水文・水資源学会誌
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35 巻, 4 号
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巻頭言
原著論文
  • 横江 祐輝, 北 真人, 内田 龍彦, 河原 能久
    2022 年 35 巻 4 号 p. 255-266
    発行日: 2022/07/05
    公開日: 2022/07/21
    ジャーナル フリー

     2018年6月28日から7月8日にかけて西日本を中心に記録的な豪雨が発生した.梅雨前線による広域で長期的な豪雨に加えて局所的に線状降水帯が形成され,多くの河川において長期にわたる高い水位や洪水氾濫が発生した.災害軽減のためには大雨を早期に予測することが重要となっているものの,とりわけ,線状降水帯の発生位置や発生時刻を精度良く予測することは難しいと言われている.本研究では,WRFを用いた数値予測において,広島県と岡山県のXバンドMPレーダを3時間同化することにより,3時間以上前から線状降水帯の発展を予測することに成功した.また,再現計算結果より,大気下層の収束と上空の鉛直シアが継続していたことが線状降水帯の停滞の要因であることを示した.

  • 北 祐樹, 山崎 大
    2022 年 35 巻 4 号 p. 267-278
    発行日: 2022/07/05
    公開日: 2022/07/07
    [早期公開] 公開日: 2022/05/13
    ジャーナル オープンアクセス

     国や自治体が整備する洪水ハザードマップは広く利用される一方で,水系ごとに洪水ハザードマップを個別作成することの大きな時間とコストが課題である.本研究では,グローバル河川氾濫モデルCaMa-Floodによる広域シミュレーション出力から日本の1,000年確率規模の想定浸水域を作成し,公的なハザードマップと比較することで,モデル出力をハザードマップとして活用する可能性を議論する.再解析流出量を入力としてCaMa-Floodで計算した水位を極値解析して1,000年確率規模の水位を得,高解像度の地形データでダウンスケールして想定浸水域図を作成した.得られた想定浸水域を公的ハザードマップと比較すると,バックウォーターによる浸水や分岐河道での浸水域が概ね表現されていた.一方で,上流からの越水や集水域境界を跨いだ流れで生じる浸水が一部表現されないという課題が確認され,CaMa-Floodで作成した想定浸水域内に含まれる人口は公的なハザードマップに比べ29 %少なかった.グローバル河川氾濫モデル出力が洪水ハザードマップとして一定の精度を持つことを確認し,ローカルな洪水リスク評価への活用などの可能性を示した.

研究ノート
  • 伊藤 祐二, 平嶋 雄太, 宮本 英揮
    2022 年 35 巻 4 号 p. 279-287
    発行日: 2022/07/05
    公開日: 2022/07/21
    ジャーナル フリー

     近年,高い通信処理能力を持つ環境モニタリングセンサー用の非同期シリアル通信プロトコルであるSDI-12プロトコルに対応したデジタル土壌水分・電気伝導度(EC)センサーが世界的に普及している.本研究では,時間領域透過法(TDT)と時間領域反射法(TDR)による2種類のデジタルセンサーの性能を比較するために,土壌の体積含水率(θ)とバルクEC(σb)を測定する室内実験を行った.豊浦砂中に両センサーを埋設し,ECの異なるNaCl水溶液(0.1,5.0,10.0,19.9 dS m-1)で飽和した後,段階的に排水することによって広範なθσb条件で両センサーの測定精度を調べた.その結果,TDRセンサーで測定したσbは,TDTセンサーのそれよりも正確であった.TDTセンサーでは感度が十分ではないため,低EC条件でσbを測定できない場合が生じた.一方,θについては,測定できる範囲に若干の差異はあるものの,いずれのセンサーも砂のθ測定に適用されるTopp式を用いて適切に評価することができた.今回の性能評価結果は,ユーザーがデジタル土壌水分・ECセンサーを選択する際の根拠として有用である.

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