水文・水資源学会誌
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35 巻, 1 号
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巻頭言
学会賞受賞記念寄稿
研究ノート
  • 松山 洋
    2022 年 35 巻 1 号 p. 21-31
    発行日: 2022/01/05
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル 認証あり

     東京都における大気汚染物質は,東京都庁による排出規制の効果もあって,1990年代以降減少傾向にある.しかしながら,代表的な酸性化物質であるNO2の濃度は今日なお,東京都心の方が郊外よりも高い.東京における大気浄化を反映して,東京都内にある30の湧水でもpHの値が上昇しつつある.pHが統計的に有意な上昇傾向を示す湧水は,東京都心よりも郊外に多く分布しており,大気中のNO2濃度の分布と整合的である.また,湧水のpHが最小となった時期は,10月(豊水期)は1995年頃と2008年,2月(渇水期)は2008~2009年に,それぞれ多かった.1995年頃のピークは,東京都内における大気中のNO2濃度の経年変化と対応していた.また,2008~2009年のピークは越境大気汚染物質が減少し始めた時期と対応していた.

技術・調査報告
  • 古賀 佑太郎, 鈴木 元治, ピントス ヴァレンティナ
    2022 年 35 巻 1 号 p. 32-40
    発行日: 2022/01/05
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル 認証あり

     瀬戸内海では,栄養塩(窒素・りん)の過不足による富栄養や貧栄養の状態がみられている.瀬戸内海東部に位置する播磨灘は,陸水からの栄養塩の影響が大きく,適切な栄養塩管理には,河川からの栄養塩負荷量を出水時を含めて正確に見積もる必要がある.そこで,播磨灘に流入する加古川及び揖保川で,2015年から2017年までの出水時の栄養塩負荷量変化を調査した.採水した河川水の全窒素(TN),溶存態全窒素(DTN),アンモニア態窒素(NH4-N),亜硝酸態窒素(NO2-N),硝酸態窒素(NO3-N),全りん(TP),溶存態全りん(DTP)及びりん酸態りん(PO4-P)を測定した.出水時のTN・TP負荷量を平水時と比較すると,1つの降雨イベントでの最大増加率はTNが28 倍,TPが76倍であった.河川流量増加に伴いTN・TP濃度が増加したが,形態によっては同様の挙動を示さず,河川による違いが見られた.河川流量と負荷量の関係より,加古川のNO3-N及びPO4-Pで反時計回りのヒステリシス効果が確認できた.本調査結果より,瀬戸内海の栄養塩管理には,出水時の影響を考慮した水文モデルによる数値計算が有効と考えられる.

論説・評論
  • 佐藤 政良
    2022 年 35 巻 1 号 p. 41-57
    発行日: 2022/01/05
    公開日: 2022/01/18
    ジャーナル オープンアクセス

     近年連続的に発生している河川大水害を受けて,2020年,国土交通省は,従来の治水方法の流域治水への転換を打ち出し,洪水抑制と水害低減に向けて全ての関係者が協働することをうたった.著者は,この歴史的転換の背景になった水害発生の条件を河川整備の視点から分析し,①流域における都市的土地利用の進展と農地排水の改良などのための中小河川整備が一級河川本川へ過剰な負担を生じさせ,河道整備だけでなくダム,遊水地等による洪水カットを必要とさせたこと,②必要な遊水地の建設が思うように進まないこと,が重要なポイントであることを指摘し,流域治水成功の当面の決定打は,③流域内の農地,特に水田およびその排水施設を整備・利用することで洪水ピークの低減を図ること,④特大洪水の危機的状況においては洪水の超過分を水田が受け入れること,以外にほぼないことを示した.これらを大きな被害を生じさせずに実現することは,技術的には可能であるとしても,農業部門がその役割を一方的に受け入れる理由はなく,社会全体が感謝の念をもって要請するほかない.一方,農地部門としてその受け入れは,条件によっては,合理的政策選択肢たり得ると思われる.

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