水文・水資源学会誌
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36 巻, 1 号
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巻頭言
学会賞受賞記念寄稿
原著論文
  • 谷 誠
    2023 年36 巻1 号 p. 20-51
    発行日: 2023/02/05
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     洪水流出応答が主に鉛直不飽和浸透に支配されるとの研究をふまえて新しい流出モデルを提案し,3つの山地小流域の洪水流出応答を良好に再現できる結果を得た.これにより,洪水流出応答に対して斜面長や勾配などの地形条件よりも土壌層の厚さや土壌物理性の影響が大きいことが示唆された.この結果と既往の観測研究に基づいて流出機構について再検討を行った.流出寄与域変動概念を検討したところ,湿潤になった土壌層が水平方向に孤立している場合は流出が小さいが,それらがつながると土壌層からの排水が傾斜方向に速やかに流れて大量の洪水流出応答を生み出すと推測された.モデルによって表層崩壊の発生直前までゼロ次谷の流出応答が再現できた結果を基にして,主に鉛直系によって洪水流出応答が支配されるのは,土壌層内の地下水排水能力が斜面安定を長期間にわたって保つに十分なほど大きいためであるとの仮説が提起された.また,風化基岩の貯留能力が高い花崗岩の小流域では,観測された洪水流出強度がモデルによる計算値を約半分にすることで良好に再現された.その理由は,基岩深部への浸透が遮られて傾斜方向流に転じる領域が流域下部に限られるためであると推定された.

  • 山口 宗彦, 仲江川 敏之, MAGNUSSON Linus
    2023 年36 巻1 号 p. 52-62
    発行日: 2023/02/05
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     平成30年7月豪雨を例に,ダム運用におけるアンサンブル再予報データの利用可能性について調査した. アンサンブル予報による予測雨量を解析したところ,鹿野川ダムにおいて放流量がピークとなる時刻の6日前には顕著な降水のシグナルが,3日前には高確率で顕著な降水(50年に1度,ある閾値を超過するような降水)が生起し得ることを把握できた可能性が示唆された. アンサンブル予報のコントロールメンバーによる予測や高解像度全球大気モデルによる予測だけを見ていても顕著な降水が生起する可能性を予見することは難しく,アンサンブル予報による複数の予報結果から起こり得る様々なシナリオを想定することが重要である. その際,モデルの予報特性であるモデル気候値を得ることができ,過去に遡って予報を行うこと,即ち再予報が重要な役割を果たす. また,事前放流を行う際に,アンサンブルの中で少ない雨量を予測するメンバーを有効利用できる可能性が示された. アンサンブル予報結果を再予報データによるモデル気候値と比較することでより定量的に顕著な気象現象の超過確率を推定することが可能であり,更にアンサンブルメンバーの中で少ない予測雨量は事前放流等の意思決定の参考資料となり得る.

解説
  • 池田 鉄哉
    2023 年36 巻1 号 p. 63-73
    発行日: 2023/02/05
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     2006年3月にUNESCOカテゴリー2センターとして設立された水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)は,研究,研修,情報ネットワークの3つを活動の柱とし,それらを三位一体的に運用することで相乗的な効果の発現を期している.ここではこれまでICHARMが実施してきた(1)洪水ハザードマップ作成に係る国際技術協力,(2)国際洪水イニシアティブの枠組みを活かした支援,(3)研修による人材育成とそのネットワークを活かした国際技術交流の3つの活動事例について考察を行う.そして,こうした研究,研修,ネットワークの活動が三位一体的に運用され相互に作用し合うことで得られる相乗効果を考察するとともに,新たなプロジェクトや地域連携・ネットワークとしての展開,現地での問題解決や専門的助言機能を併せ持つファシリテータとしての役割など,今後期待される活動展開の方向性について考察する.

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