.自分のリサーチ・ブランド(research brand)を持っておくことが,研究生活を送る上で一つの道しるべになると感じた.
In this short essay, I present a summary of my career as a researcher and how it changes my mindset. Facing research difficulties helps me to recognize the value of the experience and how it changes my confidence due to facing problems where there is no given solution.